文章も短くなってしまっていますが、少しでも待ってくれている人がいると信じて…
「はああああっ!!」
「うおおおおっ!!」
漆黒の騎士と高速で宙を舞いながら何度も斬り結ぶ。だが、こちらの速度を上回る相手の斬撃をギリギリで切り結ぶのが今の俺の精一杯。
「白式!お前の力はこんなもんじゃないだろ!!」
俺の呼応に応えるかのように背中のスラスターから爆発的な推進力を持って白式が加速する。
「届けーーーーー!!」
雪片を振り上げ、漆黒の騎士に向かって振り下ろすが……
「遅い…遅すぎるんだよ!」
赤い細身の剣で速度を乗せた一撃を受け止められる。
「お前に教えてやろう…俺たちが至った白式の本当の力をな!!」
その瞬間に、俺は蹴り飛ばされ距離を開けられる。
「俺たちの復讐の炎によって鍛え上げられた魔剣“ディスキャリバー”!」
赤い刀身を左手で掴み、一気に引き抜く。そして左手を振り払うと奴の血液が宙に舞う。
「さあ!絶望の淵へ叩き落されろ!!」
背後のウイングが広がり、スラスターから炎が噴き出る。同時に奴が地面を蹴った。俺が視認できたのはそこまで。気がつくと。
「な…?!」
「味わえ。俺たちの想いを!」
腹にディスキャリバーと呼ばれた剣が突き立てられていた。
「ランブリング・ディスキャリバー!!」
突き立てられた状態で体を掴まれ、一気に上空へと連れて行かれる。
「消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!!!!!!!」
腹から引き抜いた魔剣を残像すら見せない速度で俺は奴に切り刻まれていく。一体、束さんは何をしてそこまで奴を追い込んでいったのか。怨念と言ってもいいほどの想いを持って魔剣を振るう奴を相手にしながらそんなことを覆っていると俺を中心に幾重もの魔法陣が描かれており……
「爆ぜろ!!」
奴の言葉が聞こえ、俺は爆発に飲み込まれた。爆発から放り出されるように俺は落下していく。全身の装甲はひび割れ、生身をさらしている。フェイス部の仮面も半分が無くなり飛びかける意識で見えたのは真ん中から折れた雪片。
「(折れちまった……千冬姉から……受け継いだ……刀が……)」
その事実が俺の心を折りそうになる。気づけば涙も出ている。これは自分の未熟が招いた結果……これでは……
「「誰も守れない」」
俺と奴の言葉が重なった。
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「あんたの遺伝子じゃなくて一夏の遺伝子だと?!」
シュンヤの言葉に千冬は頷く。
「そう私は聞いている」
「シュンヤ。お前は織斑千冬の遺伝子で生まれたと言っていなかったか?」
「俺は…そう聞いている…」
マドカの問いに床を見ながらシュンヤがそう溢す。それに対し千冬は。
「それは束から聞いたんじゃないのか?」
「ああ、そうだ」
「やはりか…」
シュンヤの答えに納得いったように千冬は頷き……
「なるほど…“奴ら”だけでなく束も私をだましていたという事かっ!」
くそっと悪態をつきながら拳に力が入っている千冬にマドカとシュンヤは互いに視線を交わした後。
「つまり俺たちがアンタに見つけられなかったのは……」
「全部、篠ノ之束がしたことという事か」
「だろうな。理由はさっぱりわからんが……お前たちが生まれ、私が知らなかったのは束が手を加えた結果なのは間違いない」
「本当にアイツは何もんなんだよ…?」
「分からん。私とアイツの付き合いは長いが……そういえば、アイツとの出会いは何時だった?」
「覚えていないのか?」
「……思い出せん」
千冬の答えにマドカは軽く息を吐き、千冬と改めて向き合う。
「私は、ずっと貴女と一夏を憎んできた。自分が生まれてから篠ノ之束に拾われ、教育を受けた後、ずっと亡国機業の飼い犬にされてきたからな。訓練と称して様々な調教も受けた。中には女としての尊厳も踏みにじられるような目にもあった…その度に貴女と一夏のことを聞かされ、憎み嫉み生きてきた……」
「それは……」
「それまでの想いを簡単に捨てることなど出来ない。だが、前までのようにただ貴女を敵だと憎むのも違う気がしている」
「マドカ。お前は……」
「シュンヤも同じだろう。こいつは同じ境遇の…それも兄弟と呼んでもおかしくない存在が失敗作として破棄されているのを知っている。だからこそ秋が貴女に助け出されたことに怒りを持っていたのだからな」
「……まるで俺が女々しいみたいじゃねぇかよ……」
「違わないだろう……だがその上で私なりに色々考えて、決めた」
「なんだ?」
千冬にニヤリと笑みを浮かべたマドカは手を差し出す。
「私は…Mではない。“織斑円”だ。もう亡国機業の駒でも、兵器でもない。一人の人間として生きる。その為に弟を…秋を助け出す。貴女は……姉さんはどうする?」
「あ~……仕方がねェな!!俺だってアイツに対する拘りは簡単には消せねぇけどよ…アイツを倒しても何も変わらないってことは分かった。今回の件について罰は受ける。その為にもまずは……兄貴を助ける。悔しいけど、篠ノ之束の言うとおりだ。俺は“織斑春夜”として生きていく」
頭をガシガシとかきながらシュンヤも手を差し出す。
「お前たち……」
二人の目と、差し出された手を見た千冬はその手をしっかりと握り、二人を引き寄せる。
「……すまない。謝ってもどうしようもないことは分かっている。それでも……」
「さっきも言っただろう?」
「別に謝ってもらいたいわけじゃねぇって…」
二人は千冬の背中に手を添えて。
「「改めてよろしく。姉さん(姉ちゃん)」」
そう言った。
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誰も守れない。
奴の言葉が心に突き刺さる。
その通りだ。俺は弱い。昔、秋には偉そうに言ったがアイツが力を求めていた時、俺も力を求めていた。だけど変わっていく秋の姿を見て。
“それではだめだ”
そう思った。だから俺はあいつとは違う力を求めた。そして白式や雪片を手に入れた時、誓った。
俺はこの力を守る為に使うと。でも、奴にまったく届かなかった…
力が……欲しい。そう強く願った。
力が欲しいのですか?
そんな時、声が聞こえた。それは女性の声だった。でも先ほどの少女の声ではない。
「(ああ、力が欲しい)」
それは全てを滅ぼす力ですか?
「(……違う。誰かを守るための力だ)」
それなら全てを滅ぼす力でもいいのではないのですか?
「(それは違う!それじゃあ守りたいものも滅ぼしちまう!!俺は大事な人たちを守りたい!!)」
守る…貴方は本当にその為に力を求めるというのですか?それは貴方の理想でしかないとしてもですか?
「(理想だろうと何だろうとそれを捨てちゃいけないんだ!!)」
……そうですか。貴方はまっすぐなのですね。今、貴方が相対しているのは、絶望に沈み、復讐を果たすために力を求めて堕ちた前の貴方です。
「(ああ。やっぱり…)」
分かっていたのですか?
「(なんとなくだけどな)」
どうしますか?今の貴方には私の声が聞こえています。私の力を貴方に与えることもできます。そうすれば堕ちた貴方を倒すことも出来るでしょう。
女性の言葉に俺は一瞬考える。俺は、アイツを倒したいのか?
「…違う。俺は……」
未だに上から俺を見下ろす“俺”。全身装甲に身を包んでいるが何処か泣いているように見えた。
「アイツに教えてやらなきゃいけないんだ」
何をですか?
「この世界の“織斑一夏”は今までと違うって!」
それは前の貴方を否定するという事ですか?
「違う!そんなことできる訳ない!俺はあいつらの想いを受けとめる!その想いを無駄にしない為に!そして今度こそ…守って見せる!!」
どうやら貴方は覚悟が決まっているようですね。分かりました。
女性の声が途切れるのと同時に俺の体を包み込む風を感じる。
「この世界に流れ込む因子に引き寄せられたのですが、“今回の”貴方が初めてです。私の声にしっかりと耳を傾け、聞いてくださったのは……」
背中から聞こえた声に顔だけ動かすとそこには四対の翼を持つ、ドレスをまとった神々しく美しい女性の姿があった。その女性の瞳は美しいエメラルド色をしていた。
「私の名は“サイフィス”。今この時を持って貴方と契約をしましょう」
「契約?」
「はい。私自身の力は嘗てあった戦いで弱体していますが、この白式に、私の守護を与えることは可能です」
女性-サイフィス-から力が流れ込んでくるのを感じる。それはとても暖かい。
「この世界にもまた悪しき神が顕現しようとしています。今後もつらい戦いが続くでしょう。貴方は貴方の正義を信じてください。精霊の信じる正義は多くの人々の願いなのですから……」
「ありがとう。サイフィス。まずは“俺”とケリをつける!」
「私はこの先、常に貴方と共にあります。全ての人々の想いを受け継いでいるのです。それが精霊というものなのです。その事を決して、忘れないでください」
「ああ!」
「では、共に行きましょう。一夏」
サイフィスに頷き、俺は四肢に力を込める。俺は右手に握られた西洋剣を振り抜いた。
「織斑一夏!サイバスター、行くぜ!!」
サイフィスの守護を受けて生まれ変わった白式、否、サイバスターが因果を断ち切る為に顕現した。
色々、悩んでたんですが、マドカとシュンヤはこのような形で決着と相成りました。正直に言ってしまえばいつまでもこだわっているほどこの世界は甘くないという感じなのとさまざまな人との出会いが彼女たちを変えたというところです。
次は一夏の決着ですね。
色々なご意見をお待ちしています。