IS~古の鋼鉄~   作:閃狼姫

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なんか思うように書けない…と気晴らしに孤狼の第三段階の設定を作っていたら思いのほか楽しくなってしまい遅くなりました。









あと、鈴ちゃんと鈴ちゃんファンの方ごめんなさい。


STAGE41

とある小さな島国。特に観光名所というわけでもなく目立った特産品もない小さな国。そんな小さな国を突然、紫色の霧がうっすらと現れ、島を覆い尽くした。

 

「ん?なんだ?この霧は?」

 

島民たちは不思議に思いつつも、たいしたことではないと気にせず、まだ日常を過ごしていた。だが、それはすぐに大きな異変へと変わっていく。

 

「い、痛い!痛い!!」

「お母さん!顔が痛いよ!」

 

最初は子供たちにその異変は起きた。顔を抑えて痛がる子供はその激痛に耐えきれなくなり倒れ、のたうちまわっていた。そんな様子を見て大人たちが慌てていると子供はぴたりと動くのを止め、起き上がる。そして顔を抑えていた手を下すと

 

「ひぃ!」

 

その子供の顔を見た女性は尻餅をつく。その子供の顔は右目が飛び出しておりそれが赤く輝く球へと変わっていくとそこから管の様な物が浮き上がり全身へ張っていく。さらに皮膚が白く染まっていくと髪も白くなり全て抜けていく。そして肌を突き破って骨格が飛び出し別の何かへと変わっていく。顔も大きな一つ目へと変貌。異形へと成り果てた。そんな子供の変貌に周りの大人たちが逃げ出すが、そこかしこから似たような姿をした怪物が現れ、島民たちをまるで逃がさないように追い立てる。その間も同じように顔を抑え、苦しみだす人々が増えていき、わずか半日余りでその島に住む全住民はアインストへと成り果てた。

 

『集まれ』

 

その声に従うようにアインスト達は島の中央へ集まっていく。そこに居たのはエントリヒ・レジセイア。その姿は千冬達との戦闘の後と変わりはなかった。だが、エントリヒ・レジセイアが腕を伸ばすと元島民のアインスト達はエントリヒ・レジセイアへと近づいていき……

 

「古き者共よ。新たな宇宙の為、新たなる生命体の誕生の為に我が糧となれ」

 

次々とその体が、エントリヒ・レジセイアに吸収され体へと再構築されていく。そして島中の全てのアインストをその身に吸収し終えると再生された体を確かめる様に動かす。だが、その体の一部は再び崩壊していく。

 

「これだけ取り込んだというのに…」

 

嘆く様に呟いたエントリヒ・レジセイアの周囲から生まれた霧は徐々に濃くなっていく。そして静かに霧の中へと姿を消していった。エントリヒ・レジセイアが再び姿を現したのはアインストたちが存在する空間。その空間の中で一際目立つ大きな白い繭が二つ存在していた。

 

「う…うぅ……」

「あ、う…」

 

それぞれの繭の表面には二人の少女‐アリスとシャルロット-が手足を埋め込まれるように捕らわれており、その表情は苦悶に満ちていた。

 

「…まだ、抗うか。だが、それも時間の問題。因子は既に根付いている。問題なのは……」

 

いまだ完全に回復しない自身の肉体。

 

「我が望みの為、古き者達を滅ぼす為に……」

 

繭に背を向け、エントリヒ・レジセイアが視線を向けた先には、この世界で生みだした新たなアインストの軍団が出来上がっていた。それはこの世界に流れ着いてから因子を介して集めていた情報に、あの者から与えられたものが加わり、さらに彼が喰らう事で理解したものから生まれた。

 

動物の骨のようなもので構成されたアインスト。個体名アインストクノッヘンと呼ばれるものはその外見を大きく変化させている。背中から蝙蝠の翼のようなものを生やしているだけでなく、全体的に金属製の装甲が付与されている。それはISに詳しいものが見れば“テンペスタ”の物と酷似していることに気が付くだろう。後に人類側からアインストテンペスタと呼ばれることになるそれを筆頭に、植物の姿をしたアインストグリードはラファール・リヴァイブが融合した姿に、騎士甲冑のような外見を持ったアインストゲミュートは打鉄の重厚さと特性が現れている。さらに彼らを統括するアインストレジセイアは銀の福音が特徴として現れ、進化を果たしている。本来ならこの短時間でここまでの成長を行うことは不可能だが、織斑秋という己の半身を取り込んだこと、織斑秋の成長度合いが高かったことにより実現してしまった。

 

「否、これだけでは足りぬ……」

 

目の前に生み出されていく群れを見てもエントリヒ・レジセイアは満足しない。そして新たに作り出したのはこの地でも立ちふさがった存在たち……

 

織斑秋が操る孤狼・極式のデータから生み出したアインストナハト。

 

シャルロット・デュノアが操るヴァイスリッターから生み出したアインストアーベント。

 

アリス・ブロウニングとその愛機たるゲシュペンスト・ファントムから生み出されたアインストファントム。

 

アクセルとシュンヤの二人から得た情報で生み出したアインストアークゲイン。

 

そしてアルフィミィとの邂逅によって模倣されたオリジナルとは違い灰色をしたペルゼインリヒカイト。

 

五体の完成を前にエントリヒ・レジセイアは先に生み出されたアインストたちを世界へ解き放つ。

 

「全ては…新たな静寂なる宇宙の為に…」

 

新たなアインスト達は今の人類にとって脅威に間違いない。自身が作り出す新たな生命。その一歩がいま踏み出された。そう思いつつも何かが引っ掛かっているように感じ、エントリヒ・レジセイアは再び繭の方へと視線を戻す。そこから生れ出るものも、生まれ変わりつつある彼女たちも、新たな生命の一つ。それをじっと見ていたエントリヒ・レジセイアの目から突然、光が消える。

 

「あんま…人間、舐めてん、じゃ……ねぇぞ?」

 

光を失ったはずのエントリヒ・レジセイアが右腕を持ち上げ、少女たちへ向ける。するとわずかにだが少女たちの表情がやわらいだ。しかし、すぐに少女たちは苦悶の表情を浮かべ苦しみ始める。

 

「くそ………でも“仕掛け”はすん……だ……」

 

エントリヒ・レジセイアからそう呟かれ、腕が力なく下がると再び目に光が戻る。

 

「…?」

 

あたりを見回すように首を動かしたが、彼はその身に起きた異常に気が付くことはなく、また指摘する存在もいなかった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ふふふふ…アインストたちも本格的に行動を始めたようね」

『おかげさまで我が社の売り上げも上々ですわ』

「そう。それは良かったわね。ところで“例の機体”は何時になったらこちらに寄こしてくれるのかしら?」

『情報提供には感謝していますわ。ですから先払いとしてリオンシリーズを優先してそちらにお譲りしたんですのよ?』

「ええ。それでも商売人なら納期ぐらい守るものでしょう?」

『……分かっていますわよ。貴女とはこれからも仲良くしたいですもの。先日、組み上がった代物を送りますわ』

「それは助かるわね。こちらもヴィンデルを失ったのは痛いのよ。彼の部隊はオータムに任せるとして……そうね。生産を急いでくれるのなら彼が残したシャドウミラーのデータを上げるわ」

『それは是非とも頂きたいですわね。いいですわ。こちらで催促しておきます。では今日はこの辺で失礼いたしますわ』

「そうね。…お互いにこれからもいい関係が続くといいわね?」

『ええ。もちろんですわ』

 

モニターを消したスコールは腰かけていた椅子から立ち上がると部屋に備え付けられている棚からグラスを二つ取り、それぞれに氷を入れ、琥珀色の酒を注いでいく。それを持って街並みを一望できる窓際のテーブルに置き、椅子に腰を掛ける。

 

「貴方が死んだせいでこちらは色々大変なのよ?」

 

諜報部の方から寄こされたヴィンデルの死亡について、死体は回収できたが彼の頭部とISは無くなっていることなどが書かれている報告書をスコールは目を通した後、処分していた。その時の想いはスコール自身にもよく分かっていない。ただ、つまらないとは思った。

 

「あの子は酔えればいいって性質だから上等のお酒を手に入れてもつまらないし……」

 

何処か悲しそうに目の前に置かれているグラスに自身の持つグラスへそっとぶつけ、グラス特有の澄んだ音が響く。

 

「お疲れ様。ヴィンデル。ゆっくり眠りなさい。後は私が引き受けるわ」

 

静かにグラスを傾けるスコールだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「ったく。何で私がこんなことを……」

 

頭をかきながら新設された実働部隊の隊長に就任したオータムが作業をしていた。

 

「姉御~帰ってもいいかい?」

 

ボーイッシュな外見をしたツリ目気味の少女が机に突っ伏しながらそう尋ねる。

 

「帰ってもいいと思ってんのかよ?シエンヌ」

 

ギロリとオータムに睨まれたシエンヌは肩を竦め。

 

「分かってるって。姉御には感謝してるのさ。これでもね」

「だったら仕事しろ」

「はーいよ」

 

再び書類仕事に戻るシエンヌを見ながら自分も残っている仕事を片付けようとした時だった。

 

「姉さん!整備部の方から新型機の受領書類を持ってきたぜ!サインくれや!」

「シアン。そんなこと言うと…まあいいか」

 

バンダナを巻いた鍛えられた外見の男性と目元をバイザーで隠した少年が入ってくる。

 

「ほぅ~?ただでさえ、書類の山に囲まれてる私に追加書類とかいい根性してんじゃねェか?シアン!」

「うぉ?!姉さん…機嫌悪いのか?」

「今のはアンタが悪い」

「僕もそう思う」

「え?俺が悪いのかよ??」

 

シエンヌ、シオに呆れた顔で言われたシアンはオータムを見るとオータムは拳を鳴らしながら立っていた。

 

「あ、姉さん?」

「覚悟は出来てるな?」

 

その後、光の無くなった目で黙々とケルベリオン三機とヴァルシオンを磨き続けるシアンが整備部で目撃された。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

コーヒーサーバーから三つのコップにコーヒーを注いだ因幡束はトレーに乗せ、トレーニングルームに向かって歩いていた。しかし、途中で足を止め、振り返るとそこにワームホールが開き、ウサギ耳にエプロンドレスを纏った篠ノ之束が現れる。その手に白い箱を持って。

 

「やっほー!いなばん!」

「何の用だ?篠ノ之」

 

ダルそうに問いかける因幡に束はカラカラと笑いながら。

 

「何って鈴ちゃんとクーちゃんの様子を見に来たんだよ!」

「そうか…それとその手に持っているのはなんだ?」

「コレ?おみやげ!」

「……まあいい。ついてこい」

「モチのロン!」

 

因幡に促され束がついていくとそれほど歩かずにトレーニングルームにたどり着く。そして因幡が扉近くのコンソールを弄りドアが開くと。

 

「だから!何べんいえばわかんのよ!!メイドモドキ!!」

「何回言われても分かりませんよ!!このペチャパイ!!」

「っんだとー!!誰がペチャパイだ!!」

「誰がメイドモドキだってんですか!!」

 

二人の少女が拳で語り合っていた。それはもう壮絶に。

 

片方は黒髪のツインテールを揺らしながら銀髪の少女に向かって拳を繰り出す。銀髪の少女はその拳を右手で払いのけながら左拳を放つ。その放たれた拳を黒髪の少女‐鈴-は左手で掴むと銀髪の少女-クロエ-を引きずり倒そうとするが、クロエはそうはさせまいと鈴の体に体当たりをしていた。

 

「何コレ?」

 

唖然と呟く束。

 

「いつもの事だ」

「いつもなの!?」

 

因幡の答えに驚き、視線を戻すと鈴に跨り殴ろうとするクロエ。

 

「貴方の説明は擬音ばっかで分からないんですよ!」

「アンタの方こそ、細かすぎてわかんないのよ!!」

 

拳を受け止めた鈴がそのままクロエを巴投げのように投げ飛ばし、投げ飛ばされたクロエは空中で身をひねり華麗に着地する。そして二人は同時に飛び出すとガシッと組合い、再びキャットファイトへと入っていく。

 

「…クーちゃんには元気に育ってほしいとは思ったけどこれは予想外だなー」

「おい。お前たち。休憩にするぞ」

 

乾いた笑いを浮かべる束を他所に因幡が声をかけると揃って舌打ちした鈴とクロエが互いに距離を取る。

 

「アンタとは必ず決着をつける」

「いつでもどうぞ。私が勝ちますけどね」

「んだと?」

 

そんな二人を他所に何処からか用意したテーブルと椅子に腰を掛けた因幡と束。

 

「ところで何を買ってきたんだ?」

「ん?買ってきたわけじゃないよ?レーツェルさんが作ってくれたアップルパイ!!」

 

凄いおいしいんだよ!!と白い箱を開けるとそこには本職も真っ青な出来のアップルパイが入っていた。

 

「ほう…これは…」

 

普段、栄養さえ取れれば食事などなんでもいいと断言する因幡ですら嬉しそうにほほ笑む。そんな因幡の様子に嬉しそうに笑う束だったが……

 

「へ~本当においしそう!どんな食材も暗黒物質にしちゃうメイドモドキも見習ったら?」

 

鈴がクシシッと笑う。対してクロエは小さく口元が引きつると。

 

「そういえばアップルパイにはアップルが入ってますけど、ペチャパイには何が入ってるんですか?」

 

鈴の一部を見つつ、普段は閉じている黒い眼球に金色の瞳を覗かせてニタリと邪神のように嗤うクロエに対して無表情になる鈴。それを見て脂汗を浮かべ始める束。そんな中、静かにコーヒーをすすっていた因幡が。

 

「ふむ。ならシリコンでも詰めてやろうか?」

 

自身の持つ豊満な胸部装甲を見せつける様に揺らしながら言う。そんな因幡を束がおい、バカ!やめろ!と言わんばかりに凝視するとわずかな沈黙の後。

 

「■■■■■■■■■■■ーーー!!!!!!!!」

 

人間の声帯から発せられたとは思えない咆哮を上げつつ想い人には到底見せられない、見せちゃいけない顔になった鈴がクロエと因幡に襲い掛る。その動きは無駄にスペックが高くなった身体機能をフルに生かしたものでここにいては不味いと判断した束はアップルパイと共にワームホールへと飛び込みプラントから脱出した。

 

「鈴ちゃんを胸の話題でからかうのは絶対止そう」

 

テスラ研へと戻ってきた束は真顔でそう心に決めるとスーツ姿のハウがやってきた。

 

「おい。束どこに行っていた?探したぞ?」

「ごめんごめん。鈴ちゃんの様子を見に言ってたんだよ」

「そうか。元気だったか?」

「…うん。元気だったよ。もう大丈夫なんじゃない?」

「…なんで明後日の方向を向いている?」

「なんでもないよ」

「まあいい。お前の事だ。どうせ鈴をからかって怒らせたんだろう。それよりもあれから三日しか立ってないのによく治療できたな?」

「ふふん。この束さんに不可能はないんだよ!」

「そうか…」

 

ドヤ顔でいう束に何処か疑いの眼差しを向けていたハウだったが、鈴が死ぬよりはいいだろうと結論付ける。

 

「ところで、いっくんの方は?」

「ああ、一夏も目を覚ました。少々、予想外のことも起きているが今はいいだろう。それより今後の事をミーティングルームで話すことになった。お前にも来てもらうぞ」

「OK、OK。さて、世界の行く末を決める話し合いをしに行きますか」

 

まるで夕飯の献立を決めるかのような軽いノリで歩いていく束をハウは静かに見つめ。

 

「……本当にお前を信じていいんだな?」

 

小さくつぶやいた。

 




やりたかったネタだった。今は反省はしている。後悔はしていない(ZO製の盾に隠れながら

鈴とクロエはどうしてこうなった?当初はコンビらしかったのに…こんな調子で間に合うのか?…たぶん大丈夫……

あとオータム姉さんは間違いなく苦労人。口は悪いけど面倒見はいいと思っている。ここではそんなオータムさんで行こうと思っています。

では感想、ご意見お待ちしています。
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