IS~古の鋼鉄~   作:閃狼姫

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書き溜めていた分を手直しできたものを上げていきます。


STAGE05

一夏、オルコットとの試合が終わり、翌日のSHR。

 

「という訳でクラス代表は織斑秋くんに決定です~!」

「・・・・・・はい?」

 

昨日の戦闘の疲れが残っている状態で出てきたはいいが・・・・・・山田先生は何を言っているんだ?

 

「良かったな!秋!クラス代表おめでとう!!」

「「「「おめでとう!!!秋くん!!!」」」」

 

なんでみんな俺を見て拍手するんだ?そして一夏、いつの間に馴染んだ?出来れば俺も混ぜてくれ。

 

「なんでってクラス代表になったからだろ?」

 

どうして俺がクラス代表?訳が分からず首をかしげていると一夏が呆れたように言う。

 

「いや・・・・・・セシリアに勝ったからだろ?」

 

そこまで言われてようやく寝ぼけていた俺の頭が回転を始める。そういえばオルコットとの決闘騒ぎはそもそもクラス代表を決める為のものだったっけ。

 

「あ、そうか・・・・・・じゃあ、辞退させてください!クラス代表はオルコットに譲ります!!」

 

バシンッ!

 

席を立ち上がり、山田先生にそう言った瞬間、頭に走る衝撃。恐る恐る振り返ると。

 

「馬鹿者。何の為の試合だったんだ」

 

振りぬいた出席簿で肩を叩く姉貴が立っていた。さすがにそのままという訳には行かないので・・・・・・

 

「え~っと・・・・・・オルコットと決闘するため?」

 

ガツン!

 

再び頭に振り下ろさせる出席簿。ただし今度は縦で振りぬかれた。姉貴、流石に何度も叩かれると俺の頭が壊れるんだけど?

 

「大馬鹿者。このくらいで壊れるか。いいから文句を言わずにお前がやれ。クラス代表者は織斑秋だ」

「・・・・・・了解です」

 

断ればあの出席簿がまた頭に襲い掛かってくるのは明白なので頷いておく。どうやらかなりめんどくさいことになりそうだ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「織斑さん。そんなにクラス代表が嫌なんですの?」

 

午前の授業が終わるとオルコットがやってきた。SHRの後にいきなり謝罪されたのには驚いたが試合で白黒つけたから特に気にはしていない。そう言ったら何処かほっとしていた様子だったんだがなんかまだ表情固いな?

 

「オルコット?まぁ別に嫌って訳じゃないけど面倒そうじゃん?」

「め、面倒って……あ、あの、それよりセシリアと名前で呼んでいただけませんか?他の方もそう呼んでくださいますし……」

「いいけど・・・・・・なんかあったのか?」

「え?どうしてそう思うんですの?」

 

驚くオルコットの言葉に少し悩みつつ思ったことを言うことにした。

 

「ん~。なんというか試合前は張り詰めていた感があったけど今は大分柔らかくなったって感じだな」

「そうですか・・・そうですわね。貴方と試合をした後、今まで気付けなかったことに気付けて世界が広がった。そんな気がします」

「そうか。まあ俺もあんたと戦えてよかったよ。セシリア。ああ、俺も名前でいいぜ?一夏とかぶるしな」

「はい!秋さん」

 

そう言って笑うセシリア。話は終わりのようなので俺は席を立つ。そろそろいかないと学食の席がなくなるし。

 

「さて飯でも食いに行くけど一緒に行く?奢るよ?」

「え?!いいんですか?」

「ん。そっちも学食だろ?先約があるならいいけど」

「いえ、ではお言葉に甘えて」

「あいよ」

 

この後、セシリアに学食で俺の食事量にドン引きされたがもう慣れた。何故かセシリアだけでなくいつの間にか俺の後ろに居たアリスにも奢る羽目になった。世話になっているからいいけどさ。笑顔が怖かったです。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「じゃあ今日から改めてよろしくね」

「おう!頼む」

 

放課後になり、教室前で待ち構えていたアリスに引っ張られてアリーナに来ていた。ピットでも聞いた話だったが俺のIS“孤狼”はゲシュペンストを元に製作されたISで同じゲシュペンストタイプのISを使うアリスが訓練をしてくれるという事だった。

 

「まあ、一応はMk-Ⅲのデータ取りも兼ねてるからね」

「それはいいけど。なあ、やけにMk-Ⅲの名前に拘るんだな?」

「そうかな?」

 

アリスは首を傾げるが俺にはその名前にこだわりを持っているように感じる。

 

「言えない事ならいいけど」

「う~ん・・・・・・まあ君ならいいかな?」

 

何故か一人頷きながらアリスは真面目な顔をすると俺に向き直り口を開いた。

 

「ねぇ。ゲシュペンストのことは知ってる?あ、Mk-Ⅱじゃないほうね?」

 

アリスの言葉に俺は頷く。ゲシュペンストはマオ・インダストリー社が製作した最初のISでオリジナルゲシュペンストと呼ばれる機体は三機製造。それぞれの機体は目的別にデータ取りとして使用され、その後、後継機開発の為に解体されたらしい。

 

「うん。そして・・・・・・十年前のあの事件で使われたIS、その片方がゲシュペンストなの。正確にはプロトタイプだけどね」

「本当か?!っていうことは・・・・・・」

「はい。そこまで。そこに気が付けばいいから」

 

口に人差し指を当てるアリス。いや、というかそんなことを俺に教えていいのか?

 

「君だってもう関係者なんだよ?だってMk-Ⅲはオリジナルゲシュペンストの三号機が使われてるんだもん」

「マジか!?それにしてもオリジナルと量産型って何が違うんだ?」

「う~ん、そうだね。それぞれのゲシュペンストは“その先”を見据えてのテスト機だからね。形は一緒でも中身は全くの別物なんだよ。量産型はそういうテストを経て得たデータを元にバランス型に仕上げているって所かな?」

「じゃあMk-Ⅲっていうのは?」

「Mk-Ⅲはね。本来なら量産型ゲシュペンストMk-Ⅱに代わる次期主力候補のトライアルテストに出されるはずだったの。でも君への提供が決まったから根本から見直しされて、トライアルに出すのは別の機種になっちゃったの。だから幻の機体になったってわけ」

 

そう言うわけか。納得はしたがどう考えても孤狼にゲシュペンストの面影ないよね?

 

「そうでもないよ?足なんか面影残ってるし・・・・・・多分」

「いや、俺よりアリスのファントムはまんまゲシュペンストだよな?・・・・・・待てよ?確かオリジナルゲシュペンストは三機あって、三号機は俺のISに使われたんだよな?で一号機は黒騎士・・・・・・なら二号機は」

「察しの通り、私のファントムがその二号機」

 

そういうとアリスが粒子に包まれ、漆黒の戦乙女が姿を現す。

 

「さて話は終わり!Mk-Ⅲを展開して」

「了解」

 

アリスに返し、右腕に赤いリストバンドに意識を向ける。

 

来い・・・・・・孤狼!

 

瞬間、粒子に包まれ全身装甲に包まれた孤狼を纏った俺がいた。

 

《お早うございます。マスター》

「ああ。アルト。今日も頼むぞ」

《はい。お任せください》

 

アルトの答えに頷きながら展開を終え、軽く動かす。

 

「うん!アルトとも仲良くやってるみたいだね。じゃあハーケン。私たちもやろうか?」

《OK!アリス。俺たちの強さをビギナーボーイに教えてやろうぜ》

 

待て。今、男性の声が聞こえた気がするんだけど・・・・・・まさか!

 

「ファントムにも積まれているのか?」

「え?ああ!うん。オリジナルゲシュペンストには三機ともAIが付いてるよ?私のはハーケンっていうの」

《宜しく頼むぜ。ビギナーボーイ!》

 

なんかやたらとテンションが高いAIだな?ってなんだよ?ビギナーボーイって?あ、初心者男子ってことか・・・

 

「アハハハ・・・・・・社長が成長するAIだっていうから色々教えてたらこんなキャラになっちゃって・・・・・・」

 

一体、何を教えたらあんな性格になるんだろう?

 

《楽しそうですね。マスター》

「・・・・・・そうだな」

 

俺は絶対にアルトを変な性格にしないようにしようと心に誓い、アリスとの訓練を始めた。

 

~ステップ1:まずは孤狼を動かしてみよう~

 

「という訳でまずは走ってみようか」

 

アリスに言われ、さっそく走ってみる。どうやら今回は実戦ではなく基礎からやるようだ。

 

「なんか遅くないか?」

 

少なくとも此間使用したMk-Ⅱよりも遅い気がするんだけど?

 

「うん。遅いよ。Mk-Ⅲはその重量過多の武装のせいで普通に動く程度じゃ遅いの」

「まさか、あの圧倒的な加速はその武装を無視して動かす為?」

「正解!じゃあ次は加速ありで動かしてみよう」

 

頷き。加速。今度は先ほどとは違い地面を滑るように走る・・・・・・というか実際に滑ってるのか?

 

《はい。そもそもIS自体が原則浮けますから。いくら重量過多の孤狼でもその点は問題ありません。ですがやはり低くなってはしまいますが……》

 

アルトの言葉に頷きながらさらに速度を上げてみる。それを見つめていたアリスがウンウンと頷いているのを視界に納めて、といっても正確にはハイパーセンサーが捉えている映像なんだけどな。その映像で見えたアリスの口元には笑みが浮かぶのを見て嫌な予感を覚える。

 

「う~ん。どうやらここまでは問題ないかな?」

《次は?》

「ハーケン。戦闘モードに移行しておいて」

《いいが、状態は?》

「もちろん。ガチ戦闘!こっちも全身装甲で行くよ」

《OK!ショウタイムと行こうか!》

 

するとアリスのISに変化が訪れた。胸部装甲が新たに形成され、頭部ユニットもイヤーブレードアンテナだったのが頭部を覆うように装甲が現れ、バイザーが追加される。その変化が終わるより前から脳内に危険を伝えるアラームが鳴り響く。

 

「さて・・・・・・いくよ!」

 

左腕からグランプラズマカッターを引き抜き、アリスは俺へと襲い掛かってきた。

 

~ステップ2:戦ってみよう!~

 

「いきなりか!早いな!」

《マスター!ボケている場合じゃありません!》

 

もう少し動作訓練をするのかと思いきやいきなり襲い掛かってきたアリス。そしてアルト、何気に酷い。

 

「アルト!武装アクティブ!全システムを戦闘モードに移行!」

《イエス。マスター》

 

俺の指示にアルトが答えてくれる。と同時に振り下ろされるグランプラズマカッターをリボルビングステークで受け止める。バチバチと火花を散らしながら受け止めているのだがその刃はだんだんとこちらに迫ってくる。パワーで負けてるってのか?!

 

「やっぱり反応速度が高いよね!」

 

呟くアリス。するとグランプラズマカッターの刃が消え、押し返そうとしていたステークは刃が消えたせいで思いっきり宙を切ってしまう。そしてアリスは目の前で縦に回転するや否やスラスターで勢いを増した踵落としをしてくる。それを回避しようとするが間に合わず頭部へダメージを受ける。

 

「っ!やられっぱなしでたまるか!」

 

応戦としてマシンキャノンを放つがアリスは上に向かって後退するように瞬時加速しかわす。そして俺に向かって右手を出すと粒子が右手に集まり、形を作り上げる。その手には見たことがない大型の火器が握られていた。左手でサブグリップを握り保持すると銃口に光が集まる。

 

《検索・試作型可変携帯火器『F2Wキャノン』です。マスター。あの武器はビームと実弾を選択して撃てます。気をつけてください》

 

気をつけろってどう気を付けろと?!

 

「ほら!ほら!よそ見している場合じゃないよ!!」

 

アルトに言い返すまもなく上空からビームが撃たれる。もちろん当たる訳にも行かず、マシンキャノンで応戦しながら地上をジグザグに移動し続ける。

 

「ハーケン!アレ使うから用意して!」

《OK!こいつをかわせるかな?》

 

バシュンッ!と何かがはじけ飛ぶような音が聞こえ、アリスが背後のウェポンラックに入っていた二本の棒を両手で掴むと上半身を逸らし。

 

「グランスラッシュリッパー!!」

 

それを投擲した。それは身の丈ほどもありそうな刃を三枚に分けた所謂巨大手裏剣。それが二つ飛んで来る。

 

「くっ!ブースト!!」

《了解です》

 

背後のスラスターを全開。背後に凄まじい勢いの炎を出しながら回避するべく前へ飛ぶ。

 

「甘いよ!そのグランスラッシュリッパーはハーケンの操作で操れるんだから!」

「なんだと?!」

 

俺の驚愕と共にハイパーセンサーが後方の様子を映し出す。すると確かに方向を変えてこちらに向かってきていた。よく確認すると刃の一枚一枚に小型スラスターが付いているのかスピードが落ちる様子すら見せない。

 

「なら撃ち落とすまでだ!クレイモア!!」

 

反転し両肩のハッチを開き、内蔵されているクレイモアを打ち出す。大量に吐き出されたベアリング弾がグランスラッシュリッパーに次々と当たり破壊に成功する。

 

だが。

 

「F2Wキャノン・ロングレンジBモード」

《ファイア!》

 

下方に折りたたまれていたバレルが起き上がり、射程距離をあげたF2Wキャノンを構えたアリスが視界に入るが、そちらへの反応がわずかに遅れる。もちろん、それをアリスが見逃すはずもなく。F2Wキャノンから一筋の閃光が放たれ、直撃。ビームではなく実弾かよ!?

 

《被弾、ダメージ350。シールドエネルギー残量250。装甲ダメージ小です。行動に支障はありませんが装甲のビームコートを破られました。この戦闘で今後ビーム兵器を受けるとダメージが増えます。気をつけてください》

 

アルトの報告を聞きながら何とか姿勢制御を回復する。しかし衝撃をもろに受けたためか、頭がフラフラする。

 

《警告!敵ISからロックされています!銃口にエネルギー充電を確認。回避してください》

「ちっ!」

 

スラスターを吹かしながら回避に専念する。しかし開発元なだけあってこちらの弱点をよく理解している。近づけさせないように遠距離からの攻撃。瞬時加速ならば逆転できるかもしれないがあのアリスがそれをさせてくれるとは限らない。

 

《マスター。現状を打破する案が一件あります》

「教えてくれ」

《はい。瞬時加速です》

「それは俺も考えたが間違いなく迎撃されるぞ?」

《確かに。ですが孤狼には強固な装甲があります》

「つまり耐えられると?」

《はい。今のシールドエネルギーなら絶対防御が発動しても耐え切れます》

「一か八かだな・・・・・・だが分の悪い賭けは嫌いじゃない。この勝負に賭けるぜ!」

 

そうと決まれば話は早い。両肩のスラスターを上げ、瞬時加速の準備に入る。そしてリボルビングステークを引いて構え。

 

「いくぜぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

イグニッションブースト。赤き閃光となってアリスの元に向かう。

 

獲った!

 

そう確信するがF2Wキャノンを捨てていたアリスの手に粒子が集まり、それを視界に納めた瞬間、自身の失策に気がつくが遅かった。

 

「ざ~んねんでした♪」

 

そう聞こえた瞬間、三度の衝撃に襲われ負けた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ダメダメだね」

「申し訳ございません」

 

結局、今回の訓練も俺の負けだった。瞬時加速で接近したまでは良かったのだがステークが相手を捕らえる前にアリスが手元に呼び出した物。Gインパクトステークを受けて俺のシールドエネルギーはゼロになった。F2Wキャノンなら耐え切れるはずとの予想を大きく上回るダメージになったのだとアルトが教えてくれた。

 

「秋君は孤狼のコンセプトを理解してる?」

「?」

「孤狼の強みは近中距離なの。そのための武装が装備されている訳なんだけど、君は直ぐに敵と距離をあけちゃう。だから決定打が撃てなくなっちゃうしジリ貧の戦闘になるの。さらに言えば瞬時加速に頼りすぎ。君の場合、ここぞって時は一直線に仕掛けてくるから丸分かりだよ?それじゃあ回避されちゃうしカウンターも合わせやすい。それに瞬時加速はエネルギーの消耗も激しい。連発すればするほどエネルギーも減りが早くなるんだから。いくら防御力が高くて絶対防御が発動しにくいISっていっても負けちゃうよ?」

 

アリスの説明に俺は返せるはずもなくただ黙って聞いている。

 

「今度はしっかり孤狼の特製を生かした動きをするといいよ。じゃあ今日はここまで」

「ありがとうございました」

 

アリスに礼をいい、ピットから出るとアリーナの更衣室に入り着替えもせずベンチに腰をかける。

 

「ちきしょう。やっぱり孤狼の性能に頼りきりなのか?」

 

やっぱり自分はまだまだなんだと痛感する。アリスの言うとおり俺は距離を開けようとする。理由は簡単。相手の出方を見ようとして一旦距離をあけてしまう。生身で戦う場合はダッシュから敵の懐に潜って殴るで済むんだけど。IS戦はそう簡単にいかない。孤狼の加速を生かした突撃。これを上手くできるようにならないと俺はきっと勝つことができない。

 

「もっと勉強しないとな・・・・・・」

 

のそのそとシャワールームに入り、シャワーで汗を流してから着替え終えると鞄を持って更衣室から出た。

 

外に出ると既に夜になっていた。四月というのにまだ夜は寒い。シャワーで温まった体がゆっくりと冷やされていくのを感じながら寮の自分の部屋に向かって歩いていると。

 

「誰かと思ったら、秋か」

「姉・・・・・・織斑先生」

 

黒いスーツを着た姉貴が歩いてきた。姉貴はフッと笑みを浮かべると少し話をするかと言ってきた。

 

「どうだ?調子は?」

「なかなか上手くいかないさ。今日もアリスに言われた。瞬時加速に頼りすぎ。距離をあけるなって」

「そうか・・・」

「やっぱり俺は孤狼の性能に頼りすぎなんかね?」

 

ため息をつく俺に姉貴はコツンと軽く頭を叩く。

 

「ISを起動して一ヶ月も立っていないのに実力者の戦闘をされたら私の立つ瀬がなくなるぞ?」

 

優しく笑う姉貴。珍しいと思っている俺に気付かず姉貴は言葉を続ける。

 

「確かにお前の孤狼の加速力と攻撃力は凄まじい。が、それだけだ。初見なら虚をつけて撃破できるかもしれんが慣れれば簡単に対処できる」

「・・・・・・・・・・・・」

「あの加速力を保ちつつ、自在に動け。そしてステークの一撃を叩き込め」

「いや、それが出来れば苦労しないんだけど?」

「各スラスターで瞬時加速を行うことで連続で使用するという連続瞬時加速という技術がある。お前が一度だけオルコットとの戦いで見せた奴の完成形だな。通常加速でさえ驚異的な孤狼でこれをマスターしたらどうなるんだろうな?」

 

それだけいうと姉貴は早く帰るようにと行って去っていった。

 

俺の中で新たな目標が出来た。連続瞬時加速。相手に見切られない、来ると分かっていても反応できない速度から繰り出す強烈な一撃。必ず見に付けて見せる。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。そうだな…織斑兄弟、オルコット。試しに飛んで見せろ」

 

あれから数日、俺は姉貴の授業を真面目に聞いていた。受けてみて分かったことだが姉貴は教えるのが上手い。それに元代表なだけあってISに詳しくマニュアルを読み続けるよりは天と地のほどの差がある。

 

「はい」

 

目を瞑り、孤狼の姿をイメージすると右腕の赤いリストバンドから全身に燃えるような感覚が広がり赤く輝く粒子が俺の体に集まりIS本体として形成される。

 

《マスター。孤狼の全システム起動、確認しました》

「サンキュー、アルト」

 

アルトの報告通り、各種センサーが意識に接続され、世界の解像度が上がる。そして、目の前では同じように展開を終えた一夏の“白式”とセシリアの“ブルー・ティアーズ”が浮かんでいた。どうやら俺との対戦で大破していたブルー・ティアーズは完全に修復を終えたらしい。相変わらず騎士のような洗練されたフォルムを見せていた。

 

ちなみにどうでもいいことだが、俺の孤狼は基本浮かんではいない。地面に両足をついている。まあ俺にはこっちのほうがやりやすいけど。まあ、アリスのファントムも浮かんでないし、借りたMk-Ⅱもそうだったから気にしなくてもいいか。

 

「よし、飛べ」

 

言われて真っ先に動いたのはセシリアだったスムーズに急上昇し、上空で静止している。

 

「やっぱり上手いな。よし、いくか!!」

 

それに続くように俺も真上へと飛び上がる。さらに一夏も飛び上がるが慣れないのか俺たちの中では一番遅かった。

 

「何をやっている織斑兄。姿勢制御、各スラスターの調整がうまくできていないぞ」

 

通信回線でおしかりの言葉を受けている一夏がげんなりしたような顔をする。

 

「と言われてもなぁ。急上昇、急下降のイメージなんて感覚が分からないぞ?秋はどうやってるんだ?」

「俺は真上に向かってジャンプするイメージで。後はスラスターを吹かせばいいだけだし、急下降は下に向かって、という感じだな」

 

俺の説明に一夏やセシリアは唖然とする。

 

「そんなイメージで上手くいきますのね」

「と言ってもなぁ。孤狼の加速力だと常に急上昇や急下降、高速移動だからな」

「「確かに」」

 

一度、戦った二人には孤狼の馬鹿みたいな突撃を見ているし味わっているので苦笑しながら納得していた。

 

「そういえば秋さんはいつもどこで訓練してらっしゃるのですか?」

「え?ああ・・・・・・三組のアリスと一緒に第五アリーナだな」

 

セシリアの問いに返すとセシリアの目が驚愕に開かれる。なんだ?俺何か言ったか?

 

「第五アリーナは企業が借りている場所ですわね・・・・・・」

「ああ。俺のISの開発もとだな」

「へー。どんな企業だ?」

「マオ・インダストリー社だ」

「マオ・インダストリー社!?あの世界的大企業の!?そう言われればあそこの企業は全身装甲型をメインに展開していましたわね」

 

一夏の問いに答えると驚きの声を上げたセシリアが納得した時、次の指示が出た。

 

「三人とも。急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ。あと秋。お前はAIのサポートは切れ」

「了解」

「了解です。では秋さん、一夏さん、お先に」

 

言って、すぐさま地表に向かって降下していくオルコットを目で追っていく。そして逆噴射で上手く勢いを殺して停止するとこを確認する。

 

「どうやら完全停止も上手くいったようだな。よし!アルト。今回はサポートは無しでいくぞ?」

《了解。ご武運を》

「ああ。じゃあな。一夏」

「おう。頑張れ」

 

互いに頷き、俺は地表に向かって行く。ぐんぐん加速する孤狼。

 

「(今だ!)」

 

全身のスラスターで逆噴射をかけ、体を停止させる。なんとか成功できたかと思っていると。

 

「馬鹿者。私は十センチと言った。お前は十五センチで止まっている」

「すみません」

「謝ることはない。完全停止は出来ているのだからな」

 

どうやら目測を誤ったらしい。姉貴の指摘に頭をかきながら、孤狼を解除して一夏のほうを見ると。

 

「あ」

 

どこかで同じ光景を見たことあるな~と思わせる形で一夏が轟音と共に地上に降りた。

 

「イテテテ・・・・・・」

 

訂正。地面にクレーターを作ることを着地とは言わない。このことを世間では墜落というんだぞ?一夏。

 

「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴を開けてどうする」

「・・・・・・すみません」

「情けないぞ、一夏。昨日私が教えてやっただろう」

 

姉貴と箒にはさまれるように怒られる一夏にちょっと同情しつつも呆れていると。

 

「大分、あの加速に慣れてきましたのね?」

 

ブルー・ティアーズを解除したセシリアがいつの間にか隣に立っていた。

 

「うん?ああ・・・・・・まあ、なんとかね。それよりもセシリアの動きも凄いと思うぞ。基本動作も綺麗だった。さすが代表候補生だな」

「え?そ、そうですか。そんなに褒められると照れてしまいますわ」

「いや、マジでそう思うんだよ。俺もそれくらい動かせないとな。負けるわけにはいかない」

 

自然と拳に力が入る。そう、負ければ全て奪われる。だから、俺は……。

 

「力、入りすぎですわよ」

 

セシリアがそういった瞬間、背中に痛みが奔った。

 

「いてぇ!?」

 

何すんだ?!と言おうとしたらセシリアは腰に手を当て。

 

「そんな無駄な力が入っている状態では満足に動けませんわ。今、試合をすれば間違いなくわたくしが勝ちますわよ?」

「…………」

「秋さんがどうしてそこまで勝ちにこだわるか分かりませんが、もう少し頭をからっぽにしたらどうですか?きっとそのほうがうまく行きますわよ」

 

そう言ってクスクスと笑うセシリアに俺は気まずく頬を描くだけだった。

 




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