トラックの荷台に座り揺られながら基地へと戻る艦娘達。睦月の心中は複雑だった…
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『日本は危機に瀕しておる! 国民の食糧事情も厳しくなってきておるのだ。しかぁーし! 諸君ら艦娘は国の存亡を懸けた戦いの先鋒で在るゆえに食事には特に優遇されているのであーる! 諸君らの食事の一粒は国民の血の一滴である… 感謝して戴きなさい!』
「戴きます!」
睦月達艦娘はテーブルに置かれた食事に向い合掌する。麦粥と梅干が一粒、それに具の入って無い味噌汁が彼女達の食事だ。提督は厳しい食糧事情の中で私達艦娘には優先的に食糧を供給していると仰る。国民の皆さんは自分達の食べる分を減らしてまで私達へ…。
「期待に応えるために頑張ろうね!」
「梅干おいしい‥ね!」
「もっと強くなって海を取り戻すんだ!」
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「騙されてたんだ…」
街には物が溢れていた… 実際に生活物資は手に入りにくくなってきており、食糧事情も悪化しつつあるのだが…睦月にはそう思えない程に基地に於ける艦娘の待遇は悪いものだったのだ。
街を歩く人々は綺麗な服を着て、美味しい料理を食べていた。
「初めて基地の外に出たけど… 聞いてたのと違った」
睦月の呟きに何故か由良は無言で俯いた…
軍艦である由良は提督の随行員として度々基地の外へ出る機会があり、外の様子を知っていたのだろう。
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翌朝
「烹炊所に誰も居ないよ? 」
鹿屋基地は一時閉鎖と決まり、所属艦娘には待機命令が出ている。現在は最低限の基地管理要員が残っているだけだ。7時になっていつものように食堂にやってきた艦娘達が気づいた… ご飯が用意されていない。
「どうするの? ご飯がないよ~」
「お腹空いたよ…」
「倉庫に何かあるんじゃないかしら?」
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しかし‥食品庫を見ても食材は有れど、そのまま食べられる筈はなかった。乾物庫には米や麦からトウモロコシが大量にあり、冷凍庫は肉や魚が詰まっていた。
「これってお肉だよね? 魚も凍ってるけど… 焼けば食べられるよ! 」
食材を発見した艦娘達はお腹の虫を鳴らしながらも食事にありつけそうな期待に胸を膨らませた。
その時、外から騒々しい声が聞こえてくる!?
声に混じって聞こえてきたのは乾いた炸裂音?
「銃声! 」
流石は艦娘である‥銃声を聞くと外の様子をそっと伺う。目に飛び込んできたのは‥基地を管理する小隊が小銃を構えて何者かと交戦中だった!
相手はトラック数台に分乗して襲撃してきたのだろうか? 優に守備隊の倍以上の人数と重武装の武装集団である… 明らかに多勢に無勢の様子。
「どうする? 」
「加勢しますか? 」
「できる訳ないでしょ? 」
足柄の一言に全員がハッとなる。現在、鹿屋基地所属艦娘は待機命令を受けている‥が、指揮官不在の状態にあり‥艤装の使用も禁じられているのだ。
戦う術は徒手空拳か人間の武器を手にするのみである。そもそも人間に対して艦娘の武器を向けることが可能なのだろうか? 倫理的な話以前に物理的に試されたことなどないのだ… 自分達は対深海棲艦戦闘に特化した存在【艦娘】
「…大人しく隠れているしかなさそうね」
足柄がこめかみから汗を津垂らせ苦々しく溢すのも道理である。襲撃している集団を見れば筋肉質の逞しい体つきをした屈強な男達が守備隊を圧倒していた。素人が武器を片手に軍基地を襲撃しているのとは次元が違った…
何れくらい経った?
10分くらい? 何れにせよ…基地が制圧されたのが静寂を以て認めざるを得なかった。
彼等の目的は何なのか?
『物資を頂くぞ! 倉庫にトラックを着けろ! 残りは隠れている奴を探せ!』
まずい! ここに居てはあいつらに見つかる!
足柄は声を潜めてその場にいた仲間を連れ武器庫へ移動を試みる。食品庫と武器庫は隣併せに建っているが、奴等の目的は食糧や燃料であろう‥真っ先にこの食品庫へ来ることは容易に予想できる。ならば隣の武器庫へ移動したほうが時間は稼げるかもしれない。
「キャァ! 」
『おいおい‥ガキじゃねぇか!? 』
艦娘の一人が捕まって髪を掴み上げられて藻搔いている。建物の陰から複数の駆逐艦達が怯えながら様子を伺う姿が見てとれる。
『そこに隠れているのはわかってんだ! でてこいっ! …こいつの首へし折るぞ? 』
男に恫喝された駆逐艦達が諦めて姿を現す…
『あぁん? なんだおめぇら? メスガキばっかじゃねぇか!』
現れた少女達の姿に男は落胆した。戦利品ついでに女の一人でも拐って帰るつもりでいたのだろう。声を聞いて期待に股間を膨らませ‥ 既に萎んでいる。駆逐艦の艦娘は見た目に中学生から小学生くらいだ…そういう嗜好でない男には性的興奮をもたらす要素は無い。
『頭‥どうします? 慰みものにするには…』
『青すぎるな… 臓器ルートに廻すか?』
『臓器ブローカーに廻すんすか!? 流石は頭だ! 地も涙もありゃしねー! ギャハハ! 』
男達のやり取りを怯えながら聞いていた駆逐艦達は言葉の意味がわからなかったが、良い話では無さそうだと悲愴感を漂わせている。
『ということで、お前達は臓器ブローカーに売り飛ばす! 可哀相だが…
「ひっ!! 」
「か‥解体!」
「嫌ぁっ!!」
「解体だけは許してください」
解体と聞いた途端に一斉に大泣きしながら男達に許しを請い始め足や腰にすがり付いてわめきだした!
『うわっ! 纏わりつくなっ! 』
《 ドカッ ベシッ 》
男は少女達が纏わりつくのを鬱陶しそうに足蹴にして払い除ける。蹴られ、殴られた少女達が地べたに転がり痛みに呻いている。
「止めなさい!! それ以上乱暴はしないで!」
駆け寄って来たのは軽巡洋艦の由良。駆逐艦ばかりの鹿屋基地でリーダーの存在だ。彼女は一緒に隠れていた駆逐艦を庇う意味もあり、一人で飛び出していた。
男達は新たに現れた少女の姿に卑猥な視線を浴びせる。先程までの少女より発育が良い高校生くらいに見える由良は【対象】になり得たからだ。
『ほう…嬢ちゃんがこいつらの代わりになるって云うんなら止めてやるぜ? どうだ? 』
「わかりました。私が行けばこの娘達は見逃してくれますね? 約束しなさい!」
下衆な笑みで見下ろす男に毅然と向い由良は言い放つ。
『いいだろう! メスガキは開放してやる。お前は一緒に来て貰う! ‥その前に味見だな』
男はそう言って由良の背後に立つ手下に目配せした。
「あっ!? なにを!」
手下の男達は背後から由良を羽交い締めにし、数人掛かりで手足を拘束して頭に向き合わせた。
『言ったろ? 味見だよ! ア ジ ミ !』
そう言うと男の両手は由良の胸元に伸び、双丘を鷲掴むとそのまま服を引き裂く!
「待ちなさいっ!! 」
これ以上傍観出来なくなり足柄は男達に突進した!
《ビシッ》
『グハッ! 』
《ドスッ》
『オゴッ! 』
対峙した二人の男を瞬く間に叩き伏せると足柄は由良を羽交い締めにしている男の頚筋に手刀を喰らわせる。男は力なくズルリと崩れ落ちた。
「足柄さん!」
基地の最強戦力である重巡洋艦【足柄】の登場に由良達艦娘達は色めき立つ!
『おお! こりゃ色っぽい姐さんじゃねぇか! お前が相手してくれるのか? クハハ!』
「お望みと在らば… 可愛がってあげるわよ? 足腰立たない程に‥ウフ 」
足柄はペロリと舌舐めずりして男を見据えた…
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『どうした? かかってこいよ? 』
頭と呼ばれた男は不敵に嗤いながら手招きして足柄を誘う… 自信があるのだろう。
事実、対峙する足柄は言葉と表情の割りに攻めあぐねている……
「…(この男できる‥)」
足柄は武術の心得は無いが、男の脚運びが只者でないことを直感的に肌に感じている。冷や汗が頬を釣垂る…
《ザッ》
男の足が踏み込む!
「くっ!」
しかし、艦娘たる足柄の動体視力はその動きを捉え回り込む男の頚筋に手刀を叩き込む!
《 ガッ 》
「なっ! くっ! クハッ!」
足柄が放った手刀は身を捻った男により間合いの数ミリ手前で空を斬り、代わって繰り出された男の掌底が彼女の脇腹に渾身のダメージを与えた! 足柄は一瞬呼吸困難に陥り膝を着いた。
《グイッ》
一発で満身創痍となった足柄に男は容赦なくその手を伸ばすとウェーブのかかる長い髪を鷲掴むと引摺り連れて行く。
『お痛が過ぎる姐さんにはお仕置きだぁ! たっぷり可愛がってやるぜ? まさに