「確かにこれは無いわ~! お祭りじゃないんだからね? 」
「そうだな、祭りの御輿を担ぐならわからんでもないが…」
「横須賀で他の艦娘のコから聞いた話だけど、私達以外にはいないらしいわよ? 」
あの後で戦艦伊勢の確認が取れたのだが、三人はある一点の話題にお取り込み中である。どうやら戦艦の艦娘だけが超レトロな下着を装備していることがお気に召さないらしい。まあ、俺としても女性の下着というものはアレだな…見て良し、触って良し、嗅いで‥イヤイヤ! 嗅いでは遺憾です! いかんの字が違うが遺憾に違いない。兎に角だ、男の俺としても晒木綿巻いて褌絞めた半裸状態の艦娘を拝むの…も悪くない。‥が、やはり彼女達のモチベーションに関わる問題として真摯に受け止めとかないとな?
「そういう訳だが…なんとかしろ」
俺は腕組みして憮然としながら目の前に座する我が眷族‥じゃなく、妖精達に件の問題を丸投げする。
「デキナイコトモナイゾ? シタギヲカイゾウスレバヨイ」
お茶菓子の羊羮を食べていた手を止めて妖精は答える。
「艦娘の下着を改造出来るのか? 」
「下着を改造出来るの!? 」
妖精の答に聞き返した俺の言葉を耳にしたハルナが食いついてきた! 他の二人も表情が明るくなる。
「俺じゃないぞ? 妖精が可能だと言ってるんだ」
「そう…なんだ? でも不思議ね…どうして貴方だけ妖精の言葉が聴こえるのかしらね? 」
ハルナが言ってるように、妖精の言葉が聴こえるのは俺だけらしい。…この世界ではな
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「見本? 下着の!?」
「改造するのなら必要か‥」
「じゃ‥とりあえずこれで」
榛名と日向に続いて納得のいった様子で伊勢はスカートに手を入れるとパンツを脱ぎ始めた!
「コラコラ! なんの冗談だ? 」
「え? あらやだ! パンツ脱げって‥うちの旦那様こういうの好きでさ」
ここの夫婦の性癖を垣間見た……けしからん! 俺はそういうプレイ大好きだ!!
横に居た二人が慌てて止めたために戦艦伊勢のパンツ生脱ぎショーはチラリすら拝めず終わった…
三人の改造戦下着製作は後日あらためて妖精に見本を提出することになった。俺の妖精に渡すということはだな…俺の元に三人の勝負下着が勢揃いするってことだ!生脱ぎでないから匂いが無いのは…嗅がないっての! それではまるで変態ではないか!
「ところで、もうひとつ話なんですが? 」
先程、一通りの艦娘待遇を聞いて日向と同じく軍務に就くことには理解を示していた伊勢が口を開いた。恐らくは三人にとって最重要項目である下着の問題が解決したからにはたいした事でないだろう?
「何かな? なんでも遠慮なく聞いてくれ! 」
難関を一先ずクリヤーしたと感じていた俺は既に余裕すら生れ、出されていたお茶を啜りながら軽い気持ちで伊勢の言葉に耳を傾けていた。
「艦娘のお仕事ってパートタイムで大丈夫ですか? 」
《 ブフッ 》
軽く鼻から茶が吹いた‥
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艦娘艦隊へのパートタイム勤務に関しては、流石に即答できる話ではなく‥ 持ち帰り検討した上で返答するという話にして濁して帰ってきた。
「彼女は戦艦伊勢で間違いありません。…はっ、しかし‥その‥問題がありまして。…そのですね、夫と子…はい! そうなのでありまして…ええ…軍務に就くにあたり支障が…はぁ、、ですよね? と、兎に角二人と面談していただきたいです! では失礼します! 」
《 ガチャン 》
永倉長官へ報告の電話をするものの、恐らく電話の向こうでは頭を抱えていると思う。…後はよろしくです。
しかし、いきなり危惧していた事態に出会すとは…
ハルナと出会った時に驚いたのだが、まさか艦娘が成長するというか…歳取るのってな? そりゃ年頃になりゃ恋もすれば……結婚したりしてて子供産んでたりして……既に産んでたじゃん!
先が思いやられるところだが、今回の臨時任務は終了した。明日からは監査官の初仕事で佐世保鎮守府だ。
永倉長官からは監査というよりも艦娘艦隊の第一人者と呼ばれる提督の仕事振りを見てこいとのことだ。
《 コンコン 》
「あのぅ‥持ってきました」
明日に備えて寝ようとしたところにハルナが巾着を下げて訪ねてきた。
「ああ、妖精に渡す見本だな? でも、もうあいつら寝たぞ?預かっておくよ…ん? 」
ジロリと俺を睨んでいる?
「妖精さんて寝るの? ‥中を見ないでよ? 見たら許しません! からね?」
「はいはい‥おやすみ」
許しません! とか‥『勝手は榛名が許しません!』というセリフ思い出したよ! やっぱり艦娘だわあいつ…どれどれ?
ハルナに見るなと念を押されたことなど忘れ巾着を開いて中を確認するのだった……!
「なっ!? なんと…過激な! けしからん! ‥こんなの履くのかよ? まさしく勝負スキャンティ? 違う、勝負下着ね」
スキャンティとは…スキャンダラスなパンティとの造語で、一般的な女性の下着と比較して布地面積が小さくスーパーローライズ設計によりお尻の割れ目がパックリ見えてしまうというとっても過激な下着だそうだ。狙った獲物を撃墜す時に身につける所謂【勝負下着】の大本命なのだ。
随分と前貼り‥否、フロントデルタゾーンを覆うべき面積が小さいのはあれか? デリ毛の処理前提に設計されているのであろう。ヒップを包む部分は本来の役割半分といった具合に儚げである。そして前後のパーツを連結するサイド部分は細い紐が申し訳程度に蝶々結びされているだけである。この紐の端を指で摘まんで引っ張るとだな…ハラリといとも簡単に連結を解き放つだろう!
これが噂に高い『紐パン』か! 作者も現物を見たことが無いと云う…
「ううむ、流石は戦艦の艦娘だ。駆逐艦達のお子様パンツとは別世界の様相を呈しているではないか! 高速戦艦榛名侮りがたし‥ 」
《 ガラッ 》
「ごめんなさい! ブラ入れ忘れたから… !!」
パンツを手に唸る俺の背後に殺気が降り注いだ…
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翌朝、頬に赤い手形をつけた俺はハルナを連れて長崎行きの新幹線に乗り佐世保鎮守府を目指していた。
昨夜は知的探究心の至りというか、弁解のしようもないところを見られた訳で…非常に気不味い空気だ。
重苦しい沈黙を破ったのはハルナの呟き。
「クリスマスが近いわね…新しいコートが欲しいなぁ。」
これは…また俺に買えと?
「ね、サンタさん?」
「……はい」
氷のような微笑みを向けられ思わず返事をしてしまった。ゲーム画面に居た清楚で可憐な榛名の印象はガラガラと瓦解してゆくように俺の心から消え失せた。人間臭いどころか、男を食い物にする艦娘はヤダ…
九州に入り博多を過ぎるとそろそろ乗換えだ。それというのも終点の長崎駅からは遠廻りとなるため、佐賀で在来線に乗換え佐世保へ向かう。横須賀にしてもそうだが、こちらの世界でも軍港へのアクセスはあまり良くない。
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佐世保駅を降りると目の前に海軍施設が壮大な景色を作り出している。横須賀と同様に戦後米軍基地が占有していた場所にはそのまま帝国海軍から引き継いだ施設が存在している。あちらの海自基地を知る俺の目には異世界と形容してもいいくらいに衝撃的な画だよ。
「海軍て迫力あんなぁ…これ全部だよな? 」
「なにを寝惚けたこと言ってるの? あなた海軍中佐でしょ? 」
無意識に口にしたところを横でハルナに聞かれたようだ。小声だった筈…艦娘はそんな能力あるん? いや、違うな、地獄耳というやつに違いない…気をつけよう。
「いやぁ‥こっちの佐世保は初めてなのでね。凄いなぁてね? 」
「こっち? あぁ、電車で来たことないのね! そういうこと… それで、これから如何なさるの中佐? 」
「あ‥うん。まずは市内観光しながら情報収集だ」
今の言動もヤバかった! ハルナが勝手に解釈して納得したからセーフだが…あぶねぇ。
これからの予定はまず市内観光を装い情報収集だ。二人とも海軍関係者に面識があまり無いのも任務条件に合致しているのだ。俺が気をつける相手は精々同期の士官だが、事前確認したところでは二名だけいる同期…困ったことに全く知らない人物である。接触は絶対に避けねば…
「瓜生? やっぱり瓜生じゃないか! 」
背筋に冷汗が噴き出すような最悪の気分だ!
声の主に向き合うと海軍大尉が立っているではないか! 確かこの男は同期の袴田だな? どうしよ?
「横須賀で入院してると聞いたが元気そうじゃないか? 隣は彼女か? べっぴんさんだな! 貴様も中々やるなぁ~おい! 」
袴田は横に来て俺の肩を掴むと親しげに話し掛けてきた。もしかして仲良かったのかも? ますますヤバいではないか!
「ああ、最近やっと退院してな‥リハビリを兼ねて旅行中なんだ。貴様も元気そうだな? 」
適当に誤魔化すべく話を…おい!
「初めまして~袴田であります! お名前伺ってもよろしいでありますか? 」
奴はさっさとハルナの横に移動していた。
「ハルナと申します。瓜生がお世話になっております」
などと挨拶を返す…それじゃ誤解され…
「貴様ぁ! こんな綺麗な奥さんもらいやがって! 羨ましい‥けしからん」
結局ハルナは俺の婚約者ということにした。というより機転を利かしたハルナが婚約中である旨を告げたのだが…まあ任務は明かせないし、女連れの言い訳には恋人か妻の何れかになる。しかし‥嘘を平然と語るハルナには驚かされる。
「そうか婚約中かぁ…あれ? ハルナさん婚約指輪はまだ貰ってないのかい? 」
目敏い袴田はハルナの手に指輪が無いことを指摘してきた! つうかさ‥目の前にやたら手振りを交えて会話するから自ずと手に目線が行くのは…
「まだなんですよぉ! 袴田さんからも言ってください! 因みに私の誕生日は4月で誕生石はダイヤモンドなんですぅ」
金剛型だけに金剛石(ダイヤモンド)……
「それはいかんな~いかんぞ瓜生! こういうのはちゃんとしないとな? 婚約指輪といえばダイヤ! ちょうど誕生石だそうだ…たしか給料三ヶ月分が目安だそうだぞ? 」
ハルナ…お前これを狙ってたのか?
袴田も余計なこと‥宝飾店のTVコマーシャルに踊らされやがって! 俺にダイヤモンド買わせる気か!
『袴田大尉こんにちは‥なのです! 』
その時俺達の横をセーラー服姿のちんちくりん四人組が歩いて通り過ぎた。買い物袋を提げていたことから、スーパーで買い出しをしてきた帰りなのだろう。俺はその四人組には見覚え‥アニメとは些か見た目は違うが、暁・響と雷に電に違いない!
「袴田‥今の少女達は? 」
「ああ、ありゃ隣の鎮守府の連中だ。貴様も海軍士官なら聞いてるだろ? 噂の艦娘さ」
「艦娘が堂々と街中を歩いて大丈夫か? 」
艦娘の存在に関しては一般開示されていない情報だ。
即ち、これは重大な規律違反の可能性がある。
「あの娘達なら問題無い。既に一般教養を習得して許可も下りているからな。海軍佐世保女子学園の生徒って名目になっている」
「学校? 初めて聞いたぞ? 」
「先週開校したばかりのパイロット校だからさ。ここの鎮守府が初の試みだそうだ」
艦娘の学校? 初耳である…
永倉長官から聞いていた話では、ここ佐世保鎮守府は本土防衛の最前線と位置付けされて、そのため配属艦娘も選りすぐりの猛者揃いであると聞く。また様々な新しい取り組みが為されて…そういうことか!?
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翌朝
司令部から連絡を入れて貰い、俺はハルナを伴い鎮守府へ向かう。既に佐世保鎮守府の長官【提督】は突然の監査官訪問を快諾してくれたそうだ。
「ねえ、市内観光は? 」
当初の予定では二・三日は観光のふりをして鎮守府周辺の様子窺いのつもりだったのだが、昨日の艦娘達の様子から急遽変更して長官との面談を取り付けた。
「思うところがあるんだ。これから長官と面談に臨む! いいな江田島大尉? 」
「了解しました! 瓜生中佐! 」
二人は軍服姿で鎮守府へ向かうタクシーの座席に並んで座る。俺の姿と口調からかハルナも部下としての言動に切り替わっている。こうして見ると中々‥有能な秘書官に見えるから美人は得だな。
艦娘艦隊の鎮守府は平瀬地区の埠頭寄りに在る。海軍鎮守府の傍ではあるが別棟であり、袴田大尉が『隣の鎮守府』と表現した所以である。俺の世界では在日米軍基地になっていたあたりだな?
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応接室に案内された俺達は姿勢を正して司令官を待つ間に室内を観察していて写真が目に留まる。
「この鎮守府に所属する艦娘達だな…」
「そうですね。皆、艤装展開してないけど…真ん中は司令官ですね? 」
壁に掛けられた額縁の集合写真には最前列中央に司令官であろう壮年の軍人と数人の副官らしき人物、そのまわりに20人程の少女達が写る。長官から渡された資料にある人物に違いなかった。佐世保鎮守府長官である笹岡中将はさる大手企業の元重役で、その業界では戦略家として名を馳せた逸材だそうだ。特にロジスティクスを重視した経営手腕は小売業界の物流常識を塗り替えたと評価の高い人物である。因みにロジスティクスとは軍事用語で兵站のことだ。
「企業人であった頃は妥協を許さない厳しい方らしいが、写真見ると気の良い親父さんだな? 」
「優しいパパって感じですね! 」
お前が言うと別の意味を感じる…
流石の鬼経営者も孫くらいの少女達に囲まれたら顔も弛むのかもな?
「大変お待たせしました。遠路遥々御苦労様! ‥当鎮守府長官の笹岡です」
秘書艦らしき艦娘を伴い現れたのは写真と同じく優しそうな壮年男性である。ハルナの目が輝いているような気がする…
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「瓜生中佐と江田島大尉‥か、見たところ二人とも若いが? 君達も特務士官かね? 」
艦娘艦隊に属する士官はほぼ全てが特務士官だ。
「はい、私は海兵出ですので本来の階級は大尉でありますが‥」
「成る程…そして君は提督候補でもあるようだね? 初めて見たよ、三人も妖精を連れているとはな? ま、その話はさておき…当鎮守府の監査だな? 勿論、自由に歩き見て頂いて構わん。この朝潮を案内を付けよう」
横に控えていたセーラー服姿の少女が歩み出た。昨日駅前で見た艦娘達と同じデザイン‥制服のようだな?
「朝潮型駆逐艦一番艦の朝潮です」
朝潮型のネームシップである艦娘だが、第一印象は真面目な長女タイプで言葉使いも丁寧と…嘗て『艦これ』で見知った朝潮そのままである。
「瓜生だ。よろしく頼む…ところでその制服は朝潮型の装束ではないね? 」
「はい! これは佐世保鎮守府所属艦娘の制服なのです。普段はこれを着用しております」
「そのことに関しては私から説明しよう。ここの鎮守府では新しい試みとして艦娘を一般市民と交流させようと考えている。そのための施設が学校なのだよ」
艦娘が戦力化され2年が経過し、当初考えられた純粋に対深海棲艦決戦兵器として運用することに支障が生じている。彼女達は身体が完璧に人間であること、それに加えて精神も人間であるとしか言い様がないのだ。初期に現れた艦娘は自我も戦闘艦だった記憶も曖昧な状態だった。そんな彼女達を人間の少女として教育を施し、ヒトの身体動作と一般教養を身に付けるに至り漸く人型戦闘艦【艦娘】が戦力化されてきた経緯が在る。ヒトの自我に目覚めた艦娘達は時間の経過とともに新たな問題を生み出した。
艦娘は【喜び】【怒り】【哀しみ】【楽しみ】を感じるように成長した。ヒトとしては喜ぶべき成長であるが、兵器としては不都合というべきか? 使用者の意志を忠実に履行するべき機械が喜怒哀楽の感情により命令に悩んだり逆らったりしては軍事は儘ならない。
「私とて、彼女達が意志を持たないロボットならば高性能な最新兵器として扱いもしただろう…。だが神は艦娘をヒトの姿と魂で遣わした」
現在の政府見解では艦娘を【対深海棲艦決戦兵器】と定義している。これは公式に彼女達は兵器であると言っているのだ。海軍では政府見解に沿った艦娘運用マニュアルを作成し、提督候補者には艦娘を兵器として扱う前提での初等教育を施している。建前ではあるのだが…中には言葉通りに真に受ける輩が存在する。
「瓜生中佐‥君は艦娘を兵器と人間のどちらと見ている? 」
「人間ですよ…間違いなく」
思いっきり人間だよ! 俺の財布からどんだけ散財させるつもりなんだよ? 無垢で純粋な艦娘のイメージ吹き飛ばしてくれたよ…この女は。
「そうか…」
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「沖縄周辺海域に於ける戦況は芳しくない。現有戦力では九州沿岸への襲来を食い止めることで精一杯なのだ」
4月に沖縄が陥落してからは深海棲艦の艦隊が沖縄本島周辺海域を遊弋していると笹岡提督は云う。空母機動部隊が奴等の中心勢力で制空権も奪われた状態だった。
「今の戦力では沖縄奪還どころか九州への接近を阻むのが精一杯だ。火力不足もあるが、制空権を失った状態では手持ちの軽空母の艦載機を全機直掩にしても不足だ」
佐世保鎮守府に配備されている航空戦力…軽空母【鳳翔】【龍驤】航空巡洋艦【最上】以上である。深海棲艦には正規空母級が3隻確認されており、未確認情報では4隻の可能性がある。対する我々には海軍全体で軽空母が4隻のみと明らかに劣勢である。
「その状況下で艦娘に教育ですか… 」
戦況が芳しくないことは承知だが、本土防衛の最前線であるこの地に於いては艦娘は貴重な戦力の筈。
「この非常時に馬鹿げていると思うかね? 全力を以て敵に充てるべし! …と叫ぶ軍首脳もいる。だがな、赤字だからと設備投資や人材育成を疎かにして破綻した企業は数多だ。経営も戦争も総合力が大事なのは同じでないかな? 」
俺の溢した疑問にまるで予想していたかのように笹岡長官は返答…いや、諭した?
永倉長官がまず最初に行けと言ってた訳だ。俺のような海兵出とは言え、軍歴の浅い若造には…勉強になります。
突然、デスクの内線電話が鳴る。話を中断して受話器を取り話すやり取りが聞こえる。相手は艦隊司令部の永倉長官のようだな? なにやら笹岡長官の表情が強張る様子から嫌な予感だ…
「懸念していたことが起きた! 鹿屋基地からの内部告発文書が連合艦隊司令部に届いたそうだ…。これより当鎮守府憲兵隊を中心とした部隊派遣を行う! 」
鹿屋基地!? この後に向かう予定の艦娘艦隊基地じゃないか!
「長官! 私も憲兵隊に同行できますか? 」
「構わんが‥本件に関して君達は部外者だ。隊長の指示に従うことを条件として許可する」
「了解です! 有難うございます」
鹿屋基地…九州南部鹿児島県にある警備基地だ。周辺海域の哨戒が主な任務で規模は大きくないことから、基地司令として提督が1名と艦娘18名の他に基地管理要員が30名程度である。辺鄙な場所に僅かな人員だが、それだけに中央の目が届きにくいこともあり…良くない噂が聞こえていた基地だ。