艦これ?ありませんよ   作:apride

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自決

鹿屋基地

 

辺りはまだ深夜の闇に包まれた静寂

 

正門前の詰所に居た衛兵が多数のヘッドライトが迫ってくる様子に驚く。やがて正門前に車両が停まると車体に描かれた【佐鎮憲】の三文字から佐世保鎮守府憲兵隊であることを確認出来た。何故こんな早朝に? そんな疑問も直ぐに吹き飛ばすかのように現れた短機関銃で武装した隊員達の姿。

 

『我々は佐世保鎮守府憲兵隊である! これより連合艦隊司令部命令による強制捜査を行う! 開門!』

 

開門されると一斉に憲兵達が基地内に雪崩れ込んだ。

 

『Aチームは提督の確保! Bチームは基地要員の拘束!

Cチームは艦娘を確保! 抵抗する者には発砲を許可する! 但し、殺すな! 』

 

憲兵隊に続いて基地内へ入った俺とハルナは艦娘を確保に向かうチームの後を追う。見えてきたのは艦娘達が宿舎としている建物だが、兵舎と呼ぶよりも普通のプレハブ小屋といった趣きだ。

「随分と粗末な建物なのね? 」

ハルナの呟きが耳に入るが、お前のアパートも相当なもんだと思うぞ? 今になり思うが、そこそこ給料良い割に安アパート暮らしなのが不思議だな?

 

 

『艦娘の諸君! 我々は佐世保鎮守府憲兵隊である! 手荒な真似はしない! 大人しく指示に従うように! 』

宿舎に居た艦娘とみられる少女達が怯えた様子で憲兵の指示に従い外に出て並ぶ。

 

『全員揃っているか? 17‥1名足らんな? 後一人はどこだ? 』

 

「睦月ちゃん‥いえ、駆逐艦睦月は毎朝海岸に‥その散歩だと… 」

 

『散歩‥だと? 直ぐに連れてこい! ここのリーダーは誰か? 』

 

「私です‥重巡洋艦足柄です」

 

特徴的な妙高型巡洋艦の装束姿の女性である。見た目には女子大生といったところだな? それにしても‥服が所々破れて汚れが目立つのは何故だ? まさか‥これは中破状態なのか!?

 

「隊長さん! 足柄は損傷していて立っているのもやっとなんです! 代わりに私が睦月を連れてきますから、休ませてあげてください! 」

 

『損傷だと? 何故そんな状態で入渠しないんだ!? すぐに入渠しろ! 』

隊長は損傷していると聞き驚いた。佐世保鎮守府の憲兵であるから艦娘が損傷した場合は入渠施設にて修復に入ることは当然知っているのだ。

 

「で、でも‥提督の許可無く入渠できません。小破程度では… 」

足柄が気丈に答えるが、小破と言えば確かに露出度が少ないから…そうかもしれないが? 疲労感が強いのだろうか?

 

「私が許可する。足柄は直ちに入渠しろ! 」

「‥貴方は? 」

「艦隊司令部の瓜生中佐だ。これは司令部命令だ‥入渠しなさい」

組織というものは、命令系統が線引きされている。上部組織といえど、頭飛びの命令が罷り通るようでは立ち行かないものである。あえて念押しするように『司令部命令』と言った瓜生の言葉の意味を足柄は理解した。

「はっ、はい! 足柄入渠致します! ‥ありがとうございます」

 

足柄は駆逐艦らしき娘に付き添われて入渠施設へ向かって歩いて行った。

 

 

「隊長、すみません。思わず命令を出してしまった…」

『いや構いません中佐。あんたがああ言わなかったら入渠しなかったでしょう? 艦娘とはそういうものらしい』

隊長もわかっている。提督以外の命令を艦娘は受けないし、瓜生に命令権が無いことも…

 

「あの‥私は睦月を探してきてよろしいでしょうか? 」

「君は…由良? 」

「はい、長良型軽巡洋艦由良です。当基地で水雷戦隊を率いてます」

「頼む! 何人か連れて手分けして探しなさい。‥隊長、構いませんね? 」

「ああ、艦娘に関してはあんたに任せる」

 

 

《 パァーン 》

 

「銃声!? 」

「司令部庁舎からだ! 瓜生中佐‥ここは我々に任せて艦娘を! 」

 

 

 

 

隊長が駆けつけてみると、銃声はやはり‥提督執務室からだった。

室内では軍服姿の太った男が頭から血を流して倒れている。生暖かい血臭を漂わせて脳漿が飛び散り壁を赤く染めており、一見して即死だと判る。

 

「銃を自らの口に咥えて… 」

拘束しようとしたところ、机の引出しから拳銃を取り出し自決したようだ。憲兵の説明通りに死体の後頭部には弾丸が抜けた傷が生々しい。銃をみると【南部84年式自動拳銃】現在の軍用銃で標準的な9㎜拳銃弾を使用するタイプである。

 

「逃れられないと悟って自決か? 民間出の軍人にしては… 」

隊長は口許に手を当て訝しげに呟く…

「それが‥様子がおかしかったのです。死にたくないと口走りながら、拳銃を持つ手はまるで誰かに無理矢理やらされているような動きで… 」

一部始終を目撃した兵の話は理解に苦しむ内容だ。結局のところ他に誰か居た訳でもなく、本人が錯乱状態にあったためであろうと…

基地司令である提督が自殺したとなると対外的にも大問題である。即座に現場では箝口令が敷かれ立ち入り禁止処置が為された。

 

 

 

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「艦娘が1名行方不明だ。基地周辺に姿が見られないことから脱走したと見て間違いなさそうだ… 」

 

基地司令官以下、副官と基地憲兵隊長ら幹部は全員逮捕されている。他の基地管理要員も拘束し、代わりに佐世保鎮守府から送られた小隊が留守部隊として置かれた。艦娘達に関しては基地内で待機という名目の謹慎となった。後程、個別に聴取が行われることになるだろう。憲兵隊は脱走した艦娘の捜索に取り掛かる動きだ。逮捕されたと聞く提督の姿が見えなかったが? そこで先程の銃声が気になったが、隊長からは威嚇射撃によるものだと説明がある。

 

「これより脱走艦娘の捜索を開始する! 特徴は配布資料の通り中学生風の少女であるが重火器にて武装している! 発見次第速やかに捕縛せよ! 」

 

捜索に向かう憲兵達は手に艦娘専用捕縛器具を持つ…

特殊警棒と特殊捕縛ネットなどであるが、対人用とは比較にならない超高電圧発生機能内蔵タイプである。隊長の話によると、これらに艦娘が触れると一発で中破程度のダメージを被り無力化できるそうだ。

 

「ちなみにだが、効果は実証済みだぜ… かなりえげつないから出来れば使いたくないがね」

隊長は言葉とは裏腹にニヤリと口角をあげる…

あんた使う気満々ですね?

 

「出来れば穏便に収めたい。艦娘達に手分けして連れ戻すように命令を出して構わんかな? 」

「構わんよ。未だ嘗て艦娘が人間に攻撃した事例は無いが、向かってこられたら太刀打ち出来んからな… 」

 

隊長は瓜生の申し出を了承した。艦娘が本気で抵抗したならば人間では手に負えないのだ。捕縛するには艦娘が艤装展開していない状態で且つ不意討ちでなければ有効打は期待できないだろう…

 

 

 

 

 

由良達艦娘に内陸部への捜索を指示すると、俺はハルナを伴い先回りすべく霧島市へ向かう。

「そういうことだから、俺達は睦月を追うぞ」

「何か当てがあるみたいね? 」

 

当てというかだな…

肩の上では妖精が大きめの懐中時計のようなものを見て方角を指示している。丸い画面には赤い光点がひとつ点滅しているな?

 

「まるでド●ゴンボール探してるみたいだが… それが睦月なのか? 」

「ド⚫ゴンボール ? 」

「ムツキニキマッテル!」

「オンナノコニボールハツイテナイゾ!」

 

どうやら睦月の現在地が標示されているみたいだ。光点は毎時10ノット位の速度で北上していることから走っている? 逃走している様子が窺える。艦娘の中で由良だけは偵察機を装備しているが、海上と違い遮蔽物だらけの陸上では発見は困難であろうから、艦娘達には後を追わせ俺と榛名は先回りすることにした。

 

「電探みたいなもので位置が特定できるなんて… 監視されてるみたいで嫌な感じ! 」

様子を横から伺っているハルナは憤慨してる… 駆逐艦の艦娘が探知できるなら自分も同様だとなるからな。

 

「これは非常時に限ることだ。それより、大事になるまえに睦月を保護するぞ! 」

あえて保護と言ったのはハルナの心証を損ねないように俺なりの配慮だな‥うん。逃走したとは言え、睦月が何かしらの犯罪を犯した確証があるわけではないのだからな。

 

 

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辺りは暗くなり、晩秋の夜風は九州南部のこの地でも堪える程の寒さだ。町行く人々はコートやマフラーを身に付けた姿が殆どだが、そんな中で夏服姿の少女がとぼとぼ足取り重く歩く様子を振り返り見て行く。

 

「あれだな‥艦娘の睦月に間違いなさそうだ」

 

「あの子‥こっちに向かってない? 」

 

「‥だな。好都合だ‥気づかない振りをして様子を見てみよう」

 

 

「了解! じゃあ‥オジさん! とりあえず熱燗ね♪ それと大根と白滝と‥」

早速ハルナは熱燗を注文する。演技なのか素で能天気なのかわからん…

「俺も熱燗で‥ がんも‥高っ! 」

『おにいさん、大豆が値上りして豆腐類は高めなんだよ』

 

そうこうする間に睦月は匂いに誘われるように屋台の傍にやってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

「睦月!」

「睦月ちゃん!」

 

声に振り向くと仲間の艦娘が立っている。

 

「由良さん‥みんな…どうして」

 

「あなたのことを心配して探してたに決まってるでしょ? 姉妹かしら? いいわねぇ‥」

 

何故みんながいるのかわからないという顔の睦月にハルナは言った。横では瓜生中佐がチラリと由良に目配せし、それに由良が頷く。

 

 

「心配したわよ睦月。さぁ、帰りましょう」

「由良さん… わたし‥ごめんなさい」

睦月は由良の胸に顔を埋めて泣きじゃくった。

 

「睦月ちゃん、もう皆に心配かけちゃ駄目よ? またやったらお姉さんが許しません! よ? ウフフ 」

 

「はい! おでん‥ご馳走さまでした!」

 

睦月は迎えに来た仲間達に囲まれながら軍用車に乗り帰って行った。

 

 

 

 

 

艦娘達がお礼を言いながら帰って行く姿を見送り、瓜生はまたチビりと酒を飲み呟いた。

 

「今回は出鼻を挫かれた形になったな…」

 

 

「…そうね」

 

 

 

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翌日

艦隊司令部に呼び戻された瓜生中佐は永倉長官から辞令を言い渡された。

 

「鹿屋基地司令? 私がですか? 」

「また突然ですまんな… 君も知っての通り人材が居らんのだ! 前任が更迭され司令官不在のまま基地を放置するわけには行かんのだよ」

この直前聞かされたのだが、前任の提督は拳銃自殺したのだと…表向きは更迭し解任されたことになっている。

被疑者死亡のまま書類送検し、軍事法廷での裁きは名目上だけで処理された。横領に関わっていた関係者はこれから取調べされるが、提督が行っていた艦娘への性的虐待行為は有耶無耶にされるのだろう…

 

「瓜生中佐‥前任が複数の艦娘に対して性的虐待行為を日常的に繰り返していた証拠は届いておる。しかし、被害者である艦娘から届け出が無い内は対処が出来ん。彼女らのメンタル面には慎重に対処してほしい」

 

艦娘が性的虐待を受けてのPTSDに対処しろと? 俺は精神科医じゃね~よ!

 

「専門医を要請します! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

専門医の件は却下されてしまった…

事を表沙汰に出来ないことと、艦娘の扱いが【人間】で無いために起訴出来ないことが壁になっていた。

 

【辞令】

海軍特務大佐 瓜生美晴

艦娘艦隊鹿屋基地司令に任ずる

 

…てことになってしまった。

 

 

数日後

俺は鹿屋基地へ向かう小型輸送機の機上にあった。今朝、永倉長官から見送りを受けた際に告げられたのだが、近い内に艦娘の国籍問題が進展する見込みだそうだ。

 

「ハルナ一人でさえ手に負えないてのに… ゲームみたいにお気楽にはいかんなぁ」

 

 

―前途多難の提督人生が始まろうとしている―

 

その頃、着任先の鹿屋基地では武装集団が襲撃を開始していたのだった!

 

 

 

 

―完―

 

 

 




突然ですが、編集部より読者アンケートの結果が良くないとのことで『打ち切り』となりました(嘘)




これまでのご愛読有難う御座いました。
当初、数話で切り上げて『提督着任編』への予定でしたが巧く書けずに長々と前置き話が続いてしましました。キリの良いところですので、これにて完結と致します。
手直しの段階で削除した話もあり、描きたいことは沢山あるのに効率的に文面に落とし込みテンポよく話を進めるのは難しいと感じました。
第二部では主人公だけでなく、複数名の回想話などで描いてゆければと考えております。暫くの後、続編を予定しておりますので引き続いてのご愛読をお願い申し上げます。
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