図書館で遭遇した妖精の執拗な誘いを振り切って病院へと戻ってきた。
「ふぅ、UMA(未確認生物)め! …いやまて、既に遭遇してるから未確認生物じゃないのか? あんなモノまでいるんだ…怪獣とか宇宙人が出てもおかしくないな?」
「カイジューテナニ ?」
「ウチュージンテナニ? ウマイノカ?」
「うわぁっ! 出たっ! て、増えてるし!」
いつの間にか足元でズボンの裾を引っ張る妖精が2匹いる。さっきのとは違う種類? 頭にヒヨコを乗せてるのと、帽子を被ったヤツが……
「ええーい!纏わりつくな!踏み潰すぞっ!」
「「キャー!! フムナー! キャハハハー!」
足を上げて威嚇した途端ピューっと走り去った。じゃれついていた仔犬が尻尾を振りながら逃げていくみたいに……
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病室に戻ると夕食が置かれていた。白飯に豆腐の味噌汁とおかずが鰤の塩焼きに筑前煮か。何故かプリンと牛乳がついている…
「この献立にプリンと牛乳の組み合わせかよ…」
和食系の食事に乳製品の組み合わせはオエッときそうで嫌だ。
「スキキライダメダヨー! 」
「プリン ウマー!」
やはり出やがった……
「あっ! てめぇ… 俺のプリン」
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翌朝
昨日の図書館で続きをと外出着に着替えていると…
「「「オハヨー」」」
何処からか3匹の小人が現れた。もう驚きはしない…人外の幽霊みたいなものだから神出鬼没なのも当然だろう。元居た世界で空想上の存在が、ここでは当たり前にウロチョロ歩き回る…この世界なら有りなんだろう。あまり気にしないでおこう…
「はいはい、おはようさん。コラコラ引っ張らない!」
下を見ると3匹は真剣な眼差しを向けてくる。
「…なんだよ?」
「アレニノロー!」
妖怪‥いや妖精達が窓の外を指し示す。
「あれ? あれって記念艦の戦艦長門か? 」
「ソダヨー! 」
「センカンダー!」
「ナガトヒロユキジャナイヨ-!」
最後は人の名前? 誰だよ?知らねーよ!
「長門か…。お前らに言われて行くのは癪だが、気にはなってたんだ」
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数分後、両肩と頭に各々の妖精を乗せて長門記念公園?へと歩いていた。
「歩くと…案外遠いな?」
歩き始めてすぐに後悔した。病室からはすぐ近くに見えた長門はその巨体故に錯覚したのだ。160m前後の護衛艦の感覚で見ていたためだ。長門は全長約225m…長さだけでなく、幅も高さも別格だ。間近で見るとかなりの迫力だぜ!
「戦艦て初めて見るが…数値以上にでかく感じるな!」
「コッチ! コッチ! ハヤクー! 」
「そんなに急かすな! あ、見学料300円だと!? ‥金取るのかよ!」
『軍関係者は無料ですから、どうぞご自由に見てください』
受付にいた女性が声をかけてくれた。セーラー服姿が凛々しいと思ったら階級章を付けた本物の水兵さんだった。
「助かったよ。財布を忘れてね‥って!おい、まてっ!」
財布どころか無一文だ(笑)妖精達はお構いなしにテケテケと艦内へ消えて行く。慌てて後を追った!
『今の少尉さん…誰と話してたのかしら? 』
『気味悪い‥関わんないほうがいいわよ!』
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「コッチダー!」
「モタモタスンナー!」
「ウサギトビサセルゾー!」
最後の台詞がよくわからん…
「何処まで行くんだ? この方向…下には?」
艦橋に向かうかと思えば…機関部へ?
「ツイタゾー!」
「ハイリタマエ!」
「オトコハダマッテカマタキダー!」
やはり3匹目の言うことはわからん…
「機関室? 中に何があるんだ?」
今更だが、昨日こいつらの加護とやらを断った。得体の知れないものは御免だと無視するつもりだったんだが…何故か来てしまった。
ここまで来てしまったのだ…。
「ここで引き返すというのも…」
恐る恐る扉を開ける……
「…ギョッ!」
『バタン』
中を見て直ぐに閉じた…
「ナンデシメル!」
「ハラククレー!」
「ククレカレー!」
「お前らの仲間がウジャウジャいるじゃねーか!なんだありゃ?気味悪くて入れんわ!」
機関室には様々な格好をした妖精が100匹以上居た。セーラー服や作業着を着た面々が一斉に此方を向いたのだ!…鳥肌がたった。そう‥まるで、夜中に目が覚めて台所の灯りをつけたらゴキブリの大群がいたみたいな?
「ヤッパリ ミエテル!」
「マチガイナイネ!」
「アッチョンブリケー!」
「あいつらはなんだ? 説明しろ!」
「オマエトトモニタタカウナカマダー!」
「オマエハエラバレタノダー!」
「オマエハスデニシンデイルー!」
3匹目は無視だ…
「戦う? 選ばれた? 死んでねーし? 何と戦うって?」
無視すんの忘れた…
「ジンルイノテキダー!」
「ヤツラヲタオセー!」
「ヘンシーン!」
変身できねーよ!
「寝言言ってねぇで歯磨いて寝ろ!…あばよ!いい夢みろよ!」
「マダアサダヨー!」
「マッテヨー!」
「オマエヲヨンダノハワレワレダー!」
今‥何て言った?
背を向けて立ち去ろうとした時、聞き捨て為らない台詞が聞こえ振り返った。
「オマエヲ コノセカイニヨンダ」
「オマエハタタカウウンメイナノダ」
「オマエニチェックイン」
妖精の加護など望むと望まぬと…俺に選択権は無かった。
「オマエヲウミニツキオテシタノ…アタシダヨー! 」
……妖精って踏み潰したら死ぬかな?
……試してみるか?
「ニゲロー!」
「フマレルー!」
「ウマレルー!」
「「「ウキャキャキャキャー!」」」
足を上げた途端蜘蛛の子を散らすように奇声を上げて逃げていった……
「くっそー!妖怪めっ!」