艦これ?ありませんよ   作:apride

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急募

地方都市の郊外にある新興住宅地

平凡な一軒家の2階にある六畳間に男は住んでいる。

家族構成は父と母に妹…そして長男のこの男を含めた四人家族である。両親は共稼ぎ、妹も今春高校卒業して就職した。男は大学受験に失敗すると引きこもり、そのまま親に寄生するように怠惰を貪って生きている。

 

『 カチャ 』

部屋のドアが開く音に男は飛び起きる!?

「お兄ちゃん! ご飯‥ヒィ!!」

 

「ノックしろっ!! 犯すぞゴラァっ!!」

 

薄暗い室内から睨み付けながら罵声を浴びせる男は下半身を丸出しにして妹に向き合う。左手にはアイドル専門誌を持ったままだ…オワンコ倶楽部会員番号4番煮田恵味の一面水着写真が開かれたままだ。…何故か飛沫が表面に付着しているように見える。

 

「キャアァッ!! 死ねっ! 糞ブタっ!」

 

妹はその姿と室内に漂う異臭に顔を歪めながら男を罵り逃げて行った。

 

彼女が罵ったように、男の容姿は不健康にブクブク太り醜い姿になっている。反面、妹はアイドルに居そうな程にスタイルも顔も人並み以上だ。同じ両親から生まれたにしては真逆と言って差し支えないレベルにある。

 

「糞ビッチめっ! 肉親じゃなけりゃ‥ひん剥いて犯すところだ。ふん、気を取り直して‥と? ん? 誰これ? 新人アイドルかな?」

 

次のページを捲ると、期待した内容と違うことに一瞬戸惑う‥が、そこには新たな興味を惹くだけの絵がある。

 

ページ一面にはセーラー服姿の青い髪の美少女が微笑んでいる。海軍式の敬礼をする横には白い軍服姿の中年男性が一緒に立つ。『急募』の文字がデカデカと書かれている…求人広告のようだ。

 

「海軍の求人かよ! 誰が入るかっての! ‥ん?」

 

悪態を吐きながらも募集内容に目を通すのだが…そこに書かれているのは

 

【急募】

海軍では広く民間からの人材を求めています!

{募集職種}特別職幹部候補

{応募資格}性別・年齢・学歴・職歴 不問

{待遇}俸給(月額)35万円~ ※諸手当別途支給

報奨金支給制度有 社会保険完備

{勤務地}全国の鎮守府または各基地 ※艦艇乗務はありません

 

{応募方法}履歴書1枚(顔写真付)全身写真1枚 を下記送付先へ郵送下さい。書類選考の上で面接致します。尚、ご応募頂いた履歴書・写真は返送致しません。

 

 

 

「月に35万円!? ほんまかいな?」

 

待遇の俸給35万円~に驚き…即座に怪しんだ。それというのも、現在の大卒初任給が約7万円なのだ。いきなり5倍の給与を支払うなどという話に男が怪しむのは当然だ。

 

「…でもな、今時海軍なんて入ったら命がいくつあっても足らんわ! 船も殆ど撃沈されたって噂だしな?」

 

男が聞いた噂の通り海軍の艦艇は殆どが失われていた。今や海軍は壊滅状態…高額報酬で募集をしても志願者はいないのだ。

 

「おやおやぁ? 勤務地が各鎮守府または各基地だと? 陸地で勤務なら大丈夫かな…。しかし、なんで全身写真がいるんだ? あれ? なんだこれ?」

 

ふと気づいたのだが、写真をよく見ると軍服姿の男には肩に小人? が立って一緒に敬礼しているのだ。マスコットキャラクターなのかとも考えたが、それにしては写り具合が自然なのはおかしい…。

 

「この小人…特撮なのか? 」

 

その時! 部屋の隅で物音がした!

《 カサカサ 》

 

「ぬうぅ! ゴキブリめっ!」

 

男は空かさず手元からハエ叩きを振り上げて音のした方角をクワッと見据えた!

 

「ああん!? …ヒィィ!! あんだぁ!?」

 

そこに居たのは……

今見ていた写真の小人とそっくりの妖怪(・・)だった!

 

「オマエ ミエテイルナ‼」

 

「アワワワっ! はひっ! くるなっ! ヒィ」

 

「シズカニシロ‼ コロスゾ?」

 

「はひっ! 黙りまふ! 殺さないで…ガクガク 」

小人が発する禍禍しい気配が男を震え上がらせる。

 

「ヨロシイ ククク」

 

その小人はニヤリとほくそ笑んだ。

 

 

 

 

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海軍省の一室

送られてきた封筒が山積みになっている奥の執務机では男が一人で写真を次から次へ閲覧している。パッと見ては次へと流れ作業であるが、机に積まれているだけでもかなりの枚数がある。時折、目頭を押さえたりする仕草から疲労が見受けられる。

 

「少し休まれては? お茶をどうぞ… お父‥提督」

「おう、ありがとう。ひと息入れるとしよう… しかし、なかなか居らんなぁ?」

 

海軍省が民間から中途採用を始めてからずっと書類選考を行っているのがこの部屋だ。しかし、その選考は提督と呼ばれた男がたった一人で続けていた。

選考の内容は只一点! ある者が一緒に写り込んでいないかを確認しているのだ。その努力もあり、最近は人手も増えたが…

 

「せめて10人は揃えたいところだ。最低限の訓練を受けさせても…時間が無い」

 

艦娘運用部隊創設に向けて要員を集めているのだが、指揮官の条件が条件だけに難航している。既に妖精の加護を受けている人間が全国に居るのは間違い無いのだが…当の本人が声高に『私は妖精が見えるんです!凄いでしょ!』なんて触れ回っているはずもなく、むしろキ⚫ガ⚫扱いされることを恐れているだろう。そこで提督は妖精が加護を授けた人間の傍に常に寄り添うことから、数多くの全身写真を手に入れ確認しようと考えた。海軍では中途採用の名目で直接情報を集めている。政府筋からは大手結婚相談所から情報提供を受けたり、各種学校から生徒の情報を閲覧している。しかしだ、どれだけ情報が集まっても確認できるのは提督と艦娘だけなのだ。

 

現在、提督の他には…

民間出身の提督候補が6名

交戦海域で偶然発見された艦娘が7名

 

提督と合わせて14名だけだ。

 

『あっ! 発見! いました!!』

 

その時一人の艦娘が数ある写真の1枚を高々と掲げた!

全員が集まり写真を凝視する。

 

「……」

「キモッ!」

「妖精‥というより…」

「妖怪っぽい?」

「糞提督‥あ、まだか」

「写真の彼はともかく、妖精さんが‥可愛くないかも?」

 

皆が散々の感想を陳べる中、提督が咳払いして口を開いた。

 

「うほん! ま、人は見かけによらないとも言う。外見で決めつけるのはよそう。貴重な人材を発見できて喜ばしいではないか」

 

古来、妖精とは澄んだ心の持ち主にしか見えないと言う。ましてや、妖精の加護を受ける人間とは正義の人に違いないのだ! ‥と提督は信じて疑わない。

 

 

 

人は見かけによらないと言うのは…反せば『人は見かけどうり』なのかもしれないのだが……

 

 

 

 

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『お、お兄ちゃん! 海軍の人が表に来てるよ!』

 

妹が恐る恐るドアを少し開け、鼻を摘みながら声を掛けてきた。

 

「来たか…。くふふふ」

「ニヤニヤ」

 

男の肩では妖精と呼ぶには少々可愛いげのない妖怪が不敵に嗤った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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