着任
九州上空
この日、横須賀海軍飛行場を飛び立った小型輸送機は本州から九州へと陸伝いに飛行していた。理由は、今年に入ってから沿岸部での航空機遭難事故が多発しているからだ。危険回避のために内陸部上空の遠回りを余儀なくされていた。
「やっと九州に入ったか? もう少し速い飛行機無かったのかよ! ボクちゃんは提督様なんだぞ? 」
二人分の座席を占拠してふてぶてしくふんぞり返る男が誰に言うでもなく悪態を吐いている。男が怒るとおり、輸送機はプロペラ機で低速な上に迂回ルートを飛行しているから遅い筈である。さらには小型輸送機は何らかの探知を避けて低い高度を維持することで揺れも大きくなりだす。それから1時間程で目的地である海軍鹿屋基地へ到着した。
鹿屋基地とは本来は海軍航空隊鹿屋飛行場であり、艦艇の基地ではなかった。全国の長大な沿岸部防衛に際して既存の軍港だけでは足りる筈もなく、急遽設営された拠点なのだ。即ちここは突貫工事で造られたのだ…
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エンジン音を響かせ降りてきた輸送機が着陸する。
駐機場で行われる初代鹿屋基地司令官着任式典の隊列が出迎える。その最後尾には二人の女性が姿勢を正している。
「私達の司令官が到着されたわ」
「どんな御方かしら? 」
今日の着任式典に臨み普段は着ることのない軍服に身を包む、伸ばす背筋にも期待からか緊張が感じられる。
彼女達はここ鹿屋基地に実戦配備された艦娘の【重巡洋艦 足柄】と【軽巡洋艦 由良】だ。二人はこの基地の主力艦として配属され、初代提督の着任と同時に正式に指揮下に入ることになる。
「わくわくするわ…やっと実戦で撃てるのよ!」
「そうね…待ち遠しかったわ!」
二人は別の鎮守府に所属していたが、各々が基礎訓練を修了した後は新設された鹿屋基地へ転属となったことで未だ実戦の機会は得られないまま燻っていたのだ。
待ちに待った司令官の到着に昂りを感じていた。
エンジンが停止し、プロペラが止まると静寂が辺りを包む… ドアが開き、白い塊がラッタルを転げ落ちてきた…
「やっと地面に着いた…オエッ オオォゴァァ!!」
『バシャッ バシャァァ ビチャビチャ』
這いずり落ちるように輸送機を降りた新米提督は駐機場の地面に胃の内容物を盛大に撒き散らした。
その場に居合わせた全員が言葉を失ったという…
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「まさか…あんな… 私達の提督が?」
先程の出来事が脳裏に焼き付いてしまった由良はショックなのだろう‥歩きながら目は焦点が定まらないためにふらついている。
「第一印象は最悪だけど、生理現象じゃ仕方無いわよ。それに見た目と能力は別よ!‥きっと」
そうは言うものの、横に並ぶ足柄も挨拶に向かう足取りは重い…
執務室の扉をノックする。
「重巡洋艦足柄!並びに軽巡洋艦由良参りました!」
『入れ』
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「「失礼します」」
入室すると正面の執務机に大柄な人物が両肘をつき合わせた手の上で顎を乗せて此方を窺うように見つめている。軍人らしく髪はサッパリと刈上げてあり最低限の清潔感には気を使っている様子だ。机の両側には銀糸で編まれた飾緒を肩から下げた二人の副官が立っている。
この様子を見た足柄は先程までの不安が和らいだ感じがした。新任の提督は民間出身と聞く、短期間の訓練のみで配属された事情から優秀な副官が補佐することになる。
成る程…副官の二人の少佐はベテラン海軍士官のようだ。
「提督‥此方の両名が当基地の主力艦娘でありますところの
副官の一人が此方をチラリと見て提督に告げた。
軍艦である巡洋艦の二人が所属艦娘を代表して挨拶に訪れたのだ。ここで言う
提督は脇目も振らずに私達を見据えている。否、頭のてっぺんから爪先まで全身を隈無く観察するかのように…ジメッと湿度の高い視線が絡み付き鳥肌が立つのを覚える。流石は選ばれし能力者である艦娘運用部隊の司令官である…只者ではない空気が漂い、足柄は無意識に身震いするのだった。
「…艤装を見せろ」
提督は此方を見据えたままひと言… 艤装展開しろと?
「こ‥この場で!? ‥で、ありますか?」
足柄は提督からの
今日は式典の為に普段着用しているものとは違い、海軍の真っ白な第二種軍装にその身を包む二人である。この状態で艦娘の艤装を展開するということは…
「どうした? これは命令なのだがな?」
躊躇している二人の艦娘に提督は厳しい視線を向ける。何故か‥肩に立つ妖精が一瞬ニヤついたように見えたが?
「提督閣下の御命令である! 御見せせよ!」
副官が場の空気を読んで二人を強く促した。
「失礼致しました! 御命令とあれば此の場にて御覧にいれましょう! 」
足柄は躊躇してしまった自分を恥じた。人間のうら若い娘の姿に生まれ変り性根まで女々しくなっていたのだろうか? 兵器たる軍艦がなにを戸惑うことがある…提督も指揮官として管理下に入る兵器を確認なさるだけなのだ。
足柄は由良に目配せすると彼女も無言で頷く。どうやら由良も想いは同じようだ…二人は一瞬でも躊躇した自身の行動を自嘲するかのように微笑み…
「「 艤装展開!! 」」
二人を一瞬眩い光が包むと猛猛しい武装を纏った戦姫と呼ぶべきであろうか…
神々しく生まれたままの姿の美女が三人の男達の前に現れた!!
「「「 オオオォ!!! 」」」
男達の歓喜の雄叫びが執務室に木霊するかのように響き渡った!
足柄と由良は自慢の主砲塔を掲げて各々決めポーズで立つ。その表情は一点の曇りもない自信に満ち溢れていたという…
彼女達の足元には細切れになった着衣が散らばり、必死に拾い集めて走り回る妖精の姿があった…
「ウホッ! エエ乳しとるやないか…… グフフ」
提督の呟きは幸い誰の耳にも届かなかった。さらには豪奢な執務机の下で熱り立つ主砲塔も……
『艦これ? ありませんよ』【R18】部を別話として投稿いたしました。こちらで書けないエロ・残虐な話を載せる予定です。ご興味がありましたらどうぞ…