ダンジョンに八雪を求めるのは間違っているだろうか   作:神納 一哉

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独自設定

鋳塊(インゴット)の大きさは50cm×15cm×10cm

オラリオの硬貨はギルドの地下にある造幣所で造られている。偽造防止のため、鋳造した硬貨はバベルの屋上に運ばれ、【神の力】による祝福(刻印)を施される。そのため汚れたり摩耗したりしない。

青銅(ブロンズ)貨 10ヴァリス
(カッパー)貨 100ヴァリス
(シルバー)貨 1000ヴァリス
(ゴールド)貨 10000ヴァリス
白金(プラチナ)貨 100000ヴァリス


10 商店街と職人通りそして空店舗

思っていたよりもすんなりと郊外に出られたので、昨日よりも手前から森へと入り、木、草、土、岩などを適当に回収しながら川へと向かう。川底の石や砂ごと水を回収しながら、川沿いに上流へと歩いて、昨日よりも多くの素材を手に入れて、入ってきた場所とは違うところを通って素材を回収しながら街道へと出て街へと戻る。

 

ゴミ捨て場に向かい、周りに人が居ないのを確認してから柵の中の割れた食器や瓶、壊れた家具や革製品、襤褸切れなどを回収し、ついでに甕に触れて生ゴミも回収しておく。ゴミ類は収納と同時に源素に変換しているので、汚れたりはしない安全仕様だ。

 

バベルに近い商店街を歩き、目に付いた服屋に入り、フード付きのローブを試着させてもらってから、気に入ったので買うことにした。3万ヴァリスとそこそこいい値段ではあったが、見本(サンプル)にするのに丁度いい。店を出てから空間収納の【保管庫】に入れた。

 

商店街を歩いてみると、ところどころに空き店舗があるのが目に付いた。建物がギルド管理なのかはアドバイザーさんに相談してみればわかるだろう。この辺であれば竈火の館(ホーム)からは少し離れているが、中央広場が近くそこそこの人通りもあるので、悪くない気がした。

 

商店街を離れ、職人通りをしばらく進んだところに、ゴブニュ・ファミリアの本拠地(ホーム)である三槌(みつち)の鍛冶場があった。事前に場所を聞いていたので迷いはしなかったが、店舗でもわかる鍛冶場の熱気には圧倒された。

 

「おう、兄ちゃん、ゴブニュ・ファミリア(うち)に何か用か?」

 

「あっ、その、ヘファイストス様から紹介されて来たんですが、ゴブニュ様はいらっしゃいますか?」

 

「ヘファイストス様からの紹介か。ならこっちに来な」

 

「お邪魔します」

 

筋肉マッチョの髭親父に鍛冶場の中へと連れていかれる。監視されているような視線を感じるが、敵意は無さそうなので無視を決め込んだ。

 

「主神様、ヘファイストス様の紹介で人族(ヒューマン)が来ております」

 

「なに、ヘファイストスの紹介じゃと?いったい何の用だ?」

 

「お初にお目にかかりますゴブニュ様。俺はヘスティア・ファミリアの者ですが、ヘファイストス様のところに鋳塊(インゴット)を納品させていただいたところ、ゴブニュ様を紹介されましたので…」

 

「ああ、まどろっこしいのはいい。鋳塊を見せてくれ」

 

「わかりました」

 

バックパックを下ろし、木箱から取り出す体で超硬金属(アダマンタイト)鋳塊と最硬金属(オリハルコン)鋳塊を1づつゴブニュ様に手渡す。すると俺を連れてきてくれた髭親父がゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてきた。

 

「実にいい金属(かね)だ。ヘファイストスのところと同じだけ納品できるのか?」

 

「はい、各20程」

 

「おい、6800万用意しろ。お主はここに残りの鋳塊を置いてくれ」

 

「わかりました」

 

流石は神様、適正価格(6800万)を用意しろと髭親父に伝えて用意させている。

 

「ヘファイストスのところには、他にも何か納品したのか?」

 

白金(プラチナ)鋳塊と魔銀(ミスリル)鋳塊を各20程」

 

「同じだけもらおう」

 

「わかりました」

 

空の木箱を取り出して、その下の木箱から白金鋳塊と魔銀鋳塊を20づつ取り出す体で先ほどの鋳塊の横に置いていく。

 

「おい、2800万追加だ。合計9600万用意しておけ」

 

ゴブニュ様はそう声をかけてから、手招きで俺を側に呼んだので近づくと、肩に手を回されて引き寄せられた。

 

「次からは取り出しているふり(そんなこと)しなくてもいい。髭親父(受付)に話を通しておくから、儂のところに来て鋳塊(モノ)を出してくれ」

 

「やはり気づきましたか」

 

「まあな。華奢なお主が80もの鋳塊を背負えるわけないし、そもそも鋳塊に対して箱の大きさが小さすぎる」

 

「まあ、背負ってるのは偽装(ダミー)ですからね」

 

「薬とかならバレないだろう。だが、鋳塊は無理がある」

 

「そうですよね」

 

「まあいい。それで、鋳塊だけじゃないんだろう?何かいい素材はないのか?」

 

「ヘファイストス様のところには超硬金属と最硬金属の鉱石がありましたので、それを元にして納品させてもらいました。今後、素材が入ったら渡すから、それを元に納品してくれというお話はいただいています」

 

「そういうことか。儂のところも今は良い素材が無いな。お主、名前は?」

 

「比企谷・八幡です。ゴブニュ様」

 

「そうか。では八幡、儂も素材が手に入ったらお主に渡すから、ヘファイストスと同じように頼むぞ。ヘスティア・ファミリアの竈火の館(ホーム)に届ければいいか?」

 

「はい。それで大丈夫です」

 

「納品はヘファイストスのところと同じでいい。ヘファイストスもそのつもりだからお主を紹介してきたのだろう。同じ素材が手に入るようになれば、お互い得しかないからな」

 

ヘファイストス様がゴブニュ様を紹介した真意を知って、神様は怖いと思うのであった。

 

ゴブニュ・ファミリア(うち)は建築や家具なども扱っているから、(カッパー)(アイアン)(シルバー)(ゴールド)なんかも欲しい。特に鉄は鋼鉄(はがね)の元になるから多めに欲しい」

 

そう言われたので、銅鋳塊、銀鋳塊、金鋳塊を各20、鉄鋳塊を50造って並べる。銅鋳塊は4万ヴァリス、銀鋳塊は15万ヴァリス、金鋳塊は30万ヴァリス、鉄鋳塊は6万ヴァリスなので、銅鋳塊×20=80万ヴァリス、銀鋳塊×20=300万ヴァリス、金鋳塊×20=600万ヴァリス、鉄鋳塊×50=300万ヴァリスの合計1280万ヴァリスになるのであった。

 

当然のことながらゴブニュ様は適正価格の1280万ヴァリスの追加を髭親父に告げ、合計1億880万ヴァリスを自分の元に持ってこいと告げた。

 

「さすがに1億はかさばるからな。それに店舗(みせ)の入口で受け渡すと悪目立ちする」

 

「ありがとうございます」

 

「いや、八幡(お主)とは長い付き合いになりそうだからな。ヘファイストスには他に誰か紹介されたか?」

 

「ヘルメス様のところに【神秘】持ちが居るとのことで、団長のアンドロメダさんへの紹介状を貰っています」

 

「ああ、【万能者(ペルセウス)】か」

 

「その【神秘】持ちの人の名前ですか?」

 

「いや【神秘】持ちの二つ名だ。わかってなさそうだから言っておくが、ヘルメス・ファミリアの団長、アスフィ・アル・アンドロメダの二つ名が【万能者】だからな。魔道具作成には魔銀をよく使うし、稀少な素材もあるから、八幡が【万能者】と話して良いと思ったら、お主の能力のことを話して協力するのも良いと思うぞ」

 

「アンドロメダさんと話すのは、ヘスティア様に聞いてからにします」

 

「それはお主の好きにすればいい。この後は竈火の館に戻るのか?」

 

「ギルドに行って、商店街の空店舗を使えるかを聞いてみようと思ってます」

 

「素材屋でも開くのか?」

 

「雑貨屋ですかねえ。戦闘は向いていないんで、同郷の仲間と二人で店をやろうかなと」

 

「そうか。無事に店を開くことになったら建物の改修は儂らに任せてくれ」

 

「そのときはまた依頼し(たのみ)に来ますよ」

 

鋳塊の代金を空間収納に回収して金額を確かめる。

 

「1億880万ヴァリス、確かに頂戴いたしました」

 

「金勘定早いな。それもスキルか?」

 

「まあ、そんなところです。それでは、これで失礼します」

 

「おう。また頼むわ」

 

三槌の鍛冶場を後にして商店街へと戻り、そのまま中央広場へと向かう。昼食にはまだ早いので、このままギルドへと向かうことにした。

 

ギルドに入り、アドバイザーさんを探すために受付を見回す。幸いすぐにアドバイザーさんを見つけることができた。

 

「すみません。ヘスティア・ファミリアの比企谷ですが」

 

「はい。どうかなさいましたか?」

 

「ちょっとお聞きしたいんですけど、商店街の空店舗って、ギルドが管理しているんでしょうか?」

 

「はい。いくつかは我々(ギルド)の管轄ですね」

 

「その、ギルドが管理している物件って、借りられたりするんですかね?」

 

「ええと、どのような商売を始めるおつもりですか?」

 

「雑貨屋みたいな感じの店を考えています。あくまでも予定の段階ですが、維持運営費がどれくらいかかるかを確認したくて」

 

「そうですか。とりあえず個室でお話を伺いますので、あちらの部屋へ移動しましょう」

 

アドバイザーさんに促されて、受付カウンターの奥にある小部屋へと通された。しばらく椅子に座って待っていると、アドバイザーさんがいくつかの資料を持って部屋に入ってきた。

 

「お待たせしました。商店街の地図がこちら、ギルドが管理している建物は青線で囲まれた建物で、店名が書かれていない建物が空店舗です。ギルド管理外の店舗は情報が古いかもしれませんが、何を扱っている店かは可能な限り調べて書いてあります」

 

地図を見てみると、先ほど実際に見た場所は、地図通りになっているようであった。服屋の向かいにあった大き目の建物もギルド管理のようである。

 

「雑貨屋でしたらこちらの建物はいかがですか?家賃は月12万ヴァリス、以前は金物屋で、商品棚やカウンターもそのまま残っておりますので、少しの改装で商売を始められると思います」

 

「賃貸でなく土地建物を買うとしたらどのくらいですか?」

 

「ええと、この物件は4000万ヴァリスです」

 

「なるほど。ではこの建物だったらどのくらいですか?」

 

アドバイザーさんのおすすめは小さい店舗のようだが、俺は目を付けていた大き目の建物の値段を聞いてみた。

 

「ここは元高級レストランですので、かなり大きな厨房や保冷庫があります。賃貸なら月40万ヴァリスで、使用用途は食堂に限定させていただいております」

 

「やはり大き目の建物は結構な値段しますよね?」

 

「使用用途も限られていますし、雑貨屋はできませんよ」

 

「念のため聞きますが、土地建物を買うとしたらどのくらいですか?」

 

「…1億4000万ヴァリスです」

 

「買った場合には、制約はなくなるんですよね?」

 

「ギルドの管理ではなくなりますから、家主の好きにしていいですけど。ええと比企谷さん、買い上げるおつもりですか?雑貨屋にしては広すぎると思いますし、それに失礼ですが、ヘスティア・ファミリアにはこの物件を買う資金が不足していると思うのですが」

 

「その辺はヘスティア様や仲間と相談してから決めます。これらの物件は今のところ、どことも契約されていないということでよろしいですか?」

 

「ええ、今のところは」

 

「ではまた近いうちに話に来ます。それまでにもし何らかの契約が持ちかけられたら、連絡してもらっても構いませんか?」

 

「わかりました。ヘスティア・ファミリアの比企谷さん宛で連絡を差し上げます」

 

「ありがとうございます。実際に商売を始めた場合の注意事項はありますか?」

 

「基本は直接売買ですから取引価格は自己責任になります。それから新しいものを作成したときは、製法を秘匿することが認められています」

 

「ええと、それはつまり独立採算ってことですか?ギルドの運営費とかどうなっているんです?」

 

「ギルドも商会のひとつだと考えていただくとわかりやすいかもしれませんね。運営費はバベルの賃貸料とヴァリス貸付事業などで十分賄えております」

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

「いえ。どういたしまして」

 

個室から退室し、ギルドを出て中央広場へと戻る。このオラリオはまさかの税金無しの自由都市だった。税金を納めなくていいのはありがたいし、面倒な計算も必要無いのでWIN-WINってやつだ。

 

竈火の館に戻るころには昼飯時なので、商店街にある弁当屋でヘスティア・ファミリアの人数分の弁当(ランチパック)を買っていくことにした。飲み物は雪乃の紅茶を冷したもの(アイスティー)にしよう。デザートも欲しいな。スフレでも作ってみるか。

 

竈火の館に戻りがてら、空間収納内を整理したり、スフレ(デザート)を作ったりする。まあ傍から見れば猫背の陰キャが歩いているだけなんだけどね。

 

――――――――――

空間収納F 75/800 上限80000

 

技能:収納 錬成 解体 精錬 修復 整理 消去

 

【保管庫】35

 

植物源素 22764 

生物源素 3876

鉱物源素 16221

硝子源素 4768

魔源素 2619

水源素 31494

 

回復草A 124

魔力草A 53

活力草A 68

瀉下草A 72

解毒草A 34

解熱草A 102

麻酔草A 98

解呪茸A 29

麻痺茸A 27

妖精茸A 23

 

白金鋳塊A 40

魔銀鋳塊A 40

超硬金属鋳塊A 40

最硬金属鋳塊A 40

 

10000ヴァリス金貨 6

100000ヴァリス白金貨 1638

4090万ヴァリス入硬貨袋特大A 1

硬貨袋中A 4

硬貨袋特大A 2

ティーカップ【奉仕部仕様】A 1

活力亭特製弁当A 7

奉仕部紅茶飲料瓶A 7

スフレプレートA 7

 

回復薬A 10

上級回復薬A 10

魔力回復薬A 10

上級魔力回復薬A 10

解毒薬A 10

解呪薬A 10

エリクサーA 10

 

パープルモス翅A 20

魔石E 1

魔石F 1

魔石G 2

――――――――――

 

4096万ヴァリス(売り上げの2割)はヘスティア様に献上すると決めていたので、ゴブニュ様のところで渡された袋の(貰った)硬貨袋特大に4090万ヴァリスを入れておいた。ついでに使うかもしれないので硬貨袋特大は2つほど複製しておく。ちなみに小額硬貨は腰につけている巾着袋(財布)の中だ。今回はたまたま金貨が6枚あったからいいが、次回も金貨があるとは限らないので、近いうちにどこかで両替をしておきたい。ああ、そうだ。薬草を売ればいいや。

 

竈火の館に戻ると鍛冶場に向かい、約束通り超硬金属鋳塊と最硬金属鋳塊を各20置いてから、昼飯だと言ってヴェルフを連れて館内へと向かう。玄関でリリルカに会ったので、昼飯を買ってきたことを伝え、ヘスティア様と命さんを食堂に呼んでくれるように頼んで、ヴェルフにはベルを呼んでくるように頼むと、俺は雪乃の部屋に向かった。

 

「雪乃、昼飯を買ってきたから食堂に行こう」

 

「おかえりなさい。そろそろ支度をしようと思っていたところなのだけど」

 

「たまにはいいだろ?紅茶とデザートは俺が作ったのを出す予定」

 

「そう。楽しみだわ」

 

食堂へ行くと全員揃っていたので、弁当とスフレプレートと紅茶を配ってから雪乃の隣に腰を下ろした。

 

「とりあえず弁当を買ってきたので食べましょう。飲み物とデザートは俺が作りました」

 

「これは活力亭の特製弁当じゃないか。わかってるね八幡君。それにこの瓶と器に入っているのはヘスティア・ファミリア(うち)のエンブレムじゃないか。飲食店でも始めるのかい?」

 

「お店の話は後で。今は食べましょう」

 

「そうだね。では、いっただきま~す」

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

特製弁当というだけあって、野菜とチキンソテーのバゲットサンド、ソーセージと卵とレタスのバゲットサンドはボリュームもあって美味しかった。トマトが入っていないのもポイントが高い。

 

「このデザート美味しいです」

 

「紅茶って冷たくても美味しいのですね」

 

「とても美味しいよ」

 

どうやらデザートと飲み物は高評価を貰えたようだ。その証拠に全員綺麗に食べ終わっている。食べ終わったところですべてを回収した。特製弁当の入れ物は源素に変換し、器類には修復をかけておく。

 

食堂で解散した後、俺は雪乃と一緒にヘスティア様の居室へと行き、長椅子(ソファー)に並んで座ると、長机(テーブル)の上に4090万ヴァリス入りの硬貨袋と6枚の金貨(6万ヴァリス)を置いた。

 

「ヘファイストス様とゴブニュ様に納品をした売り上げの2割を、献上させていただきます。お納めください」

 

「……いくらだい?」

 

「今回ヘスティア様に納めるのは4096万ヴァリスですね。売上総額は2億480万ヴァリスでした」

 

「やっぱりやらかしてるぅぅぅっっ!!」

 

「ああ、ヘファイストス様とゴブニュ様は俺の【スキル】を見抜かれました。お二人とも『いい素材が手に入ったら贈るから、それを参考にして納品してくれ』って言っていましたから、これからも定期的に取引しますけど。あと、ヘルメス・ファミリアのアンドロメダさんを取引先として紹介してくれましたが、アンドロメダさんにも俺の【スキル】知られても大丈夫ですかね?」

 

「いやいやいや、何を普通に報告しているんだい!?まああの二神(ふたり)なら悪用はしないし、アスフィ君も悪用はしないだろうけど、ヘルメスはちょっと注意が必要かなあ。というか、4096万ヴァリス(こんなに)も貰えないよ」

 

「いや【ファミリア】なのだから、売り上げの2割は受け取ってください。これから先、迷惑かけるかもしれないし、力を借りることもあるのだから。どうぞ遠慮なく」

 

「そう言われても」

 

「ヘスティア様の神の恩恵(ファルナ)がなければ、俺の【スキル】は無かったんですから」

 

「それを言われちゃうと、受け取るしかなくなるじゃないか」

 

「納まるべきところに納まったということで」

 

強引ではあったがヘスティア様に売り上げの2割を受け取ってもらうことができた。これから先も渡すつもりなので早々に慣れてもらいたい。

 

「それでですね、ギルドで空店舗について聞いてきたんですけど、見たところ借りるよりも買ってしまった方がいいと思いました」

 

「まあ、2億480万ヴァリスも(あれだけ)稼げればそう考えるだろうね」

 

「雑貨店をやるのは確定なんだが、雪乃は女性用品を扱いたいか?」

 

「そうね。あなたの測量に頼りきりになるかもしれないけれど、なるべく多くの人に質のいいものを提供できたらいいと思っているわ」

 

「大き目な建物を買って、真ん中で店内を仕切って、片方は女性用品の店、もう片方は雑貨屋で、カウンター側は繋がっているみたいなのを考えてみたんだが、どう思う?」

 

「お店の大きさにもよるけれど、二人では回すの難しいわよね」

 

「開店時は少人数で回すしかないから、初めのうちは女性用品の方のみ開けて対応するとか」

 

「それなら完全に仕切るのではなく、入口を中央に持ってきて、間仕切りで左右に区切るのはどうかしら?」

 

「間取りとかは後で雪乃と詰めるとして、店にヘスティア・ファミリアのエンブレムを使いたいのですが」

 

「それは全然構わないよ。さっきの器にも入っていたけど、ああいうものも売るのかい?」

 

「お菓子や飲み物を出すのもいいですね。簡易喫茶みたいな。店の名前は『竈火の館』に合わせて『竈火の店』とかで」

 

「ヘスティア・ファミリアのエンブレムがあるから、普通に受け入れられそうな名前だね。ボクとしては良いと思うよ」

 

「そうね。下手な名前を付けるよりいいと思うわ」

 

「じゃあ店の名前は『竈火の店』で、分類は雑貨屋ってことで決定」

 

店の骨子案を決めたところで、部屋へと戻ることにした。ヘスティア様が硬貨袋を前にして、魂が抜けたような状態になっていたのは見なかったことにしよう。


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