調の錬金術師(偽)   作:キツネそば

7 / 29
FGOハロウィンイベント始まりましたね。
今度のエリチャンもすごいですね。まさかそう来るとは思わなかった…。


英雄の想い・怪物の想い

「ふむ、数値も大分安定してきましたね。これなら大丈夫でしょう」

 

「そうですか、それは良かったです」

 

「良かったね切ちゃん。これもメルクリアが早く治療してくれたおかげだね」

 

「そうデスね。おかげで助かったデス」

 

「ここまでリンカーの除染ができるなんて思ってもいなかったから助かったわね」

 

エアキャリアのとある一室、壁を挿んだ向こう側にあるメディカルルームからそんな会話が聞こえてくる。俺が正式にフィーネに加入してしばらくたったある日のことである。

 

最近はマリアちゃんがフィーネではないことが発覚したり調が体調を崩したり切歌ちゃんの元気が無かったりと色々あったがこの数日で調の体調も回復、マリアちゃんもなんとか踏ん切りをつけたようだ。

 

切歌ちゃんは未だ何か悩みがあるようだがなんとか元通りに振舞おうと頑張っている。こういうことは俺よりも付き合いの長い調達に任せた方がいいだろう。

 

「メルクリア、本当にありがとうね。貴重な賢者の石まで使って治してくれて」

 

「大丈夫だよ、石はまた作ればいい。それに手間のかかる物でもないしな。それより調達の身体の方が大切だよ」

 

扉の向こうから調が申し訳なさそうに礼を言ってくれるが本当に大したものじゃない。俺にとって賢者の石などそれこそ蛇口をひねれば出てくる水のようなものなのだ。

 

それに比べれば調達の身体の方が何万倍も大切だ。そのためなら俺はいくらでも惜しむことなく石を使うだろう。それはさておき…

 

「調、俺はまだ部屋に入ってはダメなのか?」

 

「うん、もうちょっと待って」

 

「そうか…」

 

なぜこんな扉越しに会話をしているのか、それは数十分前に遡る。

 

メディカルチェックをするとのことで自分が施した術式がどの程度効果があったのか俺も調やドクター達について行ったのだ。

 

だかいざ検査となるとなぜか俺だけ調によって部屋から追い出されてしまったのだ。

 

理由を尋ねても答えてくれず、マリアちゃんと切歌ちゃんも目を背けるだけ。ナスターシャに至っては頭を抱えていた。俺が一体何をしたというんだ。

 

そんな訳で一人寂しく廊下の壁にもたれかかりながら時間をつぶしていたのだがこれが存外暇である。何かいい暇つぶしでもあればいいのだが生憎この組織にそんな余裕はない。時間的にも、精神的にも、金銭的にも無いのだ。

 

そんなわけで今できる暇つぶしはおしゃべりくらいしかないのだがそれも向こうでは結構な精密作業が行われてるっぽく気軽に話しかけることもできない。さて、どうしようかな…と考えていると意外にもドクターウェルが会話を振ってくれた。

 

「流石ですねメルクリアさん。今までと比べても段違いの数値が出ていますよ。汚染深度、副作用、共にまるでリンカーなど使ったことの無いような数値が出てますよ」

 

「そうか、初めて組んだ術式だったが思った以上に上手くいって良かったよ」

 

「あの小さな石でこんな数値を出せるなんて考えられませんね。一体どうやったんです?」

 

「ああ、あれはただ単に賢者の石でリンカーの副作用を打ち消しただけだよ。後は今まで溜まっていた汚染や浸食を分解、そして身体を元通りに再構築しただけだよ。寧ろデータだけで近いところまで答えを導き出すあんたの方がすごいと思うけどな」

 

回復術と言っても色々ある。自然治癒力の強化、損傷部位の再生、はたまた時間回帰といったものまで多岐にわたる。そして術式体系も様々だ。

 

呪術、魔術、魔法、聖遺物、各体系によってアプローチの仕方も千差万別だ。そして俺が用いた錬金術由来の回復術は損傷、損害、病魔などの原因を解析の後分解、正常な体組織を再構築するものだ。

 

利点としては他の物に比べ低コストで比較的誰にでも覚えられるが一方で正常な状態のサンプルや再生させる対象が少しでも残ってないと難易度が跳ね上がることだろうか。

 

因みに先日のドクターボッコボコ事件の治療をしたのもこの方法だ。それにしてもたった二回見ただけでこの術式の検討をつけることができるあたりこの人は本当に天才なんだろうな。

 

「いえいえ、そんなことありませんよ。それにこの間の戦闘の映像を見ましたが素晴らしい力をお持ちのようで。その上僕ですら知りえなかったソロモンの杖の使い方までご存じだったじゃないですか」

 

「その節はすみません…。それにあれはそんなに珍しいものでもないですよ」

 

「ほう。と、言いますと?」

 

「ソロモンの杖の機能をちょっと逆転させただけですよ」

 

聖遺物は元より万能なものだ。主たる権能の他にそれに類似する、もしくは反転する権能を持ち合わせていることがほどんどである。

 

仮に物質Aを物質Bに変換する聖遺物があったとしよう。この場合本来の権能には劣るものの物質Bを物質Aに再変換する権能も備わっているということだ。

 

例を挙げるとすれば炎を自在に操る剣ならば炎を出すだけでなく消すことも意のままにできるといったところだろうか。

 

ソロモンの杖の場合主たる権能はバビロニアの宝物庫よりノイズを召喚、自在に操るというものだ。だが以外に知られていないが召喚したノイズをバビロニアの宝物庫に送り返す権能も若干ながら備わっている。

 

今回はこれを使い立花ちゃんの足元の地面を宝物庫に転送して即席プールを作ったというわけだ。

 

勿論本来の使用方法ではないから転送したい対象に突き刺すなどして接触させる必要があるし射程距離もさほど遠くない。その上送れる体積、質量にも限界があるけどな。

 

そう付け加えて説明を終えるもなぜか壁の向こう側から反応は無かった。

 

あれ?俺なにか不味い事でも言っちゃったかな?と思ったがそんなのは杞憂だったようで…

 

「す、素晴らしいっ!聖遺物がそのようなことができるなんて今まで考えたことも無かった!」

 

突然ドクターが発狂に近い勢いで話し始めた。いや、怖いんだけど。どうした、そんな驚くようなことか?

 

「当たり前ですよっ!今日において現存している聖遺物など極わずか、その上本来の権能を有している物などその中でも数える程しかありません。我々はそれらを後生大事に保管、解析するだけで実際に試さなかった!いえ、試そうなどとすら思わなかった!そんな固定概念をあなたは打ち破った!素晴らしい!素晴らしいですよ!」

 

そんなに褒められると照れるが怖い、壁越しでもドクターの声とテンションが怖い。きっと顔もすごい事になってるんだろうな。中にいる調達が気の毒だ。

 

「素晴らしいですよメルクリアさん!悠久の時を生き、様々な叡智を持ち、絶対的な力を振るう!あなたこそ真の英雄に相応しいっ!英雄だからこそ成し遂げられたことだっ!」

 

おおっと、今聞き捨てならない単語が聞こえたな。流石の俺もそう呼ばれるのは看過できない。

 

「ドクター、それは違う。俺は英雄なんかじゃない」

 

英雄とは数多の人々に認められて初めて呼ばれるものだ。人々に恐れられ、忌み嫌われ、そうすることでしか存在できない俺には到底なりえない。そんな存在はこう呼ばれるべきなのだ。

 

「化け物だ。俺はただの化け物だよ」

 

悠久の時を生きてこれたのは英雄だからじゃない。呪われた化け物だからだ。

 

叡智を持つのも英雄だからじゃない。化け物だから、生きてこれたからこそ持ちえたものだ。

 

力を持つのも英雄だからじゃない。化け物故力を持つのだ。

 

「俺はどこまでいっても醜い化け物だ」

 

お前たちも見ただろう、水銀の翼を、鱗持つ尻尾を、あれが俺の真の姿だよ。

 

「ならば…ならばあなたが思い描く英雄の条件と一体どんな人物なのでしょう?」

 

英雄の条件…ねえ?そんなもの俺が知りたい。俺が今まで出会ってきた英雄と呼べるような奴らに共通点なんてほとんど無かった。武術も、武力も、威光も、カリスマも、金も、技術も、戦術も、戦略も、人間性も、何もかも違い過ぎた。強くても英雄になれない奴もいたし弱くても英雄になった奴もいた。

 

心の弱い奴も、迷ってばかりの奴もいた。それでも英雄になった奴は大勢いた。英雄の条件など人それぞれ、時代それぞれだ。誰もが大なり小なり持ち得ているといっていい。要はそれをどう伸ばしていくかだ。

 

だがあえて明確な条件を出せと言われれば…そうだな、

 

「とりあえず化け物を殺せるような奴じゃないか?俺みたいなとびっきり醜い奴を、それも大勢の観衆聴衆のいる前で劇的に、後世にそれこそ文献か何かに残るほど鮮烈にな」

 

「ほう、そうですか。それはいいことを…」

 

「そんなことない!」

 

ドクターが何か言おうとしていたがそれが最後まで続くことは無かった。今まで固く閉じられていた扉が開き調が飛び出してきたからだ。

 

「メルクリアは化け物なんかじゃない!醜くなんかない!私の大切な人だから、大事な人だから!だから…そんなこと言わないで…」

 

「調…」

 

ああ、また泣かせてしまった。彼女の泣き顔を見るのはこれで二回目だ。人間の泣く姿など飽きる程見てきたはずだ。その原因が俺にあることだって数えきれないほどあった。だが二回、たった二回見ただけの彼女の泣き顔はやっぱりどうしてくるものがあるな。それにそこまで俺なんかの事を思ってくれて泣いてくれるなんて、本当にいい女だ。だが…。

 

「調、その…なんだ。その恰好はちょっと俺には刺激が強い気がするな、うん」

 

そう、薄い。とても薄いのだ。断じて調の胸がではない。調には若干控えめだが年相応のものが実っている。薄いのは服だ。上は白を基調としピンクのリボンをあしらったキャミソール、下はこれまたすらりと健康的な脚が眩しく見えるホットパンツ。上に至ってはちょっと頑張れば透けるんじゃね?というレベルで非常に眼福である。

 

そして理解した。メディカルチェック、それも精密検査となれば肌を出す必要がある。それを見られたくなかった。だがそれを説明するのも憚られた。だから女性陣揃ってあの対応だったのだ。そりゃ追い出されるのも当然だわな。

 

自分の姿を理解したことで泣き顔なのはそのままだが悲しそうな雰囲気は一変、羞恥に染まった真っ赤な顔になり

 

「み、見ないでっ!」

 

「みぞおちっ!?」

 

丁度いい身長差もあり気合の入ったストレートが俺にきれいに決まった。あれ?俺打撃系は効かないはずだったんだけどな、なんでこんなに痛いんだろう…。

 

薄れゆく意識の中、ふとドクターの方を見ると思いっきりいい顔で笑っているのが目に入った。

 

あの野郎、いつか絶対文句言ってやる。そう堅く決意もしつつ、調のかわいらしい姿を網膜に焼き付け、脳内フォルダにしっかりと保存しながら俺の意識は闇の中へと落ちていった。

 

その夜、フロンティア浮上実験を行ったのだが俺は連れて行ってもらえなかった。原因は明白、調が顔を合わせると機能不全に陥りオーバーヒートしてしまうからだ。俺も気まずく感じていたのでこの措置は助かった。この件については時間が解決してくれるのを祈るばかりである。

 

因みに調達が帰ってきたのは翌日の朝だった。マリア達曰く調をなだめるに相当苦労したらしい。それについては申し訳なく思うし感謝もしている。だから顔がいやらしかったとか目つきが獣だったという汚名は甘んじてかぶろう。

 

だが仕方ないだろう?俺もなんだかんだ言って男なのさ。




聖遺物の機能については独自解釈です。
今回もお読みいただきありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。