とある禁術の魔道秘法   作:名無しの権左衛門

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「ふぅ、もっかい寝ようかな?」

 

 数日前少女を送り出した少年は、寝ようとした。

しかし少年は隣の部屋から聞こえる騒音により、頭が覚醒してしまった。

少年はそれを自覚してしまい、大きなため息をつく。

 少年は折角の休日での惰眠を、騒音でかき消した本人たちに宣告しにいく。

 ジャージにサンダルという朝の低いテンションの最中、隣人にお礼参りに訪れる。

 

「やあ、当麻。朝っぱらから、うるさいんだけど?」

 

 インターホンを押した後、やつれた青年が出てきた。

 

「よ、よお、飛び級少年じゃありませんか。ど、どんな御用で……?」

 

 ひきつった表情でありながら、愛想笑いをやめない青年はできたバイトマンだ。

しかし物事には限度というものがある。

その限度を超えてしまったことを、少年は青年にタバスコを渡すことで意思を明確にする。

 

「す、すまねえ」

「それとそこのお腹を空かせているシスターと当麻に、僕から晩御飯のあまりをあげるよ」

 

 といって、寸胴に入った肉じゃがを渡した。

 これには当麻という青年は、非常に喜び舞い上がった。

実際少年のごはんはおいしく、最近から始まったおすそ分けという名の供物だ。

 被害を当麻に集約させ、その受けている害に対してお礼を込めて、料理した物品で手を打っている。実際このような事になったのは、昨日からのことである。

 昨日当麻青年のベランダに、銀髪シスターが干されていたようで訳あって面倒を見るようになったという。

少年は青年に環境法違反の通達と共に、女児誘拐に関して説明を聞いた。

結局不可抗力に落ち着いたが、その結果は調理した料理を使って当麻青年を生贄に捧げるという、とてもあくどいやり方で平穏を取り戻している。

 

「あ、リューマ!今日も持ってきてくれたの!?」

「そうだよ。ほら、二人で食べなさい」

「リューマも一緒に食べるんだよ!」

「いや、いいよ」

 

 あからさまに引いているが、そこは得意な笑顔で切り抜ける。

 しかしどんなに相手に好印象を与える笑顔でも、その断り方は外国人に通用しない。

 

「一緒に食べた方が、断然おいしいんだよ!ね、いいよね、トーマ!」

「アッハイ」

 

 リューマ少年は当麻青年とその少女と共に、朝食を共にした。

 もちろん片付けなどそこらへんを、一緒にやって終わらせるが。

 

 少年は当麻とシスターであるインデックスと朝食を食べた後、すぐに自宅に引きこもって惰眠をむさぼることになる。

しかしそれも束の間、いきなりの爆音に再度目が覚めてしまう。

 

「な、なんだよ!?」

 

 少年は今度こそ着替えて外に出ると、見たことのある文字が書かれている紙をそこら中で確認した。

少年は苛立ち、紙をことごとく踏みにじったり千切ったりした。

 その程度で彼らを邪魔することなどできないというのに。

 

 少年は当麻に割り当てられた部屋につながるその扉が、木っ端みじんに弾き飛んでいるのを確認した。少年は当麻とインデックスが、周囲に居ないか周囲を見渡す。

すると当の本人が、以前戦闘したことがある人物に拘束されているのを目撃した。

 少年は急いで階段を駆け下り、当麻の下へ行く。

 降りていく最中、当麻は女性の鉄糸でからめとられていることを確認。

更にもう一人の赤髪の長躯の男性が、あの紙でインデックスを拘束していることを確認している。

 

「当麻!インデックス!」

「隆馬!?」

「リューマ!」

 

 驚く当麻はボロボロになっており、インデックスも脚の腱を切られているようでその場から動けないようだ。そのため空中に縛られるように浮遊している。

 

「そうか。こいつが言っていたのは、お前だったのか」

「色々と手間が省けました。あのこはどこですか?」

「……ここにはいないよ」

「なるほど。確証できました。彼らの言う事は本当です」

「よし。これで、儀式を執り行える」

 

 少年と当麻は、お互いに言っていない事があることに気づき、視線を合わせるがすぐに説明責任を果たすように言い渡す。

 少年は絶対防御を自負しているが、攻撃性能はほぼ皆無なので無駄な戦闘は生まないように手を出さずにいる。

 

「では説明しましょう」

 

 女性は話し始める。

 

 インデックスは魔導書の原典を、特殊な能力によって覚えさせられている。

しかしその原典の中に、特に危険な本が二つある。

業務上の秘匿で全く知らされていないが、それによって脳細胞に巨大なダメージが与えられるという。

 そのため年に一度、脳のキャッシュを削除し初期化することで、脳破壊を抑えているという。つまり年に一度、記憶を消すことで彼女が死なないようにするということだ。

 

 そしてもう一つ大事なのが、その原典を抑えるためのワクチンソフトであるのが、以前隆馬が助けた少女が持つ本だという。

 

名前は『狭間の書』。

 

 全ての原典とされ、膨大かつ莫大な力を内包しており、ほかの原典の暴走を止められる唯一の本。しかしその原典の根源は、どの魔導書以上の力を持っており、特殊な儀式がなければ彼女すら耐えられない有害なものになっている。

 そこで必要なのは、インデックス側の魔術と原典の根源の一部を知る教団の力添えが必要だと言われている。

 

 今日ここで少年に少女の有無の是非を聞いたのは、今朝その少女と本を確保したと教団から連絡があったからだ。

 もし少年の口から少女に関して嘘があっても、ここで嘘をつくメリットがない。

 そのため少年の言葉を、彼らは鵜呑みにしたのだ。

 

 そして今、人払いの魔術で人を退避させ、インデックスにその儀式を執り行わせるための用意をする。

今ここに当麻と隆馬がいられるのかというのは、偏に彼らへの贐である。

 この儀式は成功する、と魔術師である女性と赤髪の男性は思っている。

 だからそのお礼として、二人を儀式に呼んだのだ。

今現在当麻が捕まっているのは、邪魔されないため。

少年は鍛えられていない肉体とその能力範囲により、物理的に介入できないことをここ数日間の監視で発見された。

 

「む、来たか」

 

「おやおや、お揃いですか。では、セッティングをしましょう」

 

 その声は以前隆馬が来たことがある老人のものだった。

死んでいなかったのか、と少年は驚きを隠せない。

また老人であろうその人物も、隆馬の方をみて笑みを浮かべる。

 

 教団は老人以外にも数人おり、その中に目隠しやらで仮死状態にされている少女が運ばれてきた。隆馬はその姿に驚き、脚を動かそうとしたが地面に亀裂が作られたので前に進めなかった。

 少年は女性をにらみつけるが、女性も同じく少年を据わった目で睨む。

 

 インデックス、原典の根源、少女、直流の本流を並行にするための媒体。

 

 舞台装置がそろった。

 

「では、ゲート000を開示」

 

 赤髪の男性は、その教団に言われるように魔法陣を操る。

 空中につられたインデックスは、徐々に意識がもうろうとして行き無意識状態になる。

そして次に少女がくぐもった声で、うめき声を上げ始める。

少女から流れる力が、原典の根源に流れ込む。

 『狭間の書』に掛けられてある厳重な封印が、徐々に解除されていく。

 解除されたそれは、中をさらけ出しひかりとなった情報がインデックスに少し行く。

強い光は並行措置として設定された媒体へ行く。

 さらにインデックスは苦しみだし、その無意識な目に魔法陣が浮かび上がる。

 

「なっ!? て、停止!停止!!なぜだ!?」

 

 魔法陣を一気に破壊していくインデックス。後方からだとわからないが、明らかに雰囲気が変化したインデックス。

 直後高笑いが聞こえる。

 

「フハハハハハハ!!もっとだ、もっと!さあ、書き込め書き込め!」

「おい、どういうことだ!」

「供物をささげよ!」

 

 突然老人の後ろに控えている教団員が、臓物をまき散らして爆散した。

その光景に赤髪の男性は、口元を抑える。女性はなんとか耐えた。

当麻はインデックスに意識を注がれていて、凄惨な光景を見なかった。

隆馬は二度目だったので衝撃自体は軽かったが、異臭と倍になったその破裂数に近くの花壇に吐瀉した。

 

「テケリ・リ、テケリ・リ」

 

 老人は何かをつぶやくと、供物として生贄に捧げられた教団員のソレからおぞましい生物が出現した。

異臭と共に構成する物質により、女性や赤髪の男性は顔色を悪くする。

 当麻もその光景を見て、顔色が悪くなる。一瞬目の前のことがどうでもよくなるようなことが発生して、彼は嫌だ死にたくない逃げたいと強烈に思うようになる。

 隆馬も後ずさったが、苦しそうにもがいている少女をみて気を取り直した。

少女は四肢を拘束され、目隠し・猿轡をはめられている。

彼の正義感がその場からの逃走を、拒ませるに至る。

 

「お前らに言っておこう。我々の目的は、ある理を人間の手で制御できるようにすることだ。そのために『狭間の書』とその力の欠片、残り魔導書全てをコピーするように仰せつかっているのだ!さあ、コピーしろ!」

「インデックスライブラリに、正体不明の侵入が発生。魔導図書館防衛のため、『聖ジョージの聖域』を発動します。また魔術的痕跡は、皆無。解析できません。侵入者および、そのほか全ての者を破壊します」

 

 機械的な音声がインデックスから聞こえる。

この瞬間インデックスの天上から光が降り注がれ、魔法陣が展開する。

 

「くそっ!」

「あんたらは騙されてたんだ。この拘束、もう意味はないんじゃないか?」

「そのようです」

 

 当麻はそういい、女性は当麻の鉄糸を解放、回収した。

隆馬と当麻はお互いに、助ける者を決め行動を開始した。

しかし赤髪の男性と女性は、動き出せず二の足を踏んでいる。その様子を見た当麻が、二人の事情を知りつつも叫ばずにはいられなかった。

 

「お前らの悲願成就が叶うときだろ!?今あらがえば、インデックスが助かるだろうが!あきらめるんじゃねえ!抗えるのに諦めるのは、ただの自堕落なだけだ!

やって後悔しろ!そんなんじゃ手を差し伸べられることも、救いあげられるその手を掴むこともできねぇだろ!」

 

 当麻は赤髪の男性と女性に迫りくる魔術や光線を、不思議な右手でかき消し拮抗する。

その隙に隆馬が老人の方へ近づく。しかし生物に邪魔されたので、少女を先に助ける。

 もしも邪魔をされても、また粉末状にして蒸発させればいいだけである。

 隆馬は少女の拘束を外し、目隠しと猿轡を外すと彼女がはっと起きる。

 

「あのクソジジイ!って、あれ?な、なんで……?」

「心配したんだよ?」

「っ、ごめんなさい……あ、本!」

「いまから、あのクソジジイと本とコピーを奪取する。いいね?」

「うん!」

 

 久しぶりの出会いに感傷に浸ることなく、現状を認識して次の行動を起こす。

 

「信じるぞ、上条当麻! イノケンティウス!」

 

 ルーン文字が描かれた紙が、周囲に散らばる。

それによって当麻を光線から守るように、イノケンティウスが火力を上げ盾になる。

当麻はそれを見て、すぐに脇を抜けてインデックスに向かう。

 

「術式解析――成功。既存のルーン文字を改組したものと判明。

それに対する術式をくみ上げ――成功。さらに敵性分子が接近。攻撃をソレへ集中します」

「行け!上条!」

「行ってください、援護します!」

「恩に着る!!」

 

 当麻は走ってインデックスの頭を掴む。ガラスが砕け散った音が鳴り響き、機能が停止した。しかし敵はまだ空中にある。

竜の息吹がイノケンティウスにより真上に弾かれたことで、柔らかな羽が大量に落ちてきているのだ。

 当麻は最後の踏ん張りで到達したので、その疲労により勢いそのまま遠くに転がった。

これにより羽の範囲がから抜け出したが、インデックスは魔術師二人の反応が間に合わず羽に埋もれてしまった。

 

「「インデックス!」」

 

 二人がインデックスとついでに当麻も介抱しようと行動を開始した時、隆馬は襲い掛かってくるゾンビらしきものを粉末状に変えながら教団の老人に向かって走った。

しかしその老人は残り3%のところで、撤退しなければならなかったようで苦々しい表情を浮かべながら撤退していった。

 魔術的な転移だったので、検索することなど不可能であった。

 

「終わった……?」

 

 隆馬がそういうと、少女に腕を引っ張られる。

 

「まだ終わっちゃいない!」

 

 少年がいたところに、極大の腕らしいものが殴り込まれる。

その瞬間隆馬は自分の能力が効きにくいことを察知した。

 これくらいの至近距離なら、威力がなくなるはず。それなのに眼前では、地面に罅が入るほどの威力だ。

 

「な、なんだよ、このバケモン」

「空鬼よ。倒すしかないわ」

 

 そういって、少女はサイコロのようなものを地面に投げる。

呆然と立つ隆馬がその場から回避せずとも、空鬼が勝手に攻撃を外した。

 

「それは……?」

「ダイスロールよ。この本の特権。それじゃ、回避させておくから、頼むわね」

 

 そういって、少女は少年への攻撃を、防ぎつつその本を使って空鬼というモノを検索をする。少年は空鬼の風貌に怯む暇なく、その剛腕を叩き込まれる。

 

「うわっ!?」

 

 少年は地面のひずみにつまずき後ろにこけ、尻もちをついてしまう。この隙に空鬼の蹴りが腹に突き刺さる。

 しかし少年は防御姿勢を取っていたため、空鬼の蹴りは少年の腕に触れて静止してしまう。空鬼は必至に足を動かすが動かない。それに焦っている様子も、少々見受けられた。

 

 少年は腕にある変な感触を払拭しようと腕を広げると、空鬼は異常な速度で遠方に吹き飛ばされた。ビル等に当たり瓦礫が空鬼にあたるが、そいつ自体にダメージはあまり内容ですぐに突撃体制に移行する。

 だがそれを甘んじて待機する必要性等皆無である。

 崩落した現場でクラウチングスタートを切ろうとする空鬼に、いつの間にか消えうせていた少女が飛び蹴りを放ち、脳天を勝ち割るほどの爆音を轟かせ地面に陥没させた。

 

 空鬼は腕を微動させると、そのまま意識を失ったのか塵芥となって風に消える。その様子を少女は最後まで見届け、少年は唖然としながら立ち上がる。

 

「大丈夫?けがはない?」

「うん、僕は無事だよ。それよりも、当麻達が心配だ」

 

 二人は後方でも終了していた戦闘の事後処理のため、早急に動き出した。赤髪の男性と女性と共に、救急車の手配やほかにやるべき根回しを済ませる。少年は少女と共に、病院に行くことになる。もちろん男性や女性も、共にそこへ行くことになる。

 

 

 病院側に引き渡した後、少年と少女は赤髪の男性と女性を連れて自室へ連れて行った。

やはり情報の共有と彼らの立場、という物を知りたいがための誘致である。事前に彼らに目的を言ったおかげで、ずいぶんすんなりと彼らを誘うことができた。

 

 少年は全員分のお茶を入れて、席について話を聞く体制を敷くことができた。

 

「まずは……簡単に名前からお願いします」

 

「わかりました。私は神裂火織と言います。インデックスの同僚でもあります」

「……ステイル・マグヌスだ」

 

 二人の紹介が終わると、少女を除いた少年の自己紹介になる。

そして全員の素性がわかると、どのような経緯でこの都市に来たのかというのを聞いた。

簡易的に意訳すると、政治的魂胆を含めてきただけとのこと。

 もちろん十字教という宗教や派閥、ネセサリウスといった専門知識や言語を交えた説明もあった。だが少年には全く関係がない者であるため、耳を貸すだけの会話内容になってしまった。後に濃すぎるほどに密接な関係になるというのに……。

 

 色々話し合う中、火織とステイルがインデックスに関しての確執を知ることとなる。その確執や因縁は、イギリス清教の主が仕掛けた計画に過ぎなかったというのだ。

 掌の上であったことに腹を立てているが、インデックスの年一記憶消去をしなくて済むようになったという事実に、喜色を現さないではいられないようだ。

 

「それで、神裂火織さん。彼女は一体何者なんですか?」

「私も知りたい。あの時から、記憶が消えているんだ」

「わかりました。お伝えしましょう、彼女は―――」

 

 神裂が何かの単語を紡ごうとしたとき、のどから言葉がでなかった。

この結果に魔術的な何かを感じさせることはなく、この言葉自体が世界にとって禁忌なことがわかり、少女の正体に関して謎が深まるばかりだ。

 

 

 そのあとも話し合うが、本人たちを交えた方がよく緩慢に進むとして、話は次の日の病院へ持ち越しとなる。

 

「私たちはこれにて」

「泊っていかないんですか?」

「私たちは私達の巣がありますので」

「わかりました。これからも、仲良くしましょうね」

「ええ、私たちはあなた達と共に、上手くやっていけるとそう確信しています」

 

 そう言い二人は立ち去った。

 少年も彼女らを見送った後、部屋に戻って少女と共に今日を過ごす。

 

 

 

 窓のないビル。

 

 簡易な説明でいえば、この学園都市の長が居る場所。

そんな重要な場所に、異質な姿が一つ見える。

 

「さて、アー君。ちゃんと成長できたかね?」

 

 その者はフードとローブを着込み、素性が全く分からない。しかし唯一の特徴ともいえる右手に持つ分厚い本は、彼にとって重要なのだろう。鎖で巻き付け自身の肉体に絡みつけていた。

 

「やあ、恩師ではないですか。私に何の用で?」

 

 培養液の中に逆さで浮いている囚人っぽい人物こそ、学園都市の統括理事長である。彼は目の前に存在している彼に、尊敬の意を見せている。

しかしその裏では、苦々しい表情を浮かべていた。だが培養液の色素が濃いおかげで、眼前の人物に表情を読み取られずに済んだ。

 いつも冷静沈着で感情的であるが、こんな平穏時に表情を崩すのは如何に眼前の存在が彼にとって忌々しいかよくわかるだろう。

 

「ところで、アー君。龍脈・地脈・虚数空間について、調べがついたのかね?」

「はて、なんのことやら」

「虚数学区の力を貸してもらうため、君の『計画』を利用させてもらおう。何、児戯に等しい遊びより、『大人』の遊びの方が楽しいだろう?」

 

 いったい何を言っているんだこいつ、と内心毒づくアレイスター。

 

「そういえば、『計画』に於いて邪魔ものがいたな。彼らが言うには、“リューマ”らしいが」

「彼ですか……。彼は私の『計画』に深くかかわりませんね。好きに使っていただいて結構」

「では、使わせてもらおう」

「ええ、二言はありません」

 

 その言葉の直後、眼前の彼からリューマが今回のカギを手中に収めていることを暴露した。しかし二言なしの契約により、手出し不可能なことが確定している。

 

「では、最初に“1000番目のSYSTEM”を、彼に充ててみようか」

「……」

「不服そうだな。だが、この方が、面白い。なにせ、どう転ぼうと、我々の勝利だからな」

 

 クツクツと醜悪な笑みが、この空間を支配する。彼らが何を考えているか……。全く皆目つかないが、恐怖の年になることは確定している。

 この笑みにアレイスターも笑みを浮かべる。

 

 両者は静かな夜に、最大の戦争をおこそうとしていた。

 


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