閃光。
爆風。
本来なら少年少女の健全なスポーツとして、更に自然界で普通にありふれた光景として、ポケモンバトルは日常に溶け込んでいた。基本的に自然界では、縄張り争いや雌をめぐって雄が雄姿を見せつけるために行うもの。
そう、ポケモンバトルは、本来の意味で言えば遊戯に等しいものだった。なぜならそれでやられても、ひん死という半殺し状態で終わるのだから。
だが目の前で行われているのはなんだろうか?競争か、マルチバトルか。それはわからない。
しかしわかることがある。それは異常であること……。
そして、彼らはピカチュウを確実に、どんな手段を使ってでもとらえようとしている者であることだ。
「いやぁ、楽ちん楽ちん」
「これで、幹部の道も夢じゃないわね!」
「このまま一気に、捕獲するってのは当然なわけよ!」
「よーし、ニャース。このまま前進だー!」
「ラジャー!結局うちら、ロケット団に逆らうのは無意味なのよ!」
特徴的な服であり、胸には赤い“R”がプリントされている。ほかのロケット団下っ端と違って、彼らは遊撃隊なのかロボットを繰り出していた。さらにそのロボットに装着されている、『トリモチ』を使ってネズミ捕りをやっていく。
<えー諸君、ご苦労!このピカチュウたちは、我々『ポケモン保護団体』が引き受けることになった!安心して、家に帰ってくれ給え!>
青髪の彼がロボットの操縦席内部にあるマイクから、スピーカーを通して一般市民に大してアピールをする。実際危害を与えず、トリモチで収穫しているのだ。この行動は危害を与えないものとして、十分に信頼を勝ち得たのである。
「しっかし、うちのボスも妙な事するわよねぇ。特殊な電界作って、ピカチュウたちを出せって」
「一応こいつらは、絶滅危惧種だしな。ポケモン保護団体というポケモンだいすきクラブをもじった仮想組織を繰り出してまで、ボスはこのピカチュウをどうしたいんだろうな」
「そこはあたしらの領分じゃないってわけだけど、気になるわね」
彼らが談笑していると、ロボットに大量の雷撃を加えられた。
しかしこのロボットは絶縁体でありながら、受けた雷撃と内部にいるピカチュウから放たれる雷撃を使って攻撃をすることができる。だから、簡単な雷撃は無意味なのだ。
「ちょ、収納しているピカチュウのほぼ二倍の電力じゃないの!」
「ピカチュウか、それともボスのライチュウか?」
「結局どれでもいいってわけね!」
「そーそー、結局強かったらどんなやつでも褒めて貰えるしな!」
彼らは雷撃によって視認できなかったが、それを地面に流して雷撃を無効化し視界を確保する。
眼前には電気タイプ専用感知レーダーが警告を発するほど、驚異的な存在であるピカチュウを発見した。そのピカチュウはレア度4.上条当麻の相棒だ。
「ピガチュウゥゥ」
「おーおー、怒ってらっしゃる」
「でも意味ないのよねー!『秘密兵器』どうぞ!」
「この『メカニャース1世』にかかれば、どんな敵でもイチコロってなわけよ!
発射、『電磁砲』!」
雷撃の塊が、ピカチュウに向かっていった。しかし、ピカチュウはその雷撃を、わざと食らって自分のものにした。そしてピカチュウは、それを使って地面から超振動砂鉄ブレードを取り出す。
「無駄無駄無駄ぁ!そんなんじゃ、この『メカニャース1世』なんて、倒せないわよ!」
「そうだそうだ!電界をつかった、超ウルトラハイパー強力なバリア―――」
唐突に鈍い音がした。
「「「へ?」」」
『メカニャース1世』に、レッドアラートが鳴り響く。
「え、えーと、これって……」
「まさかまさかの……」
「やな予感しかしないってわけ―――」
『メカニャース1世』は大爆発を起こして、三人を天空にロケットを打ち出すが如き勢いで吹き飛ばした。それと同時に上条のピカチュウは磁場により、ほかのピカチュウを助け自身の磁界と電界の支配下に置き、異常な電界と爆発の余波等から守ることができた。
「一体何なのよ、あのピカチュウ!」
「えーと、レア度4じゃねぇか!」
「つまりボスに献上すれば!」
「「「幹部就任、支部長就任いい感じー!!!」」」
ヒューン、キラーン☆と彼方へ、飛ばされていった。
地上は、戦闘を終えたピカチュウと自分の電界を作り出し意識を元に戻せたライチュウにより制圧され、平穏を取り戻しつつあった。
だがそれは彼女たちがいる町だけの安寧である。ほかの都市では、らいげきによるショートや停電で経済的打撃を受け、壊滅状態に追い込まれていた。そんな中でも地下の彼らは、自身を顧みず前のみを見て走っている。
世界の光となって、先を走る。彼らは窮地に立たされていることを、全く知らない。それはライチュウが怒り狂う直前まで見ていた、例の光景が全てを物語っていた。
――「我々は、G-Monsters計画を再開する」――
世界はまた、動き始めた。