PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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8月18日──【異界:蒼醒めた廃墟・最奥】彼ならきっと

 

 

 

 正直に言えば、最初に戦った戌井さんのシャドウは相当強かった。それでも今の状態の方が比にならないほど強いと言える。

 まず何よりも力が強い。それに段違いな速さが加わり、元々重かった一撃が必殺技とも呼べる段階へ。まさに1撃でもクリーンヒットすることがあれば天へ昇る勢いを生んでいた。

 まあ、ただで当たるつもりもないが。

 それに、身体の強度が上がっているのか、攻撃が通じづらくなったのも。

 

 分かっている断片と憶測だけでで語るとするとならば、その強化は、異界ドラッグによって成立した理性と本心の融合──いや、混合が行われたことに起因する。

 だがその溶け合いは、空のように“受け入れた故のもの”とは違う。だから戌井さんは今、自我を失ったように暴走しているのだろう。

 空が本心を受け入れた結果、理性を持ったままペルソナが使えるようになったのと真逆。

 戌井さん本人とシャドウが混じり合った際、恐らく彼らは本心の側に寄った。理性ではなく。

 だから理知的な行動を取らず、直感的で直情的な動きが多いのではないだろうか。

 

『観測結果出ました!』 

「報告お願い、サクラ」

『はい、まずあの巨体は大部分がシャドウです。痛みのフィードバックはあるでしょうが、傷を付けても生身のあの方には影響ありません』

「つまり、いつものシャドウと同じということか」

『ただし、胸部に熱源反応がありました。それも人型。恐らく核として本人の身体が埋め込まれているのではないかと』

「本体部分だけはなるべく攻撃しない方が良いかも、ということだな」

 

 大型シャドウの胸に剣を突き立てたら、生身の戌井さんにも刺さっていた。なんてことにでもなったらマズい。

 まあ、基本方針は固まった。本体を攻撃しない方が良いなら、まずその周囲から落とせばいいだろう。

 

「どうだよハクノ、行けそうか?」

「ああ」

「流石」

 

 それならそれでやり様はある。

 狙う場所が限られている。ならば狙えるところをすべて狙えばいい。

 一撃が怖い。ならば完封するように動けばいい。

 それだけのことだ。本能に従うだけで策を講じないというのであれば、御する方法はあるだろう。

 それに、指示を受けて行動するのは洸、璃音、柊の3人。勿論他の3人もそうだが、経験がある以上一際油断することのない面々。余計な心配をする方が失礼とさえ思える。

 

「洸、シャドウの脚がこっちに放たれた時、その脚をソウルデヴァイスで巻き取れるか」

「! ああ。少し時間をくれれば、必ず!」

「柊は凍らせる準備を」

「了解よ」

「璃音は飛び回って加速を十分に確保」

「オッケー!」

 

 結局、役割分担は変わらない。

 何度も戦っていたり、こちらの弱点を見抜けるような敵ならば変える必要もあるだろう。だが、シャドウとの戦いは基本的に一期一会。なら、個々の得意を前面に押し出す作戦の方が成功率は高い。

 

 前線を、洸と柊が受け持つ。最初のうちは同等に両方を狙っていたが、徐々に速度を上げていく璃音を捉え切れなくなってきたのか、だんだんと洸に割り振られる攻撃が多くなっていった。

 洸のソウルデヴァイスはその蛇腹剣という構造上、どうしても大振りになることがある。しかし彼の手もとに残る柄に相当する部分も単体で防御をこなせるくらいには分厚く、結果として致命的な隙が生まれづらい。

 攻めながら防御、というものを必死に成立させている。

 それは例えば洸の自身に付与した【ラクカジャ】であったり、、柊の【タルンダ】、あるいは自分のペルソナによる【スクンダ】等敵にかけたものであったり、そういった支援の数々も、この攻防を成り立たせている1要素。

 そして洸の防御が万が一間に合わなければ、自分のソウルデヴァイスを食い込ませる。

 攻撃が途切れた隙は璃音がカバー。彼女の戦法は一撃離脱だが、いざという時に注意を引けることが重要だ。普段は飛び回っていて捕まえられそうにないが、一撃を与え、動作を少しでも遅くすれば、『今なら捉えられるかも』という思考が働き、無意味であろうとそこに手を伸ばしてしまう。

 当然それで捕まるようなことはないが。なおかつ彼女は万全を期す為に、速度を緩めるのはぎりぎり自分の鏡が届く距離だと限定しているようにも見える。万が一避けきれなくてもそれであれば自分のフォローが入るから。

 間に合ってくれると信じて、ギリギリを攻めてくれるのは有り難い。そして、何があってもその信頼には応えねばと自分のやる気も奮い立たせることができていい。

 

 っと。

 

「うお」

「大丈夫か?」

「ああ、助かったぜハクノ!」

 

 狙いがばれないように間合いを測る洸を待つこと、数分。

 ついに彼が、声を上げた。

 

 

「いける!」

「よし、3人とも、頼む」

「「「 了解! 」」」

 

 

 戌井さんからの攻撃が来る。

 先程までの回避より早く動き出した洸は、左足から1歩、2歩と左に移動する。

 2歩目でぎりぎりシャドウの攻撃から逸れるルートへ辿り着いた彼は、3歩目を半歩、足首を身体の内側に向けるようにして敵側へ踏み出し、身体を捻りの態勢へ。

 

「うぉおおお!」

 

 そして攻撃が横を通り過ぎる直前に回りながら右足を踏み込み、体の回転によって生まれた遠心力でレイジングギアを最大まで伸ばし、叩き付けるように振りぬく。

 数段の刃を食い込ませつつ、通り過ぎて行った敵の足に絡めつかせた。

 

『グッ』

「柊!」

「流すわ、“ネイト”【マハブフーラ】!」

 

 洸が捉えた脚の、ソウルデヴァイスが巻き付いた部分、巻き付いていない部分、それにこちらへ伸ばされなかった方の前足と、大型シャドウの頭部にも氷結属性の攻撃を放った。

 大方追撃を警戒してだろう。

 その甲斐あって、若干仰け反ったシャドウの身体はそこから動くことはなく。

 やがて最大加速した璃音が飛来した。

 

「久我山さん! 狙う位置は」

「大丈夫、見えてる!」

 

 低空飛行に移行した金属の翼が捉えたのは、凍り付いた関節部。

 そこを、容赦なく叩き切る。

 

『グァアアア!』

「1本」

 

 使えなくなった前足の片方が力なくぶら下がっている。

 これで、もう前足が飛んでくることもなくなった。

 だが、その損失をカバーできるほどの戦闘力が、今の戌井さんにはある。

 

『がああアアア!』

「「うぉおおおお!?」」

 

 3本の足で、自分と洸の所へ突進をしてきた。

 強化された脚力は1本を失った所で顕在。跳躍力だってまだまだ残っている。

 足を折りたたんで地面とほぼ水平に跳んだこともあり、大きな銃弾のようだった。

 だが、甘い。

 回避は出来たし、なにより隙が大きかった。

 

「柊!」

「任せなさい!」

 

 返答の後、上へ跳躍。おおよそ人の身で出せないほどの跳躍力を見せた彼女は、ソウルデヴァイスを彼女の位置から見えている脚へと“投げ付けた”。

 シャドウの左後ろ脚に、白銀のソウルデヴァイスが刺さる。

 引きちぎらなければ、その場から動くことができないぐらいには深々とど真ん中に。

 

 

「チャンスだよ! 行こう!」

「ああ、総攻撃だ!」

「「 おう! / うん! 」」

 

 まあ柊はソウルデヴァイスを投げたから参加できないんだけれど。

 実体化を保つ以上、ペルソナと入れ替える訳にもいかないし。

 というわけで3人で3方から囲んで。

 切る。切る。殴る。

 ひたすらそれを繰り返す。

 

「それそれそれそれぇ!」

 

 そしてとどめの一撃といわんばかりに、助走を付けた璃音が全速力で突っ込む。

 全身を回転させ、翼をプロペラのように回しながら。

 

『ガッ、ア、ギャァアアアッ!』

 

 本人に影響の出ない範囲をギリギリまで切り刻んだ彼女は、崩れゆくシャドウの身体を見つつ、汗を拭う。

 

「ウン、及第点、かな?」

 

 一体何をもって及第点と言ったのかは謎だし、その発言に引いているメンバーも数人いたが、取り敢えず自分はスルーすることにした。

 

 

 

 シャドウの身体が完全に崩れ落ち、中から2人の戌井さんが落ちてきた。

 片方は本人。片方はシャドウ。

 2人が、ゆっくりと目を開ける。

 

「ッ。ここは……」

「戌井さん」

「……テメエ」

 

 シャドウは言葉を発さない。

 何を考えているのかは分からないが、彼と一対一で話せるのであれば好都合だ。

 まずは、本人の口から聞いておきたいことがある。

 

「貴方は」

 

──Select──

  どうして誰も頼らなかったんだ?

 >何を取り戻したかったんだ?

  何を目指したかったんだ?

──────

 

「……」

 

 問うと、彼は黙り込んだ。

 答える義理はねえ、と突っ撥ねられるかとも思ったが、そうでなくて安心した。

 

『あの日々だよ』

 

 代わりにシャドウが答える。

 本人の視界に入らないように、背中合わせになるようにして座り込んで。

 ただしその背中と背中には距離がある。触れ合うことは、なさそうだ。

 

『カズマさんが居て、シオさんが居て、オレらがいる。そんな、当たり前の日々が欲しかったんだ』

「本当ですか?」

「……ああ」

 

 認めた。

 自分の中で答え合わせをし、疑問を解消していく。

 

 取り戻したかったのは、昔のような“居場所”。強さではない。

 強さを求めたのは、彼にはそれしか残っていなかったから。

 美月が褒めるほどのカリスマを持つカズマさん。今更性格を変え、カリスマを磨くのは困難極まるとの理由で、おそらく強さによるグループの統括を図った。

 それは、統括というより支配。より上下関係を意識させ、彼の思い描くグループ像から乖離していくもの。

 

 だとしたらやっぱり、彼の取るべき行動は。

 

 

──Select──

 >相談。

  逃走。

  喧嘩。

──────

 

 

 顔を背けることではなく、そのままの流れに身を任せることでもなく。

 

「貴方は、向き合うべきだったんだと思う」

「……何と、だよ」

「自分の大切なものと。その将来と」

「向き合っていただろ」

「貴方が大切にしていたのは昔のBLAZEだったと思ったが、違う?」

「……」

 

 黙った。

 少なくとも今のBLAZEをないがしろにしていた訳ではないだろう。

 ただ、未来より昔を重視していた、と思わざるを得なかったのだ。

 恐らく、その理由は。

 

「多分、戌井さんも真剣だったんだろう。その度合いは所詮外野の自分には分からない。けれど、あなたが過去のBLAZEを求めて足掻いていたのは分かる」

「それは……」

「だけれど、難しかったんだろう。困っていたんだろう」

「……」

「困ったのなら、相談すれば良かったんじゃないか。すべき人が、いたはずだ。誰より昔のBLAZEを知っていて、誰よりその道筋を知っている、その人に。誰よりも貴方が、その人が信頼に足る人であるということを知っているのだから」

 

 志緒さんを、指差す。

 だが、自分の指先に居るのが彼だと気付いた戌井さんは、顔を沈ませた。

 

「だが、シオさんはいなくなって……!」

「探したのか? 確かに志緒さんは貴方の目の前からいなくなった。けれども、この町から去ったわけではなかっただろう?」

 

 そんな余裕があったかは分からないけれど、余裕がなかったからこそ、精神的支柱を探すべきだったのだ。

 異界ドラッグなんて、道を外れたものではないものを。

 

「知っていますか? 志緒さん、今商店街で働いていることを」

「……」

「蕎麦屋さんに、住み込みで」

「…………」

「原付ではあったけれど、バイクで周辺への配達だってしている。目撃者だって多いだろう。きっと、本腰入れて探せば容易に……とはいかなくても、見つかったはずだ。それを貫かずに諦めたのは」

『ま、シオさんがいなくなったショックから、逃げていたからだろうなァ』

「でしょうね」

 

 シャドウの答えを否定しない。自分も、本人も。

 そして、志緒さんも。

 

「だけれど、戌井さん。思い返してください。貴方の先輩は、恩人は、泣きついて来る後輩を、そしてダチを見捨てられるほど、非道な存在だったのか」

『「それは」』

「見てください。実際こうして、問題があると命を賭けてでも駆けつけてくれる先輩が、そんな冷酷な存在に見えるのか」

「そんな、ことは……」

 

 話題に出されている志緒さんの顔が曇る。

 それはそうだ。彼自身、逃げ出した負い目があるのだから。

 だが、ここでは口を出さないで貰う。

 志緒さんの言い分を聞きたいんじゃない。

 戌井さんの思っていることを整理してもらいたいから。

 

「本人は逃げ出したとかなんとか言っていますが、付き合った期間の短い自分でも断言できる。あの人は優しい人。そして、強い人だ。確かに一度逃げ出したかもしれない。けれども一度現実を見れば、正しい選択をしようと動ける人だ」

 

 祐騎が志緒さんの脇腹を肘で突いた。

 少し痛そうだ。

 空が顔を合わせるように回り込み、笑顔を浮かべる。

 志緒さんは片手で顔を覆った。

 

「二言、現状と、悩みを打ち明ければよかった。それだけできっと、あの人は親身になって聞いてくれただろう。今と同じ。次こそは間違えないぞと一念発起して、BLAZEに戻りはしなくても、粉骨砕身して現状の回復へ挑んでくれたはずだ」

「ああ……そうかもなァ」

 

 少しだけ、穏やかな表情で同意してくれる戌井さん。

 その目を見れば分かる。光景を想像できたのだろう。

 ならばあと一息だ。

 

 

 

 ここに至るまで、いくつかの意見を聞いた。

 そもそも命を掛けてまで救う必要はない、なんていう意見もあったがそれはそれとして。

 大事なのは、相談した上でどうにもならなかったらどうするか。

 

 

 美月の言っていたことを思い出す。

 

────

「今できることとできないことを明確に線引きし、色々と取捨選択することになる……とは思います」

「取捨選択?」

「応えられない期待を背負い続けることはできませんし、相手が私を見ているのならともかく、先代を見て要求しているのなら、断るほかないでしょう。私は、私にできることしかできませんから」

────

 

 考え、考え、取捨選択していくやり方。

 

 

 

 他には、志緒さんの考え方もあった。

 

────

「頼れば良かっただろ。口が裂けても、俺を頼れとは言えねえ。俺は一度、お前らから逃げてる。そんな俺がどの面下げていつでも頼れなんて言えるかよ」

『……なら、誰を』

「志を、“焔”を! 共にした仲間に! 決まってんだろ!」

────

 

 もっと多くを巻き込み、全員で答えを探していくやり方。

 

 正しいのは、きっと

 

 

──Select──

  美月の方だ。

  志緒さんの方だ。

 >どちらも。

──────

 

 

 両方。時と場合によって好まれる選択が出るだけで、極論どちらも正解なのだろう。

 だが、違和感を持った。それはどちらも今回の件に適した答えではないと自分が感じたから。

 なので、2人の意見の良いとこどりをして、自分の言葉で話すとしよう。

 

「もし志緒さんの力を借りても改善できないんだったら、それこそ皆を巻き込むしかない」

「……巻き込む、だァ?」

「ああ。相談するんだ。そうすることで、“自分たちの思うBLAZEならこうする”を突き詰めていく。志緒さんも呼んで……、ああ、カズマさんを知っている人たちも呼ぶと良いかも」

「……できるわけねえだろ。だいたい、なんでンなことを」

「そうすれば、“今の全員が理想とするBLAZE”と“昔のリーダーが率いていたBLAZE”の選択の違いが分かるから。だけれど、志緒さんの選択を聞いて、それが良いと付いていくようではいけない。昔と今の差異を見て、許すかどうかは現BLAZEの皆さんが決めることだ。それが、チームを引き継いでいくってことだと思う」

「……引き継ぐ」

「それに、志緒さんはともかく、カズマさんは亡くなっている。死者の声を聴くことはできない。けれども、“こう言うだろうな”を想像はできる。それを想像できる人が多ければ多いほど、自分の中での説得力が増す。“多数の人が想うカズマさん”がその選択を認めたなら、それは誰に恥じることもないBLAZEの選択と呼べるんじゃないか?」

 

 きっとそれが、死者の想いを汲む、ということだろうから。

 汲み過ぎるのは勿論よくない。でも、無視するものでも決してない。

 彼が積み上げてきたものを、想いを汲み取る。

 それが出来ることできっと、その人の命は無価値ではなく、何かを残したと証明されるのだろう。

 

 

「いや……生きてたってあの人は、そういうことに口を出さねえよ。生きていたらまだしも、死んだ今となっちゃな」

 

 反論が来た。

 咄嗟に言い返そうとする……が、その顔を見て思いとどまった。

 憑き物が落ちたような、晴れやかで穏やかな表情をしている。

 

「まったくだ、分かってるじゃねえかアキ」

 

 志緒さんも口を開く。

 その口端は、上がっていた。

 

「ああシオさん。きっと、カズマさんはこう言うよな」

 

「「それは、お前らが決めることだろ。いつまで死者の俺に頼ってるんだ?」」

 

「くっ」「ふっ」

 

「「ハハハハッ」」

 

 

 2人、笑いあう。

 そこに、先程までの不穏な空気などなかった。

 

 ……気が付くと、シャドウが消えている。

 いつの間に、と思ったが、恐らく結構前からなのだろう。

 そうか。本音を受け入れて、納得してくれたのか。

 ならばあとは、その選択を見守るだけだ。

 

 笑いが止まら無さそうな2人を置いておいて、みんなを見る。

 満足気だった。達成感のある顔をしていた。何といっても連戦だったし、今までにいないほどの強敵だったのだ。……いや、毎回思っているな、これ。

 とにかく今回も乗り切った、ということだろう。

 

「──あ」

 

 

 声を零したのは誰か。もしかしたら自分か。

 分からないが、誰かの声で漸く気付いた。

 異界が、収束しかけていることに。

 

 どんどんと周囲は白くなっていき、目を覆うものが必要なほどに眩しくなってくる。

 そうして腕をかざし目を瞑るうち、異界は収束して元の脇道へと景色が戻っていた。

 

 

────>ダンスクラブ【ジェミニ】。

 

 

 

「……終わったぁ」

 

 脱力したように、璃音がへたりこむ。

 璃音だけではない。祐樹も洸も座っていた。空は床に座り込むほどの疲労は浮かべていないが、それでも微かに無理をしているように見える。柊は……うん、いつも通りだ。

 ……あ、柊と空を見た璃音が意地で立ち上がった。休んでいればいいのに。

 

「みんなありがとう。今日は解散にしよう」

「ええ、分かったわ」

「お疲れ様です!」

「お、おつかれ~」

「おう、お疲れ」

「ハクノセンパイ、タクシー呼んで」

「うーん、おんぶで良いか?」

「なんで誰も得しない方向を思いついたの?」

 

 みんな得だと思ったからだが。

 

「どうせ疲れて動けないんだし、タクシーでハクノセンパイの家行って、またゲームでもすれば良いじゃん。ね、コウセンパイ」

「………………まあそうだな」

 

 この沈黙の長さは、色々考えたけど結局何より疲労が上だったと推測できる間だった。

 ……まあ、良いか。

 

 さて、それじゃあ本当にタクシーでも呼ぼうか。と彼らから視線を外そうとした時、ふと視線を感じた。

 そちらに目を向けると、璃音がこちらを見ていた。

 ……ああ、璃音も疲れているよな。

 

「璃音、良ければ来ないか?」

「えっ!? ……う、ウン」

「じゃあ4人で移動だな」

 

 別に一緒にゲーム遊ぶわけではないが、何もない部屋でもくつろぐくらいはできるはず。せめて暗くなる前に送ろう。

 志緒さんは……まあ、戌井さんと積る話もあるだろうし、今回は良いか。今も何か話しているし。

 一言断って、移動しよう。

 

 

 






 なお、璃音をどの席に乗せるかで少し揉めた模様。
 アイドルを前の席に乗せるわけにはいきませんし、かといってどこに置くかと言えば……トランクなら安泰だよね?
 必死に変装させて、運転手後ろの席、祐騎の隣に座ってもらって一応解決。
 その後の様子は……次話あたりですかね。
 やるか分かりませんが。
 なお、次回からコミュ回に戻ります。

 いつもありがとうございます。
 誤字脱字報告、ご意見ご感想等お待ちしております。


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