PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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 閲覧ありがとうございます。
 再開して早々間を空けてしまいすみません。
 どうしても毎年2~3月は忙しく、次も空きそうです……すみません。




11月5~6日──【教室】祐騎とトモダチ

 

 

 月曜日。

 登校の支度をしていると、サイフォンが誰かからの連絡を受け取っていたことに気づいた。

 送信主は、美月だ。

 

『御厨さんが異界の中に居るとして、彼の適正はA-。猶予は比較的長く見て大丈夫でしょう。尤も、事態の解明のためには早く動きたいところではありますが』

「ああ、分かっている。ありがとう、と」

 

 念のために送ってきてくれたのだろう。確かにすっかり抜け落ちていたが、御厨さんが異界に囚われている可能性もなくはない。最悪の期限までは時間があるらしい。

 とはいえ彼女の言う通り、昨日いろいろと話はできたものの、まだ分かっていないことは多かった。少しずつでも、動いてみるべきだろう。

 取り敢えず情報を集めたいところだが、御厨さんの人となりについては、恐らく美月たちが最も詳しい。彼女や京香さん、征十郎さんにもお話を聞けたらと思うけれども……忙しいだろうしなあ。

 

「……ん?」

 

 そんなことを考えていると、またもサイフォンが鳴動。メッセージを受信したらしい。

 相手は……またしても美月?

 

『それはそうと、明日の夜、よろしければ、お話ししませんか?』

 

 絶好の機会に、もちろん、と返信してサイフォンをしまう。

 さて、そろそろ学校へ行こう。

 

 

 

────>杜宮高校【2階廊下】。

 

 

 文化祭が終わり、静けさが取り戻される。

 ……かと思いきや、何やらひと騒ぎになっているらしい。

 話を聞いたところ、テストの結果が張り出されているのだとか。

 確かに10月下旬に中間試験があった。本来1週間程度で返されるはずだった結果が、文化祭で伸びた、らしい。

 まあ確かに今結果が明かされれば、緩みかけていた気も引き締め直されるだろう。少なくとも文化祭前の浮足立った状態とは、比べ物にはならない。

 

 さて、自分の結果は……と。

 

 

 

 ……学年10位以内だ!

 

 

「マジかよハクノ!」

「素直にやるわね」

「岸波君、すごい……!」

「ほう、そこまでとは!」

 

 普段付き合いのある人たちが、自分の成績に好意的な反応を示している。

 

 

 ……今回は自信があった。

 けれども、まだ頑張れる。

 次こそ、1位を取ってみたい。

 

 もっともっと頑張らないとな。  

 

 

 

──午前──

 

 

────>杜宮高校【教室】。

 

 

「はいはい、みんな。集中して……っていうのも難しいかな。テストの結果が出たばっかりだもんね。少し雑談しよっか」

 

 数学の時間。九重先生が、心ここにあらずな数人の姿を見て、苦笑しながらチョークを置いた。

 

「多分いつも言われてるだろうけど、こつこつ毎日勉強することが大事だからね。日々の積み重ねが結果に出るんだから。一夜漬けや神頼み、っていうのは、先生、ちょっとお勧めできないなって」

 

 こつこつ毎日。

 それはそうだ。

 よく聞くのが、忘却曲線などの記憶のメカニズムだろう。時間経過で人は物事を忘れていくけれども、何度も何度も繰り返していくことで、忘れるまでの期間を長引かせることができる、という。

 ただ、それも忘れる前に取り掛からないといけないので、毎日継続的な努力が大切、という話だったはず。

 

「あ、神頼み……っていえば、みんなはお参りとかに行くのかな? 合格祈願、はまだ早いかもだけど、恋愛成就、とか、学業成就、とかあるしさ」

 

 お参り。

 ここらへんで有名なスポットといえば、九重神社だろうか。何を祭っている神社かは知らないけれども、色々な筋で話題になっている場所だと言う。

 

「ここで問題です。神社へのお参りの作法として、間違っているのはどれでしょう。……じゃあ、岸波君!」

「はい」

 

 

──Select──

 >静かに合掌して一礼。

  2拝2拍手1拝。

  2拝4拍手1拝。

──────

 

「そうだね。神様にご加護を頂いたことに対して、感謝しながら拍手を打つのが一般的かな。逆に例えば寺院とかは、仏様を祀られているから、拍手じゃなくて合掌が敬意を払う作法、とされているね」

 

 祀っているものが異なれば、崇める方法も違う。

 それはそうか。適材適所ではないけれども、場所にはそこ毎の作法があるのだろう。

 ちゃんと勉強していかないと、バチが当たりそうだ。

 

「あ、ちなみによく耳で聞くと間違える言葉だから覚えておいて欲しいんだけど、寺社仏閣より、神社仏閣が正しい用語なんだ。寺社仏閣だと、元が仏教のお寺と、仏閣の意味合いが重なっちゃうからね。……これ、もしかしたら国語のテストに出るかもだよ?」

 

 九重先生は数学の教師だったはず、なんで国語の……とは思ったけれど、確かに間違えやすい単語であれば、なくはないのかもしれない。

 覚えておいて、損はなさそうだ。

 

 

──放課後──

 

 

 不意に、ここ最近フウカ先輩の姿を見てないなと思い、保健室へ行ってみる。

 扉を潜った先には、いつもと変わりない彼女が居た。

 

「いらっしゃい、岸波君」

「こんにちは、フウカ先輩」

 

 彼女の座るベッドの横、いすを勝手に引き、腰かける。

 彼女は少し嬉しそうに微笑み、今日の体調などを伝えてくれた。

 自分も話を聞きながら、近況報告も兼ねた世間話を広げていく。

 ……そろそろ、もっと踏み込める気がする。

 

 気が付けば、良い時間になってしまっていた。

 そろそろ帰ろうか。

 

 

 

──夜──

 

 

 今日は何をしようか、と決めあぐねていると、サイフォンが鳴動した。

 怜香からの着信だ。

 

『今、少し話せるかしら』

「ああ、もちろんだ」

 

 何をするかと迷っていて、時間が勿体ないほどだった自分にとって、有り難い提案。断るはずもない。

 彼女の時間が許す限りで通話をした。

 ……そろそろもっと仲が深められそうな気がする。

 

 

 

──11月6日(火) 放課後──

 

 

 今日の夜は予定がある。

 それまで、何をしようか。

 

 

 ……そうだな、祐騎と話してみるのもいいかもしれない。

 最近、雑談はたくさんしているものの、がっつりと遊んで話すこともなかったし。

 ……それにまあ、璃音のことを少し聞いてみるのも良いだろう。実際のところどう考えているのか、とか。

 

 

────>杜宮高校【1階廊下】。

 

 

「何か意見が欲しいんだったら他を当たった方がイイんじゃない?」

 

 廊下で見かけた祐騎は、自分の姿を上から下まで眺めた後、半目でそう言った。

 

「まだ何も言ってないんだけれど」

「帰り支度をした状態。誰かを探す素振り。僕を見つけた途端視線が定まってこっちに来る。それだけあれば、少なくとも僕か僕らの誰かに用事があったのは分かるって」

 

 あとはまあ、センパイ分かりやすいし。

 そんなことを言う祐騎の存在を、少し嬉しく思った。

 前は分かりづらいとばかり言われていたのに、これが時間と苦難を共にする、ということかと少し感動さえ込み上げてくる。

 

「え、なにその反応」

「で、他を当たれ、って言うのは?」

「……まあイイけど。そのままだよ。僕は正直、どっちでも良い側だからね」

「どっちでも良い、って」

「玖我山センパイはまあめんどいセンパイだったけど、嫌いではないよ。このまま別れたら話すことはないけど、声だけなら、しばらくはどこに居たって聴けるわけしね」

 

 そう言って、片手でヘッドフォンを撫でる祐騎。

 思い出したりしたときは、SPiKAの曲を流したりも、するのだろうか。

 聞いても、答えないだろうな。

 

「だからまあ、センパイの意見に従うよ。って言ってもどうせセンパイなら──」

「ん?」

「なんでもない。それより、用件はそれだけ?」

「……いや、よければ一緒に帰らないか?」

「まあ、ヒマだし良いよ」

 

 

────>杜宮高校【校門前】。

 

 

「お、じゃあな。四宮!」

 

 通りかかった生徒が、祐騎に向かって挨拶する。

 それに対して祐騎は愛想笑いもせず、右手だけ上げた。

 

「なんだかんだ、同級生との交流は続けているんだな」

「僕を何だと思ってるのさ」

「祐騎をどう思っているか……?」

 

 そうだな……

 

 

──Select──

 >効率主義者?

  できる後輩?

  ただの高校生。

──────

 

 

「いや、そりゃそうだけど……まあ、誰かからそう見えてるなら良いか。実際、手際の悪いヤツとか、できないヤツ見てると腹立つし」

「けど、見捨てない優しさがある」

「止めてくれない? ホント。そういうんじゃないから」

 

 ジト目でこちらを見る後輩。

 と言われても、毎回毎回色々なことに付き合ってくれている姿を見ているからなぁ。

 

「自覚はないんだろうな」

「こっぱずかしいことを口にするのを止めてって言ってんのが分かんない? コウセンパイといいハクノセンパイといい、手伝わせる2人に限ってそんなこと言ってくるんだから。今後マジで2人のこと手伝わないよ」

「すまなかったって」

 

 これ以上は本当に臍を曲げてしまいそうなので、白旗を上げる。

 

「ただ謝って許すとでも? 貸し1……いや2だからね」

「洸の分も乗ってないか?」

「いや、2人とも2。合計4」

「重そう……」

 

 揶揄ったわけではないのだけれど、祐騎にとってはむず痒かったのかもしれない。確かに、そういうことを言われるのは嫌そうな性格だ。

 けれども、言わなければ伝わらないから、言葉にするのも大事だと思う。そう思っているから洸も言ったのだろう。

 誰が自分のことをどう思っているのかは分からない。だから、聞かれたら素直に答えるのが一番だと思う。

 そうすれば祐騎も不安にならないだろうし。

 機嫌は損ねてしまったようだけれども。

 

 

 それにしても、そんな祐騎が同級生との交流を続けているとは。

 以前、空が色々と気を回して、彼女のコミュニティ……というか、人脈の一端に祐騎を触れさせようとしている、という話を祐騎から聞いた。

 それに対して、辟易としていることも。

 その時は友達はいないし、いらない、といったことを言っていたかと思うが。

 

「で、祐騎は結局、同級生とちゃんと関わることにしたんだな」

「まあね。軽い考察も兼ねてだけど」

「考察って?」

「どんな友達なら欲しい? って聞いたのはセンパイじゃん。ちょっとキッカケがあって、まずは人と関わって見ないと、それをトモダチにしたらどんな利益になるかが分からないからね」

 

 まさか、祐騎からそんな言葉が出てくるだなんて思わなかった。

 いらない、必要ないの一点張りかと。

 ……いやまあ、利益とか言っている時点で、そこまで印象から離れるということもないけれども。

 

「それに、友達が居ないとうるさい同級生やセンパイが居るからね」

 

 やれやれだ、と言いたげに、しかしまんざらでもなさそうな表情で、彼は肩をすくめた。

 ……本当にどういう気の迷いだろうか。

 さっきは祐騎は、キッカケがあって、と言っていた。

 さては。

 

 

──Select──

  寂しくなったのか。

  気でも触れたか。

 >葵さんにも何か言われたか。

──────

 

 

「……素直に言い当てられるのも癪なんですケド」

「だって、必要に迫られなければやらないだろう、祐騎の場合」

「…………まあ」

 

 

 祐騎が頬を掻く。

 やはり、図星だったようだ。

 

「でも、さっき言ったことも嘘じゃないよ」

「というと?」

「姉さんに『皆さん以外の友達を紹介しないと~』って脅された時はどうしようかと思ったけどさ。前にセンパイと話した時に、気づいたことがあって」

 

 ……きっと葵さんには脅した自覚がないんだろうな。

 葵さんの朗らかな笑みを思い浮かべながら、祐騎の話を聞く。

 

「センパイたちと関わらなければ、センパイたちのことを知れなかった。センパイたちに関わらなかったら、あの世界のことも知れなかった。そんな損を僕はするところだったんだ」

「損って?」

「熱中できることを、知らないものを暴く機会を、失う所だったってコト」

 

 未知への好奇心。それが彼を突き動かしているのも確かなのだろう。

 話を聞いて思い返したのは、彼が父親のシャドウと相対している場面のやり取り。

 

 

────

 

「不確かでも良い、険しくても、辛くても、激ヤバだって構わない。そっちの方が燃えるってもんでしょ。踏み慣らされた道は、多くの人が歩んだ道ってことでしょ。先人たちがいっぱいいて、そんな中を競争するなんてメンドイしさ。……きっと、父さんと同じことをやったとしても、同じ結果は出ないよ。出せない。だってそれは、アンタが足掻いて作ったものだし」

『祐騎……』

「ま、僕が選んで進む以上、険しい道なんて存在しないけどね? アンタが得た成功だって、数年後にはその程度って切り捨てられる程度かもしれないし。悪いけど、成功に胡坐をかいてるヤツなんて、蹴落とすの楽勝だから」

『……フン、誰に向かって口を効いている。愚かな選択……本当にお前は愚息だな』

「愚かで結構、滑稽で結構。でもさ、やらずに後悔するなんてゴメンだ。手を伸ばせば届くかもしれない時に、両手がふさがってるなんてことしたくない」

『そうだな……祐騎、最後にもう一度聞く。大丈夫だな?』

「勿論」

 

────

 

 敷かれたレールの上より、開拓の道を。

 既知より、未知を。

 そういう選択を、祐騎はできる。

 その宣言は、今も彼の中で生きているのだろう。

 そして、そんな数ヶ月前の誓いを思い起こすと共に、少し前のやり取りの際に言っていた記憶も呼び起こされた。

 

────

 

「……分かってるよ。その代わりに、僕にはコウセンパイのような横の繋がりはないし、郁島みたいに縦の繋がりはない。久我山センパイは一般人枠じゃないから比べる必要がないとして、柊センパイやハクノセンパイは……まあ似たようなものか。まあとにかく、犠牲にしたものは確かにあったんだ」

 

 

────

 

 

 今の祐騎は、自分に人との繋がりがないことを、マイナスだと捉えてはいる。

 その言葉を発した時は改善する気がなかったのかもしれないが、その足がかりを、空の強引なアシストと葵さんの口添えで作られた。

 1歩踏み出せば、抱いた負い目を消せるかも。

 そんな状況で踏み出さないほど、祐騎は弱くない。

 

 それに、だ。

 前に彼には言ったように、“今の”祐騎は別に友達が欲しいわけではないだけであり、今後そうなる可能性は、結構あるのではないかと思う。

 ……だってそもそも、無限にいる人々、そのすべてが未知の結晶なのだから。

 その面白さに祐騎が嵌ったら、どうなるんだろう。

 そんなことを、彼の話を聞きながら思った。

 

「ま、せっかく学生生活なんてヒマな時間を過ごすんだし、ひとまずクラスメイトたちから見極めてあげても良いのかなって」

「すごい上からだな」

「上だしね」

 

 対等な関係、というものを築く気は、今のところないらしい。

 飄々と言う彼の横顔を、今は覚えておこう。

 なんだか、祐騎との距離が縮まった気がする……

 

 

「あ、センパイ。ちょっと寄り道しない? 蓬莱町のゲーセンに、ちょっと注目してるゲームがあってさ」

「良いな。行こうか」

「ハクノセンパイはフッ軽で良いね。ケド、お互い初めてなんだから、一方的に負けたら恥ずかしいよ?」

「望むところだ」

 

 自分だって色々とゲームに触れる機会が増えた。

 前より、善戦できる気がする。

 

 

 

 ……ボコボコに負けて祐騎に揶揄われながら、家へと帰った。

 

 

 




 

 コミュ・運命“四宮 祐騎”のレベルが6に上がった。
 
 
────
 

 知識  +2。


 
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