IS VS Build   作:シュイム

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この話を書き終えた直後、なぜか書いたデータが反映されずまた1から書き直しに。
昨日までと違い、ゆっくり少ない時間で合間にちょくちょく執筆、書き終えたために本気でスマホぶっ壊そうかと思いました。

それではどうぞ!(血涙)


第6話 救出のランナウェイ

ビルドが日本に広まってから早3、4年が経ち、俺は中学生になっていた。

中学生になっても相変わらず父さんと束姉さんは鬱陶しい。

俺のブレザー姿をカメラを収めようとしたり、学ランの方が似合うと言って着せようとしてきたり...

まあ2人に絡まれるのも嫌いじゃないわ。

 

そんな中、3人で夕飯を食べていると

『第2回 モンド・グロッソ! ドイツで開催!

優勝候補は第1回での優勝者! ブリュンヒルデこと織斑千冬!!

次に―』

 

...!! そうだ、忘れてた!!

この日、織斑一夏は織斑千冬の優勝を阻止しようとする者達によって誘拐されるのだ。

結果的に織斑千冬は決勝戦で不戦勝、一夏は無事に保護されたが千冬さんの功績に泥を塗ってしまった事に負い目を感じてしまう。

元々この大会で引退する予定だったからと当人は気にしていなかったらしいが、この事件が一夏に大きな影響を与えた事は間違いない――

 

「けんくん?」

 

束姉さんの言葉でハッとする。

束姉さんも父さんも心配した顔でこちらを見てきていた。

しまった、思わず考え込んでしまった。

 

「あ、ごめん。 何でもないよ。」

 

「本当に? 大丈夫?」

 

「建兎、もしかしてこの大会で何か起こるのか?」

 

「...!!」

 

「...やっぱりか。 はぁ...。お前な、そういう事は俺達には気兼ねなく話せって言ってるだろ? まあもちろんどうしても言いたくないのなら別だがな」

 

束姉さんも笑顔で俺を見てくる。

やっぱり父さん達には隠し事は出来ないらしい。

いや、俺がわかりやすいだけか。

束姉さんのお気に入りである千冬さんにも一夏にも関わる事だし話しておこう。

 

「うん、実は―」

 

とりあえず俺の知ってる事を全て話した。

2人とも最後まで聞き漏らすことなくちゃんと聞いていた。

 

「そっか、そんな事が...。 ちなみにちーちゃんが引退する理由は知らないの?」

 

ここで言うちーちゃんとは千冬さんのことであり、束姉さんがつけたニックネームである。

 

「ごめん、分からない。 というか覚えてないんだ。」

 

そう、俺はこの世界で生きていった10数年の内に詳細を忘れてしまった。

ぶっちゃけ話したことも曖昧で必ず合ってるとは限らないし、その上俺がいた為に起きた原作改変で全く別の未来になる可能性だってある。

例えば更識、布仏姉妹のあの出来事だ。

あの事件で更識姉妹は死んでいたかもしれないし、本音もよくて大怪我というレベルであった。

 

このことを考えると必要以上に関わってどうなるか分からないまま出来事が起こるよりかは原作通りにキャラ達に任せるという方がいい気もしてくる。

 

「...けんくん。 君はどうしたいの?」

 

「俺? 俺...は...」

 

「もしけんくんが助けたいなら束さんも本気出して協力する。

助けたくないなら、束さんは手を貸さない。 どうする?」

 

「...」

 

分からなかった。 俺はどうしたいんだ?

俺が助けなくとも一夏は助かるだろう。 千冬さんだって元から引退するらしいじゃないか。そうだ、俺は別に何もしなくても...

 

「...助けたい。」

 

思わず口にしていた。 父さんも束姉さんも驚いたが構わず続ける。

 

「一夏を助けたい、助けたいよ! 正直怖いし、できるか分からない...。 でも、何もしないのは嫌だ!」

 

言い切った。 少々小っ恥ずかしかったが、これが俺の本音だ。

父さんも束姉さんもニヤリと笑う。

 

「...その言葉を待ってたよ! よし、いっくん救出作戦といこうか!」

 

「建兎、俺は今回はお前達の力にはなれない。 けど、忘れんなよ? 近くにいない時はもっと近くにいてやる。 俺はお前の味方だ。 」

 

「もうそれ何回目だよ...。 でも、ありがとう。 それが何より助かるよ」

 

俺は父さんと力強く握手をする。

きっと自分も何かしら手伝いたいが何も出来ない事に悔しいのだろう。

そんな父さんに俺が出来ることは無事に成功し、帰ってくることだ

絶対、帰ってくるよ、父さん。

 

こうして俺たちの「織斑一夏 救出作戦」は始まった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

あれから数日後、第2回 モンド・グロッソ当日の夜、俺はドイツに居た。

束姉さんのロケットを使いドイツにやってきたのだ。

...やってる事は犯罪だろうが仕方ない。 俺しかやれる奴が居ないのだ。

 

さて、「織斑一夏 救出作戦」についてだが、簡単に言えば

1. 一夏が居たカフェに予め隠れる

2. 黒ずくめの奴らが来た時に一夏を連れマシンビルダーを起動。

3.マシンビルダーによって逃走、敵がISを使う前にビルドで無力化出来れば良し。最悪戦闘になれば倒すつもりで行く。(免許は取得済み)

4. 他のモンド・グロッソ関係者に一夏を託す。千冬さんにバレないようにする。

というものだ。

上手くいく確証はない、だがやるしかない。

 

隠れて少しした後、俺はある事に気づいた。

 

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今は大会途中だ。客足も普段と比べれば減ってるのは分かる。

現に今も道を歩いている人は居ない。

だが、幾ら何でもおかしい。

俺はこっそりビルドに変身、陰に隠れながら店に近づくと...

 

「....!! クソっ! やられた!!」

 

そこには客どころか店員もいないもぬけの殻になっていた。

原作改変で店員も連れ去られたか、誘拐犯とグルだったか、最悪誘拐犯に...

 

チッ、俺のせいで!

やり場のない怒りを落ち着かせ、束姉さんに報告する。

 

「もしもし、束姉さん? やられた。店には誰もいない。店員ごと連れ去られたかもそれないし、最悪は姿を見られたってことでそのまま...」

 

『そ、そんな!! いっくんは!?』

 

「分からない、でも少なくとも人質として捕らえたんだから殺されてはいないはずです。」

 

『そっか...それならとりあえずいっくんの場所を探さないと...』

 

「でも、どうしたら? テキトーに探してたって見つからないだろうし、このままじゃ試合が始まっちまう!」

 

刻一刻と迫るタイムリミットの中、俺は焦りと自責の念に駆られていた。

あの時こうしてたら、束姉さんと綿密に話し合っていれば...

今更どれだけ後悔したって後の祭りだが、悔しくて仕方なかった。

 

『うーん、ISの探知してるけどすぐには検出できないなぁ...

恐らく変なジャミングしてるんだと思うけど...』

 

「そうか... でもどうしよう、本当にこのままじゃ... !」

 

その時俺はあることを発見した。

 

「...束姉さん、もしかしたら一夏の場所割り当てられるかもしれません。」

 

『え!? うそうそ! どうやって!?』

 

「えっとですね、実は...。」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

一夏Side

 

「クソっ! なんでこんなことに! どこだよここ!」

 

一夏は暗い倉庫の中で拘束、監禁されていた。

すると、数人の男女がやって来た。

「悪いな、坊主。お前にゃあ恨みはねぇが人質として捕えさせてもらう。 」

 

「!! あんたはカフェのマスター! なんで俺にこんなこと!」

 

「俺は雇われたのさ。ブリュンヒルデ、織斑千冬を嫌う奴にな。依頼主は今度のモンド・グロッソで奴が二連覇するのが気に食わないんだとよ。

それを阻止するためにお前を誘拐したってわけだ」

 

「そんな事の、あんたらの勝手な事の為に! 俺を誘拐したのか!! ふざけんな!!」

 

「あのね、私達にも生活ってものがあるの。大変だったのよ?アンタがどこに向かおうとするか綿密に打合せして、カフェの店員に成りすますの」

 

「そうだ! 助けて欲しけりゃ神様にでも祈ってみれば? 大事な大事なお姉ちゃんに来てもらうまでな! ギャハハハ!」

 

「うるっせぇ! この、卑怯者が!!」

 

その言葉が彼女の琴線に触れた。

 

「ブチッ! てめぇ、言わせておけば言いたい放題言いやがって!! 黙ってりゃ可愛げもあるってのによォ!」

 

バキっ、ズムっ!

 

「グハッ!!」

 

一夏は彼女に一方的に殴り、蹴られた。

鼻や口から血が出てき、アザや汚れもついた。

 

「へっ! 残念だったな! お姉ちゃん以外だーれもお前のことなんか救っちゃくれな「何が残念だって?」...なにィ!?」

 

全員が声のした方を向いた。

薄れゆく意識の中、一夏が見たものは赤と青の色で出来たヒーローだった。

 

「さあ、実験を始めようか」

 

その言葉を耳にすることなく、一夏は意識が途切れた。

 

一夏Side out

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

建兎Side

 

「てめぇ、どうしてここが分かった!」

 

「そんなこと、言うわけないでしょ?」

 

ふぅ、無事ではないにせよ、なんとか間に合ったな。

まさかビルドフォンに解析機能が追加されてたとはな。

すげえ助かった。

 

束姉さん、父さんや父さんの研究所の人たちの協力でビルドフォンの解析は出来ていた。

しかしそこから加えて出来た事は少しの解析機能のみであり、しかもつけるにはとてつもない時間と労力を要するものだった。

 

普段はあんなんだが、やるときゃやるんだな。

父さん、ありがとうよ。頭が上がらないな。

 

「チッ、まさかもう追っ手が来るとはな。おい、こいつは俺達が運ぶ。

お前らはあいつの足止めをしろ」

 

「分かってるよ! あたしらに指図すんな!」

 

そう言って男達は一夏を背負い、車で行ってしまった。

女二人はフランスの第二世代機、ラファール・リヴァイブを装着して臨戦態勢に入る。

 

「へっ! 格の違いってものを教えてやる!」

 

「何者かは知らないけど見られたからには逃がさないわよ?」

 

そう言って片方は俺に突進、もう片方は銃撃をしてきた。

突進とはいっても直線の突撃ではなく緩急をつけた動きに、俺の動きを先読みして打つ精密射撃。

チームワークはなかなか良く、ラビットの能力や長年の鍛錬が無ければ躱すことは容易ではないだろう。

 

「かっこよく登場しといてそんなもんかァ!?」

 

「悪くないけれど、ここまでね」

 

2人は余裕綽々と言った顔で話しかけてくる。

まあ、2人からしたらそういう風に見えるだろう。

 

ギュイイイイン、ズドンッ!!

 

「うっ!」 「ぐはっ!」

 

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急いでるのはやまやまだったが加減が分からず、本気出したら1発でIS強制解除、絶対防御が発動し、2人は気絶してしまった。

 

とりあえず捕縛して後でおまわりさんに渡そう。

 

さて、と。

 

『ビルドチェンジ!!』

 

マシンビルダーを起動、一夏を乗せた車を追跡した。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

そこから先は蹂躙劇と言っても過言じゃなかった。

解析機能で追跡。

割とすぐに合流し車を襲撃。

一夏を救出した後、誘拐犯を気絶させ(デコピン)捕縛。

後は警察に任せた。

 

これで長い織斑一夏 救出作戦は幕を下ろした。

束姉さんに連絡すると、もう既に千冬さんは決勝戦を不戦敗で終わらせてこちらに向かってるらしい。

ミッションコンプリートしたとは言え、パーフェクトとは行かなかった。

俺の両腕で眠ってる一夏を見て俺は複雑な気持ちになった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

千冬Side

 

「一夏、一夏っ!!」

私は弟の名を呼ぶ。返答がくるとは思っていないが、呼ばずにはいられなかった。

 

一夏は私の唯一の家族であり、私を支えてくれる大切な存在であった。

そんな一夏が私のせいで誘拐されたと聞いた時は言葉が出なかった。

 

「待っていろ! 一夏! 」

 

そんな言葉とは裏腹に私はとても焦っていた。

一夏が私の前から居なくなるなど考えたくない。

 

「...!?」

 

すると突如謎の人影が私の前に現れた。

目を凝らし、よく見るとその影の正体に気づく。

私はそいつを知っていた。奴の名は

 

「ビルド...!」

 

数年前、突如として日本に現れた謎のヒーローであり、あらゆる状況で人を救っており、多くの人々に噂されていた。

 

ある子供は奴に憧れ、ある男はISを超える戦士と崇め、ある女はISを真似した模造品と罵った。

しかし、未だに奴の正体や装甲については分かっておらず、謎だらけの人物であった。

 

彼の登場に私は混乱し、様々な疑問が生まれた。

なぜ奴がここ、ドイツにいるのか。

なぜ一夏が危険な目にあっているのを知ってたのか

なぜ私がここにいると分かったのか

 

しかし、そんな考えは一気に飛んだ。

彼が両腕で抱きかかえてる男

それは私が必死で探していた弟、織斑一夏だった。

目を開けず、体を彼に預けていた。

 

「...!! 一夏っ!!」

 

「大丈夫です。 眠ってるだけですよ。」

 

奴はそう諭すよう私に言うと、一夏を渡してきた。

よく見れば一定の呼吸に人特有の温もりがあった。

よかった。本当に...良かった...!!

 

「では、俺はこれで。」

 

「! ま、待て!!」

 

思わず呆然としてしまったがハッと我に返り、奴を睨みつけ問いただす。

 

「お前はなぜここ(ドイツ)にいる! なぜ一夏が危険だと知っていた! なぜ私がここにいると分かった! 答えろ!!」

 

「...」

 

しかし、奴は何も答えない。

痺れを切らしてさらに怒鳴ろうとすると

 

「俺はどうしても助けたかった。 ただそれだけです。」

 

何を言い出すかと思えばたったそれだけの言葉であった。

そんなの理由になっていない、ふざけるな。普段ならそう言っていただろう。

だがその言葉が妙に納得でき、嘘だと到底思えなかった。

 

「それでは、お気をつけて」

 

そう言って奴は屋根を飛び越え、去っていった。

私は奴を追うことも止めることも出来ず、呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 

 




ようやくここまで来た...。
あと一話終えれば原作第1巻の話に入ってきます。
もう暫しこの拙い茶番にお付き合い下さい!

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