IS VS Build   作:シュイム

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お久しぶりでございます。
今回投稿する際、前までの話をほぼ全て編集しました。
ストーリー上は何も影響はないはずですのでご安心を。
あと今話のサブタイ変えました。


第25話 青と黄と交差するブラック

暗い、暗い闇の中。

何も見えず、聞こえず、感じない。深い、深い闇。

ラウラ・ボーデヴィッヒは生まれた時から今までその闇の中に生きてきた。

 

自らはなぜ生きるのか、何のために生きるのか、「ラウラ・ボーデヴィッヒ」とは何なのか...。

そんな疑問は自分には不要だった。

自分は数ある代わりの一つに過ぎない。

そんな現実が彼女を何度も苦しめた。

 

今もなお闇の中へと堕ち続ける彼女に差し込んだ光。

それは教官こと織斑千冬であった。

 

彼女と初めて出会ったとき、その強さにとても震えたのを覚えている。

彼女が先ほどの疑問のすべての答えになった。

織斑千冬が師匠であり、目標であり、自分が「ラウラ・ボーデヴィッヒ」である理由となった。

 

...そんな彼女を不完全にさせた二人。

彼女の実弟であり、汚点を残した張本人「織斑一夏」。

彼女をたぶらかし、甘い人間にしたビルドこと「桐生建兎」。

絶対に認めない。たとえどんな手を使おうとも...。

 

彼女は鈍く光る赤い右目を閉じ、夢のない眠りに沈んでいった...。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そ、それ本当!?」

 

「う、ウソついてないでしょうね!?」

 

月曜の朝、教室内で騒ぐ声に廊下にいた一夏と俺は目が目をしばたたかせた。

 

「なんだ?」

 

「...さあな。 ふぁあ...。」

 

ちなみに俺も一夏もシャルロットの事で夜通し話していたのですごい眠たいのだ。

 

「本当だってば! この噂、学園中で持ち切りなのよ? 月末の学年別トーナメントで優勝したら織斑君達と交際できーー」

 

「俺たちがどうしたって?」

 

「「「きゃああっ!?」」」

 

一夏が声を掛けた途端すごい悲鳴があがった。

遅れてシャルロットも教室に入り、何事かと俺に声をかけてくる。

 

「で、何の話だったんだ? 俺の名前が出ていたみたいだけど」

 

「う、うん? そうだっけ?」

 

「あ! あたし自分の席戻らなきゃ!」

 

「そ、そうだった! 早く戻らないと!」

 

どこかしらよそよそしい様子で皆自分の席やクラスに戻り、廊下に居た女子達も蜘蛛の子を散らすように去っていった。

 

「...なんなんだ?」

 

「僕も今来たばかりだから何とも...。」

 

「早く座るぞ」

 

このイベントについて知ってはいたが眠気に耐えられずさっさと座り、うつ伏せで眠った。

以降、授業中に指され叩かれたのは言うまでもない。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「はー。この距離だけはどうにもならないな」

 

「あー、いってぇ...。 この痛みだけはいつになっても慣れないな」

 

授業終了後、俺たちは共にトイレへと向かっていた。

いわゆる連れションである。

 

学園内で男子が使えるトイレは増えたとはいえ3つのみ。

廊下を走らねば間に合わない距離にあるのに、当然走れば怒られる。

それでもなんとか間に合うよう早く歩いていると声がした。

 

「なぜこんなところで教師など!」

 

「やれやれ...」

 

「うん? 千冬姉に、ラウラの声...?」

 

曲がり角の先で2人が何やら話し合っているので俺たちは物陰に隠れた。

 

「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ。」

 

ラウラはこれまでにも織斑先生にドイツに戻るよう直談判していた。

しかし答えは「無理だ」の一点張り。

そんな織斑先生にラウラの不満もヒートアップする。

 

「お願いです、教官。 我がドイツで再びご指導を。このような極東の地での役目を果たしていても、あなたの能力は半分も生かされません」

 

「ほう」

 

「大体、この学園の生徒は意識が甘い、危機感に疎く、加えてISをファッションかなにかと勘違いしている。 そのような程度の低いものたちなど教官が教えるにたらなーー」

 

「ーそこまでにしておけよ、小娘」

 

「っ...!」

 

っ!

少し離れたここでも気迫が伝わるほどの声に関係ない俺もビビってしまった。

それはラウラも同じなようですくんでしまい、続きが出てこない。

 

「少し見ない間に偉くなったな。15歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

 

「わ、私は...」

 

ラウラの震え、消え入りそうな声。

先程の気迫に震える恐怖と自分の全てとも言える相手に嫌われてしまうのではという恐怖が彼女に見受けられる。

 

「お前は転入してきたばかりだから知らないだろう。 この学園の者達は少しずつだが『力』というものを理解しつつある。 私やお前とはベクトルの違う『強さ』を彼女達は掴み取るだろうさ。」

 

「...」

 

「そして、そんな彼女達を変えたのは桐生、 奴の存在だ」

 

「!!」

 

俺の名前が出た途端ラウラは驚き、すぐに恨めしそうな顔をする。

そんなに彼女に恨まれてるとは思いもしなかったがな...。

 

「お前と同じ候補生のオルコットや凰、そして私の弟も例外ではない。 奴がアイツらに良い影響を与え、少なからず心身共に成長させている。 そう、出来すぎているほどにな...。」

 

最後だけなぜか織斑先生はなんとも言えない顔をしていたが、ラウラは本当に悔しそうな顔をした。

自身が恨んでる相手が尊敬してる相手にとても褒められている。

それは面白くないだろう。

 

「桐生建兎...! 何故ですか! あなたは、何故奴にそこまで!!」

 

「...はぁ、そろそろ授業が始まる。 さっさと教室に戻れよ」

 

「......」

 

声色の戻った織斑先生が未だに納得のいってない様子のラウラをせかし、その後にこっちに...あ。

 

「そこの男子ども。 盗み聞きか? 異常性癖は感心しないぞ」

 

「な、なんでそうなるんだよ! 千冬ねー」

 

パァンッ!

 

「学校では織斑先生と呼べ」

 

「は、はい...」

 

「それから桐生、お前もだ。 お前はこの劣等生と違って座学も実技も大丈夫だろうが、勤勉さを忘れるな。 言わずもがな織斑もな。」

 

「「はい...。」」

 

「廊下は走るなとは言わん。 バレないよう、間に合うように走れ」

 

「了解」

 

結局間に合いませんでした

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「さて、じゃあこないだやってたあたしが近接戦中にセシリアが援護ってのやるわよ」

 

「了解しましたわ。 ですが、誰かお相手してくださると良いのですけど...。」

 

放課後、第三アリーナで鈴とセシリアは山田先生と模擬戦をした時の復習をしていた。

月末にあるトーナメント戦であらゆる人達と戦う以上、新しいことに挑戦するより失敗を見直し、改善しようと2人で話し合った結果だった。

各々で改善点を見つけ、良くはなっているが出来れば完璧にしたい。

本当ならば誰か相手がいると良かったのだが、山田先生は仕事で出られず友達にも声を掛けたが都合が合わなかったのだ。

 

と、そんな折に2人に超高速の砲弾が飛来した。

 

「「!?」」

 

緊急回避の後、飛んできた方角に目を向けるとそこには漆黒の機体、名は『シュヴァルツェア・レーゲン』、操縦者はーー

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ...」

 

セシリアの顔が苦くこわばる。

鈴は戦闘を予測し、準備を整える。

 

「...どういうつもり? いきなりぶっ放すなんていい度胸してるじゃない」

 

「中国の『甲龍』にイギリスの『ブルー・ティアーズ』か。 ...ふん、データで見た時の方がまだ強そうではあったな」

 

いきなりの挑発的な物言いに、口元が引きつる2人。

 

「何? やるの? わざわざドイツくんだりからやってきてボコられたいなんて大したマゾっぷりね。 それともジャガイモ農場じゃそういうのが流行ってんの?」

 

「...」

 

ラウラの態度に不快感を抱いた鈴は負けじと罵倒するがセシリアは何も言わない。

しかし、ラウラは続ける。

 

「はっ...。 ふたりがかりで量産機に負ける程度の力量しか持たぬものが専用機持ちとはな。 よほど人材不足と見える。 数くらいしか能のない国と、古いだけが取り柄の国はな」

 

ぶちっーー!

 

鈴の中で何かが切れる音がした。

と、同時に装備の最終安全装置を外す。

 

「ああ、ああ、わかった。 わかったわよ。 スクラップがお望みなわけね。 ーーセシリア、どっちが先やるかジャンケンしよ」

 

もう既に鈴の怒りのゲージはMAXに差し掛かっており、今すぐにでも暴れだしそうな雰囲気だった。

さぞセシリアも怒り心頭かと思いきや

 

「ーーいえ、ここはボーデヴィッヒさんに先程の練習のお相手になって頂きましょう」

 

「...は?」

 

「!?」

 

セシリアはニコッと笑い、なんと共闘することを提案してきた。

あまりの意外さに鈴は変な声をあげ、ラウラも驚きを隠せない。

 

「ちょうどわたくし達、こないだの模擬戦の復習をしようとしてまして。 ついでにお相手になってください」

 

「ちょちょちょちょ!!」

 

勝手に1人で話を進めるセシリアに鈴は耐えかねて個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)で話をする。

 

『何勝手に話進めてんのよ! 大体なんでアイツに練習相手頼んでんのよ! さっきからあたし達をすごいバカにしてきたのに!!』

 

『鈴さん、落ち着いてくださいまし。 この間桐生さんがこうおっしゃっていましたの』

 

鈴を宥めながらセシリアはこの間の話をする。

彼女の言う建兎の説明とは

 

『ボーデヴィッヒさんの事なんだけど、もしオルコットさんが襲われたらその時はとにかく冷静に無関心を装うんだ。』

 

というものだった。

建兎曰く怒りっぽい人に1番有効な手だとか。

 

『なるほどね...。 正面から罵倒しあうんじゃなく好きに言わせておくってこと』

 

鈴も落ち着き、セシリアに同意する。

こちら側としては相手を探していて、なおかつそれなりに強いヤツとが望みだったので、まさに願ったり叶ったり。

鴨がネギしょってきたようなものだった。

 

『腹が立っているのはわたくしも同じです。 ですがここは抑えて、逆に今までの成果を見せて差しあげましょう』

 

『そうね! ついでにボコボコに出来るし一石二鳥よ!』

 

(本当は『無視しろ』まで言われてましたが、まあいいですわよね)

 

ちゃんとアドバイスを聞いてるようで聞いていないセシリアだった

 

通信を切った2人は再びラウラと向き合う

 

「お待たせしました。 では二人で行かせていただきます」

 

「はっ! 同じ過ちを何度繰り返すつもりだ? 所詮下ら「はいはい、わかったから。 ちょっと黙ってて」っ!」

 

「では鈴さん、こないだは距離を開けすぎたので今回は...」

 

「そうね、途中でローテーションするのも「貴様ら! 私を無視するなっ!」...うるさいわね。 あたし達は相談してんの。 あんたには後でかまってあげるから待ってなさい」

 

ここまでは概ね計画通りである

怒りに身を任せるとロクなことにならないことを知っている二人はラウラの行く先を予想していた

 

ラウラは同学年で最も強い

それは二人も知っていたが、今回は自分たちに分があった

二対一というのもあるが、相手は怒っていて自分たちを侮っている

自分たちは冷静であり、これまで何度も勉強や特訓を重ねてきたので自信もあった

 

「じゃ、行くわよ!」

 

「参ります!」

 

「とっとと来い!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一夏Side

 

「一夏、今日も放課後特訓するよね?」

 

「ああ、もちろんだ。 今日使えるのは、ええとーー」

 

「第三アリーナだ」

 

「「わあっ!?」」

 

廊下でシャルルと並んで歩いていたら、いつの間にか横に並んでいた第三者こと箒からの予想外の声に俺たちは思わず大声を上げた

俺たちの反応が不満だったのか箒は眉をひそめる

 

「...そんなに驚くほどのことか。失礼だぞ」

 

「お、おう。 すまん」

 

「ごめんなさい。 いきなりのことでびっくりしちゃって」

 

「あ、いや、別に責めているわけではないが...」

 

ぺこりと礼儀正しく頭を下げるシャルルに、箒も気勢をそがれてしまい、話を逸らすように咳払いをする

 

「ともかく、だ。 第三アリーナへ向かうぞ。今日は使用人数が少ないと聞いている。空間が空いていれば模擬戦できるだろう。 ...それより、今日は建兎は一緒ではないのか?」

 

「ああ、なんか寄るところがあるとか言って行っちゃったぞ」

 

そう、建兎も誘ったのだが断られてしまい、シャルルと二人だけで行動していたのだ

仕方がないので三人で実践訓練をすることにした

 

喋りながら向かっていると何やら第三アリーナで騒ぎが起きているようだ

シャルルに促され、俺たちは観客席で先に様子を見ることにした

 

「誰かが模擬戦をしてるみたいだけど、それにしては様子がーー」

 

ドゴォンッ!

 

「「「!?」」」

 

突然の爆発に驚いて視線を向けると、その煙を切り裂くように影が飛び出してくる。

 

「鈴! セシリア!」

 

特殊なエネルギーシールドで隔離されたステージで二人と戦っていたのは『シュヴァルツェア・レーゲン』を駆るラウラだった

しかしよく見るとその機体にはところどころ損傷していた

鈴とセシリアがラウラを押しているのだ

 

「くらえっ!!」

 

鈴のIS、『甲龍』の両肩が開く

そこには不可視の砲台である衝撃砲『龍砲』が搭載されている

そこから放たれる一撃は訓練機ならば即ボロボロにさせるであろう

その砲撃をラウラは傷ついた機体ながらも回避をしようともしない

 

「くっ! だが、このシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前では「遅いですわ!」なッ!?」

 

しかし、ラウラが何かするより早くセシリアが狙撃する

無駄のないコンビネーションに翻弄され、うまく回避ができずに衝撃砲にも当たってしまった

 

鈴が『双天牙月』メインで衝撃砲も使う格闘戦に加え、ピットを使った変幻自在でタイミングの良い射撃を繰り出すセシリアの援護

この間の山田先生との模擬戦からそんなに経ってないのに物凄く上手になっていた二人にシャルルと箒も驚いている

 

「くっ! ありえない! あの教員との戦闘ではここまでの動きはできなかったはず!」

 

「ほらほら、最初の威勢はどうしたの? まるで相手にならないわね」

 

「あれからわたくし達も鍛錬を重ねたのです。 むしろできていない方がおかしいですわ」

 

ラウラの悔しそうな顔を見る二人はまだまだ余裕のようだ

二人の機体もダメージは見られるが、ラウラのと比べれば大したことはない

 

「でもま、二対一なんだから仕方ないわよ。 付き合ってくれてありがとね」

 

「お相手していただきありがとうございました。 では」

 

そう言って二人は自分のピットに戻ろうとラウラに背を向ける。

 

しかし、その時ーーー

 

「っ!! 舐めるなあああああああ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

突如シュヴァルツェア・レーゲンが閃光を放った。

何事かと振り返る2人にワイヤーブレードが襲いかかる。

 

「ぐうッ!」 「うああッ!」

 

油断していた2人は捕まってしまい、動きを封じられる。

ラウラはニヤリと笑い、何かのスイッチを押した。

するとワイヤーから()()()()が吹き出し鈴とセシリアを蝕む。

 

「うぅッ! ああああ!!」

 

「ぐぁッ! いやああああ!!」

 

2人は断末魔の叫び声をあげ気絶。一気にISも解除されてしまった。

それでも尚2人を狙うラウラに恐怖を覚えながら、これ以上被害を広げないよう俺も白式を起動し突入しようと思った時

 

『ドゥン、ドゥン!!』

 

2発の銃撃音が鳴り、ワイヤーは止められ俺も冷静になる。

 

「チッ! 誰だ!」

 

ラウラが怒鳴るが、姿はどこにも見当たらない。

しかし、ラウラの向いてる方から

 

『ボンッ!』

 

『やれやれ、平穏に終わるかと思ったけどさすがにこうなったら手を出さざるをえないよな。』

 

青と黄色い姿のビルド、建兎が煙と共に現れた。

 

一夏Side end

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

建兎Side

まったく、無視しろって言ったのにな...。

まああそこまでけなされたらムカつくのも分かるけど

 

突然の俺の登場に驚くラウラ。あと観客席の一夏にシャルルや箒

突然とは言ってもずっと居たんだけどな、アリーナ内に

 

この『カイゾクコミックフォーム』のまま『四コマ忍法刀』を使って隠れ身の術してただけだ

それはさておき、どうするかなこの状況...。

あれだけ余裕だった鈴やセシリアならワイヤーが飛んできても振り切れるだろうと思ってたらまさか()()()()()()が搭載されてるなんてな...。

鈴やセシリアは無事か?

ガスが入ったのは一瞬だったしそれもISがガードしてくれたみたいだからなんとか大丈夫であってほしいが

 

「ふっ! ようやく現れたか桐生建兎!! 味方がやられてノコノコやってくるとは間抜けなものだな」

 

ラウラは先程まで狙っていたセシリア達に目もくれず俺を嘲笑う

一夏は今にも飛び出して来そうだがとりあえず今は目の前の相手に集中する

 

『ああ、分かった分かった。 俺と相手したいんだろ? してやるよ。その代わりその2人を先に運んでからな』

 

「はっ! そんなもの...。 聞くわけがないだろう!!」

 

と、言い終わるや否やいきなりレールカノンをぶっ放す

それをギリギリで躱し、ドリルクラッシャーで反撃

しかし、停止結界がそれを止める

 

当然だが彼女は飛べるので俺のビルドとは相性の良さで言えば向こうに軍配が上がる

そのため何度も銃撃を繰り返すが一向に当たらない

 

「無様だな桐生建兎! やはり貴様は私の敵ではない! 」

 

すごく嬉しそうなラウラ

 

そして遂に一夏とシャルロットはバリアを破壊し、突っ込んできた

 

「建兎! 鈴とセシリアは任せろ! 俺も後で援護に入る!」

 

「ボーデヴィッヒさん! 君の相手は建兎だけじゃないよ!!」

 

シャルロットのアサルトライフル二丁での射撃がラウラを足止めする

箒は先生を呼びに行ったのか既におらず、一夏も2人の様子を確認し観客席に戻る

 

「こざかしい!!」

 

「ぐっ、うあッ!」

 

止まない銃撃に痺れを切らしたラウラは強引に瞬時加速(イグニッション・ブースト)でシャルロットを突破

勢いよく飛び出してきたのでシャルロットはそのまま吹き飛ばされてしまった

 

「これで、終わりだあああッ!!」

 

俺の方向へとてつもないスピードで突っ込んでくる

右拳を強く握り、突き出す。が、

 

『分身の術!』

 

「っな!?」

 

横向きにジャンプし、俺2人で躱す

ラウラからすれば俺が分裂したように見えただろう

また背中から1人、2人と増える

 

「さっきから何なのだ貴様は! 真面目に戦え!!」

 

「建兎だけじゃねーぞ!」

 

「さっきから僕達のこと無視しすぎだよ!」

 

さらに一夏とシャルロットも再び加わり、一気に形勢は逆転した

ワイヤーブレードを飛ばし、俺たち4人を捕らえようとするが当たらない

一夏の単純な攻撃ならいざ知らず、シャルロットの無限とも思える銃撃はラウラに厄介だった

先程から攻撃がのらりくらりと躱され、レールカノンでは先に向こうが攻撃出来てしまう

 

そこでラウラは考えた

 

「はっ!」

 

「!?」

 

「なっ! させるか!!」

 

なんと先程吹き飛ばしたシャルロットを狙い、ワイヤーブレードを飛ばしたのだ

しかし、シャルロットなら躱すことは容易いはず

本当の狙いは...

 

「...かかったな、愚図め」

 

「しまっ! ぐはぁッ!」

 

そう、必ず一夏はシャルロットを庇うだろうと読んでいた

すぐに停止結界で動きを封じる

 

「一夏ッ!」

 

「クソがっ!」

 

「は、はなせッ!」

 

「貴様も終わりだ...。」

 

スイッチを押すラウラ

もう間に合わないかもしれない

一か八か、この手段を使う!!

 

『隠れ身の術!!』

 

『ドロン!』

 

刹那ビルドの姿が消える

が、即座にまた現れた

その場所は

 

「どけっ!」

 

「何っ!?」

 

「建兎っ!」

 

一夏の位置である

瞬間移動ではないのだが、突然現れたことによりラウラは一瞬、ほんの一瞬集中が切れてしまい、一夏を離した

 

一夏をどかし、煙はそのまま俺に勢いよく吹き出す

 

「ぐ、ああああッ!!」

 

「け、建兎っ!!」

 

「い、いやあああ!!」

 

即座に変身解除

一瞬だけガスが入った鈴やセシリアがあれだけ苦しんだのだ、数秒など想像を絶する痛みだと思われる

 

そのまま受け身も取れず倒れる建兎

一夏は目の前のラウラに目もくれず友に駆け寄り、シャルロットはあまりの衝撃で動けなかった

唯一ラウラだけが笑みを浮かべ、再び一夏へ攻撃を始める

 

ワイヤーブレードを叩きつけようとした瞬間、

 

『ガギンッ!』

 

金属音が激しく鳴り響き、ラウラは我に返る

ラウラの攻撃を止めたのは

 

「...やれやれ、これだからガキの相手は疲れる」

 

「ち、千冬姉!?」

 

いつもと変わらないスーツ姿でIS用近接ブレードを軽々と操る織斑千冬先生だった

当然ISもISスーツも身につけておらず、ラウラよりも早く動き、攻撃をその身で受け止めたのだ

もうこの人1人でいいんじゃないか?

 

「模擬戦をやるのは構わん。 ーーが、アリーナのバリアーまで破壊し、未確認の装備で重傷者を数人出す事態になられては教師として黙認しかねる。 この戦いの決着は学年別トーナメントで決めろ」

 

「教官がそう仰るなら」

 

ラウラは素直に頷き、ISを解除する

アーマーは光の粒子となって消えた

 

「織斑、デュノアもそれで良いな? それより早く桐生を医務室へ運べ。 時は一刻を争うぞ」

 

「あ、ああ」

 

一夏は先程から予想外のことが起きすぎて惚けてしまい、思わず素で答えてしまう

シャルロットも賛成し、建兎を抱えて医務室へと向かった

 

「...そしてボーデヴィッヒ、お前にはまだ聞かねばならないことがある。 後で私の部屋まで来い」

 

「っ、 はい...。」

 

いつもならすごく喜ぶところだが状況が状況なのでとてもそんな気になれない

そしてアリーナ内の全ての生徒に向けて

 

「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。 解散!」

 

パンッ! と強く手を叩く

先程まで起きていた蹂躙劇の終わりを告げるチャイムのように、しかしそれが現実であると気付かされるように聞こえた




えー、ブラックラビッ党の方、大変申し訳ありません。
書き方が思い出せず1から書き直したらなんか完全に悪者になってしまいました。
作者もラウラは結構好きなキャラなんですけどね...。

ではまた次回。

あとコラボ予定してます。

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