デスゲームの半死人   作:サハクィエル

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 投稿までの期間が長過ぎたうえに、内容が薄いです。申し訳ない。
 次こそは、次こそは濃い内容の話を書きます。


デュエル

 俺は真っ暗闇の中に居た。俺と、手に握られている剣、そして装備品以外、何もない暗闇の世界に。

 

 俺は走り出していた。暗闇の中、どこかへ向かって。目の前に現れるモンスターをなぎ倒し、俺はさながら死神のように、死体の山を闊歩して行く。

 

 ふと、前方に見えてきたのは、このゲームの創製者である茅場晶彦ことヒースクリフだった。

 

 俺は無謀にも、茅場へと剣を振り下ろす。勝てないと分かっていながら、今使えるうちで最強のソードスキル、ホリゾンダル・スクエアを。

 

 結果から言うと、ホリゾンダルスクエアは止められた。ヒースクリフはその十字盾で、俺の剣を弾き返したのだ。刹那、盾の圧倒的な攻撃力によって剣は砕け散った。

 

 そして、ヒースクリフは冷徹に剣を振り、俺のHPバー()を完全に消滅させた。

 

 次の瞬間、自分の体がポリゴン片となって消滅し、そしてーー

 

「うわああっ!」

 

 目が覚めた。

 

 どうやら、全てが夢だったようだ。あの奇妙な光景は全て俺の想像の産物であり、ここ「現実(ソードアート・オンライン)」で起きたこととはなんら関係ないものだった。

 

「び...びっくりした...」

 

 ふとそんな声が聞こえ、俺は驚愕して横を向いた。

 

「なんだ、サチか...」

 

 俺の丁度真横に居たのは、ギルドメンバーのサチだった。

 

 ここは10層の圏内。宿屋の一室ではないので、他プレイヤーが近くに居るのは当たり前のことなのだ。ここは最前線なのだから、尚更。

 

 サチを含むギルド、月夜の黒猫団とは一週間ほど前に知り合った。一週間前と言えばちょうど9層が攻略されて間もない頃であり、俺はその時、強い片手剣を報酬に添えてあるというクエストを進めていた。

 

 そのクエストをクリアするためには、わざわざ4層まで出向かなければいけなかったので、俺は仕方なく4層まで行ったのだ。そして、そこで、危険な状態の黒猫団と出会ったのだ。

 

 死亡回数的にーーつまり、ステータス数値的に、当時の彼らと俺は大差なかった。しかし、死への恐怖が和らいでいる、ということは、つまり、戦闘で保守的な立ち回りをしなくても良くなる。

 

 俺はそのアドバンテージを活かし、黒猫団を助けた。

 

 そして、そこから成り行きでギルドに入った、というわけだ。

 

 現在の残りライフは90。つまり、10レベルということだが、それはこの層、10層を攻略するのにはあまりにも低すぎた。実際、9層のモンスター群にも1、2撃ほどの単純な連続攻撃で殺される程度の防御力、HPしか無く、このままではいけない、と頭をかかえていたところだったのだ。

 

 しかし、黒猫団はそんな俺とレベルが同じ。これからは、彼ら、彼女と一緒に強くなっていけばいい。俺はそう思ったのだ。

 

ーーーー

 

「少し、僕とデュエルをしてくれないか?」

 

 集まりの途中、ギルドマスターであるケイタに不意にそう言われ、俺は思わず「へ?」と間抜けな声を出してしまった。

 

「デュエル?」

 

「勿論、一撃決着のものでいいよ。僕はちょっと、プレイヤースキルの向上がしたいんだ」

 

 プレイヤースキルの向上。そう言えば、俺はこのギルドの中ではプレイヤースキルが高い方という評価を下されている。

 

 しかし、それはこのエクストラスキルのお陰。つまり、対等な条件のデュエルならば、簡単に負けてしまうかもしれないのだ。

 

 ーー正直、怖い。

 

 だが、ここでデュエルを断れば、それは「逃げ」だ。俺が最も恥ずべき行為だと断じている「逃避」をすることになってしまう。

 

「いいよ。やろう」

 

 丁度、ここは圏内の開けた場所。デュエルをするにはうってつけの場所だ。

 

 ギルドメンバー全員を下がらせたうえで、目の前に出現したデュエル承諾の主旨を記したウィンドウをしっかり叩くと、俺とケイタはデュエルを開始した。

 

 デュエルはーー経験はないがーー恐らく、ソードスキルを乱発する、対モンスター戦のような戦い方をしていたら、負ける。

 

 剣士のプレイスキルと反射神経、それが重要になってくるだろう。

 

 だからこそ、俺は普段の定石であるレイジスパイクによる牽制をせず、敏捷力補正の許す限りの速度でケイタに向かって駆けた。

 

 それをケイタはライトエフェクトを伴った攻撃ーーつまり、ソードスキルで迎え撃とうとする。

 

 俺はそれを避けるように跳躍、ケイタの背後に回ると、振り返って何のソードスキルも発動させずに剣を打ち込んだ。しかし、その攻撃は跳ね戻ってきた片手棍に防がれる。

 

 剣が弾かれたことで、一時的に右脇腹ががら空きになった。ケイタはその隙を逃さず、下段から上段へ跳ね上がる起動のソードスキルを使い、俺に攻撃を叩き込んだ。

 

 それを慌てて盾でガード。シールドバッシュで迎撃しつつ、剣を引き戻してバーチカルを頭部へ叩き込む。

 

 この軌道、決まるーー!

 

 バーチカルは正確に、まるで糸を引くようにケイタの頭部を打った。

 

 それによりデュエルは終了し、俺はゆっくりと剣を収めると、ケイタに向かって右手を差し出した。

 

「グットゲーム」

 

「ーーはは、やっぱり強いや」

 

 そう言って笑うケイタ。彼は謙遜しているが、実際、彼は強い。攻撃への反応速度は、アニメの主人公を思わせるところがある。

 

 それに、彼が負けたのは、単に実力が足りなかったからではないのだ。

 

 ギルドのみんなには見えていなかったが、俺は盾で攻撃を防いだとき、確かに見たのだ。ケイタの真横に、レベル減少を示すウィンドウを。

 

 これはレベルドレイン。触れた相手のレベルを下げるマイティアクションXプロト0の能力で、作中(エグゼイドの方)では、パラドのパーフェクトノックアウトの異常なレベルを下げるために、ゲンムが使ったのだった。

 

 これほどPvPに長けた能力はないが、このSAOではあまりPvP能力が重宝されないし、需要もあまりない。このゲームでPKーープレイヤーキルの略だがーーをすれば、それは人を殺すことになってしまう。

 

 ーーこの能力が活用されることはないかな、なんて思いつつ、俺はレベルドレインのことを意識の隅に追いやった。


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