「……フフッ」
「よかったね、くーちゃん」
「! た、束様」
「さっきからずっと君のカレシ(予定)の記事漁っちゃってさ。なんかもー連戦連敗の暗黒面に落ちた野球チームの勝利に浮かれているファンみたいだったよ」
「そ、その例えですと、また悪い知らせがもたらされてしまいそうです」
「ぶっちゃけそうでしょ。マスコミってさ、無名の人を一躍ヒーローに祭り上げるのが上手いけど、それを最高のタイミングで地獄に叩き落すのも得意なんだからね」
「それは……!」
「だからさ、その崖から突き落とされたタイミングがベストなんだよ。窮地に陥ったカレシ(予定)をくーちゃんが颯爽と救い上げる。ん~ん、完璧なシナリオだね。くーちゃんのためなら私がしっかりメガホン取って、撮影と演出と編集と、ついでにそのあとのいや~んなシーンまでまるっと脚本書いてあげちゃうよ」
「せっかくのご厚意ですが……、彼は、きっと望みません」
「およ? くーちゃんったら、相手のために我が身を引くオペラ座の怪人タイプ? ダメだよそんな弱気じゃ。外見紳士ヅラした国じゃあ恋愛と戦争では手段を選ばないって本音漏らしちゃうくらいラヴはヘビーなんだからね」
「私にとって、彼は親戚の弟です。彼の活躍を見守れるだけで、十分なんです」
「あー、ウキエさんタイプ選んじゃったかー。でもあのカツオ君だったらハナザワさん以外からも好意持たれそうなんだよね」
「その流れですと、ルクーゼンブルクの姫君はどなたになるのでしょうか」
「お姫様? あれは予想外だったなー。ていうか本当に国家代表候補生なのかなあ? 私が丹精込めて作ったISのお披露目ができなくて不完全燃焼だよ。黒煙ボーボーでダイオキシン散布しまくりだね」
「彼がそばにいた時点で仕掛けたことから、束様が複数のシナリオをお書きになられていたと拝察いたします」
「賢い娘は大好きだよ~。ま、下手っぴのまま動かされるより、ちゃんと訓練してから運用してもらえる方がいいかもね。でも、次のお披露目会はしっかりやるつもりだよ」
「……妹様の、専用機ですか」
「そ☆ 箒ちゃんもいよいよ焦ってきたみたいなんだよね。いっくんはずんずん先にいっちゃうし、トミーくんも活躍しちゃうし、一人置いてけぼりにされたみたいにダウナー入ってるから、今度こそ大丈夫だよ」
「篠ノ之神社で彼に鬱憤を語っていた時は、正直憤りを覚えましたが、同時に危ういほど純真であると感じました」
「箒ちゃんはまじめだからね~。だから自分の力だけで道を切り開いてきたんだよ。剣道で全日本一になれたのもきっとそのためじゃないかな」
「しかしここで、ついに壁にぶち当たってしまったと」
「ふっふっふ、箒ちゃん、力が欲しいか? 力が欲しいなら……くれてやる! 私の愛のこもった【紅椿】をッ」
――どことも知れないラボの中にて、紅き機体を前にして