リミテッド・ストラトス   作:フラワーワークス

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Extra それぞれの舞台裏

 淀んだ空気が溜まる薄暗い会議室。

 ボロい空調が咳き込むような音を立てて地下の湿気を集めていた。

 

 わずかな照明の下、ぼんやりと浮かぶ丸机に幾人もの男たちが影をまとうように(つど)っている。

 椅子はない。みな立ちっぱなしだ。

 ぼそぼそと、エアコンの雑音(ノイズ)に負けるほどの小声で語る話題はIS委員会の議事録について。

 

 特にLSの処置だ。

 

 彼らが希望した以上にLSは女尊男卑の世界に食い込んだ。

 もしいま牙をむけばきっと痛快なことになるだろう。

 

 そう(はや)る仲間を、冷静な声が止める。

 噛みつけたとしても一回こっきり。二度目は無い。たとえ骨まで刺さろうとも命までは届くまい。

 

 相手を、女尊男卑の世界を倒すにはさらなる詰めが必要だ。

 抜かりはない。

 

 デュノア社には逃げられたが、種は送った。どこにも育っていない黄金の種を。

 まだ地盤が固まっていないデュノア社ならば必ず耕作するだろう。

 LSに続くもう一つのピース。それが育てば、きっと世界を変えられる。

 

 血を吐くようなうめき声がする。

 我々は10年待ったのだ、と。

 

 冷静な声の主にも届いたのか、諫める声は震えていた。

 ようやく微かな希望が見え始めたのだ。あせってことを仕損じてはならない、と。

 

 弱者たちは地面に這いつくばっておっかなびっくり進むのだ。

 10年間負け続けた者たちはそう再確認した。

 

 最後に参列者たちは唱和する。

 

 ――男たちに栄光あれ

 

 

 ◆

 

 

「陛下、なにもアイリス様のためにあそこまでなさらずとも」

「ジブリル、女が色恋の話を好きだというのは本当ですね」

「私はアイリス様とトミヤ氏の仲を認めてはおりませんっ」

「私とて同じですよ」

「は? しかしそれでは」

「利用価値がある、と言ったでしょう。まさか恋バナで煙に巻けるなんて。実に愉快」

「最初から【セブンス・プリンセス】と【グレイ・アイディール】を取り込むつもりだったと」

「トミヤ氏はとても純朴な少年なのだそうですね。それこそ犬のように」

「陛下、今はIS学園の生徒です。アリーシャ氏が突っぱねた通り、あまり干渉なさるのは」

()は、ね。でも3年後、卒業した後はどうとでも料理できるでしょう」

「まさか、それを見越して」

「瞬間移動の運用はとても心強いですわ。しかし、ルクーゼンブルクのような小国が生き残るためには足りません。もっと駒を揃える必要がありますよ、ジブリル」

「ハッ」

「IS学園から引き込みなさい。戦力になるものなら糸目は着けません。アイリスの誕生日会のような不手際、二度目は粛清の嵐が吹くと心得よ」

近衛騎士団長(インペリアル・ナイト)の名誉にかけまして、必ずやご期待にお応えいたしますっ」

「結構。ああ、それと」

「は」

「あなたもお年頃。そろそろお相手を探してみてはどうかしら。たとえば、織斑の弟とか」

「おっ、お戯れを!」

「まあ、あなたにハニートラップを期待しても無駄ですね」

「は、はあ……」

「ならばせめて、トミヤ氏の義姉(あね)を自称するドイツの冷水か、彼に執心するイギリスの令嬢を抱き込むように」

「どちらも、国家代表候補生ですが」

「にぶいわね。落ちた場合拾えるように網を張っておくのですよ」

「なるほど」

「それと、あなたもIS学園の警備には目を光らせるように」

「お言葉を頂戴するまでもございませんが、なにゆえあえて?」

「我が国の生命線はIS関連と女尊男卑という風潮。それを脅かすものは決して生かしておけないのですから」

 

 

 

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