IS学園寮1025号室。一夏と箒の暮らす部屋のドアは無事に修理が済んでいた。担当した業者のおじさんは、
「何か爆弾テロでもあったんですかい?」
とドアの惨状を称したが、鈴の登場はまさに彗星の如く現れた。主に墜ちた被害という面で。
輝きという面でみても、鈴が入った1年2組はとても明るくなったり、ランチルームの賑わいが増したりした。すでに決まっていた2組のクラス代表も、その変化をみて快く鈴へ譲ったそうだ。とこれは鈴の談であり、真相は不明である。
そして鈴が転校して来てから三日後の昼休み、屋上で昼食を広げていた一夏、トミー、箒、セシリアの前に、鈴は意気揚々と現れた。
「やっほ〜、一夏! こ〜んな天気の良い日なんだから外でランチしたいわよね。ってことで、作ってきたのよ酢豚! さ、食べてみてちょうだい」
「お、おう。悪いな鈴。でも、今日はセシリアがランチを作って来てくれたそうだから、あとからでもいいか?」
セシリアの持ち寄ったバスケットの中には、サンドイッチにミートパイ、ウェルシュケーキといったイギリス料理が実に見栄え良く並んでいた。
「だめよ。アンタたち同じクラスなんだから、家庭科の授業なんかでいつでもできるでしょ。……うわ、自分で言ってて切なくなってきた。とにかく食べなさい! それにアタシとの約束、まさか忘れたとは言わないわよね?」
「あ、ああ。もちろんだぜ鈴。それで、料理の腕は上がったのか?」
「そんなの食べてみればわかるでしょ。はい、あ〜ん」
「ええっ!? ちょっと……」
一夏が助けを求めてあたりを見渡すも、全員半目で返された。それでも必死に目で訴える。
(と、トミー! ヘルプミー!)
(やだ。なんか凰さん僕に風当たり強いし。それに凰さんをちゃんとねぎらえって言ったよね)
(ほ、箒……!)
(ふん。せっかくなんだ、食べればいいだろう。私が作ってきた唐揚げは他の皆で頂くとしよう)
(せ、セシリア……)
「はい、トミーさん、あ〜ん」
「あ〜ん」
(みんなの薄情者〜!)
一夏は一人でこの赤い彗星を受け止めなければならないのかと戦慄した。別に鈴の料理が悪いとは思わない。鈴の食べさせる勢いが通常の三倍で自分だけでは抑えられないと思ったのだ。記憶が確かなら辛口こってり酢豚が得意だったハズ。しまった、胃薬の貯蔵が全く無い。
(え〜い、ままよ!)
と一口すると、
「……ん? 美味しい! 口当たりも滑らかで、味付けも丁度いい。出来るようになったじゃないか、鈴!」
「そ、そう? やだ、そんなにハッキリ言われると、照れちゃうじゃない……」
「いやあ、本当に美味んだからしょうがないじゃないか。トミー、お前も食べてみろ……」
よ、と言い終える前に、セシリアの手から料理を口にしたトミーの体が妙に固まっていることに気がついた。灰色に塗れば石像に見えるかもしれない。
「いかがでしょう、トミーさん。お口に合いましたかしら」
おずおずたずねるセシリアに、トミーは引き攣ったような笑顔と首で肯定してみせた。
「まあ! それは良かったわ、まだ沢山ありますからどんどん召し上がってくださいね」
セシリアが次の料理をトミーの口に運ぶ。それをパクリと食べ、セシリアに気づかれないように視線を一夏と箒に向けた。
(こ れ は ひ ど い)
努めて嬉しそうな表情を崩さず青筋を垂らすトミーの顔に、一夏と箒は恐々と仰け反った。
「セシリア、そんなヤツ一人に食べさせるなんて勿体無いわよ。アタシの酢豚と少しトレードしない?」
「いいえ、トミーさんは美味しいとおっしゃってくれていますので結構ですわ。嬉しそうに召し上がって頂ける方を大切にしたいじゃありませんこと?」
「アンタも物好きねえ。んじゃあ、そのミートパイひとくちだけでいいから頂戴よ。一夏と、まあ箒も、気になるでしょ?」
「え!? えっと……」
「私は、別に……」
トミーは無言でセシリアの料理を胃に流していた。その顔がみるみる青ざめているのが二人には見て取れる。
「あー! アンタもうこんなに食べちゃって、ホントデリカシー無いわね。いいわ、じゃあこれを三等分して……」
残ったセシリアの料理を小皿に取り分ける。それをトミーがなおも無言で止めようとするが、
「なによ、アンタばっかり平らげるなんてズルいって言ってんのよ。はい、二人とも」
「トミーさん、またお作りして差し上げますから、皆さんにもぜひ味わって貰いましょう」
セシリアに静止されるも、トミーは以前として無言で必死に止めようともがいた。しかしその手か届くことはなく、
「まあ、一口くらいなら」
「大丈夫、だろう……」
「んじゃ、いっただっきまーす!」
一夏、箒、鈴の三人は一斉に口にし、見事な3つの石像が出来上がった。
◆
放課後、屋内IS訓練場に向かうトミーはお腹をさすりよろけながら歩いていた。
「ねえ、凰さん。お願いだから、今日の訓練延期しようよ……」
隣を歩く鈴もまた足取りが重く顔色も悪い。
「は、はん……。これしきのことで音を上げるなんて、だ、だらしないじゃない……」
「凰さん、口調が暗いよ……」
「余計なお世話よ……」
到着した訓練所の椅子にどちらとも無く座り込んみ、はあぁ……、と重たい溜め息を同時についた。
「……つかさあ、アンタ、なんであんなに食べたりしたワケ? 自殺志願者?」
「……みんなに悪いから」
「自分一人が犠牲になれば良いとか、そんなの全然カッコよくないわよ」
「凰さんは知らないだろうけど、セシリア、前日から頑張っていたんだよ。腕によりをかけて心を込めて作りますね、って。一夏って料理上手いでしょ? それにあてられたみたいで」
「ああ、なんとなく読めたわ。相変わらず一夏って主夫力高いんだから」
「ちなみに昨日の箒の唐揚げは固かった」
「あ、そ」
はあ、と鈴はまた溜め息を着いた。椅子の背もたれに身を預け、天井を見上げる。
(何だろう……)
鈴は変に苛立つ自分を感じた。
(もっと嫌なヤツだったら良かったのに、なんて思うなんてさ……)
この三日間、一夏の側にいるせいで嫌でも目に入るトミーの姿は、決して想像していたような情けない男子ではなかった。一夏の相談に乗ったり、専用機のない箒のために訓練機を手配したり、セシリアの気持ちを無下にしなかったり。
嫌なヤツだったら、ブッ飛ばして、アタシの方が強いんだから従いなさい、みたいに上手に出れたのに、コレじゃあ調子が狂ってしまう。
(ま、一夏が見込んだだけのことはある、か)
あくまで一夏という基準があってだが、鈴の中でトミーに対する評価が変わりつつあった。しかし、それを認めるのもまた癪に障る。
「……もう、早いとこ始めちゃって、サッサと終わらせちゃいましょう。アンタだって、早いところ休みたいでしょう?」
「いや、本当に止めにしない? こんな状態で訓練したって、きっと身にならないよ」
「そう言ってお流れにしたいワケ? なっさけないわねえ」
「こんな調子で例え勝ったとしても、お互い満足しないでしょう?」
「はあ? アンタ、まさかアタシに勝つ気でいるの?」
「これでも、ただ突っ立っているほどヤワには出来ていないよ。それに、ココは地下だよ? 空がない」
「だから何よ」
「いくらLSが飛べないからって、甘く見ちゃいけないフィールドだってこと」
「へえ……!」
鈴は椅子から立ち上がった。身長が低くても、座っているトミーを見下すくらいの角度はつくれた。
(面白いじゃない……!)
飛べないISもどきで、この中国代表候補生、凰鈴音に敵うと思っているのか。しかもこのコンディションで。
(上等だわ! ホント、一夏の見込んだだけのことは、あるってワケね)
「ちょっと、そこの一年生〜! ここのコート使わないんだったら貸してくれな〜い?」
入口から、格好を見るに上級生らしい生徒の声が聞こえる。
「使うわよ! 今からね。他をあたってくれないかしら?」
「それじゃあ〜、すぐ終わると思うから、コートの隅っこ少し借りるね〜!」
「流れ弾に気をつけなさいよ!」
何か二人で作業を始めている様子だが、そんな見ず知らずの他人には目もくれず、ギラギラとトミーを見つめて返事を返した。
「それじゃあ、始めましょうか。アタシをあんまりガッカリさせないでよね?」
◇
屋内訓練所の二階キャットウォークにて、一夏たちはトミーと鈴の準備を見ていた。体調はお互い良く無さそうだが、結局訓練は始めるらしい。
「それにしても、みなさん急に体調を崩されるなんて、いったいどうなさったのでしょう?」
セシリアの問いに、一夏と箒はお腹を抑えながら引きつった笑顔で答えた。
「さ、最近の訓練や勉強の疲れが出てしまったんじゃないかな……。ストレスって知らないうちに蓄積するっていうし……。」
「そ、そうだな……。もうすぐ五月だし、五月病が前倒ししたのかもしれん……」
「あら、疲労や倦怠って、お腹に表れるのでしたかしら?」
「た、たまたまだろう! そう、今年の流行はお腹に来るのかもしれんぞ!」
「箒、その話、ちょっと苦しいぞ。腹が苦しいだけに」
「黙れ、一夏。あんまり頭を使えないんだ」
力なく手すりに持たれながら、眼下の二人を見遣る。二人共IS……トミーのはLSと呼ばれるが……を起動させた。いよいよ開始するようだ。
「ところでセシリア、どうして鈴を焚き付けるようなマネをしたんだ? 確かに鈴のトミーへの態度は不遜だが、これではトミーのとばっちりではないか」
「箒さんの疑念もわかりますが、もちろん理由がありますわ。それも二つ、いえ、三つございます」
セシリアは三本指を立て、順番に折って説明していった。
「一つ目は、鈴さんの戦闘スタイルを観察するためです。なぜかというと、来月に開催されるクラス代表戦に活かすためですわ。しっかり録画も撮ってちゃんと対策を練り間違いなく勝利を掴み取りましょう。ね、一夏さん」
「お、おう……」
「二つ目は、トミーさんが鈴さんを打ち負かすためですわ。ここは空のない屋内訓練所ですから、飛べないトミーさんにも十分勝機があります。それは直接戦ったわたくしと一夏さんならよくお分かりになるでしょう。嫌いな相手に遅れを取れば、多少は態度もお変わりになるでしょう?」
「な、なるほど……」
「そして三つ目、例えトミーさんが敗れたとしても、鈴さんとて無事では済まないハズ。そこをズバズバ突いて未熟を悟らせるのです。散々バカにした相手に苦戦するなんてまだまだですね、と伺えば、鈴さんもトミーさんを無碍にせず精進なさることでしょう」
ウフフ……、と暗く怪しい笑みを浮かべるセシリアに、一夏と箒は一歩引き背筋を震わせた。彼女の祖国イギリスは謀略が得意だと噂されるが、これは本当かもしれないと思った。
「さあ、頑張って、トミーさん。わたくしの愛の篭った手料理をお食べになったのですもの、きっと勝利できますわ」
(いや、それはどうだろう……)
一夏と箒は思考のシンクロ率が最大に上がった。
◇
鈴のIS【甲龍】は小鬼を連想させる姿だった。アンロック・ユニットである肩のスパイクアーマーのせいか、配色が赤みがかっているせいか、獲物が巨大なナタのようなものであるせいか。
なにより、彼女の戦闘スタイルがそう思わせた。守るより攻める。動いたら攻める。とにかく、全ての動作が攻撃に転じている。
「ホラホラ! 反撃しないと削り負けしちゃうわよ!」
対するトミーのLS【グレイ・アイディール】は守りに徹していた。大型四脚の下半身は小刻みにPIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)を吹かして動き、時折、格闘技のスネガードじみた守りを見せている。尻尾鋏『ペンチヒッター』はフェイントや牽制にウネウネガチガチ動き回っていた。
両手の獲物はまだ使われていない。ひたすらフットワークで巨体を揺らし、鈴の動きをじっと見ている。
(コッチの動きを読もうっていうの? ナマイキな!)
【甲龍】の肩のスパイクアーマーがスライドし、中心に球体があらわれた。瞬間、光と共に空間が爆ぜた。トミーの大柄なLSがぐらりとよろめくほどの衝撃がはしり、ズシン……! と地面に膝をつく。
「流石に『龍砲』は防ぎきれなかったようね。見えない砲弾の味はどう?」
「……セシリアの手料理より、万倍マシだよ」
「減らず口は叩けるみたいね! たぶん本心だろうけど!」
鈴は飛翔し、広くはないコートの中を縦横無尽に飛び回りながら『龍砲』を放った。砲身射角がほぼ無制限な運用を活かし、どのような姿勢や動きからでも主の攻撃命令に応対できた。
初弾に続いて、次弾、三弾も命中。しかしLSの四脚はすぐに体制を立て直した。四発目、スネガード、五発目、体制移動で回避、そして六発目、右手の剣銃『グローリー・シーカー』切り払った。
七発目以降はもはや有効打とはなり得なかった。
(見切ったっていうの!? 見えないのになんで?)
鈴はアクロバットのように飛び回り、相手の守りにくい射角から砲撃するも、ここぞという場所には『ペンチ・ヒッター』の鋏が切り払ってくる。
「目と、砲門の向き。凰さんの性格かな、真っ直ぐすぎるよ」
「…ッ! 余裕かましてんじゃないわよ!」
「しかたないよ。だって――」
トミーの【グレイ・アイディール】の巨体がPICを唸らせるや、爆速で鈴の眼前に迫った。空を飛ぶことはできずとも、跳躍することは可能だ。まして直進加速なら馬力違いが物をいう。鈴は退きながら砲撃するが、全て捌かれ追いつかれる。
「ここは狭すぎるんだから!」
「ちいっ……!」
(相手は跳躍、横にすり抜けてやり過ごす!)
鈴は即座に左へ躱すが、
「ノンルックで回避しないと掴まっちゃうよ!」
尻尾鋏『ペンチヒッター』が口を開いて食らいついてきた。
「うっさいって言ってんのよ!」
それを大ナタで受け止め、
(――おもっ!?)
体格と出力の違いで、支えきれず地面へ叩きつけられた。上を仰ぎ、トミーの次の動作をみれば、左手の重銃『グラウンド・ブレイカー』が此方を睨んでいる。
「あ……」
「だから言ったでしょ。甘く見るな、って。降参してくれるよね?」
「う……そ……」
「屋内だもん。LSは地上戦では負けはしない。ほら、ジャッジの一夏たちに確認して……」
と、顔を二階のキャットウォークに向けようとしたその時。トミーの顔が爆発に覆われた。
「へ……?」
鈴が呆然とする目の前で、爆音と衝撃がほとばしった。その直撃を頭部に受けたトミーは眼鏡を粉砕され、あらぬ方向を向いてLSの巨体が宙を泳ぎ、放物線を描いてコート上に墜落した。トミーの身体は投げ捨てられた玩具のように、四肢を投げ出して力なく突っ伏した。
「な、何で……?」
「あ〜あ、誤射っちゃったよ〜」
とぼけたような声の方を向くと、先程の先輩がた二人がニヤニヤとこちらを見ていた。
何か大きな物がすでに量子変換され消えていく。一瞬しか見えなかったが、大砲のようなものかも知れない。
「あんた何やってんのよー。せっかくコートの隅っこ貸してもらったのにー」
「しょ〜がないじゃん、事故だよ、事・故。なんか試合に水差しちゃってゴメンネ〜?」
「な……な、なんてことしてくれんのよっ!?」
「だから、ゴメンって言ってんじゃーん。つーかさあ、あんた何負けそうになってんの? ISがLSに負けるとかマジありえないんだけど」
「確かキミ転校生の子だったよね〜。サッサともとの学校に戻ったほうがいいよ〜? LSに負けそうになるとか、センスなさすぎ〜」
キャハハハ……! と笑う上級生に鈴は激高し、口を開ける。が、そこから言葉が出てこなかった、感情をぶちまけようとするも、突然詰まって出てこない。
(なんで、なんで何も言えないの!? 馬鹿にされてんだよ、アタシ! ……負けなかった、から? え、なに、ホッとしてんの? 嘘でしょ!? ……やだ、でも、だって、こんな結末……!)
鈴の胸の中で様々な感情がグチャグチャに混ざっていた。外に出されない激情は、涙となって目から溢れる。
(何に対して泣いてんの!? 自分が負けそうになったから? あの先輩共に馬鹿にれたから? アイツが、トミーが、撃たれたから? ……わかんない。 訳わかんない! アタシ、どうしたいのよ……。やだよ、助けてよ、一夏――!)
「い……っ、か……。たす…けてよ……、いち…かあ……!」
「うわ、あの子泣いてるんだけど」
「やっぱりIS学園に裏口入学でもしたんじゃな〜い?」
「いやそれを言うなら裏口転校でしょ」
「アッハハ! そうだね、ほ〜んと傑作! ……ん?」
笑い終えた間際、モゾリと、LSが動いた。顔が、トミーの顔がこちらを見ていた。爆発で眼鏡をなくし、あらわになった空色の両目がよく見える……否、両目が空色の輝きを放っていた。人間は目が光らないのに。
「え、なに?」
片割れの先輩の問いに返答するように、トミーのLSが再び、ゆっくりと、立ち上がった。四脚はしっかりと地面を踏みしめ、尻尾鋏『ペンチ・ヒッター』が生物のように蠢いている。
そして次の瞬間、トミーの上半身が黒い服を着たように変色した。黒服は形を変え、次第にISの装甲の形を成していく。顔も、寒々しい空色に輝く瞳以外が漆黒の仮面で覆われていった。その姿は、色と性差的部分は違えど、
「ブリュン……ヒルデ……?」
かつてIS世界大会モンドグロッソを制し、最強の称号を手に入れた織斑千冬と愛機【暮桜】。その《ブリュンヒルデ》と称された者の姿に似かよっていた。
黒い鎧を纏ったトミーは、LSの下半身を脱ぐように腰部のパーツが外れ、その大型四脚の上に立ち上がる。
「分離できたの!?」
「いや、そこじゃないでしょ。いや、そこもあるけど。……つか、下半身まで同じって、あいつ、マジで《ブリュンヒルデ》だ」
「ど、どうせLS常套句の『もどき』だよね……?」
「うん。でも、あれ、ドイツから来た仲間が言ってた状態にそっくりだ。たしか、名前は……」
「や、やめてよ、それ、もう研究されてないんでしょ? ありえないんだけど。《ブリュンヒルデ》の、世界最強の『もどき』なんて……!」
トミーがゆっくりと動き出す。剣銃『グローリー・シーカー』もまた【暮桜】の得物『雪片』に姿を変えていた。その姿はまさしく往時の世界最強そのものだった。
先輩の一人が叫ぶ。間違いない、目の前にいるのは、かつて禁忌と呼ばれ、IS条約によって破棄されたはずの、
「VT(ヴァルキリー・トレース)システム!? なんでこんなヤツが使えんのよ!」
返答は言葉ではなく刃によってもたらされた。