ハヤテのごとく!〜ヒナギクがナギでナギがヒナギクで〜 作:桂ヒナギク
練馬に広大な敷地を持つ屋敷。そこが十四歳でニートの少女、
十六歳の少年、
二人は現在、
ナギはそんな二人に憤りを感じていた。
「えいヒナギク、ハヤテから離れろ!」
ナギはそう言ってヒナギクを睨み付けた。
しかしヒナギクは「嫌だ」と答えると、ハヤテと共に去っていった。
(くそ、何とかせねば……!)
ナギが暫し考え込むと、ピカッと電球が頭上に現れた。
「閃いた」
何かを思い付いたナギは携帯を取り出して天才教師の
呼び出し音が数回鳴り、志織が応答する。
「はい、もしもし」
「三千院 凪です。牧村先生、頼んでも良いですか?」
「何を?」
「人間と人間の体を入れ換える装置を作って欲しいんです。ドラ○もんに出て来る入れ替わりロープみたいなのを」
「ああ、それならあるよ。何か研究してたら偶発的に出来た物が。今からそっちに送るね」
志織はそう言って電話を切った。
それから暫くしてナギの下に小包みが届いた。
ナギは早速それを部屋に持って行って開けた。中には両端に玉が付いた棒と志織オリジナルの説明書が入っていた。
説明書を手に取り読むナギ。
『これは入れ替わり棒と言って他人と体を交換する道具よ。両端に付いた玉をそれぞれが握る事で体が入れ替わります。戻る時は同じ様に握れば良いわ。何に使うかは知らないけど、くれぐれも悪い事にだけは使わないでね。by.牧村』
ナギは読み終えると叫んだ。
「マリアー!」
すると暫くしてマリアが部屋に入ってきた。
「ナギ、呼びましたか?」
「ヒナギクを呼んで来てくれないか?」
「解りました。少々待っていて下さい」
マリアはそう言うと部屋を出てヒナギクを呼びに行った。
その後、ヒナギクがハヤテと共にやって来た。
「む……ハヤテ、お前は出ていろ。私はヒナギクと二人きりで話しがしたい」
「そうですか。では仕方ありませんね」
ハヤテはそう言うと、ヒナギクに絡めてい腕を外して部屋から出て行く。
「で、話しって何?」
「これを持ってくれないか?」
ナギはそう言って入れ替わり棒の先端を掴み、反対側をヒナギクに差し出した。
ヒナギクは疑問の表情を浮かべるが、
するとお互いの体から魂が抜け、その魂が反対側に移動して体に入った。
「ちょっ、何よコレ!?」
ナギは驚いて自分の体を改めた。
「ヒナギク、悪いがこの体は私が貰った」
ヒナギクはそう言うと入れ替わり棒を真っ二つに折って破壊した。
「あ、あなたナギね!? これはどう言う事なの!?」
ナギはヒナギクを見上げて怒鳴る様に言った。
「お前と私の体を交換したんだ」
「どうしてそんな事!?」
「決まってるだろ。ハヤテをお前から取り返す為さ」
「そんな事はさせないわ! その体返しなさい!」
「無理だ。入れ替わり棒はもう壊した」
と真っ二つになった棒をナギに見せるヒナギク。
「そう。じゃあその体から無理矢理魂を引っ張り出してあげるわ」
ナギはそう言うと手を頭上に掲げた、しかし、何も起こらなかった。
「お前が呼ぼうとしたのはこれか?」
ヒナギクはそう訊ねると手を頭上に掲げて木刀の正宗を召喚した。
「正宗!」
と手を伸ばすナギだが、後少しと言う所で届かない。
「ほう。これが伊澄の言っていた奴か。どれ、威力を試してみよう」
言ってヒナギクは距離を取って正宗を振るった。
斬撃波が放たれ、窓ガラスに当たり、パリンッと割れる。
「おー、なかなかの物だな」
「正宗、騙されちゃ駄目よ! その体は私でも中身はナギなのよ!」
その言葉に正宗は応え、ヒナギクの手から離れてナギの手に収まった。
「これさえあればこっちの物よ!」
ナギはヒナギクの懐へ一瞬で駆け、床を蹴って跳ね上がり、正宗を振り被って一気に振り下ろ……そうとしたが、突然ハヤテが現れてヒナギクを庇った。
カッ!
正宗がハヤテの額を直撃した。
ハヤテは痛みを堪えて正宗を掴みナギから奪取した。
「いくらお嬢様でもヒナギクさんに手を出すなら僕は許しませんよ」
ハヤテはそう言うとHPを四分の一消費して必殺技、Bダッシュアタックを発動した。
風が発生し、ヒナギクのスカートが捲れてスパッツが顔を覗かせると同時に、ナギがボロボロになって気絶した。
ハヤテは気絶したナギをベッドに運び、ヒナギクの下に移動して言った。
「怪我はありませんか、ヒナギクさん」
「ああ、無い」
ヒナギクの回答にハヤテは疑問符を浮かべた。
「どうした?」とヒナギク。
「お嬢様みたいな喋り方だったので一寸気になりまして……。それより、もうお昼ですし、何か食べに行きませんか? 美味しいレストラン知ってるんですよ」
「そうか。では早速自転車の用意だ」
ヒナギクがそう言うと、ハヤテが訝しそうな目で見詰めて来た。
「貴方、本当にヒナギクさんですか?」
「それはどう言う……?」
「まさかとは思いませんが、お嬢様とヒナギクさんが入れ替わってるなんて事は無いですよね?」
その言葉にヒナギクは焦って冷や汗を垂らした。ヒナギク、大ピンチ。
(拙い……このままでは何れバレる。しかしどうすればハヤテに気付かれずにいられる?)
そこでヒナギクは思い出した。
『お嬢様みたいな喋り方だったのでちょっと気になりまして』
(うむ、これだな)
「な、何言ってるのよハヤテ……くん」
ヒナギクは頬を赤く染めた。
(言えねえ。ハヤテをくん付けで呼ぶなど私には無理だ。しかしそうしないとバレる危険性が……!)
「お嬢様、今溜めましたよね。どうしたんですか?」
「え? 別に何でも無いわよ!」
そこでハヤテは気付いた。この人はお嬢様だ、と。
「貴方、やはりナギお嬢様ですね?」
その問いにヒナギクは動揺しながらも答える。
「しょ、証拠はあるのかしら? 私がナギだという確実な証拠は」
「えっとそれは……」
しかしハヤテはそれ以上言えなかった。彼女の言う通り確実な証拠が無かったから。
「何よ。やっぱり無いんじゃない」
そう言ってヒナギクは心中で「ふう」と安堵の溜め息を吐いた。
(何とか凌いだが、次は無いだろうな。気を付けなくては)
「すみません、ヒナギクさん。思い付きで疑ってしまって。怒ってますか?」
「べ、別に怒ってないわよ。それより、美味しいレストランとやらに案内してくれないかしら?」
「そうでした。では行きましょう」
ハヤテはそう言うとヒナギクと共に部屋を出て行った。
「う…………うん?」
ナギは目を覚まし、起き上がって辺りを確認した。
「はぁ」と溜め息。
(全く、酷い目に遭ったわ。これも全部ナギの所為。こうなったらハヤテくんに全て話して……否、駄目よそんな事。ハヤテくんを危険な目になんか遭わせられないわ。あ、でも元に戻るのに協力は必要よね)
どうしよう?──と悩むナギ。
「って、悩んでても何も始まらない。行動あるのみよ!」
ナギはそう口にするとベッドを降り部屋を出て玄関に向かった。
「あら、ナギ。何処か出掛けるの?」
そう訊ねるのはメイド服を着た女性、マリア。年齢は自称17歳。
「一寸散歩したくなってな。直ぐ戻って来る」
「そうですか。あ、敷地の外には一人では出ないで下さいね」
「どうして?」
「どうしてって、ナギは遺産目当ての悪い人たちに命を狙われてるでしょう? だから出ないで、と」
「うむ、解った」
ナギはそう言って屋敷を出ると、門に向かった。
(大丈夫よね、きっと……)