ポケットモンスターSPECIAL 陽の名を持つもの 作:陰庭
少年は気がついたら森の中に倒れていた。
「オレは…一体なにが…?」
彼はむくりと起き上がり、意識が完璧には快復していないのか、顔を三回ほど振り、状況を確認しようとした。
しかし直後にひどい頭痛に襲われたため考えるのをやめ、辺りを見回す。
「どこだ…ここは…?だが見たことがある気がする…」
この森に来たことは無いはずなのだが既視感に襲われる。
そう考えている間に頭痛が少しおさまり、止まっていた思考を再開させ、先に自分になにが起きたのかを思い出す。
彼が覚えている記憶の中で自分は高校一年生で下校中機嫌がよかった。なぜなら
「ようやく明日が待ちに待ったポケモンXYの発売日か。最初のポケモンも決めたしフェアリータイプの強さも気になるな」
そう、彼はポケモンの新作が出る度に必ずプレイしているオタクやマニア、廃人まではいかないとしてもけっこうやり込んでいる部類にはいる人間である。そのタイプの人間が新作が明日発売になって喜ばない筈がない。
しかし、彼はそのゲームをプレイすることができない。
彼の元にトラックがいきなり突っ込んできたからだ。
彼はその状況に驚愕しながら
「えっ!?ひっ、お、おい、嘘だろ嘘だって言ってくれよ俺はまだ死にたくない、まだやり残した事がたくさんあ…!」
そこまで彼が言ったところでどうしようもできない死への恐怖に怯えながら彼は死んだ。
「そうだ…オレはトラックにひかれて死んだのか…」
彼は自分の身に起きたことを思い出し、身震いした。
そしてその事についての違和感に気づく。
「オレは死んだはずなのに何で生きているんだ?」
そう、彼は確かに死んだはずなのだ。死んでいないとしても病院にいるはずだ。少なくともこんな森の中に運ばれるような事はまずない。
しかしその事については自分でも分からないことに答えが出るはずもない。なので彼はこの事について考えるのを止めた。死んだことを考えるよりも他に考えなければならない事があるからだ。
また、彼は自分が小さくなっていることに気づく。
「あれ?オレ、こんなに小さかったか?」
そう、今の彼の身長と体格は八歳か九歳程度しかない。元々大柄ではなかったが平均身長位あった。
だがすぐにその事について考えるのを止める。今は身長云々について考えるのは優先事項ではない。
「とりあえず考えていても仕方がない。歩いていれば森を抜けることができるだろう。わからないことはそれからだ」
そう呟き結論を出した所で、アテもないまま歩き始める。
彼はしばらく歩いたところで気づいた。ここには自分の知っている鳥や木(元々そんなに詳しくないのだが)を見かけないということに。
「おいおい、まさか外国とかじゃないだろうな」
そう笑いながらしかしその捨てきれない可能性に多少怯みながら森を進む。
だが、現実は残酷で、彼のその考えも打ち砕かれる。彼は見てしまった。彼の知っている世界には存在しない生物を。
「おい…!あれってまさか…!」
そう、存在するはずのないポケモンを
「嘘…だろ…オレはポケモンの世界にきたのか…!」
ポケモンの世界に来たという驚愕や喜び、恐怖よりも自分がどう努力しても自分のいた日本、家に帰ることが出来ない、そして自分の知っている常識が通用しないということに愕然とする。
しかし今は八、九歳程度の身長や体格しかないとしても仮にも高一であったため、自分がどうするべきかを最優先に考える。
「(まずは状況把握…もしここがポケモンの世界とするならどこだ…?)」
そう思考を巡らしたところで彼は気づく。ポッポという名前のポケモンとキャタピーという名前のポケモンを見たことによってこの場所が何処なのかを。
「そうか、ここは多分、トキワの森だ」
時間が過ぎるにつれ彼は焦っていた。
此処がポケモンの世界でありトキワの森と気づくまでに歩いた距離を考えて森を抜けるのにかかる時間を予想すると明日までにでられるかも分からないーーその上普通の高校一だったため夜の森のこと(しかもポケモンがいるという不確定要素がある状況)を知らない。そのため、
「っ!くそ!ゲームだと近いのにリアルになるとこんなにも差があんのかよ!」
こんな風に毒づかなければやっていけない状況に陥っている。しかし毒づきながらも歩くことはやめない。歩くことしかできないからだ。
「つーかリアポケデカすぎんだろ。キャタピーとか芋虫ってレベルじゃねえよ」
そして現実とポケモンの世界での比較をしている彼は注意力が散漫になっていた。いや、正確にはポケモンの世界に来たというあまりにイレギュラーなことが起きている上にどうすればいいか判断材料が少なく、わからない状況のため、比較でもしていないと集中力が保たなくなっていた。
そして彼は気づいていなかった。自分が危険な所に足を踏み入れたことに。
「っ!アブね!」
彼は歩き続けていた為に、そして違う世界に来たということによって体力と気力を消耗していた。
そしてようやく木にぶつかりかけて気づいた。
「コイツはコクーンか?ってかコクーンってことは…」
言い終わる前に彼は気づいた。後ろからスピアーというポケモンの沢山の虫の羽音が聞こえることに。
そして、自分の命の危機だということに。
「っ!」
彼はその場から一目散に逃げだした。スピアーが追いかけてくることを分かっているため後ろを振り返ろうとせずに一心に。
「はあっ、はあ…くそっ、なかなか振り切れねえ」
彼は追いつかれた時の事を想像して恐怖に顔をひきつらせながら足を休めることなく必死に逃げていた。
しかし元々木にぶつかりかけるまで危険に気付かないような体力と集中力が切れている状態ではジリ貧になることは目に見えていた。しかし逃げるしかできない。彼にはそれ以外の選択肢が無い。
しばらく逃げたところで彼の体力が尽きた。
「クソッ!これまでかよ!」
体力が尽きて追いつかれたことに気づいた彼は後ろを振り向いた。
そして追いかけてきていたスピアーの数に驚く。
それを見た彼は、
「は、はは…!やべえオレこれ死んだな」
そう言って彼はスピアーというポケモンに対しての恐怖で心が保たなくなり、気力が尽きて地面に座りこむ。
その直後、スピアーの体当たりが直撃した。
そして彼は気を失った…
気がついたら彼はポケモンセンターにいた。
「う、うーん…オレは確かスピアーに追いかけられてた筈じゃ…」
そう言ったところで追いかけられていた恐怖と実際スピアーにくらったのだろう攻撃の痛みが押し寄せてきた。
すると彼が起きたことに気がついた男の子が近づいてきた。
「よお大丈夫かおまえ?」
そう訪ねてきた人物は彼には心当たりがあった。
そしてそれによって彼は自分がどの世界にいるかをしっかり把握することができた。
「(おい、マジかよレッドさんってことはここ、ポケスペの世界じゃねえか…!)」
彼はポケスペについては詳しい訳ではない。せいぜい一章を少し知っているくらいだ。それでも目の前の人物ぐらいは知っている。
だが目の前で心配している人に考え事をしているのは失礼だと思い、
「あ、ああ大丈夫だ。助けてくれたのか。ありがとう」
と、驚きながらも返事を返し、お礼を言った。
すると目の前の人物は、
「俺はレッドだ。後、お前を助けたのは俺じゃない」
その言葉に目の前の人物はレッドであると確認できたと同時にでは誰が助けたのかという疑問が浮かぶ。
しかしその事について答えを出す前に、
「とりあえずお前の名前を教えてくれ」
と言われたので彼は迷いながらも現実で『陽』と書く名前の、
「ヒナタだ」
と名乗った
初投稿です。不定期更新ですが読んでもらえたら嬉しいです。
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