俺の青春ラブコメは間違ってなどいなかった。   作:ブレイド

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作者の気持ちなって書いてみてわかったこと。某エンドに向けて書くことはつらいっていうこと。
大事な部分カットしましたがこちらはちゃんと追々書く予定です。


そして雪ノ下陽乃と葉山隼人は立ち塞がる(2)

 葉山隼人は言葉通り部活に行っていた。部活をしている葉山は傍から見てもカッコよくて、輝いている。ボッチであるおれとは雲泥の差だ。だがしかし、そんな雲泥の差がある葉山であるからこそ、頼らなければならない。葉山に向けて手を挙げ、話があると合図する。葉山はそんな俺をみてため息をつき、こちらへと駆けてくる。

 

「もう話しは終わったと思ったんだけどな」

 

葉山はこちらに目を合わせようとすらしない。明後日のほうをみながら話す。

 

「そっちにはなくてもこっちにはまだあるんだよ。………さっきの話、断った理由聞いてもいいか?」

「言っただろ、俺は君が嫌いだって」

「それだけが今回断った理由じゃないだろ。少なくともお前は、俺のことが嫌いって理由だけで雪ノ下の努力が無下になることを望むやつじゃない」

 

 言葉の通りだ。葉山は俺のことが嫌いで、俺も葉山が嫌いである。むしろ大きっらいである。だが、今回のことは腑に落ちない。葉山はまだ俺と目を合わせようとしない。ずっと明後日の方向をむいたままである。

 

「俺は救えなかったんだよ。“彼女”を」

 

 ここでいう“彼女”が、誰を指すかは言うまでもない。

 

「小学生のころの話さ、嫌がらせを受けていた彼女をかばったんだ。こんなことをするのは間違っている、もうやめようって。俺はそれで彼女への嫌がらせは止まると思っていた。でも間違いだった。彼女への嫌がらせはひどくなったし、それどころか俺にも嫌がらせがくるようにもなった。ショックだったよ。それまでみんなとは仲良しだったからね。だから俺は庇うことをやめた。逃げたんだよ、俺は」

 

 葉山はこちらを向かない。ただ、目はいつ泣き出してもおかしくないほど悲し気なものだった。

 

「間違いだと気づいたときはもうなにもかも手遅れだったよ。俺は自分から放り出してしまったんだよ、自分が一番大切だったものを」

 

 不意に夏休みでの出来事が脳裏に浮かぶ。戸部が葉山にしつこくきいてやっとききだせた葉山の好きな人のイニシャル、“Y”。

 

「俺は君が羨ましくて、そして憎くて仕方なかったんだ。いや違うな、今も憎くて仕方がないだな。彼女を助けだそうともがいている君が」

「それが俺を手伝えない理由か?だとしたら雪ノ下はとんだ風評被害だな」

「これも前にいっただろ、俺はみんなが思っているほど良いやつじゃないって」

 

 苦笑いをし、そして葉山はようやくこちらを見据える。これまでにないほどに怖い顔で。

 

「比企谷」

 

そして葉山は尋ねる。

 

「そこまでして彼女を助ける理由はなんだ?」

 

 その言葉は、俺が今まで生きてきた中で一番胸の奥に響く。

 

「まさか、ただの部活仲間だからとはいわないよな?」

 

 返答によっては拳が飛んできそうなほど、葉山の顔殺気立っている。

 

「結衣の気持ちにも気づいているんだろう?そして“彼女”の気持ちにも。“答え”を出さないままでいる君を手伝うわけにはいかない」

 

 そうだ、俺はここにきて葉山を、そしてこの後向かい合わなければならない雪ノ下陽乃を味方にするにはこの“答え”を出さなければならない。

 俺は“本物”がほしいとあの二人に言ったのに、言った当の本人がその“本物”を避けて、偽物に依存し合ってしまったのだ。いや、きっと俺だけじゃないのかもしれない。由比ヶ浜も雪ノ下も気づいていたはずだ。ただ怖かったのだ。一度“本物”を手にしてしまえば、また偽物をつかみなおすわけにはいかないのだから。

 

「わからねえ。俺にはまだ“本物”がどっちかなんてわからねえ」

「“本物”?」

 

 葉山が不思議そうな顔をする。当然だ、初めてきいたら、いや何度聞いてもわけのわからない言葉だ。だがしかし

 

「約束したんだ!雪ノ下は言ったんだ!」

 

 いつのまにか俺は声を荒げている。柄にもなく、大きな声で。サッカー部の連中の動きは止まってこちら見ているがそんなことは関係ない。

 

「『いつか私を助けてね』って、そう言ったんだ!俺にそう言ったんだ!この言葉は絶対“本物”だ!そして俺はこの“本物”を守るんだ!今はそれしか考えてねえ!」

 

 “答え”を出さなければならないときはもうすぐそこまでに迫っている。だが、今の俺はおろかにもその“答え”が出せずにいる。葉山の胸倉をつかんで叫びあげる。俺の今の想いを。涙がいつの間にか流れていた。脳裏をずっと駆け巡る、奉仕部の今までを。助けてねといった雪ノ下のあの顔がずっと頭から離れない。ここへ来る前に突然涙を見せた由比ヶ浜の顔が頭を離れない。どっちの顔も頭から離れないんだ。

 

「ふふ、ははは」

 

 葉山は突然大きな声で笑いだす。

 

「“本物”か…。いいな、その言葉」

 

 葉山の顔からすでに殺気だった表情はなく、優し気なものであある。

 

「わかった。比企谷。君を手伝うよ」

「ほん…とか?」

 

 正直言って後半なにいってるか自分でもわかってなかったんですけど。

 

「ただし、条件が二つある」

 

 やはりそんなに甘くはなかった。葉山の顔はまた真剣なものだ。

 

「一つ目は比企谷が言う“本物”の“答え”を二人にいつかちゃんと伝えること。二つ目は、“雪ノ下陽乃”を味方につけることだ」

「うぐっ」

 

 痛いとこをついてくる。どちらにせよこの作戦は葉山隼人と雪ノ下陽乃両方を味方につけないと意味がない。

 

「言っとくが陽乃さんは俺ほど甘くないぞ。きっと“答え”をださないと味方になってくれないぞ」

 

葉山の言う通りである。あの人を味方にするには一筋縄ではいかない。“答え”を持っていかないと納得してくれないであろう。

 

「それとついでにいっとくが」

 

 葉山は部活に戻る準備でもしているのか、ストレッチをしながら答える。

 

「俺が今好きなイニシャルの“Y”は別の人だよ」

「え?それって…」

「じゃあ俺は部活にもどるよ、比企谷。がんばれよ」

 

 そう言い残し葉山は俺の元から去っていった。

 

「さてと…」

 

 残るは今までさんざん奉仕部をかき回してきた最終ボス。俺は今夜までにその最終ボスを“本物”の“答え”持って、闇の衣をはがし討滅しなければならないのである。いや、討滅しちゃまずいか。それどころかこっちが討滅されちゃうまである。最終決戦を前に俺は最後の晩酌にマッ缶を買いに行くのだ。

 

 

………やっぱり最後になっちゃうのかよ。

 

 

 

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「平塚先生」

「ん?なんだまだいたのか、比企谷」

 

 一度職員室に戻り、平塚先生に声をかける。

 

「城廻先輩と一色に言伝頼んでいいっすか?」

「ほう、あの二人にもか。まあ当然だな。さっきの作戦の概要だけ伝えとけばいいのだろう?」

 

 さすが国語教師である察しがよくてたすかる。

 

「雪ノ下には内緒でだな」

 

 ますます察しがいい。この作戦は直前まで雪ノ下には隠していたほうが得策である。なにより、陽乃さんがキーパーソンになる以上、隠していたほうがいい。

 

「言っとくが比企谷、陽乃は手ごわいぞ」

「そんなことわかってますよ、ラスボスみたいなもんでしょ、あれは」

 

 最強装備、エリクサー何本もっていっても安心して勝てる未来が想像できない。

 

「陽乃はな、私もずっと3年間気にかけていたんだよ。あいつが何か抱えていることはわかっていたのに、私にはなにもしてやることができなかった。今の陽乃があるのは、私のせいでもあるんだ」

 

 平塚先生が陽乃さんのことをそんな風に思っているとは思わなかった。

 

「それは傲慢ですよ、平塚先生」

「わかっている、教師にできることはかぎられている。ただそれがたまに歯がゆくてな。今回もそうだ。君たちに今回私はなにもしてやれない」

 

 今までになく、平塚先生はさみしそうにつぶやく。おそらくそれは、“こないだの話”にも関係してより一層責任を感じているのであろう。来年度おそらく自分がいないであろうということに責任を感じて。

 

「ともかくだ、今君にできることは陽乃を説得することだ。時間はあまりないがゆっくり考えて、自分の中で絞り出した“本物”の“答え”を陽乃に見せつけてやりたまえ」

「ええ、見せつけてやりますよ」

 

 そう力強く返事をしてみせた。

 

 

 

 

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ピンポーン

 

 以前雪ノ下が住んでいた場所、今は陽乃さんが使っているはずだ。インターホンを鳴らし、家主が出てくるの待つ。

 

『はいはーい、比企谷君かな?』

 

 インターホン越しから聞こえてくる声はいつも通りの陽気な声だった。

 

「さっきの話の件できました。あけてもらっていいっすか?」

『ほうほう。ということは私が納得する“答え”をもってきたんだね、いいよ、開けてあげる』

 

 オートドアが開錠され、部屋へと向かう。

 

「てっきり3人で来てくれると思ったんだけどな」

 

 ドアを開けこちらが一人なのを確認するとそう言う。その言葉は少し冷たく、いつもの陽気な感情がこめられてなかった。

 

「今回は俺一人で来ました。多分いつか“3人”で話すことになると思います」

「ふーん、まあいいや、上がって」

 

 部屋の中に招き入れてもらう。前回のようにお酒を飲んでいる様子はなかった。

 

「それじゃあ聞かせてもらおうかな、比企谷君の“本物”がなんであるかを」

「えぇ、聞いてもらいますよ俺の“本物”」

 

 

 

 

 

 

 

「それが比企谷君の“本物”?」

 

 こちらに向けてくる目はきびしい。だが、これ以上の手はない。雪ノ下の“本物”も、由比ヶ浜の“本物”もここにはない。ただ、おれが提示できる今の“本物”は俺の分だけである。

 

「その答えで私が納得できるとでも?」

 

 挑発的な笑みでこちらを見てくる。わかっている、これは確かに俺の“本物”であるが“本物”として成立させるには俺一人では足りない。

 

「足りないってわかって、あえて一人できたんだね。どうして?」

 

 どうしてって聞いてくるのはこの人のいじわるなとこだ。

 

「少なくとも俺の“本物”の見せました。そして約束します。この話の続きは必ず3人で陽乃さんの前で話して見せます」

「ふーん」

 

 陽乃さんはこちらの様子を見ながらそして珍しく指を口に当てながら考えている素振りをみせた。

 

「君は強くなったね。一人でそんなことを言いきっちゃって。もしかしたら今君が語った“本物”は偽物なのかもしれないよ。いつか自分でもいってたじゃない、一方的な願望の押し付けは、“本物”とはよべないって」

「その通りです。でも俺はあの二人に賭けたんです。あの部室で過ごしてきた時間はまぎれもなく“本物”だから。あの二人になら、願望も自己満足も押し付けて、許してくれるって俺は信じているんです」

 

 言いたいことは言い切った。完全なる唯我独尊であることもわかっている。だが、今おれにできることは“あの二人”を信じ、押し付けるだけである。

 

「面白いとは思っていたけど、ますます面白くなったね。君は」

 

 陽乃さんの顔はいつもとは違う笑顔で、その笑顔は本当に優しかった。

 

「じゃあ、あとは雪乃ちゃんと由比ヶ浜ちゃんの“答え”しだいだね」

 

 背筋を伸ばしそう言う陽乃さん。

 

「それじゃあ協力してもらえるんですか?」

「いいよ、それにそっちのほうがおもしろそうだし」

 

 まさか本当にただ面白いからこっちの作戦に乗るとか単純な理由じゃないでしょうね?

 詳細な作戦の説明をしたところで俺は席を立つ。

 

「それじゃあ俺はここで失礼します」

「えーそんなこといわずにもうちょっとお姉さんと話していこうよ」

 

 陽乃さんはすっかりいつもの調子に戻り、甘い言葉をささやいてくる。ちょっとやめてくださいよ。そんな甘い声で年若い学生を惑わすような言葉をかけてくるのは。

 

「今日はありがとうございました。また連絡します」

「はいはーい、それじゃあね、比企谷君」

 

 甘い誘惑に負けない間に、俺はその場をあとにした。

 

 

 

 

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 比企谷君は気づいていないのであろう。比企谷君がだした答えは紛れもない“本物”だ。でも悲しいことに“本物”が必ずしも正しいとは限らなくて、“本物”であるがゆえに悲しい事実が生まれてしまうことを彼は知っているだろうか。あの3人が待ち受けている苦難は間違いなく、今までで一番大きなものになるだろう。そしてどうか逃げずにどうか立ち向かってほしい。“本物”を手に入れるということは、楽な“偽物”ではもういられないのだから。

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