風が、髪をなびかせる。
その風を、心地良さ気な顔で空を見上げる艦娘がいた。
「いい風ね……」
もみあげの長いやや茶色がかったショートボブの髪を持ち、頭の上にヘッドギアのようなものを付け、腹部に装甲を身にまとい、薄手の上着を羽織る。下は、丈の短いスカートにスパッツ。
彼女の名は『大鳳』。艦種は『装甲空母』と呼ばれる、空母の中では特殊な艦種。
大鳳が手に持っていたボウガンのような射撃武器にマガジンを装填し、空に向け、引き金を引く。
撃ち出された弾丸は、すぐにその姿を艦載機は、彗星、流星、艦戦52型に変える。その様子を、嬉しそうに見る大鳳。
「よし、上手く飛ばせたわ」
『こちら妖精さんですー。機体のメンテナンスもばっちぐーですー』
無線からブイの方にいる妖精さんの声がした。陽気で明るいその声を聞き、大鳳が答える。
「ありがとう、妖精さん。じゃあ、これから演習ね」
『了解ですー、これより、演習に移りますー!』
その声を合図に、遠くにあるブイ目掛け、大鳳の頭上を旋回していた彗星、流星、艦戦52型の3機が、陣を組む。
「さぁ、開始です!」
ブイの近くから、木製の艦載機が飛ばされる。それを艦戦が機銃掃射で撃ち落とす。続いて、艦攻の流星が雷撃をブイに放つ。空気の泡を出しながら、目標に進んでいく。魚雷の先端がブイに当たると、火薬が炸裂し、大きな水柱を起こす。
そして、止めと言わんばかりにブイの直上から、艦爆の彗星が爆弾を投下し、大爆発が起こる……が、しかし……
「どうだった…?」
『彗星の爆弾以外、当たりましたー』
「そう…分かった。帰投して」
『了解ですー』
今さっき大鳳が行っていたのは、自主練習。日によって、艦載機を変え、どう扱うかを自分なりに考える。そして駄目だったら、なぜ駄目だったのかを研究を行い、艦載機の扱い方を学習する。それの繰り返し。
(彗星を使うと全く当たらない……この間も、同じ結果……爆撃機は当てにくいけど…)
大鳳は彗星を扱うと、どういう理由かは分からないが、どう組み合わせても、当たらない。艦載機側に問題があるのか、それがあればその度に明石から調整を行ってもらっている。が、今回も前回も、前々回も、ちゃんとしたメンテナンスを行っての演習だ。
「妖精さん、爆弾が投下された時、違和感とかは無かった?」
『んー…こちらから見ても、タイミングはバッチリでしたー、多分、爆撃する際の切り離す部分に問題が生じたのかと思われるですー』
妖精さんから返される言葉も、聞いた言葉だ。
「そう……今日は、このぐらいにしようかな」
大鳳はご苦労さま。と言うと、艦載機を閉まった。
大鳳が使う艦載機は、甲板に着艦すると、自動的に弾丸に戻る。弾丸に戻った艦載機を自身のマガジンに装填する。
「また明石さんに見てもらわなきゃ」
そう言い、彼女は演習で使った物や残骸を片付け、その場を後にした。
[newpage]――――ずっと前から、お前のことを知ってる気がする。そう思っているのは、多分俺だけだ。
何せ、ずっと昔だ。お前と知り合って、死ぬ時もお前と一緒だった、ような気がする。まぁ早い話、運命共同体って奴だな。
え?じゃあ、そいつに問えばいい?それは無理な事だ。何故なら
〝俺は、提督でも、艦娘でもないからだ。 〟
じゃあ何だって?
妖精さん?妖精さんはこんな風に喋らねぇだろ。つうか、妖精さんは喋るじゃねぇかよ。
深海棲艦?おいおい。それじゃ格落ちじゃねぇか。
じゃあ誰かって?教えてやるよ。
俺は、艦載機。そう、俺の名は………『彗星』さ。
で、だ。さっき言ってたお前って言うのは、俺を抱えている…こいつの事だ。
「はい、調整の方を…もう1度、お願いします」
「お任せあれ!まだまだ改良が必要かな」
俺を明石って艦娘に手渡した艦娘。そう、大鳳のことだ。俺は、どうしてか知らないが…こいつの事を昔、知ってる。ような気がする。えっ?何でそう思うかって?ほら、あれだよ、第六感ってやつだ。
とにかく、俺がなぜここ、改修工廠に連れてこられたかというと……ご察しの通り、さっきの演習だろうな。俺自身でも分かってたさ。
別に、どこが悪いかって訳じゃない。それは自分がよく知ってる。じゃあ、何故か。原因は爆撃をする際、ふと思い出すことがある。夥しい数の艦、軍艦だろうか。そして機銃と砲弾が飛び交う海上と、その海に堕ちていく自分の体………そんな映像が、毎回俺の頭に流れてくる。それと同時に頭が痛くって、狙いが定まらなくてよ…しばらくすると治るが、それは決まって爆撃をする際だけに起こる。
駄目だな……これじゃ、いざという時護れねぇよ…。
……ん?待て、護るって誰をだ?でも、何のために護るんだ?
自分で言ったのに…分からない……?
…おっと、明石の野郎が色々調整を行い始めた。
俺は正直、体を弄られるのが一番嫌だ。機体を分解され、ありとあらゆる部分まで見られる。
別にいいじゃねぇかと思う奴もいるが、よく考えてみろ。
人間で言うなら、身包み剥がされて裸にされて、体の隅々まで見られるのと同じことだ。つまり、お前らで言う、手術に近い。俺は装甲という服を剥がされた後、骨組みという皮膚を見られ、最終的にモーターという内蔵を見られる。だが今回はどちらかと言うと、裏側。つまり腹だな。あまり見せたくない。と言うより、どの部分であったとしても見せたくない。
しかも執刀医は女性と来たもんだ。男である俺にとって、拷問の他に何と言えようか。まぁ、中にはご褒美とか述べるマゾ?って奴も居るんだろうが、俺は嫌だ。だが、本当にやべぇ時は、何も言わねぇ。だって、その状態が一番やばいんだから。
……やべ、さっきの演習で疲れたのかな……。こんな状態で何だが……少し寝るか……。
という訳で、前編終了です。艦これでは僕の鎮守府に大鳳さんはいませんが、何故か大鳳さんを書きたくなりました。これを機に、大鳳さんがやってきてくれないかと思いながら書いていました。
さて、ここまで読んでくださった方、これからも投稿は遅いですが、是非気に入ってくれたら評価の方、よろしくお願いします。
次回、艦隊これくしょん〜君を護りたい〜【後編】、お楽しみに。