セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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シリアスなおはなし


11話 強化装備(マニュアル操作)

 本国から技術者がやってきていた。

 俺は、ようはイギリスで一番BT兵器とISへの適性が高いからこそここにいられるわけで、もし適性が低かったら今頃本国でお嬢様をやっていたことだろう。

 

 「その割りにうまく動かないってどういうことなのかしら……」

 

 俺は、技術者連中があれこれパネルを弄ったり、IS『ブルー・ティアーズ』の装甲をはずして中身を見たりしているのを眺めつつ、椅子に腰掛けていた。頭には脳波を計測する装置をつけていた。ゆったりとした病院衣を纏って、テスト開始までの暇な時間を過ごす。

 適性が高いならば、BT兵器も使えるに違い無い。そう思っていた時期が俺にもありました。使いこなせないんだよな……BT兵器の実験データを取るための機体で、肝心のBT兵器を相手に突っ込ませて自爆させてミサイルを追撃にぶち込んで近接格闘に持ち込むとか言う戦法をやってしまったわけで。怒られやしないかビクビクとしていると、技術者の一人が歩いてきた。

 

 「Miss.セシリア。戦闘拝見しましたよ! いやービットを突っ込ませて自爆とは考えましたねぇ」

 

 これがイギリス名物の皮肉というものだろうか。イギリスで暮らしていたお陰で皮肉のセンスも前世よりかは磨かれているつもりだが。

 

 「本国が例のデータを見ましてね、サイレント・ゼフィルスへの反映とは別にブルー・ティアーズに別の兵器の実験データを取るようにというお達しがありました」

 「……はい?」

 

 あれ? 怒られないぞ?

 技術者が端末を操作して何かを見せてくる。新兵器のコンセプトらしい。小難しい文が書いてあってよくわからない。広域なんとか。アクティブ走査がどうの。軌道がどうの。トラフィックなんとかかんとか。辛うじてわかるのはスペックデータらしき数字と、兵器の名前くらいなものだった。しかしここはわかってます顔をしておくしかないので、俺は頷きながら読み上げた。

 

 「システム……クシー……クスィー? …………ミーティア・シャワー? 後付の強襲装備とかですの? 戦艦からリフトオフするような」

 「は?」

 「い、いえ、こちらの話です。ミサイル……ですの? 無線誘導式ミサイル?」

 「ええ。BT兵器のビットは全方位からのオールレンジ攻撃を可能としていることはご存知だとは思いますが、こちらはビットそのものをミサイルに置き換えて敵に突っ込ませるというコンセプトです。より原始的なキネティック弾道弾迎撃システムの応用になりますね。シールドビットシステムをより攻撃的な設計にしたといいますか」

 

 ……あぁそういうことね。クスィーガンダムのファンネルミサイルか。セシリー知ってるよ。どうせオート機能ついてなくてマニュアルで動かすんでしょ。キレて食ってかかるほどの元気がなかったので深く考えないでおく。

 オートじゃだめなのか? どうしてもだめ?

 というのはどうでもよくて、俺は別のところが気になっていた。

 

 「あのぉ」

 「はい」

 

 俺は恐る恐る挙手をして発言した。

 

 「ビットを突っ込ませるとか言う戦法はどんな評価だったんですか……?」

 

 ビット一機おいくら万円するのかというと、家が買えてしまう程である。これでも安い方なのだ。IS本体と比べれば。それをミサイル代わりにする暴挙。評価が下がりまくっているのではないかと不安だったのだ。

 

 「“あの”織斑一夏の動きを止めて、もし一次移行がなければ撃墜していたでしょうに、大収穫ですよ!」

 

 どこに目をつけてたんだよ、どう見ても一夏が勝手に止まっただけじゃないか。

 ということを言うと軋轢を生みそうなのでぐっと堪えて言葉を言い換えておく。

 

 「いえ、動きを止めたというか勝手に止まったというべきでしょうか……ところで“あの”とは?」

 

 そういえば、俺はこの世界の一夏について何も知らないということに気が付いた。ぶっきらぼう。物静か。黒い鳥。イケメン。断片的にはわかっていても、何をしてきて、どう育ってきたのかを知らない。たった一言『戦争だ』という情報は引き出せているが。

 技術者の男はしまったと口を塞いだ。俺は技術者の前で脚を組み替えてみせながら、首を傾げた。

 

 「“あの”とはどういうことです? 詳しく説明してくださらないかしら?」

 「いやぁー……あくまでうわさにすぎませんから」

 「構いませんわ」

 「中東の情勢不安が続いていることはご存知の通りですが―――彼はモンドグロッソ第二回大会中に誘拐されて、中東で戦いを強要されていたそうなんですよ。そして彼は自力で帰ってきたそうです。中学生? の年齢というのに」

 

 確かに原作だとそうだった。行方を暗ましている期間が原作よりも長いのが気がかりだったが。

 

 「誘拐された時に、あの有名な篠ノ之束の妹も同時に姿を暗ましています。何かがあったのだと、皆噂していますよ」

 

 誘拐。中東。本人の意味深な戦争という単語。技術者はぼやかした言い方をしているが、もしかして……。

 触れるべきではないのかもしれないが、惚れた男のことである。独自に調べてみるのもいいだろう。噂になるということは、何かしらのメディアで報道されている可能性もある。俺は技術者に礼を言うと、腕を組んで唇に触りながら考えに耽った。

 俺は顔をあげると、その技術者の顔を正面から見据えた。

 

 「その情報の出所は?」

 「なんだったっけなあ……戦場カメラマンの報道写真だったか? あくまで噂ですし、本気にしないでくださいよ」

 「もちろんですわ」

 「じゃ、試験始めますんで準備をよろしくお願いします」

 

 うーん。誤魔化されてる気がする。俺は頷きながら、ブルー・ティアーズのビット起動に移った。集中するために目を閉じる。一夏の顔が闇の中に浮かんでいた。

 単なる噂話だけで、こうもあっさりと俺の取った行動が認められるのだろうか。一夏の機体からして中の人の強さは尋常ではないはず。政府か、開発局上層部はおそらく一夏の実力と異常性に気がついていると考えるのが妥当か。そして箒との関係性も気になる。一夏が言った戦争だの言葉も。何があったのかを正確に把握したい。どうすればいいだろう。

 俺は頭の中に広がりを見せていた疑問点のせいで、ビット同士を衝突させて怒られた。

 

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 「織斑、一夏……」

 

 朝のSHR。俺は完全に上の空だった。男子に負けたことで俺の評価が落ちているだろうことはわかっているし、何か茶化されることもわかっているが、とにかく一夏が気になっていた。相変わらず端末を弄り、ノートに何かを書き続けている。

 正面を見ると山田先生が腕を組み何かを話していて、傍らには千冬がうんうんと頷きながら話に聞き入っている。

 

 「ということで一年一組代表は織斑一夏で決定だ。異議があるものはこの場で挙手をしろ」

 

 相変わらずのドスの利きっぷりである。山田先生の一睨みで好奇心を隠しきれなかったおてんばな女子達が震え上がる。手を挙げたら殺すといわんばかりの圧力。最前列の子が目から星を流してうっとりとしている。新しい次元を開拓しているようだ。百合次元だ、そうに違いない。

 俺は負けたわけだし、一夏が代表で決定だ。文句はない。ちらりと一夏を見てみると、ノートと端末をいじる手を止めて周囲を見回していた。

 

 「ふ、当然の結果だな」

 

 箒が我が物顔で頷いている。例の刀は没収されたのか手元にはないようだった。しかし、仮面は相変わらずである。デザインはそうだなブシドーのと全裸の人のを組み合わせたような感じというか。弾丸を弾く程の強度はないというか。顔の上半分はほぼ見えない。全裸の人みたいに取れと言ったら取ってくれないだろうか。

 

 「ああ、こうなるだろうなとは思っていたよ。悪く思わないでくれよ。一夏の方が速かったように見えたんだ」

 

 アムロもとい千冬先生が俺に申し訳なさそうな視線を送ってきた。黒いほうが勝つわって言ってそう。周囲の視線が集まってくるのがわかる。俺はどんな評価になったんだろうね。

 俺は首を振ると、一夏を見た。視線が合う。無表情で、何を考えているかはわからなかった。


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