セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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13話 中の人の属性が違うIS

 「チェストォォォォ!」

 

 俺童貞だからよとかいいはじめそうな掛け声だぁ……。

 俺は前触れも無く瞬時加速(イグニッション・ブースト)で突撃してきた箒をいなす為にスターライトmkⅢのスコープから目を離した。遠距離用スコープを覗き込んでいては対応が遅れる。今は、とにかく撃つしかない!

 何せ相手は近接の鬼グラハ……いやおとめ座の箒である。第一世代ということは、第三世代のブルー・ティアーズのほうが圧倒的にスペックでは優位。油断せず、間合いに持ち込ませず、有利な距離を保って戦えば勝機はある。とはいってもこのスターライトmkⅢ、銃身長が2mもあるので、内側に入られた段階で詰みが決定してしまう。収納してあるインターセプターを準備しなくては。

 

 「オオオオッ!!」

 「踏み込みが足りませんわね!!」

 

 後退。スラスタをチカチカと輝かせて、攻撃をかわす。

 俺は、バッテン印を描くように空間を引き裂く刃の軌道を見切ることに成功していた。相手ブレードの長さと、速度、正面から来るであろうことを読みきっていたからこそ成功したワザである。あのグラハムなら背後を取ろうなどとは絶対しない。背後を取るのが基本なアーマードコアならともかく。

 

 「シェアアアアアッ!」

 「は、やい!」

 

 続く第二撃目はかわせなかった。音速を突破しているであろう炸裂音と共に袈裟掛けに殺到する右刃がバリアに接触してエネルギーを奪い取る。

 しかし、軽い。やはり第一世代の武器の威力や馬力は低いらしい。これが月光剣だったら撃墜されていた。

 中距離、遠距離に持ち込めば勝てる!

 

 「ファンネル!」

 

 BT兵器だって? 知らんなあ。

 下手な鉄砲数撃てば当たる。狙い撃つなんて自分にはできないことは承知している。だから、圧倒する!

 俺は持久戦に持ち込めば確実に集中力が切れてしまうことがわかっていた。BT兵器『ミーティア・シャワー』の合計24発すべてを起動させて、箒を粉々にする為に放った。狙うな、点で捉えるな、相手を壁のように考えろ。考えろ。考えろ。考えて、俺は目を閉じながら後退し、目を開けた。ファンネル系って目を開けた後のシーンが引き締まって見えるよな!

 

 「なっ……!?」

 

 だがそれは、

 

 「それがどうしたああああっ!」

 

 箒が風になったことで無意味になった。

 右へ、ミサイルの群れを引き連れながら猛烈な速度で飛翔して行ったかと思えば、急激に機体を切り返しながらあろうことかミサイルを切って捨てる。踊るように機体を旋回、あるいはスラスタを複雑に蠢かせて、近接信管あと一歩のところを潜り抜ける。

 これがなんとかサーカスってやつか! ミサイルの排出煙がアリーナによく映えていた。

 

 「誘導を……! だめ……! できな……っあ、はぁっ……うっ、く……」

 

 眩暈。目の前が暗くなりかけた。ブラックアウト? いや、違う。バイタルに異常。息をしなければ。集中しすぎたのか息が切れる。数十発同時誘導は俺には無理だった。箒を追いかけられたのはその半分。もう半分はあらぬ方角にそれていって自爆した。

 俺はスラスタとPICを全開にして後退した。スターライトmkⅢを構える。

 

 「頭、いただきましたわ!」

 「そうでもあるがあああああ!」

 

 とんでもないものを見た。スターライトmkⅢの射撃を、頭部を軽く傾けるだけで回避されたのだ。距離といい、弾速といい、着弾するまでにかかる時間は人類の反応速度を超えているはずなんだが。よもやこいつ人間ではない?

 

 「狙いが馬鹿正直過ぎるぞ、セシリー!」

 「………ぐ、ぐ、ぐ……! ならば!」

 

 箒がにやりと笑いながら声を張り上げてきた。

 俺はスターライトmkⅢを収納する暇も無かった。銃本体を相手に投げつけて時間を稼ごうとする。しまった。貴重な装備を壊したら怒られる。けど、今は相手に対応するほうが重要なんだ。

 手元に重厚な剣が出現する。これならば殺しきれる。威力だけは高いのだ。

 正面、低空から舐めるように肉薄してくる箒の、その瞳の鋭いこと。恋に燃える乙女は最強らしい。こっちだってそうさ!

 

 「一刀両断ッあっ!?」

 

 振りかぶる、その瞬間に箒がさらに加速をかけた。ありえない。瞬時加速中にさらに瞬時加速をかけるだと? どんな技量なんだ!?

 箒が一瞬で目の前に接近してきていた。俺が必死で振り回したインターセプターがブルー・ティアーズのマニュピレータ表層が抉り取られたことで空中を舞う。箒が、ブレードを手放しインターセプターを奪い取った。

 武器には、使用制限(ロック)がかかっていて、それぞれ対応したID鍵が無ければ使えない。だが、剣のような武器は別だ。振り回すことは十分できる。インターセプターのレーザー刃は使えなくても、振り回せるのだ。

 俺は拳を固めようとした。遅かった。腹部を貫くコースで突撃してきた箒の一撃が、シールドエネルギー全てを奪い去っていたから。

 くそ、仮に第四世代もらっても勝てる気がしないぜ……。

 

 勝者、篠ノ之箒。

 

 

 

-------------

 

 

 

 夜。

 俺はみんなが寝静まった夜に窓から外を見ていて………なんもなかったです。ハイ。

 箒にアリーナから退却を命じられた後のことだ。散歩をしていたんだ。

 

 また負けた。そろそろ負けなれてきたとはいえ、一回くらいは勝ちたい。中の人がゆるーい感じの人とかいないだろうか。一人くらい一般人が混じっているとか……。

 

 「はぁ」

 

 ため息しか出てこなかった。弱いものいじめは趣味じゃない。せめて同等クラスの人がいればいいのに。

 ………うーん。戦いは嫌いなんだがなあ。交戦的な人たちと接してきたせいで戦いが嫌いじゃなくなってきた。死なないからね、基本的に。死の恐怖が無い以上はスポーツだし。例外もあるけどな。一夏の目つきとか、眼光の強さだけで主に俺が死ぬ。絶対防御ってほんとミノフスキー粒子並みに便利な設定だと思う。

 俺は風呂上りだった。ラフなネグリジェ……はさすがに表行きの格好じゃないので、ユニセックスの水色のパジャマを着込んで上に一枚カーディガンを羽織っていた。

 夜はいい。俺は空を見上げて思った。限りない宇宙。人類の革新をだな……。

 

 「月は出ているか」

 

 いっぺん言ってみたかったんだよね。

 ふと気がつくと俺は本校舎正面ゲート前まで来ていた。学園を謳うだけあって立派な西洋式の門だった。

 

 「そこの人」

 

 と、俺は背後から肩を叩かれたので、振り返った。

 

 「はい?」

 

 その日、俺は運命に出会った。

 なわけないだろ。そうさ、あの中国人に出会ったのさ。

 

 「………」

 

 黒髪を左右高い位置で結んだツインテール。黒髪によく似合う金色の髪留めが電灯を反射していた。りりしい顔立ち。小柄。ボストンバックを肩に引っ掛けた、可愛らしい女の子がいた。

 こいつは――――セカンド幼馴染こと凰鈴音(ふぁんりんいん)だ。性格は大雑把にして活発。赤いプラグスーツ着たヒロインから精神的な未熟を取り除いたというか、竹を割ったような性格の少女。そうか、もうそんな時期なのか。確かこの後クラス対抗戦があるわけだが。

 その凰鈴音―――鈴音と呼ぼう。鈴音は、腕を組んで俺を見上げてきていた。身長差実に13cm。相手は子猫のように小さい。

 

 「………」

 「………」

 

 ……なんで黙ってるんだろう。

 俺が沈黙を破ろうとしたところで鈴音がポケットを探ってクシャクシャになった紙片を取り出した。

 

 「あのー、本校舎一階総合事務受付ってところに行きたいんですけど」

 

 さて外見はまんまセカンドだが、果たして中身はどうなってることか。内装の違いって大切なんだぞ。冷却性能とか。

 俺は腰に手を当てて、片手は胸元に置いてえへんと得意げな顔をしてみた。

 

 「転校生の方でしょうか? このセシリア・オルコットにお任せなさい! 案内して差し上げますわ」

 「へー、セシリアって言うんだ」

 

 急に砕けた口調になる鈴音。まだだ、中身が判明するまではうかつに触れるな。未確定要素は巨大な不発弾と同じなのだ。

 

 「私は凰鈴音(ふぁんりんいん)。中国出身の代表候補生。出迎え一人無くて困ってたところなの。出迎えくらいつけとくべきよね、非常識って嫌い。リンって呼んでくれて構わないわよ」

 「こちらですわ」

 「ねえセシリア。セシリアって呼んでいいよね?」

 「へ? ええ、もちろんですわ。わたくしは一年生。あなたは?」

 「うん私もそう。それじゃ同級生ってことね。へーイギリスの代表候補ってどんな子なのか名前しか知らなかったけど、イギリス! って感じがする」

 「どんなイメージなのかよくは存じませんが、そうですねぇ……よく言われます。イギリスっぽいて」

 

 歩きながら話してみる。若干物腰が柔らかいかな? 原作通りのしゃべり方と態度。もしかして類似する人が入っている? むしろ唯一元の人? 初対面だから遠慮している? わからんな。保留だ。

 と、俺は足を止めた。アリーナの方角から二人の男女が歩いてくるではないか。一人は箒。一人は一夏。

 

 「あ、一夏さん………」

 「ふーん」

 

 俺が思わず物陰に隠れてしまおうとして踏みとどまったのを見て、鈴音が何か納得したような声を上げて、顔を一夏の方角に向けた。確かに見た。さあどう出る? 幼馴染が女と歩いているぞ!

 

 「へーあの朴念仁可愛い女の子捕まえられるようになったんだ。感心感心」

 

 あり? やるじゃないと言わんばかりに口元を緩める鈴音。やはり中の人が違うのか? あるいは恋心を抱いていないだけ?

 俺は二人が寮へと消えていくのを見守ってから、歩くのを再開した。後から鈴音がついてくる。

 

 「ね、連絡先交換しない? 同級生同士仲良くしときましょ」

 

 ん?

 

 いや気のせいだ。何か熱のこもった視線を背中に感じるがそんなことはないだろう。連絡先くらいは交換してもいいか。俺は端末を取り出しながら振り返る。端末を片手に微笑している鈴音がいた。

 

 「じゃあわたくしが連絡先入力しますので、貸してくださる?」

 「もっちろんいいよ。はい」

 

 俺が入力している間鈴音は俺の顔をがっつり見てきていた。緊張するからやめてください。

 

 「ありがとね。じゃ、連れて行ってくれる? 飛行機で疲れちゃったから早めに寝ときたいの。あのバカとは友達かなにかなの?(うっわー……ちょー綺麗な子。ブロンド髪ふわっふわだし。腰も細いしスポーツとかやってそう。引き締まっててキレー。私の趣味だわ)」

 

 なぜだろう。

 

 「えーっと、そうですわ! 一夏さんとは友人です。ええもちろん。手続きは早めに済ませてしまいましょう。事務が閉じてしまう前に」

 「ね、部屋どこなの?(部屋押しかけてやりたい)」

 

 邪気を感じる。

 

 まさか俺はニュータイプに? いやーまさかな。よかった原作通りの人もいるんだな。安心したよ。

 俺は鈴音を伴って本校舎へと歩いていった。




(中の人のキャラが違うだけとは言ってない)

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