セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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私は決して制御を失わない。


幕間 その境界線の上に立ち(シン・レッド・ライン)

 燃える研究室。それは世界唯一の天才にして天災とも称された女が使う移動式の研究室で、今まさに水没しかかっていた。外からの圧力の一切を撥ね退けるシールドはかろうじて作用していたが、館内の警告は、その機能が徐々に失われつつあることを示していた。

 爆発。何物かが外部から侵入してくることを示す警告。

 

 「………」

 

 篠ノ之束が立っていた。エプロンドレスは細切れとなり、血を吸って赤く染まっていた。ウサギの耳を模したセンサーであるカチューシャも皹が入っていて使い物にならなかった。

 篠ノ之束は、化粧室にある鏡を見つめていた。自分の顔を触り、首に触り、手を見て、鏡に額を押し付ける。その境界線は破れない。破っても、虚像が消えるだけだからだ。

 そして束は横に置いてあった拳銃を握った。コルトガバメントM1911。おそらく世界でもっとも普及した傑作拳銃。最新式の武器を扱う篠ノ之束が握るにしては、あまりに古典的で、非力な武器だった。

 

 「遅かったねぇ………束さん待ちくたびれちゃったよ。目的は果たしたつもりだよ? この私と……彼女がね」

 

 束が壁に語りかけた。

 館内の壁が十文字に切り裂かれた瞬間、赤いISが進み出た。サイレント・ゼフィルス改修型機体。BT兵器の外部装備を全てスラスターや反応速度向上に当てた、その人物専用機体。束はISを展開していなかったが、その身一つだけでもやれる自信があった。

 

 「おもしろきこともなき世におもしろく。何だと思う? 束さんの好きな言葉。じゃ、腕一つは頂いていくよ」

 

 束が動いた。拳銃の発砲と同時に人知を超えた速度を発揮し、赤いサイレント・ゼフィルスのビームライフルの砲撃をかいくぐる。銃身を足場に跳躍し天井を蹴り、背後を取った。

 

 「かはっ……」

 

 予定調和といわんばかりにサイレント・ゼフィルスが動いていた。拳銃弾全てをシールドバリアで受け止め、背後を取られることを想定して回し蹴りを放っていた。束の体がくの字に折れて壁面に叩きつけられる。

 低出力のビームが束の右足を焼き切った。

 

 「…………っ」

 

 左足。赤いサイレント・ゼフィルスに搭乗した人物はまるで弄ぶように束に攻撃を加え続けた。

 

 「………」

 

 束が動かなくなった。全身をずたずたにされてもなお瞳を開けて敵を睨み付けていた。

 

 「全ては私のシナリオ通り………そうでしょ? 織斑マドカ」

 

 サイレント・ゼフィルスの頭部装甲がスライドして素顔があらわになる。その素顔は織斑千冬のそれとよく似ていた。

 

 「………」

 

 織斑まどかと呼ばれた女は再び装甲をおろすと、ビームアックスを握った。黄色の刃が生える。そしてなんのためらいも無く標的の体を焼き尽くした。

 

 

 

 

 爆発し、無数の気泡を吐く研究室だったものから一陣の赤い光が青いスラスタ炎を伴いながら脱出した。海面を突破。海水をあわ立てながら、雲を突き抜けて成層圏(ストラトス)の彼方へと飛んでいく。

 上空で待機していたIS『リザ』がその煤けた機体をバンクさせ、赤いサイレント・ゼフィルスと併走する位置についた。

 

 「相棒、片付いたかィ?」

 「………」

 「無口なこったな。ま、それもいいがね」

 

 IS『リザ』に搭乗する女オータムは何も口にしない相手では時間つぶしにもならないと思ったのか、へたくそな歌をつむぎ始めた。

 

 「I'm a thinker....」

 

 

 

---------------

 

 

 

 メッセージ再生を押す。千冬はその映像を食い入るように見つめていた。

 ゴスロリ服―――本人曰く世界最強の可愛い服――胸元の大きく開いたエプロンドレスを着込んだ束が兎の人形を抱えて映っていた。どこで撮影しているのかはわからない。背後に戦車が映り込んでいて、銃声が時折響いている。戦場だろうか。

 

 「ちっふーおっひさー! しばらく見ない間にいー女になっちゃって感動したよー! お付き合いしてる人も悪い人じゃなさそうだし安心安心!」

 

 こんなくだらないことを言うためにわざわざメッセージを届けたのだろうかと千冬がいぶかしむ。男性と付き合っている情報がダダ漏れになっているのはともかくとして。

 

 「体調にだけは気をつけてね! ちっふーの体は一人だけのものじゃないんだから! ほーきちゃんといーくんにもよろしくー!」

 

 唐突な告白に千冬は画面を食い入るように見つめた。しゃべり方も態度もいつものままだが、何か嫌な予感がするのだ。

 

 「ちょっとお姉さん手間取った仕事があってさー。IS発表の前後でだいとーりょー? とかって人たちからあれこれ言われたときよりも忙しいの。運よく生きてこられたらまたみんなでご飯食べようねっ!」

 

 束が歩いてくると、カメラに手をかけた。レンズを覗き込むようにしている。

 

 「よく聞いてね。アリーナを襲ったあの兵器……みんなに伝えて欲しいの。あれに攻撃することだけは避けて。そうすれば、なんとかなるから。攻撃するならいーくんに頼ってね。あのかっこいい剣は束さん特製のスペシャルなウェポンだから。じゃまったねー☆」

 

 千冬はもう一度再生しますか? で止まった画面を見つめていたが、ややあって窓際に歩み寄って空を見上げた。

 

 「束………お前は……」

 

 アリーナ襲撃事件。千冬は応戦に向かったが敵を一人として撃ち落すこともできず、逃してしまっていた。束が戦いの最中叫んだパルヴァライザーと呼ばれるあの兵器の処理に追われ、束本人が行方をくらましたその追尾さえできなかったのだ。

 ふがいない。窓ガラスを拳で打つと、ため息を漏らす。

 何か大きいことが起ころうとしている。そして、束はそれと戦っているのだ。自分に何ができるだろうか。

 千冬は拳を緩めると、整備科へと急いだ。




多分明日分は更新できないんじゃねぇかな感
次で一巻エピローグ予定。
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