セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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のほほんさんメイン級として扱うと思います。立場的においしい。
機体は通常の打鉄だけどロングソードと盾使ってるんじゃない?(適当)


27話 学年別トーナメント開催!

 「――――はぁ」

 

 大きなため息から始まる朝のホームルームがかつてあっただろうか。

 暗い表情をますます暗くした山田先生その人が、いつもはきっちり閉めている胸元をどこか緩くしたような格好で教壇に立っていた。我らが千冬氏は、扉の外を時折窺っている。俺ニュータイプじゃないけどわかる。扉の外にシャルロットがいる。そして気まずそうに視線を彷徨わせている。

 

 「転校生を紹介する。諸事情により色々とあったとだけ言っておく。詮索は一切不要。詮索してみろ、面白いことにしてやる」

 

 仕事を増やすなよと睨みを利かせる山田女史。最前列の例の子は嬉しそうである。お前まったくぶれないな。

 

 「みんな静かに! よし、入ってくれ」

 

 広がりつつある喧騒を我らが千冬さんが手を叩いて制すると、扉に向かって語りかけた。開けゴマ。扉が開くとロングスカートを身に纏った清楚な女の子が現れた。金糸を後ろで纏めてたらした中性的な容姿。千冬さんに抱えられるようにして教壇へとやってくると、足を止めた。

 

 「シャルロット・デュノア……です。改めてよろしくお願いします」

 

 落ち着かないのだろうか、自分の服の隅っこを指で弄りながら視線を俯き加減に自己紹介をする。ちらりと俺のほうを見てきたので、頑張れと言わんばかりに頷いておいた。こればかりは代わりにはなってやれないんだ。

 山田先生が珍しく憂いに満ちた表情を浮かべてシャルロットをちらり一瞥した。

 

 「ミスターがミスに変わったもとい元通りになったということだ………チッ。部屋割りだが既に内定している。後でスケジュールを渡すので滞りなく実施するように」

 

 山田先生と目が合った。あっ……俺か、俺なのか。まあ一人部屋にしてもらってるしね。普通に考えて俺んとこくるよなぁ。こうして俺のホーリーオンリーなロンリー生活は終わることになったのだ。一夏だったらいつでも歓迎だったんだけど。

 

 「えっデュノア君って女……?」

 「やっぱり。私最初からわかってたもん」

 「織斑君同室だったよね!」

 「昨日の騒ぎってまさか……!?」

 

 視線は一夏へと集まるが、肝心の本人はどこ吹く風だった。表情一つ変わらない。かっこいいぞ。

 ガラッ。扉が開くと女子生徒の好奇心に満ち溢れた瞳が無数に咲いた。騒ぎを聞きつけたよその生徒たちまでもが野次馬りにやってきていた。君たち授業はどうしたのかね?

 

 「失せろ」

 

 山田先生が静かに言うなり野次馬が一斉に退散していく。この威力! 蜘蛛の子を散らすとでも言おうか。ついでにクラスの喧騒も静まり返っていた。まるで図書館のような静けさの中で、シャルロットは落ち着かなさが限界に達したのか、服の裾を指に巻きつけ始めていた。皺になるし手垢付くしやめい。

 

 「ということで!」

 

 収集がつかなくなると思ったらしい千冬さんが再度手を鳴らした。

 

 「シャルルはシャルロットだったというのが真実だ。授業に入る。山田先生準備をお願いします」

 

 

 

-------------

 

 

 

 アリーナ更衣室兼控え室にて。

 

 結局、練習にあまり時間を割けないまま当日がやってきてしまっていた。やってないわけじゃないんだが実技教習のときに負ったダメージの修復で技術局に機体を取り上げられて訓練機でずっと練習をしていたんだよなぁ。せめて新装備が欲しかった。

 突然の一人対一人から二人対二人への変更。会場準備に追われる山田先生が上層部の連中を殺してやるなどと不穏な呟きをしながら走り回っているのを聞いた。突然の仕様変更とか、運用変更とかもうね、上の連中を殺したくなるよな、わかるわかる。

 アリーナ更衣室に俺はいた。

 男子更衣室用として一夏の部屋が必要になった関係上、俺たち女性組は小さい部屋に詰め込まれて息苦しい思いをしていた。

 原作からの差異を考えてみる。まず、ラウラが暴走しないであろうこと。セシリアと―――つまり俺だが―――鈴音が試合に出場すること、だ。組み合わせも異なっているんだろうと思う。あとペアを誰と組むかということもランダムらしい。今まで話した事もない生徒との組み合わせに――はならないだろう。間違いなくランダムではなくて、来賓の政府関係者や研究機関などの意見が“参考に”されることだろう。

 

 「誰と誰がペアになって誰と戦うかも直前までわからないなんて試合にならないわよ」

 

 口をへの字に曲げた鈴音が腕を組んでいた。

 まったくである。一夏と組んで熱い愛情を育みたかったんだが。やられそうになる俺を一夏が華麗に助けて甘いひと時をだな……おっと表情が緩むところだった。ISスーツの首元を整える振りして口を隠す。

 

 「同意しますわ」

 「もし対戦相手になっても手加減は一切抜き。殺す気でやること。いい?」

 

 などと物騒なことを言い始める鈴音を尻目に、俺はほかのメンバーを確認していた。やはりというかみんな浮き足立っている。知り合いと話し込んでいるものもいれば、胸元を押さえて不安そうにスクリーンを見上げているものもいる。もっともメインメンバーのほとんどは落ち着いていたがね。シャルロットなんかを除けば。

 シャルロットは俺に子供のように世話されたことが恥ずかしいらしく、あれ以降甘えた態度は取ってこない。同室になったけど、寝る時も布団に潜り込んできたりはしなかった。娘ができたみたいで嬉しかったのは秘密だぞ。ただ学園で初めてできた友達ということもあったらしく、すぐ隣にいた。鈴音が見てきたけど気にしたら負けだ。

 

 「こんなイベントに意味があるとは思えない」

 「やるからには最善を尽くすのみですわ」

 「セシリアは前向きなんだね。僕は逃げ出してしまいたい。戦って、お偉いさんに目をつけられて、それがなんだっていうんだ。この会場にアイツも来てるのかな?」

 「よからぬことを考えているならばおやめなさい。やるならこっそりとね」

 

 裏で殴るなりするなら俺もなんも言わないよ。こっそりとやれ。拳を手のひらに軽く打ちつける仕草をしてみた。

 シャルロットがあんぐりと口を開けて見てきたので手は速攻で解除したけど。

 

 「……セシリアって見た目とキャラが違う。お嬢様チックな人かと思ってたよ」

 「失礼な。キャラが違うというのは否定しませんが、わたくし、オルコット家の一人娘にして跡継ぎですのよ? 市民とはペディグリーが違いますわ……と、そこまで強調することでもありませんが」

 

 シャルは女性もののISスーツに身を包んでベンチに腰掛けて、やはりいらいらとしていた。学園の保護下にいるためにはIS関連のイベントや授業をこなさなければならないが、父親と実家に決別するためにISからは離れたいのだろうな。わかるけど、割り切らんとだめなこともあるんだ。

 おっ、スクリーンが切り替わった。ペア発表から始まるらしい。

 箒・ラウラ。一夏・シャル。ここは原作通りのようだ。のほほん・セシリア。鈴音・更識 簪。おや? あの、のほほんさんとペアとな……なるほど面白くなってきた。やっぱ太陽の光の槍とか撃てんのかな。

 俺は残念そうにこちらを見ている鈴音の肩を軽く叩くと、のほほんさんを探しに向かった。

 のほほんさんは炭酸水を飲んでいた。けぷ、と可愛らしい吐息を漏らしていた。

 

 「せっしー私と一緒なんだねぇ~」

 「よろしくお願いいたします」

 

 のほほんさん。本音さんと呼んだほうがいいな。あまりにのほほんさん呼びしすぎて本名を忘れてしまいそう。

 俺は本音の隣に並ぶと、片足に体重をかけて下腹部で腕を組んだ。

 

 「ねーせっしーのんでー!」

 

 炭酸水を飲もうとするけど飲めなくて彼氏に渡す系の女の子っていいよね……何考えてるんだ俺は。

 俺はにこにこ笑いながらボトルを渡してくる本音の正面に立ち、受け取った。

 

 「もう。仕方がありませんわね。飲めないならば買うべきではなかったのでは」

 「なんかねー炭酸水みたいな名前のスタッフさんが可愛い子ちゃんにはあげちゃうぞとかってくれたんだよ」

 

 ………いやまさかな。ないない。

 俺は炭酸水を受け取ると、おもむろに一気飲み……はせず半分くらい飲んで鞄にぶち込んでおいた。お嬢様的に一気飲みはアカンのだよアケチ君。

 と俺たちが時間を潰している間に、スクリーンの表示が切り替わっていた。

 第一回戦―――箒・ラウラVS一夏・シャル。

 

 「見せていただきましょうか―――イレギュラーの実力というものを」

 「せっしーかっこいい!」

 

 俺の独り言を聞いていたらしい本音が目を輝かせながら寄りかかってきたので、俺は咳をして誤魔化した。太陽の香りがしました。




本音「たいよーばんざーい!Y」

袖はへの字。

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