セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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30話 あの死神を撃て

 ピットにて、俺は修理完了した機体を纏おうとしていた。パーツが徐々に光の粒子から実体化する様は、魔法少女の変身を思わせる。全裸にはならないが。そういや全裸で装着するとどうなんだろね。服も呼び出せるけど、全裸は……いややめておこう。無駄なことを考えてはいけない。

 

 機体の修理――といってもコアを予備パーツにチョイチョイするだけでいいのです。われわれはかしこいので。チョイのチョイです。と技術局の人らが言ってた。頼れるなぁ。あとでカレーライス奢らなきゃ(使命感)

 それはともかく、次の戦いは一夏とシャルロットが相手になる。のほほんさんこと本音さんが優秀な前衛であることはわかった。卓越した守りと攻撃のセンス。ダクソ的なコンマ数秒単位の武器持ち替え速度。回避も秀でていて、防御型の打鉄を装着していることも相まって、援護さえしっかりすれば相当しぶとく生き残ってくれると思う。問題は即死級の威力を誇るブレードを持つ一夏と、荒削りながら本番でラウラを一撃で戦闘不能に追い込むポテンシャルを持つシャルロットのって要するに問題しかないわけだが。

 俺は、鈴音を倒したことで自信を持っていた。一夏ならともかくシャルロットならばなんとかできるのではないかな、とも思っていた。さらに俺たちのコンビにいい情報がある。シャルロットの機体MK.Ⅱは想定外の形態移行を起こしたことでコアに変調が生じていて稼動不可である、らしい。最適化の機能はオフのはずなのに最適化させたのか、シャルの潜在能力がそうさせたのかはわからない。そうなると打鉄かラファールに乗ってくるはずなんだけど、まあ後者だろうなぁと思う。

 

 「たのしみだねぇ~」

 

 のほほんさんがにこにこ笑いながら話しかけてきたので、俺は表情を引き締めながら答えた。

 

 「ええ。油断は禁物ですわよ」

 「もっちろん。私が先行するから援護お願いするね!」

 「よくってよ。手筈通りに万事よろしく」

 

 俺が拳を掲げると、本音は一瞬首を傾げたが同じように拳を出してきた。こつんと拳をぶつける。さあ、戦いの始まりだ。

 

 

 

 

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 試合開始と同時に俺はシャルロットを落としにかかった。一夏はとにかくヤバイ。数的有利性を作り出さねば勝てるはずがない。案の定シャルロットはラファールⅡで出てきていた。新鋭高性能量産機MK.Ⅱに対して、ラファールは安価に生産できる機体、という位置づけだったか。MK.Ⅱのシールドとビームサーベルおよびライフルを構えてはいたが、ラファールにはない発電装置のようなものを背負っているので、やはり突貫工事をして間に合わせてきたらしい。MK.Ⅱと比べて性能が劣るのは間違いない。勝機はある。

 

 「さあ参りましょう! ブルー・ティアーズが奏でる音色と共に、激しいタンゴを!」

 

 優雅なワルツを踏む余裕なんてないよ。相手にしがみついて振り回す情熱的なダンスが俺にはお似合いなのだ。

 右手にスターライトMK.Ⅲ.左手にインターセプターを肩に担ぐ。いつでも近接戦闘ができるように、振り下ろせるようにしているわけだ。狙い撃ちなんてしてもあたらんし、撃ちまくるほうがいい。スコープは覗かず直接目視で当てる!

 

 「世話になったけどこればっかりは手抜きはできないよ!」

 

 開幕と同時にシャルロットがビームライフルを撃ちまくってくる。全て本命だ、牽制は混じっていない。落ち着いてかわせばいい。と思いきや早速バリアに着弾。俺は弾き飛ばされた。回避先を完全に読まれていたらしい。ニュータイプってこれだからきらい。でもすき。

 

 「なんて正確な!」

 

 俺が体勢を立て直そうとするとシャルロットが接近しつつシールドを持ち替えバズーカを握った。

 ちらり、と見ると一夏のブレード捌きに合わせて本音がバックステップを踏みシールドバッシュをぶちかますところだった。持ちこたえてくれ。

 矢継ぎ早に放たれる成形炸薬弾を左右に振ってかわす。

 

 「散弾だったら当たったかもしれませんわね!」

 

 散弾だったらなぁ!

 俺はそう叫びつつもこっそり見えない位置にBTミサイルを三発放っていた。どうせハイパーセンサーでばれるだろうが、視界外というのはどうしても一瞬遅れるものだ。スターライトMK.Ⅲをフルオートで撃ちまくり距離をとろうとする、そういう意図を見せ付ける。

 

 「迂闊な攻撃、当たってあげるわけにはいかないからね!」

 

 バズーカが弾切れになったのかシャルロットが砲身を投げ捨てて、ついでに後付のロケット・ポッドをパージする。ライフルを右手に、左手にブレードを握って瞬時加速(イグニッション・ブースト)をかけて飛び込んでくる。

 俺はミサイルに命じて、シャルロットの進行方向に静止させた。起爆タイミングを任意に設定。

 

 「……!?」

 

 シャルロットが咄嗟に瞬時加速中というのに無理矢理機体をロールさせながら離脱した。苦しそうに咳をしている。無茶するなあ、下手すると肋骨がポキっといくというのに。

 

 「行きなさい!」

 

 俺はインターセプターを振るって意識を集中しながら追加で九発を放った。軌道は単純明快最短距離を狙っていた。BTミサイルは俺の意思によって動かすことができる。俺はミサイルを機雷として使い接近を誘って相手がかかるのを待ったのだが、咄嗟に回避に転じられたことで無意味に終わった。

 シャルロットは無数に接近してくるミサイルを見てサーベルをブーメランよろしく投げつけると、サーベルの回転面目掛けビームライフルを二発精密射撃した。

 

 「だったら……! ビームコンフューズ!」

 

 拡散するビームにミサイルが飲まれ爆発した。

 アニメで見たやつだ……! ハマーン様に使ったやつじゃないか!!

 興奮してる場合じゃない。現実はアニメじゃないしね。

 煙を大きく迂回しながら接近してくるシャルロット機が振るうビームサーベルに、俺のインターセプターがカチ合った。重量差からシャルロットのほうが弾かれた。

 

 「……パージ!」

 

 スターライトMK.Ⅲを格納。BTミサイルポッドをパージ。空中で待機状態のミサイルに点火して手元にポッドを誘導し握ると、肉薄してくるシャルロットのサーベル攻撃をあえて体で受け止める。高温のビームがバリアを貫き装甲を溶かす。衝撃が走り一瞬意識が飛びかけたが、俺はストライクガンナーを全開にして体当たり攻撃を仕掛けた。

 まともにやって勝ち目がないなら―――ブルー・ティアーズのストライクガンナーを装甲に見立てて、敵と仲良くダメージを浴びて勝つしかない!

 シャルロットが俺にビームサーベルを突き立てようとした。こなくそ! 俺は恥も外聞も捨てて頭突きをかました。シャルロットが怯んだ隙にスラスタとPICを全開にして突き進む。

 

 「まさか!?」

 「その通り! そのまさかですわ!」

 

 BTミサイル、残り全弾、安全距離設定を無しに設定。起爆。

 俺は、シャルロットを巻き込んで自爆した。

 

 「――――――、ッ゛ ア゛………くっ!」

 

 合計十二発の同時起爆。シャルロットと俺は反対方向に吹っ飛ばされた。シャルロット機はそのまま墜落。俺はシールド残量一桁というギリギリのところでなんとか撃墜を免れてはいたが、ストライクガンナーを全て喪失、カスタム・ウィング不調、さらにPICまで出力がおかしくなっていた。下手に動くとエネルギーが切れちまう。

 これで二回目の勝利か……でもあんまり嬉しくなかった。不慣れな機体しかも突貫であれこれつけた即席の機体に乗ったシャルを自爆で仕留めるなんてね。撃ち合い斬り合いで勝ちたかったよ。

 

 「はぁっ……はぁっ……! 本音さん……」

 

 俺が地上に降りて肩で息をしていると、本音が地面に脚部を突き立てて減速しながら俺の横にやってきた。

 

 「ふひゃーおりむーつよいねぇ。お嬢様とおんなじくらいに強いかも?」

 

 つよいつよい連呼しつつも、のほほんさんは大してダメージを負っていないようだった。少なくとも盾の表面がべっとり溶けている程度しか損傷がない。事前の話し合いで、俺がシャルを撃墜するまでは守りに徹することになっていたからだ。逆に一夏は持久戦に持ち込まれると、ブレードの燃費の悪さから徐々に追い詰められていく。かわそうとしてかわしきれるものじゃないが、本音ならもしかして、と思いやらせてみたらビンゴだった。ダクソ的にNPCはとことんしぶといからね。ドラゴンブレス食らっても即死しなかったり。

 一夏は俺たちをじっと見つめていたが、ブレードの装備されている腕を前傾させた。

 

 『    』

 

 ん? OSにノイズが走った。ハイパーセンサーが不調を訴えてくる。無事なはずのスラスタが勝手に動く。故障かな?

 俺は本音と顔を見合わせると、一夏に向けて攻撃を開始した。

 一夏のダークレイヴンが背負った零式月光剣が不気味なエメラルドグリーンを放っていた。




次回予告

「OK! Let's Party!!!!!!!!!!!!」

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