セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
(ニヤニヤを隠すためあからさまにそっぽを向くセシリア)
(でへへへへ顔が出てることに気が付かないセシリア)
だめみたいですね……(諦観)
最近自分は欲求不満らしい。わかってるさ。発散の手段がどうにも限られているんだからな。仕方が無い。
俺はそういう時は運動をして発散させるようにはしているが、発散にも限度があるってはっきりわかんだね。ぐいぐいと行きたいタイプの俺なので、いっそ(省略)(自主規制)(見せられないよ!)する準備はしているとも。流血だけは勘弁な!
と俺は複雑に思考をくんずほぐれつさせながら目を覚ました。俺の朝は早いのだ。朝の準備はもちろん朝の運動もするので、他の生徒が寝静まっている頃には既に起きている。早寝早起きはいいぞ。
「すぅー………」
ベッドではシャルロットが眠りについていた。顔の痣もほとんど治ってわからなくなっていた。あの後、出るところに出ないとまずいと思った俺は事実を学園に伝えてシャルロットの父親を出入り禁止にしてもらった。これで少なくとも学園内では鉢合わせするトラブルは回避できる。果たしてどこまで相手側が守ってくれるかは謎だが。
さて、今日はせっかくの休みだった。臨海学校に向けてあれこれと買い込む予定の日である。
『そっか。行くなら僕も行くよ。荷物持ちくらいはできるからさ』
と一夏と約束があるからと伝えるとシャルロットはそんなことを言ってきた。既に俺の使用人になる気マンマンなのが困ったところだが。中身が100パーセントカミーユというわけじゃない気がする。箒もそうだけど。混ざってるんじゃないかな? 俺も100パーセント俺という気でいたけど、セシリアっぽい嫉妬だとか、気の動転の仕方したりするし。
気になるのがシャルロットが一夏をどう思っているかだけど、同じ部屋に住もうねっていう最初の段階で速攻バレていたから、接する機会どころの騒ぎじゃないし、一目惚れしている風でもないし……うーんでもやっぱりなぁ。一夏と二人きりがいいなぁ。なんてことを相談しようか悩んでいると、シャルロットがぱちりと目を覚ました。
「ふあああ……おはよう……」
布団から顔を出して微笑を浮かべる様は可愛らしい。目を吊り上げて父親をあの野郎呼ばわりしているときとは似ても似つかない。キレると怖いは原作シャルと変わらないけど方向性が違うというか。
「そうだ……買い物なんだけどさ」
「ええ。おはようございます」
「僕はいいや。ラウラと水着買いにいくことになったんだ」
ほう、そいつァべらぼうに好都合だぜ。しかしなんでまた? と俺が間を置いていると、目だけ布団から出したシャルロットが見てきた。
「一夏のこと好きなんでしょ」
「……えっ?」
「セシリアって表情に出ないように我慢してるみたいだけどわかりやすいからね。見てるとわかるよ。顔真っ赤でうるうるしながらうっとりして見てるし。むしろわかってくれない一夏がにぶすぎるというか」
え゛……。
俺は絶句していた。
そんな馬鹿な! ま、まあ確かにニヤっとしかけたときは口元隠したりはしてるけど、そんなに表情に出てたのか? ポーカーフェイスには自信があるつもりだったんだけど……あるいはシャル特有のピキーンとしたセンスのお陰で!?
俺が硬直していると、布団からぬるりとシャルロットが出てきた。わかってるんだよいう顔で肩を撫でてくる。半開きの胸元が妙に艶かしい。
「近くのお店で買い物することになってますので、なにかありましたら端末で呼んでくださいねお嬢様」
「まだ雇って働いてもらうとは一言も言ってませんわ!」
俺が頬を膨らませて腕を組むとシャルロットがくすくすと笑ってきた。笑うなばか!
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一時間前のことだ。
あんまり気取った格好というのは正直趣味じゃない。社交界だとドレスとか着てハイヒールなんだけど、普段は一般的な女子の服である。一夏の性格からしてヒラヒラした服はむしろ苦手と見た。
の割には夏向けワンピースにカーディガンの組み合わせである。いやーデートでジーンズにジャケットはちょっとキャラじゃないかなぁーってチキンになりました。
待ち合わせ場所の駅前にて。俺はそわそわとあたりを見回していた。時間よりかは大分早い。具体的には一時間。俺が腕時計の秒針の位置がどこにあるのか見なくてもわかるくらいに時間を気にしていると、背後から肩を叩かれた。
黒の半ズボン。暗緑のタンクトップ。黒の腕時計。黒のボディバッグ。
『だったら一つだけ忠告がある、死ぬほど痛いぞ』
なぜか違うキャラが脳裏によぎる。自爆して生きてるっておかしいよなぁ……。
格好はなるほど夏向けだがデート向きじゃないコーデの織斑一夏その人がいた。でもすき。
「待たせたか」
「い、いえ、いまきたところですわ」
言ってみたかったセリフを言えたぜ。
一夏がこくんと頷いた。
「そうか。二時間前に偵察にでていただけの甲斐はある」
二時間とな……多くは語らない彼であるが、なんとなく悟っていた。危険物が無いかとかを真面目に調べていたのだろう。常識と思春期を殺してきたとでも言わんばかりの彼に口元が緩む。
俺は手を差し出してみた。一夏が首をかしげて俺の手の上に手を置く。犬のお手みたいな仕草に腹筋が耐えられなくなりそうだったので、手を引き寄せて腕で絡めて身を寄せる。
「参りましょうか!」
その後あんまりと言えばあんまりな服装の一夏をつれてショッピングモールへとやってきていた。曰く千冬は着るものに頓着しない性質だったらしく、一夏も影響を受けて服は簡単なものばかりらしいのだ。そこで俺は服屋に直行してあれこれと着せ替え人形にして楽しんだ。やられる側の一夏も嫌そうじゃなかったのでよかった。
ショッピングモール『レゾナンス』。和洋中レストランはもちろん量販店から海外一流ブランドまで揃えた複合型商業施設。駅を中心とした大型施設であるため人人人の群れで埋め尽くされているのが常である。
俺は臨海学校用の水着を買いに水着売り場へとやってきていた。
「……」
女性用売り場にな! 気まずそうな一夏の腕を引っ張って連れてきたのだ。腕は胸元に這わせるような位置取り。抜かりは無いぞ。ふふふ。シャネルの香水をうっすら纏ってきたからどんどん嗅いで欲しい。
女性の水着売り場コーナーとは、女性下着売り場コーナーと同等の聖域であり、男性連れで入ってくるということはすなわちデートしてますというサインでもあるのだ。
「どうかしましたか?」
俺は気後れしているらしい一夏の顔を覗きこんでみた。すると一夏は若干困惑気味に俺に視線をくれた。
「ここは女性専用ではないか?」
「いいえ。女性物の水着を売っているだけで入ってはいけない場所ではありませんわ。参りましょう。堂々としていればいいのですわ」
いい表情だ……もっと困ってくれていいのよ。
俺は個室を指差すと腕を引いた。
「せっかくですから新作水着を試してみたいと思いますの。水着を試着しますから、見ていただきたいのですけれども」
なんで試着室に一緒に入るかって? やましい気持ちしかないよ。しかないってとこ重要。
「ああ」
一夏はそれしか言わなかった。視線をそらさず真正面から見てくるものだから、俺の体は赤くなりつつあった。こういうとこ白人ってわかりやすいから困る。赤くなるのがすぐわかるのだ。
流石に堂々と男女同伴で試着室に入るのも憚られるので、人目を盗んでいくつか水着を持ってこっそりと入った。
狭い室内である。お互いが背中を向け合うようにしていても、少し後退するとお尻とお尻がぶつかる。
俺は不動明王と化した一夏の背中で着替えを始めた。カーディガンを脱いでワンピースを取り下着をとる。ブラのホックをはずして、しゅるりとショーツをずらして足元にやり取った。上下共に黒です。
水着――原作通りのものも、一応あると言えばある。青ビキニにパレオ(腰から巻く布のような着衣)のあれな。あれもいいけど、黒もいいなと思うし。モノキニっていう海外の有名人がビーチで着ているようなワンピースとビキニを合わせたものもいいと思うし……結局は一夏に判断してもらうのがいいな。
俺はとりあえず原作通りの水着を身に付けることにした。
「ここに本当にいるの?」
「ああ、間違いない。私の勘はよく当たる。運命の赤い糸で結ばれているからな!!」
聞き覚えのある声がした。この声は――おとめ座の箒とウーフェ……失礼鈴音か!?
俺は一夏が試着室から出ていこうとするのを背後から抱きしめることで止めると、一夏の顔の前で人差し指を立てた。
「どうしてここがわかったのでしょうか……今はだめですわ、一夏さん」
「ああ。よくわからないが出て行かないほうがいいのか」
おっぱい当ててるんだけど反応が無い。でもいいんだ。終わりの無いディフェンスでも俺は一向に構わん。あきらめないぞ。イギリスの女はしつこいのだ。我々は決して降参しないって首相も言ってた。
邪魔はさせない、誰にも! 俺は試着室の中で潜伏してやり過ごすことにした。はよ警戒解いて巡回警備に戻ってくれ。
「そうですわ!」
「なんだ」
「応援を呼びます」
「応援?」
俺は携帯端末を取り出すとシャルロットを呼び出した。
シャルロットカムヒア! というノリで電話の呼び出しマークを見つめて待った。
「もしもし」
繋がった! 俺は早速指示を与え始めたのだった。
Q.なんで場所がわかったのか
A.野生の勘
Q.欲求不満?
A.夢に出るくらいにはキてます