セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
トンネルを抜けると、南国であった。
臨海学校初日。大型バスに揺られることしばらくのこと。俺は腕を組み茶色のハットを顔に乗せてぐーすかいびきをかいているラウラの隣で窓の外を見ていた。蛇が嫌いな考古学者みたいな寝方しやがって。一夏の横がよかったなぁと思うけどクジ引きで決めたから仕方ないね。これが大いびきをかくオヤジが隣だったら腹に一発食らわしてるけど可愛いいびきのラウラなら許すよ。眠くなるまでコンビニで買ってきた菓子を延々食いまくってたけど、小さい体によく入るもんだと思う。
水着はちゃんと買えたと言えば買えたけどゆっくり選んでる暇がなかったのだ。箒と鈴音が乱入してくるとは思ってもみなかったものだから。原作の青いビキニにパレオの水着になったけど、似合うからまあいいやと思う。
「海見えたよ!」
「嘘!? 写真取らなきゃ!」
はしゃぐクラスメイトとは裏腹に俺を含むメインメンバーは物静かな方だった。
俺。ドキドキはしていたが海を窓越しに見てテンションがあがるほど若くは無いつもりだ。
一夏。窓をボーっと見て爪先立ちでジャンプして息継ぎがどうのとか言ってる。
シャルロット。一夏の発言を聞いて若干引いている。
鈴音。手荷物を覗き込んでなにやらしている。
ラウラ。さっきも言ったがぐっすり。
箒。瞑想に入っている。
他といえばのほほんさんか。窓に寄りかかって溶けていた。赤い羽根のついた麦藁帽子をかぶってとても心地がよさそうである。
先生たちと言えば前方の座席でなにやら話しこんでいた。
臨海学校が始まるのだ。
大騒ぎはしないといったが訂正させてもらおう。俺はとても興奮している。開放的なこのイベントで一気に攻略するつもりである。懸念材料としてはゴスペルさんが襲撃してくるだとか、束がやってくるだとか、そういうところにある。まったく読めないのだ。何が起こっても不思議ではない。とはいえ千冬さんもいるし、この面々である。仮に来てもボコボコにしてくれることだろう。正直俺は座っててもいいレベルだと思っている。
ともあれ、俺は窓を見ながらため息を吐いて考えに耽ることにした。
旅館についた! ちなみに部屋分けは基本的に同じ部屋のルームメイト同士ということらしい。一夏だけは千冬と一緒らしい。その辺は原作とそんなに変わらない。
違うといえば軍人としか思えない装備の女性兵士が海岸をうろついているだとか、取材用ヘリには見えない対潜ヘリがぶんぶん飛んでるとか、意味深に配置された運搬用トラックがあるだとか、物々しい雰囲気が全開なことだろうか。この様子だと沖には自衛隊の駆逐艦とかヘリ空母(この世界のはIS運用を想定している)が控えていても不思議じゃないと思う。というか原作が緩すぎるだけだと思う。
タイミングでいうと束が登場しても不思議じゃないんだけど、一向に現れない。俺がみんなが海にゾロゾロ向かい始めた後を追いかけたタイミングになっても、現れない。十中八九中身も目的も違うだろうしなぁ……これもうわかんねぇな。
「ふう」
「お疲れ?」
「ええ、まあ」
俺は着衣を取ると手早く水着を身に着けていた。パレオを腰から巻く。パレオっていいよね。スカートの裾から足が見えているような構造だけに、男性としてはそそられるのではないか。なんて悶々としていると、シャルロットが横から声をかけてきた。
シャルロットは原作同様脇を大きく見せる格好のホルターネックとフリル付きの黄色と黒のビキニである。足が長く腰がきゅっと締まっているシャルロットだけに、見惚れる美しさが輝いていた。
にしても原作と同じ水着着てきちゃったけど大丈夫だろうか。原作より身長は高いわ筋肉付いてるわで似合わないのではないか。俺がシャルロットの猫のようにしなやかな体に視線をやると、シャルロットはにやっと口元を緩めた。
「似合ってると思うよ。セシリアって背高くて引き締まってるからモデルみたいで羨ましいよ」
「そ、それはありがとうござむひゃっ!?」
俺が礼を言おうとすると唐突に背筋を撫でられた。振り返ってみるとタンキニタイプのヘソ出し水着に身を包んだ鈴音がいた。
「へへへっ! イタズラ成功っとぉ!」
破顔一笑。両腕を後ろで組んで前のめりに笑う鈴音がいた。
「お待ちなさい! 今日という今日は許しませんわよ! ぷふぇっ!? こら! お待ちなさい!」
俺が手を伸ばすとひらりと鈴音が逃れていく。代わりに顔面にタオルが投げつけられて俺は仰け反った。不覚を取ったか!
鈴音は着替え用のプラスチック・ベンチをひらりと乗り越えて扉を開けて猛スピードで逃げていく。お前は猫か!
ふふふいいだろう。俺にセクハラとは対した度胸だ。今日こそはお灸をすえてやろう! 俺は運動で鍛えた脚力を発揮すると猛烈な速度で走り始めた。
「あつい! やけどしてしまいますわ!」
しかし砂が熱い! ビーチサンダル! サンダルを所望する! 俺が奇妙なダンスを踊りかけて日陰に退避して振り返ると手でメガホンを作り手を振るシャルロットがいた。
「あっセシリアー! 日焼けオイルとパラソルもって行くんじゃないのー!」
「そうでしたわ!」
走りかけて俺は急制動をかけて戻った。危ないところだった。日焼けして全身まっかっかになるところだった。じゃなくて一夏に塗ってもらう予定だったんだ。前もいいぞ。どこでも触ってくれてもいいのよ。妄想の世界に入る前に、まず一夏を見つけつつ鈴音を追いかけねば。
俺は慌てて更衣室に戻ると、サンダルを履き、シャルロットを引き連れてオイルとパラソルとあとビーチシートを持って砂浜という戦場へと降り立ったのだった。
「太陽にかんぱーい! んぅぅぅきくぅぅぅ! いつつつつつつ痛い! 頭いたい!」
パラソルの下で赤い羽根のついた麦藁帽子をかぶったのほほんさんが乾杯をしていた。胡坐をかいて太陽に微笑みながら褐色の透き通った液体を飲み干している。冷たすぎたのか頭を抱えて唸っていたが。
「本音。酒はだめだぞ」
「あっおりむーせんせー! 大丈夫ですよ~これ麦茶だし~」
千冬が背後からやってくると首を振りつつ忠告した。
すると本音が砂に刺さっていた麦茶のボトルをひょいと掲げてみせた。確かに麦茶だこれ!
千冬と山田のコンビが砂浜にやってきていた。千冬はゆったりとしたワンピース型の水着の上からシャツにサングラスに麦藁帽子の完全装備。一方山田先生は黒の挑発的なビキニにサングラスである。山田先生は学園一番の豊満なボディを惜しげもなく晒しているが、サングラスをずらして周囲を睨んでいるせいで威圧感がすごい。
「山田様……」
「うっとおしい。散れ」
例の生徒が後ろに召使いよろしくくっついていたが山田の一睨みで退散させられていた。ブレなすぎんだろ。
その後ろからスッと姿を現したのはラウラだった。原作同様の黒のフリル付き水着を恥ずかしそうなそぶりも無く着込んでいて、周囲を見回している。胸元を遮るようにタクティカルベルトが横断していてどう見てもナイフシースっぽいものが付いていたり、右腿にホルスターが付いてるけど、俺は気にしないぜ。
そんなことはどうでもいいんだ、重要な事じゃない。
一夏はどこにいるのだ! 俺がキョロキョロしていると、波打ち際にいた。
一夏と箒が並んで遠くに浮かんでいるブイを眺めている。見つけた! 俺はパラソルとシートを設置すると、とてとて駆け寄っていった。
「一夏。わかっているな。死力を尽くして勝負するのだ」
「ああ」
何の話だろう。腕を組み横並びの二人の背後から近寄ってみる。
一夏はごく普通の水着。箒も原作通りの水着だった。
「ふ、この気配はセシリア・オルコットだな。我々は争いあう星の下に運命付けられているようだな……! あそこにブイが見えるな。往復競争をしようというのだよ! 拒否するか。挑むか。どちらでも構わない。覚悟はいいか? 私はできている」
振り返りもせずに箒が大声を出したので俺はびっくりして肩を揺らしてしまった。なぜわかった。においか?
一夏にオイル塗ってもらおうと思ったけどそんな空気じゃない。いいだろう。ここでケリをつけてやる。俺は逞しい一夏の筋肉をちらちらと見ながら、箒の横に並んだ。ええ腹筋と背筋をしておられる。控えめに言って舐めたい。
俺は両腰に手をかけると、胸元を誇示するように姿勢を正した。
「ええ、オルコット家のものは決闘を持ちかけられて逃げ出すような腰抜けではありませんもの。一番早く戻ってこられたら勝ちということですわね?」
「フッ………」
箒は笑っただけだった。いやなんか言えよ。
「面白そうなことをしているな。私も混ぜろ」
俺の横にラウラがやってきた。いいよとも言ってないのに既に準備運動を始めていた。
「なにやってるのあれ?」
「えーっとね……せいしゅん?」
俺の目を逃れて俺の設置したパラソル下までやってきていたらしい鈴音がシャルロットとそんなことを話しているのが聞こえた。
この後の予定
・水泳
・食事
・温泉
・戦闘
普通だな!(適当
心身ともにヘタっていたのか風邪を引いたので逆に執筆がはかどった気がする
みんなも休息はきちんととろうな!