セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
戦闘回
俺達が装備試験を行おうとしている真っ最中のことである。四方を崖に囲まれたビーチというこの場所でやるというのも妙な話だなあとは思うがそういう指示なので仕方が無い。
突然空襲警報が鳴り響いたかと思えば、俺が身に着けているブルー・ティアーズ経由で沖に展開中のイギリス駆逐艦航行不能との情報が伝わってきた。
「勘がぬるま湯に浸かり過ぎたか!?」
空襲警報発令ほんの一瞬前に千冬さんがIS『ν』を展開してビームライフルの最大出力砲撃をした段階でみんな悟っただろうけどな。
ダキューン、と独特な射撃音が響く。
ハイパーセンサーはまるで万能のセンサーであるように認識している人もいるけど、それは間違いだ。障害物の向こう側まで完全に透視することはできないし、誤魔化す手段だっていくらでもあるのだ。剣と盾がいたちごっこの進化を続けるのと同じように。
ビームライフルの全力砲撃に対抗したのかあるいは千冬さんが撃ち落したのかは定かじゃないが、黄色のビーム砲弾が崖を掠めて飛来してきた。
軍事訓練を受けた俺とかラウラとか軍は無関係にしても修羅場潜ってきている連中ならまだしも、この場にいるのは基本的に普通の女学生である。パニックを起こすもの、腰を抜かすものもいた。ましてISを展開していないのであれば――。
ビームが着弾。崖が崩落し、岩が崩れ落ちた。
「敵襲! 全員早く避難しろ!」
ラウラがIS『R.E.X』を展開してAICを作動、黄色の砲撃が崖を直撃し岩がなだれを起こしたのを全て受け止めていた。
「授業を思い出しなさい! IS展開できる子は展開! できないなら私の誘導に従うこと! 本音、上空は任せて避難と救護をしなさい」
「は~いおじょーさま」
とここで俺は予期せぬ人物を見た。水色のポロシャツに麦藁帽子にホットパンツという軽装をした更識 楯無がメガホンもなしに戦場と化したビーチでメガホンも無いのによく聞こえる大声を張り上げていた。会長さんなにやってはるんですか!
「行きますわよブルー・ティアーズ!」
俺は即座にISを展開すると、空に上がった。救助は俺の機体向きじゃない。ラウラと会長と先生方に任せて応戦するべきだろうと思ったのだ。
ハイパーセンサーが敵を捉えた。正面2。一機は赤い所属不明IS。二機目は空飛ぶ戦艦ぶっちゃけアグリッサによく似たパルヴァライザーだった。前回見たときよりも遥かにでかい。しかし妙なことだが、タンク型から四脚型というような大幅な進化というよりも、タンク型をとことん追求した果てにあるような形状をしているように思える。パルヴァライザーにしては進化のようで、進化していないような?
などと俺が思考を濁らせていると、反応できない速度で飛来してきたビーム砲撃をなでしこ色のビームが迎撃していた。フィンファンネルが空中にヴァイパーを引きながら猛烈な速度で敵に向かっていく。
「動け、セシリア!」
「あっ、くぅぅっ!?」
死ぬ。これは死ぬ。威力的に絶対防御どころか装甲もろとも一発で持っていかれてローストチキンにされる。俺が回避できたのは、その砲撃が俺を狙っているというよりも、千冬を狙っていたからに過ぎない。
「山田先生援護を!」
「了解!」
山田機が上がってきた。俺の出る幕はあるのだろうかと思ったが、急速接近してくる相手を見て瞬時に悟った。サイレント・ゼフィルスを弄くり倒して機動性と反応性の向上に努めた――ようはシナンジュっぽい何かが回避機動を取りつつ殺意むき出しで迫ってきていた。
うん、これ無理。俺はさっさと攻略対象を切り替えた。パルヴァライザーならやれる気がした。
「みんな攻撃はするな! 原理は分からないが攻撃はしたらまずい! 一夏聞こえているな! お前がアレを沈めるんだ!」
「了解した」
「私のνと山田先生で赤い奴はもたせる!」
千冬さんの的確な指示が無線で飛ぶ。どこで知ったのかは分からないがパルヴァライザーに攻撃を仕掛けるとまずいということを知っているらしい。すると、一夏が切り札になるのか? 一夏の零式月光剣が?
「またあいつなの!? セシリア!」
「……ちぃ、このような攻撃を白昼堂々仕掛けるなど破廉恥な輩だ! 攻撃さえ仕掛けなければいいのだなっ!?」
鈴音と箒が上がってきた。頼みの綱は一夏の零式月光剣とすると、俺たちは撹乱と足止めをすればいい。
「生徒の避難が完了し次第ラウラも合流してくるって!」
遅れてシャルロットがやってきた。機体は――ラファールか。量産型とはいえ悪くない。中の人が限界性能を引き出してくれることだろう。
俺はなぜか皆が顔を覗き込んでくるので、パルヴァライザーを指差して声を張り上げた。
「あの敵、パルヴァライザー相手に火器使用は厳禁としますわ! 理由は―――えー、そうです! こちらの手を見せれば見せるほど強い個体が出てくるらしい、とイギリス軍からの調査が……とにかく、足止めをします。私と箒さんは撹乱を。鈴音とシャルロットさんはバックアップと、敵がミサイルか、それに類する攻撃をした場合迎撃してください! 一夏さん。あなたは千冬さんの言うとおりに対応を。作戦開始っ!」
迎撃も本当ならば見せるべきじゃないんだろうけど、背に腹は変えられない。甲龍の機能増幅パッケージ『崩山』による拡散衝撃砲とシャルロットのショットガンはミサイルやロケットを撃ち落すにもってこいだし、防御に長けた機体の組み合わせならば粘ってくれるだろう。
他の軍に任せておくという選択肢も無い。殺す気まんまんの赤いISとパルヴァライザーがいてどこに逃げればいいというのか。任せるにしても情報が正しければ沖に展開中の艦隊は沈んでるし。
一夏が無言で空中に浮いている。俺は横につけると肩を叩いた。
「わたくしたちが時間を稼ぎます。その間に、どうか」
「やってみる」
俺はパルヴァライザーの横を通過しながら上空へと抜けると、スターライトmkⅢを構えた。結局追加の新装備とやらは、『ブリリアント・クリアランス』だけしか来ていなかった。まあスターライトmkⅢより取り回しの悪いライフル送られても使いこなせないし、こっちのセンサーのが俺には向いているんだとは思う。
俺のすぐ横に箒が付けてきていた。機体は相変わらずの心鉄。第一世代で良くぞ俺についてこられるよな。スペックデータ的には推力はこちらの方が上のはずなんだが。限界性能250%とかなのかもしれんね。
「私の機動についてこられるか、セシリア!」
「それはこちらのセリフですわ!」
パルヴァライザーが動いた。至近距離をブンブン飛ぶ目障りな俺たちに対し、肩と腕のビーム砲を放ってくる。一発で蒸発しかねない威力だ。俺はストライクガンナーを最大限に使い機体を振り回しつつ、ブリリアント・クリアランスを作動させた。大気中に浮かぶ塵一つ一つが見える。自分の呼吸さえ遅く感じられた。その中で、超高速で飛来するビームだけが異常に映った。右へ。俺は高速化した情報の中で考えると同時に動いていた。
箒機が空中でビームをかわす。第一世代というのに俺と同等の動きをしているその異常性。頭部直撃コースの砲撃を―――あろうことか空中でバク転してかわす。
「はっ! このマニューバを編み出すために死力を尽くし努力したのだ! 人呼んで箒マニューバ!!」
変形はできないからしゃーないね! したら死んじゃうし。背骨とか折れるじゃん、変形とか。
俺は箒と共に踊るようにしてパルヴァライザーの撹乱を行った。
パルヴァライザーがうっとおしいと言わんばかりに機体側面のハッチから雨あられとミサイルを放つ。
「待ってましたぁ!」
「落ちろよ!」
鈴音の甲龍の攻撃特化装備『崩山』が合計四門の衝撃砲から火炎を纏った熱殻拡散衝撃砲を放ちミサイルを叩き落す。撃ち落した漏れをフルオート式のショットガンを握ったシャルロット機がカバーしていた。
「一夏さん……まだです……しまっ、く、あっ!?」
俺は一夏のほうをちらりと見遣り、次の瞬間パルヴァライザーが後部推進ユニットから膨大な推進炎を噴き前進したことで接触していた。機体側面を抜けるように転がりながら跳ね飛ばされる。
パルヴァライザーの肩部砲が俺の方を向いた。回避不能。思考が止まる。
あ、 死 ………! ?
「正気かい!」
箒だった。俺に大声を張り上げながら肉薄してくると、ビーム砲撃をあろうことか“斬った”。ビームが左右に別れて彼方に消える。あろうことか近接型ブレードでビームを両断してみせたのだ。その代償としてブレードは蒸発し、右腕の装甲全てが溶けていた。
「一夏ぁぁぁぁっ!」
俺が体勢を立て直すよりも早くミサイルの群れが一斉に箒に殺到した。
「箒さん!」
「ちいっ!」
上空。山田先生が撃墜され海面へと落下していく姿。そして、ライフルを切り捨てられ、フィンファンネルの大半を失った千冬目掛け―――千冬と同じ顔の造形した少女がビームサーベルを手に接近を仕掛ける姿。
どちらも俺には届かない。箒を救うこともできないし、千冬さんの援護にも行くことができない。俺はただ見ていることしかできない。
千冬と敵―――おそらくマドカが激しく言い争っているのが聞こえていた。
「お前は所詮作られた存在。私のように。ここでお前を抹消し、私が貴様になる」
「ざれたことを! 人が人を作るなどと!」
「作られたものである私は役割を果たし、求められている人になる。その為に生を受けた」
ビームサーベル同士の切り結び。しかしマドカのISの方がパワーがあるのか、サーベルごと斬り伏せられる。
そして、その切っ先が千冬へと振りかぶられて、
「生きるんだろ!!」
シャルロットの絶叫と共に箒と千冬が光に包まれた。
『不明なユニットが接続されました』
一夏が零式月光剣を起動。振りかぶった。
次回予告
『絢爛舞踏《ゴージャス・タンゴ》』
「質量を持った残像とでもいうの!?」
「いやいやちょっとお手伝いをね!」
「友よ! 私に力を!」
「残念だけど、私たちには味方なんていないんだ」
また見てください!