セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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第三巻完


42話 君の名は(ユア・ネーム・イズ)

 『ハッ! じゃあよぉ! イッちまいなァ!』

 

 狂気に満ちた声と共に核弾頭が射出された。射線軸上にはパルヴァライザーが存在していた。例え飛行戦車もとい飛行戦艦型とはいえ零式月光剣を食らった状態で核を受け止めれば無事では済まない。

 俺にできることは可能な限りの速度でクラスメイトと共に離脱することだ。

 

 失神した山田先生を抱えて飛び立とうとする千冬。

 クラスメイトの避難が間に合わないと考えたのか、海岸にある建物に誘導している本音。

 俺と同じようにクラスメイトを抱えて逃げようとしている鈴音。

 一夏にエネルギーを供給しているシャルロット。

 零式月光剣を再び使おうと躍起になっている一夏。

 敵に向かい距離を詰めようとしている更識。

 避難誘導を諦めAICで大人数を抱え込もうとしているラウラ。

 今まさに崖を破壊して再浮上しようとしているパルヴァライザー。

 その他の人々。

 

 そして腕を組み仁王立ち姿勢で全てを焼き尽くす暴力に対峙している篠ノ之箒。

 

 零式月光剣は間に合わない。パルヴァライザーを倒すことはできない。

 そして回避も間に合わない。核が全てを吹き飛ばすだろう。

 

 「紅椿(あかつばき)! 私に応えろォォォォォ!!」

 

 箒の絶叫と共に展開装甲が分離独立し、円周を回転しながら陣形を取り、黄金色の粒子でパルヴァライザーもろとも崖を隔離した。

 

 「きゃあっ!?」

 「何、くそ!」

 

 一夏とシャルロットが跳ね飛ばされる。その黄金色の柵の中にプラズマ化した大気を纏った砲弾が着弾した。

 

 

 

 

 

 瞬間、世界から光が消え去った。

 

 

 

 

 

 センサーが不調を起こし、視界がさえぎられる。かろうじて補正された視界の中ではパルヴァライザーが核の余波で溶けていく様と、崖が崩落し、箒が飲み込まれていく様子が見えた。展開装甲が陣形を維持したまま光の発生元を高速回転したかと思えば、次の瞬間“消滅した”。

 何が起こった! 俺は周囲をキョロキョロ見回してみたが、何も発見できなかった。発見できないのではなく、それ自体が消え去っていると気がつくのに数秒を要した。

 

 「………!? センサー、何が起こっていますの!」

 

 崖があった地点が丸ごと消滅していた。崖そのものが消えてなくなっていたとでも言うべきか、俺が困惑して声を漏らした次の瞬間、その地点が真空になっていたらしく、周辺の砂やら瓦礫やらが爆発的に吸引される。

 

 「箒! 箒ぃぃぃぃ!!」

 

 一夏がシャルロットのラファールとのバイパス回路を切り、悲痛な叫びを上げて崖があった地点へ瞬時加速(イグニッションブースト)で駆けつけた。崖があった地点が球体型に刳り貫かれ消滅しており、何も存在しなかった。

 

 『Yaaaaaaaaaayyyyy!!!!』

 

 更識の声が無線越しに聞こえた。音速を突破し、海水を跳ね除けながら直進するIS『メタルウルフ』がいた。背面部コンテナを展開。どう見ても体積に収まりきらない量のミサイルポッドを開くと、雨あられミサイルをぶちまけた。

 

 『てめぇも因果な身分に生まれたもんだぜ更識さんよぉ!』

 

 IS『アルケー』に搭乗する女スコールがヒュージキャノンを投げ捨ててつい今しがた自分が乗っていた船の下に回りこむと、推力のみで持ち上げてミサイル群へと投げつける。爆発。煙を縫い接近するメタルウルフが両腕に抱えた大口径バルカン砲をブチ撒ける。

 

 『小娘、これがお前の命取りになるってのはわかってんのかよお!』

 『聞く耳は持たないわ!』

 

 メタルウルフ、弾幕をことごとく回避され銃を投げ捨てて両腕にコンテナから別の大型バズーカを握った。コンテナが格納兵器をずらりと展開する。ミサイル、ロケット、機関砲、散弾砲、ビームライフル、その他もろもろが火を噴いた。

 

 『How do you like me now!!!!』

 

 直訳すれば今日の私はどんなんだったかな、とでも言うべきそのセリフはしかし別の意味に聞こえた。

 とっとと失せやがれ、とかこれが大統領魂だとか。

 とても単機によるISが張れるとは思えぬ弾幕にさらされてアルケーはついに後退し始めた。大振りな近接型ブレードを犠牲にミサイルと砲撃をかわすと、格納されていたであろう奥の手を繰り出す。

 

 『ファング!』

 

 ビーム兵器を備えたオールレンジ兵器ファングが実に十基放たれる。鋭角にジグザグ機動を取りつつメタルウルフに張り付くと、その装甲を貫きエネルギーを磨耗された。

 

 『くっ! 待ちなさい!』

 『やなこった!』

 

 敵は去った。しかし―――俺はハイパーセンサーをフル活用して箒を探していた。

 目の前の事象はよくわからないが、箒がどこに行ってしまったのかを探さなくてはならない。地上にはいない。海にもいない。

 

 『あー! せっしー見て見て流れ星~』

 『本音さんこんなときに何を暢気なことを……』

 

 俺は本音からののんびりとした無線が飛んできたのでイライラとした答えを返してしまった。申し訳ないとは思うが緊急事態なので……待てよ? 流れ星? 俺が上空を見上げると、火炎を纏った無数の流れ星が夏の青空を引き裂き落ちている光景が見えた。

 消えたパルヴァライザーと箒。流れ星。俺の頭の中でパズルがくみ上げられていく。

 まさか!

 

 「箒!」

 

 俺が勘付くよりも早く一夏のIS『ダークレイヴン』がスラスタを全開にして高度を上げていた。

 ハイパーセンサーより、生体反応を検知。待機状態のISを装着した人間が上空から落ちてきている。裂傷、火傷、打撲、考えうる様々な怪我を負いぐったりとした箒が背中を下に重力に身を任せている。結い紐が取れたのかポニーテールが解けてロングヘアになっていた。計測結果、生存。よかった。俺は胸を撫で下ろすと、一夏の元に寄って行った。

 

 

------------

 

 

 事件は解決した。

 ように思われたが、まだ完全な解決には至っていなかった。

 

 これでよかったのだろうか。

 ISスーツ一丁になった更識楯無(さらしきたてなし)―――本名『刀奈(かたな)』は事態が収束し、落ち着いていく様子を海上に控えていたプレジャーボートの上から双眼鏡で見つめていた。怪我人は出ても死者が出なかったのだ。少女ができる範囲で望む結果通りになったといえよう。唯一、自分がおおっぴらに動いてしまったことを除けば。

 少女のやったことは、自身の所属する更識にとって好ましいことではないからだ。あくまで手を貸すだけの予定であったが、情報に無い敵の増援とその強さによって介入せざるを得なくなった。さらすべきではない姿を晒したことで自分の立場は危ういものになってしまった。

 

 「お嬢様。お嬢様のされたことは胸を張ってもよいことかと思います。弱きを救い、悪を挫いたのですから」

 

 後頭部で三つ編みにした髪の毛をヘアバンドで纏めた眼鏡の制服姿の少女が答えた。

 

 「名誉あることであると私は確信しております!」

 「そうね、ありがとう(うつほ)

 

 虚と呼ばれた少女はワッハッハと口角を吊り上げて笑っていたが、電子音に気がつき耳元に手を当てて小難しい顔をした。ええ、と相槌を打ちながら時折刀奈のことを見ていた。ややあって無線を切ると、緩んでいた表情を真顔に切り替えて一礼をする。

 

 「お嬢様。(かんざし)お嬢様からの通信がありました。すぐ本家に帰るようにとのことです」

 「そう、わかったわ。すぐ足を手配して頂戴。虚、あなたは私のことをどう……」

 「私が仕えているのは更識家ではなく、刀奈お嬢様だけでございます」

 「ありがとう」

 

 刀奈はプレジャーボート目掛け飛んでくるヘリを見上げてため息を吐いた。

 夏は始まったばかりだというのに。

 刀奈は降ろされた縄梯子に掴まりヘリに登りながら丸い地平線を眺めていた。




ということでなんか書けちゃったので投稿しておきます
第三巻はこれで完了です。

誤字脱字がめっさある気がする
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