セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

52 / 87
イギリス編
IS最新刊見たらイギリス編があってたまげました(読んでない時にこのプロット組んでいた)
あとがきを見て二回たまげた


44話 朝食を三回食えとか言うな

 

 半年ぶり……いや一年ぶりになるのかな。俺は門を潜った後いつまで経っても見えてこないオルコット邸がある方角を見つめていた。広大な敷地の中央あたりに屋敷があるようなものなのだが、その広さが尋常ではないのだ。車を使わないと歩きでは体力が尽き果ててしまうのではないかというくらいである。ちなみにほんまもんの城ももってるし、爵位も持っている。だが城に住むのはさすがに利便性が悪すぎてな……。

 俺の横にはチェルシーがいる。確かエクスカリバーにはチェルシーの妹が使われてるんだっけ。実物を見たけどどっからどう見てもただの衛星軌道兵器だったしなあ。ISのIの字すらない。裏切ったりするようにはとても見えないし。対策はしなくていいかななんて思う。そもそも亡国機業も核を持ち出してきた段階でエクスカリバーみたいな使い勝手の悪い兵器は使わないだろうなと思うしね。こっちの世界の亡国機業はやり方がより現実のテロリストじみてるから困る。

 チェルシー・ブランケットは俺の幼馴染とでも言うべき立場のメイドである。年齢18歳とはとても思えない落ち着き方は原作通りだった。まあただ素で狼を石の投擲だけで仕留めたりマスケット銃とか持ち出してきたりワイヤーで狐を絞め殺したりいろいろ混ざってる感は否めないけど、いい友達だよ。ウン。当時はチェルシーのキャラがよくわからんかったので、そういう完璧無敵なメイドキャラかと思っていたのだ。今思えばンなわけねーだろと言ってやりたい。

 

 「どうかされましたかお嬢様」

 「いえ、なんでもありませんわ」

 

 隣に座っているチェルシーが俺の視線を感じたのか見つめてきたので、俺は窓に視線を戻した。

 俺は最前列の車に乗っていた。俺の他には運転席に運転手。助手席にどこの犬を殺されて復讐しそうな元殺し屋だよというスーツ姿の格好をしているラウラ。ちなみに確認できただけで腰に二丁の拳銃、腿にマガジンと無線機、胸元と袖にナイフが装着されてんだよなあ。護衛って冗談で言ってたのかと思ったらガチらしい。どこで仕入れたんですかねぇ……。

 俺の後ろにはイギリスまでついてきてしまった面々が乗っている。原作メインメンバーフル参戦というか、一夏に箒に鈴音にシャルにラウラにって、俺の予定していた人数を大幅超過である。一夏だけでよかったんだが。

 さて、ついてきてしまった面々は仕方がないとして、一夏を両親に紹介する絶好のチャンスである。多分あの朴念仁のことである紹介の意味をそのまま捉えてイエスしてると思うが、俺の言う紹介というのはお付き合いしてますという意味の紹介である。付き合ってすらないが外堀から埋めないとね。

 車が止まった。俺はチェルシーが先に降りて手を差し出してきたので、その手を握って降車した。

 

 「これが家……だと……」

 

 降りるなり俺の家のデカさに驚愕している箒。ちなみに彼女の誕生日であるが、本人が入院していたので祝うことはできずプレゼントだけ渡して終わりになっていた。箒のリボンが焼ききれたことに気がついた一夏が新しいのを買いに走りに行ったり、俺が洋服を贈ったり、鈴音がアクセサリーを贈ったり、ラウラはなんだったっけ確か刀の手入れ用品だったかな、シャルは服だったと思う。

 

 「うわぁ……すっっごい……ウチとは大違いだわ……」

 

 何故か俺の腰に手をやってくる鈴音。妙に距離が近い。近寄ると何故か寒気がしてくるのが謎なんだよなぁ……ついに俺もニュータイプになったのか?

 

 「新しい職場かあ」

 

 もう俺に雇われることが脳内で確定しているらしいシャルロットが手で日光を遮りながら見上げている。正直行き場がないなら雇うつもりでいるけど、もうちっとこうだな、父親と和解の道をだな。

 

 「潜入にはもってこいの構造だな」

 

 などと物騒なことをラウラが言ってるけどスルースルー。

 

 「………」

 

 一夏は屋敷を見上げて無言だったが、目を見開いているので驚いているのだと思う。

 

 「皆様奥様と旦那様が客間にてお待ちでございます」

 「いいこと? わたくしの両親なのですからIS学園の生徒として恥ずかしくない! 行動を! してくださる! いいですこと!?」

 

 俺が声に力を入れながら拳に拳を打ち付ける。お母様には見せられません。

 俺は一行にでかい五寸釘をぶっ刺すと、いよいよ客間へと入るべく扉を潜ったのである。

 

 「お帰りなさいませお嬢様!」

 「……ぅぅ」

 

 正面赤絨毯のかかった道を挟んで数十名の使用人たちが畏まっていて、順々に一礼をすると大合唱する。俺の顔が真っ赤に染まっていくのがわかる。こればかりはどうしても慣れない。庶民が中の人のセシリアつまり俺である。大合唱されて動じないはずがなく、俺の後ろで興味深そうに見つめてくる一夏の視線に背筋に変な汗が流れていくのがわかった。

 ふう。深呼吸だ深呼吸。俺は屋敷に帰るにあたってこしらえた夏用ドレスの裾を揺らしながら使用人たちが作り上げる道を歩き始めた。正面階段に二人の人物が見えた。ブロンド髪を几帳面に整え後頭部で結い上げた女性。髭を蓄えた恰幅のいい紳士。つまり俺の両親がいた。

 

 「セシリア!」

 「久しぶりだな私の可愛い娘。こっちにおいで!」

 

 俺はみんなが見ている前で我慢できずに駆け出した。父の胸元に飛び込む。母が手を伸ばしてくると俺の頭を撫でてくれた。二番目の両親とは言え付き合いはこの体に生まれてかなり長い。本物の両親と思っている相手であるだけに、俺は全身に広がっていく安堵のようなものを感じることができた。

 

 「お父様、お母様、セシリアはただいま戻りました!」

 「お帰りセシリア。また美人があがったんじゃないか」

 「あなた。客人の前です。しゃんとなさい」

 「あ、す、すまない。良くぞ遥々極東の土地からいらっしゃいました。歓迎いたしましょう。さ、どうぞ中ほどまで」

 

 父が母にぴしゃりと言われて縮こまる。関係はよくなったみたいだけど、尻に敷かれているのは同じままらしい。

 ちらりと振り返ってみると、皆反応はそれぞれだった。恐らく両親は健在であろう箒は、保護プログラムのせいで長年会えていないはず。寂しそうな表情を浮かべていたし、そもそも記憶自体存在しない一夏は羨ましそうな顔、シャルロットもどこか寂しそうで、ラウラは周辺に視線をやり警戒していた。羨ましいとさえ思っていないようだ。鈴音はほっこりとした顔でこちらを見てきていた。両親共に仲良くしてるだろうしね。

 こうして俺たち一行は屋敷の奥へと進んでいくことになったのである。

 

 

 

-------------

 

 

 

 「では彼が例の?」

 「え、ええ、はい……」

 

 俺はお茶会の形式をとった歓迎会の場で父親から呼び出されたので、父親が立っていた窓際に歩いていった。一夏のことはメールでどんな人物なのかは伝えてあるし、自分が好意を持っていることも伝えてある。自分のことは自分でせよという信条の母親は何も言ってこなかったが、父はどうやら気になるらしい。

 

 「織斑一夏。かのブリュンヒルデの弟……IS開発者であり亡国機業に組しているという篠ノ之束と親しいとされている……」

 「え? お父様? 篠ノ之博士は亡国機業とかかわりがある人物なのですか?」

 

 新情報が耳に飛び込んできたので思わず聞いてみると、父はうむと唸った。

 むしろ逆じゃないのかな? どちらかといえば敵対しているように見えたわけだが。

 

 「おおっぴらには公表されていないのだが亡国機業を名乗るテロリスト連中に手を貸しているという噂が……あとは死亡したという話も聞いている。業界のさるお方からの話になるが……それはいい。少し話を聞いてこようと思う」

 「ええ。一夏さん! こちらに来ていただけますこと?」

 

 俺はクッキーをひたすら食う機械と化していた一夏を呼びだそうとした。まーたこの子は出てくるクッキーを全て平らげようとしているのか。律儀というか、頭が固いなあと思う。だが可愛い。

 一夏は手に持っていたクッキーを処理し終えると、紅茶で口を潤し席を立ち窓際にやってきた。

 

 「はい」

 「織斑一夏くん。娘がよくしてもらっていると聞いています。少し、部屋の外まで一緒に来ていただければと……」

 「はい」

 

 二つ返事で父と一夏が出て行ったので、俺はいつの間にか隣に立っていたチェルシーに小声で指示を出そうとした。

 

 「二人の会話内容について報告せよという指示でございますか」

 「できるならば録音を」

 「準備してございます。後ほどお嬢様の端末までファイルを送信いたします」

 「暗号化は?」

 「手筈通りに」

 「さすがはチェルシーだわ」

 「感謝の極み」

 

 さっと畏まり一礼してから扉を潜っていく超有能メイド。後をつけるわけにもいかんからね。俺はチェルシーの報告を待ちつつ、席に戻った。

 皆で紅茶を楽しみつつ談笑をしていると、音もなく扉が開きチェルシーが戻ってきた。俺の顔の横に顔を近づけてくる。

 

 「君は私の娘をどのように思っているのか。守りたいと思っている、という会話内容でした」

 「ありがとう。下がりなさい」

 「はい、お嬢様」

 

 フーム……一瞬歓喜に震え上がりそうになった俺であるが、ここは一夏である。守りたいと言われれば恋人として、であろうがあの一夏である。友人として、という但し書きが付いてきても俺は不思議に思わない。ともあれ、そう思ってくれる立ち位置に俺がいるというということは脈ありと見ていい。たまには楽観視くらいはしたくなるさ。

 一夏が戻ってきて俺の横の席に座った。俺はその顔をじっと見つめてみた。

 

 「どうかしたのか」

 「ふふふふ」

 「何かおかしいのか。顔になにかついているとか」

 「なんでもありませんわ♪」

 

 俺はこみ上げてくる笑いを誤魔化そうに誤魔化せず、首を捻る一夏の顔をじっと見つめて口元を手で覆っていたのだった。




次回は全員で遊んだりするだけになる    と思う。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。