セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
基本的に箒は弱さを見せない女である。元ネタというか中の人というかグラハム=エーカーも弱さを見せない男である。妄執に駆られて仮面とかつけていた時期もあったみたいだが、それでも弱みは見せなかった。その箒がこうも涙を見せてまで一夏に顔を見られたくなかったということは、その顔に問題があったのだろう。神楽舞にまで仮面はつけられないというのはよくわかるし、だからこそ来て欲しくなかったのだろう。こんなことならば一夏を口説き落としてこないようにするべきだった。それか神楽舞の時間と会わないようにすればよかったのだ。俺は自分の迂闊さを呪った。
「事情があるならば事前に話して貰えればよかったと思いますが……」
俺が恐る恐る言うと、箒は顔に浮かび上がった線を隠すように俯き加減に言った。
「気分が高揚すると“あいつら”にやられた跡が光り始めるこんな私の事情をか? 普段ならまだしも、一夏に会うだけで必ず光る怪物染みた私がか? どんな面下げて一夏にこの顔を見せられるのだ。セシリア=オルコット。愛する男に顔一つ見せられん未熟者なのだぞ、私はな」
「それは……」
仮面を被る理由がそんなに重大なものだとは俺は想像することもできなかった。正直ギャグか何かだと思ってたんだよ。気分が高揚することで改造の跡が浮かび上がるならば、恋する一夏の前に出てきただけで顔が光ってしまうのだろう。顔というのは乙女にとって最大の宝物であると言える。それを、見せられないことがいかに悔しいことか。自分自身が醜いと思っている顔を、見せたいのに見せられず、仮面で隠すしかない悔しさがどれほどか。篠ノ之箒という人間の内側に潜む闇を覗いてしまった俺は、絶句するしかなかった。
「一夏さんは、そんなことであなたを嫌いになるような男性ではありませんわ。それとも箒さん、あなたは一夏さんが見た目だけで人を判断する人間であると言うつもりなのかしら?」
「違う! セシリア=オルコット。私を愚弄するか!」
箒が一瞬の間に宝刀を抜くと、俺の首筋に突き付けていた。怒り心頭なのか、顔中に白く輝く線が浮き出ており、眼球にもそれが走っているのが見えた。確かにこれは漫画だな。怒りの余り手が滑り切りかかってくるということは、この箒に限って無いと思う。問いかけに対して答えが導き出せず混乱しているだけだろうと思う。
俺はゆっくりと一歩を進みだした。同時に箒が切っ先を引っ込める。やっぱり、トサカに来てるようで来ていない。コントロールできているらしい。
「どうなのですの? 外見だけで判断する男性であると本気でそう信じているのならば……見損ないましたわよ。その程度の思いしかないならば諦めてしまったほうがよろしいと思いますわ」
俺は何を言っているのだろう。こんな、敵に塩を送るようなことをするなんて。どうせなら一夏を連れてきて焚きつけてしまえばいいものを、こんな道化染みたことをしている。俺はこの時どんな顔をしていたのだろうか。自分で自分の顔を直視できる能力でもあればいいのに。
「………」
箒は押し黙っていた。黙りながらも、切っ先を握る手は微塵も震えていない。
「隅っこの方で指を咥えていることをお勧めしますわ。仮面を被ったまま、ね」
なんで俺、こんなこと言ってるんだろう。かっこよく決めているつもりでも冷や汗だらっだら足は震えまくっていたわけで。
「セシリア…………いや、これは、篠ノ之箒一生の不覚だ。宿敵に正論を言われて反論さえできぬとは、精神修行が不足していたということか」
すると、箒が刀を鞘に仕舞うと急に抱き着いてきたではないか。あら^~とかいう幻聴が聞こえた気がするが気にしないよ俺は。まあすぐ離れたが。顔に浮き出ていた線はまるで見えなくなっていた。箒がニカッと口の端を持ち上げて笑った。
「セシリア=オルコット。
ニコニコと嬉しそうに笑っているのに内容が実にグラハムでほんとグラハム。箒成分が上手い具合に合わさって最強に見える。てか、本当に心底羨ましい。素直で情熱的でヒロインとしての素質を備えていて。日々妄想に励む元男としては、この娘になれたらと何度思ったことか。まあモッピー原作からして一番正ヒロインに近いポジションだし性格がハムに近寄ったらこうもなろうなという。
俺はふふんと余裕ぶった笑い方をすると、抱き着かれたことで落ちた帽子を拾って埃を払ってみせた。
「望むところですわ。一夏さんはわたくしが! わたくしが必ず落として見せますの。このセシリア=オルコットの魅力をもって!」
テンションが上がってきた俺は普段なら言わないことを口走っていた。だってハムさんよ、相手。テンション上げてかないと追いつかないよ。
「よかろう。相手にとって不足なし。あえて言わせて貰おう! 篠ノ之箒であるとォッ!!」
「お前たち、なにしてるんだ……」
と、そこでネタばらし。あんな危険なことはもうやらないよとボブが言った。
じゃなくて、呆れ顔をした一夏が倉庫裏で大声をあげている俺たちを覗き込んできていたのだった。まあ仕方ないね。人目につかない場所と言っても大声上げて騒いでいたらバレバレにもなろうなって。突然出現したので俺は素っ頓狂な声を上げていた。一方で箒は神速ともいうべき早業で仮面を装着し直していた。まだ、見せられるような気分じゃないんだろう。神楽舞の衣装に仮面という組み合わせのせいでアイヌをモデルにしたなんとかもの的な雰囲気の見た目になっている。
「何って一夏さんのうひゃあああああっ!? なぜここが分かったんですのっ!?」
「一夏ァー! 見てくれ神楽舞装束で着飾ったこの私を! いますぐにでもけっこぶべらぁぁっ!?」
ルパンダイブ並みの速度で駆け寄っていた箒がものの見事にCQC投げを食らい地面にぶっ倒れた。俺は恥ずかしくて帽子で顔を隠していましたとさ。あ、でも投げられるのもちょっと気持ちよさそう。
見事な受け身を取って着地した箒が器用にも刀を持ったまま両足を振って立ち上がると、一夏の肩を掴んだ。距離はキスするにはちょうど良い距離間で、俺はそれとなく二人の間に体をねじ込むような位置に移動して牽制した。
「ということで二人で祭りを堪能するぞ一夏!」
鼻息荒く箒がそんな提案を振り始めたので、俺は即座に割って入った。同じように肩を掴んで顔を寄せる。
「三人ですわ!」
「……ほう、よかろう」
俺と箒の目線があった。勝負だ、と言わんばかりの好戦的な目が俺を見つめていた。
祭りと言えば金魚取り。これでも俺、金魚取りにかけては学校じゃ負け知らずだったんだぜ。決着をつけようじゃないか。腕が鳴るぜとどうでもいいことを考えていると、一夏が申し訳なさそうに言った。
「箒。神楽舞を無理矢理見に来てしまってすまなかった」
「怒って無いぞ一夏。むしろ決心がついたからな! さあ見るがよい。上から下まで……!」
一夏の前で箒がくるりと一回転して見せた。仮面は取っていない。まあせっかくの機会なのだ。恋敵のいる前では晒したくはないのだろう。やるなら二人きりの時で、という心の声が聞こえてきそうだ。
「そうか。よかった。祭りはどうすればいい。二人と一緒にまわるのか」
一夏はそんなことを知ってか知らずかどこかほっとした様子で言うと、話題を祭りに切り替えた。この後花火が打ち上げられたりするわけで、せっかくだから回ってみたい気持ちは強かった。箒が一緒なのでやましいことはできないだろうがな!
「もちろんですわ!」
「もちろんだとも!」
俺と箒の声が発せられたのは同時だった。
「気楽なこったなあ………なあ蘭。せっかく浴衣まで準備してたのによぉってな」
「お兄。任務中」
オレンジ色の輪のついた携帯装置を肩に装着した二人組が、上空を周回している軍事用ドローンからの映像を監視していた。服装こそ日常着であるが、その実小型の拳銃を外からは悟られないように携帯していた。
「一夏に惚れてるってのはさ――」
茶化してくる兄に対し、妹である蘭は無言でキーをタイプし始めた。どこか熱っぽい目で画面を見つめながら。
「……今のところ問題はないみたいね」
「そうあってほしいね」
二人組は祭りの喧騒はよそに監視作業を黙々とこなすのであった。
中の人の立場が違うIS
あのゲームのエージェント的な立場の二人だったとさ