セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
(網が)扱いにくいって話だが、地元じゃ負け知らずの俺が金魚すくいで負けるわけないだろぉ!
いくぞおおおおおおっ!
おおおおおベストぉぉぉぉ!
………で。
「さらにできるようになったな、ガンダム!」
「誰がガンダムですか!」
「嫉妬だよ、セシリア=オルコット。嫉妬を抱いていると言っている!」
「箒。ガンダムとはなんだ?」
「ん? 思わず出てきた単語だ。セシリア、ガンダムとはなんだ?」
「さ、さあ? わたくしにもわかりませんわ。新型OSの頭文字でも取ったのではないでしょうか」
いや、まさか勝っちゃうなんて思いもしなかったんだけどね。どうやら箒、こういう細かい勝負事は苦手らしく、金魚を取ろうとして紙製の網(正式名称は知らん)を破きまくった挙句、金魚の心になるのだと呟いたまま膝と肘をついた格好で落ち込んでしまった。まあ俺は俺で横からじーっと一夏が見てくるものだから金魚を数匹逃しちゃったりしたんだけどな! 幸い二匹は捕獲できた。このまま池か何かに放流しても食われるだけで忍びないので、自室に水槽でも導入して飼おう。
「一夏! さあ食え! 間接キスだぞ! 直接キスでもよいぞ! 私の横は常に空いている!」
で、勝負結果なんて知ったこっちゃねえぜと言わんばかりの勢いで箒が俺らを屋台へと引っ張っていき、焼きそばを三人前購入してくれたのだ。
『敗北者である以上奢るくらいはやってのける。それが私、篠ノ之箒の王道である!』
とかなんとか言ってたけどほんとヒロイン力高いと思う。俺が男のままだったら即落ち四コマで四コマ目には結婚妊娠してるわ。
「自分用の焼きそばを食え」
正論過ぎて反論もできないセリフを一夏が言うと、しかし諦めの悪いサムライガールは箸で器用にソバを掴んで口にねじ込もうとするではないか。
いかん、そいつには手を出すな! 俺は速攻で割って入った。
「ちょ、ちょっとお待ちになって! 箒さん少々不躾が過ぎるのではなくって! 羨ましい!!」
「嫉妬は醜いぞ、セシリア=オルコット。私は我慢弱い女だ!」
あっ。つい本音が。
すると箒はならばと一夏を正面から見つめた。
「ならば二人でやればよいではないか。一夏という人間の器は、その程度で溢れるほど小さくはない」
「それは……! しかし! ええ、いいでしょう。一夏さんっ! 召し上がれ!」
おっそうだな。当たり前だよなぁ!? いやそのりくつはおかしい。
同時並行で脳裏を俺の内面を構築する様々なものがスクロールしていった。お母様。セシリアはここで攻撃を行います。
俺は震える手でソバを摘むと、一夏の口に向かって差し出した。一夏を中心に俺が左で箒が右を固めている状況である。第三者から見るとリア充死ね爆発しろと言われても仕方がない場面であるが、原作では朴念仁そしてこの世界でも朴念仁の一夏である。多少、人間味のある恥じらい方をしてくれた原作一夏がなだらかな丘に見えてくるくらいの山岳一夏である。まず箒のソバを食い、俺のソバを食う。いいぞ、ついでに俺も食ってくれ。
「同じ味だな」
一夏が口を押さえてもぐもぐ咀嚼しながら言った。そらそうよ。同じおっちゃんが作ったものを小分けにしてプラスチックのパックに詰め込んでるもんだから。
俺は横目で二人の食事配分を確認しながら食べていた。本気を出すと一分でかっ込めるんだけど、それはお嬢様っぽくないからNG。箒が口元が汚れるのを気にせず一気にかっこみはじめた。
「口についてるぞ」
「ふ、一夏。そこだけでいいのか」
「何の話だ?」
「そこだけでいいのかと聞いている!」
「何の話だ?」
言いながら一夏が箒の口元の汚れを指で取ってやっている。箒が恥ずかしそうにされるがままにされていた。
……そうか! その手があったか! 俺も真似をしようと焼きソバを見てみたが、うっかり全部食べてしまっていた。だってお腹すいたんだもん。
俺も同じことをしてみようとして、一夏の腕にしがみつくようにしてみた。ふふふ。どうだこの朴念仁。■カップだぞ■カップ。
一夏が俺を見て、無表情で言った。
「暑いぞ。なぜ、くっつく?」
この朴念仁がああああっ! 俺は眉ひとつ動かさない愛しい男を見て、ぬぐぐと唇をかみ締めていた。
だが、それがいい。いいぞ、もっと見てくれ。夏のせいだろうか。思考がぼんやりピンク色になっていく。気がする。
負けじと箒が一夏にくっつく。胸のサイズでは俺のと謙遜無い大きさである。むしろ俺よりも弾力がありそうなスイカ型なので、押し付けると腕がすっぽり谷間に収まる。
「ところで一夏。この後花火百連発があるそうなのだが、行こう」
行くこと確定の言い方で箒がおもむろに一夏を引っ張っていく。胸で腕を挟みこむ格好なので、まるで胸で引っ張っているような錯覚を覚える。
さては花火を見ながら告白……いや告白はもうしてるか。告白というか婚約申し込みまでしてるか、こいつは。普通にデートの流れとして見に行く感じか。花火といえば夏だ。夏の風物詩を見ながらというのも乙なものだろう。
「構わないが」
「もちろん私も同行しますわ!」
俺は負けじと一夏を引っ張りながらその場所へとついていくことにした。
ずんずんと箒が引っ張っていくので先頭。真ん中に挟まった(二重の意味で)一夏。最後尾にこの俺という妙な絵である。箒がどこに向かっているのかは見当もつかなかった。神社裏の獣道をずんずんと迷いなく歩いていくのについていくので精一杯だった。針葉樹に囲まれた空き地のようなところに出た。ことあるごとに箒が俺の方を見てくるのは、二人きりで来たかったぜということだろう。
「ここは我らの秘密の場所……花園……秘められた場所なのだ。即ち入れるものは親しいものに限られる。意味がわかるか、セシリア」
「え、ええ、なんとなくは」
一夏から離れた箒が腕を組み背筋を反らしながら言ってくるので頷いておく。俺も同じように離れていた。
「始まったぞ」
花火が始まった。なんとか川花火大会と比べれば規模はごくごく小さなものだが、太陽の落ちた漆黒の闇を切り裂く大輪の花は、俺の心にひと時の潤いをもたらしてくれる。
「好きだぞ一夏ァァァァ!!」
花火の音よりなおでかい声で隣の恋敵が絶叫するまでは。
さあ言え。直接言えセシリア。箒があんなにがんばってるぞ。今なら聞いてないんだから。
「す、す………ぅぅ」
落ち着け、素粒子を数えるんだ! ……あれ?
俺は、どこで覚えたのかも定かではない呼吸方法を試すことにした。
4つ数える、息を吸う。4つ数える、息を吐く。息を……だめだ、全く落ち着かない!
だめだった。心臓はばっくんばっくん鳴りまくってるわ、汗は滝のように垂れてくるわ、一夏が俺が挙動不審になり着物の裾をいじり始めたあたりで凝視してくるわで、言うべきセリフがでてこなくなった。敗北感を味わった俺は、思わず浮いてきた涙を悟られないようにうつむき加減に一夏を睨み付けた。もっとも垂れ目なので、怖くもなんともないと思うけどね。
「これもあれも全部一夏さんの仕業なのですわ! 責任を取っていただきますから……!」
人生が終わるまで、責任を見てもらうつもりなんだから。
俺は精一杯の声で言った。
で、その帰り道。
「おう、若いの。祭りは楽しんだか?」
甚平をまとって髪の毛をポニーテールにしたラウラと偶然鉢合わせした。甚平の片手を袖から抜いて胸元から手を出し顎を擦りながらである。当然のごとく下着を着けていないので、丸見えになりそうだった。
ラウラはもう片方の手になにやら屋台で買ったらしい食料品をたんまり詰め込んだビニール袋を抱えていた。
「ごきげんようラウラさん。お祭りにはいついらしたんですの?」
「数時間ほど前かな。野暮用があった。それで坊主との進展は?」
ラウラがこう尋ねてきたので、俺はサムズアップしてやった。
「滞りなく、ですわ」
滞りまくってるんだけどね。