セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
幕間 暗部
「ン。ありがとう」
織斑千冬は、中東、北米、を回っていた。
篠ノ之束の残した追いかけていたのだ。データはいずれも暗号化されていたが、解除は容易だった。
稀代の天才篠ノ之束ならば現代の技術者が束になってかかっても解除できない暗号化を施すことくらいは容易なはずだったが、その暗号化は一般的な手法によって実施されており、容易に閲覧することができた。そこにあったのは座標だけだったので機密情報としては重要性が低い。
と考えるのは間違いだと千冬は直感した。これは調査にいく必要があると。
ところが、中東、及び北米へ座標を追いかけていってもたとえば廃墟であったり、何の変哲もない砂地だったり、あるいは車の残骸があったり、かと思えば観光地のランドマークであったりした。念には念を入れて調査装置を持ち込んで調べても、何も出てこない。メッセージもなければ、符丁が残されているわけでもない。束が何の意味もないことをする理由もない。
いや、あるいは。千冬は考えた。あるいは、実は、“何もない”ことに違和感を覚えよということではないだろうか、と。
「こっから先には文明社会の人を見たことがない未開の少数民族が住んでいる。銃は持っていない。でも人を食うらしい」
「それは偏見じゃないのか」
「だとしてもうかつな接触はするべきじゃない。するなら拳銃なんて役に立ちませんぜ」
黒人系の男が早口に説明してくれる傍らで、麦藁帽子にサングラスカーキ色の長袖シャツに緑迷彩のズボンを纏った千冬は双眼鏡を構えてジャングルを睨んでいた。腰には拳銃がぶら下がっていた。
「最近立ち入り禁止になったそうだな」
「環境保護のため、アマゾン川とその周辺への立ち入りが厳しく制限されている。それが?」
「いや、あんなにも強固な防御設備は必要なのか?」
千冬の視線の先にはジャングルに聳え立つコンクリートの搭と、上空を飛び交う航空機の群れがあった。自然保護の名目を立てて何か別のことをしているようにしか思えなかった。そして座標はその先にある。
これの意味するところを知るには情報が少なすぎた。単純にうがちすぎているだけかもしれない。
「さあ、お偉いさん方の考えはよくわからんのです。ジャングルにあんなものを立てて密猟者対策だと。塔なんて作るより、装甲車の一両でも置いとけばビビってこなくなる……」
船頭と荷物持ちそしてガイドと千冬の目の前で、武装したヘリコプターが轟音を上げて機体を傾けながら飛び去っていった。
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パルスマシンガンの嘶きとともに、標的となっていた戦闘ヘリが次々となぎ倒されていく。
戦場に悠々と登場した赤いISは、対空ミサイルのロックにも瞬時に反応してみせた。スラストベーンをくねらせ燃料を使い切ったミサイル合計4発が、慣性のまま突っ込んでくる。右、左、一息にミサイルの旋回半径に入りながら、背面に向けてパルスマシンガンを速射。ミサイルを叩き落す。
新たなミサイル。バイザーに覆われた顔の下半分がわずかに歪む。
赤いISは回避行動すらとらなかった。ミサイルが激突。爆発を起こし、跳ね飛ばされるISはしかしシールドエネルギーはもちろん装甲に傷一つなかった。大気を攪拌しながら急加速すると、イグニッションブーストを作動。両背面部に設置された大型のバーニアから火を噴きながら音速を超えて戦闘機に迫った。
次の瞬間、バーニアから無数のミサイルが生える。複雑な軌道を取りつつ撹乱し、戦闘機へと襲い掛かった。回避など許されるはずもなく、攻撃を行っていた戦闘機が火に飲まれて消える。
赤いISが静止した。黒煙に塗れた偽りの空にデジタル的な模様が浮かぶと、まるで折りたたむかのように消えていく。しまいには地面までも消えてしまい、文字列だけが浮かんでいた。
『シミュレータ終了』。
「報告は聞いていました」
更識家頭首――楯無の名前を継いだ簪は、自らのISの調整をしながら部下の報告を聞いていた。
姉である刀奈は行方不明。どうやら、各国政府によって結成されているという特殊部隊によって保護されているらしい。あくまでも闇をもって闇を制する更識のやり方を通すつもりなのだろう。これから先世界が変われば仕えるべき相手自体がいなくなり、弱肉強食の世になるというのに。
ならば彼女のやることは一つだけ。仕えるべき政府が、更識の裏切りに気がつかないように振舞いつつ、亡国企業の利になることをすること。まだ、今のところ、織斑一夏を含む人員への手出しは要請されていない。場合によってはこちら側に寝返るように工作することもできるかもしれない。
もうじき学園祭が始まる。ならば、学園の面々のことを調べ、できるだけのことをするまでだった。
ISを解除した簪は眼鏡型のウェアラブルディスプレイをかけなおすと、ISを待機状態に戻した。そして部下の男が羽織りものをかけようするのに合わせてやる。
「私自身が探りを入れます。お前たちは今まで通り刀奈の捜索と、捕縛。抵抗するならば殺害してもかまいません」
「しかしお嬢様」
簪は部下の男がさすがにそれはと苦言を呈そうとするのにも聞く耳を持たなかった。
首を振ると、凍える瞳を向けた。
「秩序を乱すものはこの世界に不要です。排除しなさい」