セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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最終章 VERDICT DAY
62話 SALLY


 アラート!

 IS学園は襲撃を想定して、強化されていた。沖に停泊している艦隊はもちろん、ISが周辺空域を固めている。衛星兵器による守りもある。

 そのはずだった。

 

「チイッ………! 全員退避しろ急げ! スクリーンが持たないぞ!」

 

 山田真耶はアラートに素早く反応した一人だった。IS『シリエジオ』を展開すると、すぐさまハイパーセンサーにアクセス。数千は下らない数万単位で雲霞の如く殺到する謎の敵性勢力を確認。防御スクリーンでは対応できないと判断し、生徒たちをシェルターへと避難させるべく行動を開始した。

 こういう事態を想定し、防空壕があるのだ。確かに後者は各種強化が施されているとはいえ、確実に敵の攻撃を防げるという確証が持てなかった。

 ハイパーセンサーの捕捉限界を超える物量の敵。宇宙での使用を想定されているスーツとて、限界はある。相対速度超音速を超えて飛来するデブリを捕捉、回避できる性能があろうとも、数万単位のそれ全てを捕捉することなど出来ない。

 山田のIS『シリエジオ』は中距離の射撃戦闘を想定した機体である。レールガンとレーザーガンを主力にASミサイルを絡め手に使うのだが、雨あられと飛来するその敵を撃ち落すなど、できるはずがない。

 それでも両腕の火器を振り回すように撃ち放ち、上空へと昇っていく。少しでも地上の被害を減らそうという目論見があるようだった。

 

「山田先生、我々も援護します!」

 

 流線型を多用した―――タマネギにしか見えない―――ISが出てくると、両腕のガトリングを撃ちまくり始めた。虚だった。

 

「うりゃー! おっちろー!」

 

 太陽のマークが輝かしい盾とロングソードを握った打鉄が出てきた。敵の数が多いことを悟ると、ロングソードを格納して素手になった。本音だった。

 他にも教員が、あるいは授業中だったのだろう生徒たちがISを装着して出てくると、各々で戦闘を開始していた。

 

「むぅぅぅ~~~~んっ! そぉ、れぇっ!」

 

 本音が唸り声と共に空中から“雷の槍”を掴み取ると、上空に投げつける。数十機の特攻兵器がなぎ払われ晴れた空が垣間見えたが、すぐに赤に染まる。

 

「あーんお姉ちゃん~数がおおいよ~」

「いいから撃つ! この兵器、無差別にぶつかるだけで他はなにもしてこないみたい。耐久性も大したことないわ。とにかく、手数を稼がないと!」

 

 姉妹はなどと言いながらも、お互いがお互いの背後を守るように位置していた。

 本音が盾の横からアサルトライフルを撃ち、隙あらば雷を投擲する。虚は両腕のガトリングを撃ちまくり、赤い兵器の群れを寄せ付けない。

 空間にビームが走り抜け、数百単位で敵がなぎ払われる。

 

「ここを通りたければ、この篠ノ之箒の屍を越えて往け! 絢爛舞踏(トランザム)!」

 

 紅椿、最大稼動状態。

 

可変装甲(ファング)!」

 

 可変装甲の二つが箒の体から花開くように射出されると、ビーム射撃を開始した。雨月(あまづき)からレーザーが放たれるや、空裂(からわれ)が空中を引き裂くと同時に斬撃が飛ぶ。耐久性など考慮されていないであろう赤い兵器達があっという間に駆逐されていく。

 

「箒前に出過ぎだ」

 

 空中に青白い光波が放たれる。右、左、と慣性を無視した機動を取りつつ、一夏のダークレイヴンが駆ける。壱式月光剣(ムーンライト)だけしか装備が無いにも関わらず、特攻兵器の爆発を見切り、自爆よりも早く切り刻むことで対応していた。

 

「ここは私の出番でしょ! 吹っ飛べッ!!」

 

 火炎を纏った砲弾が、散弾銃よろしく拡散しながら放たれる。ドンッ、という衝撃波と共にバラバラになった特攻兵器が煙を吐いて落ちていく。鈴音の甲龍(シェンロン)だった。双天牙月(そうてんがげつ)をドッキング。回転させながら特攻兵器の突撃を回避し、投擲した。

 

「より取り見取りですわね!」

 

 セシリアが地上から上がってくると、青いレーザー弾を放ち特攻兵器の群れに風穴を開いた。威力を最低に絞り、撃ちまくる。BTミサイルは放たなかった。24発しかないのだ、物量戦には不向きだった。

 教員含む全員は当初、高度を上げて戦闘をしようとしていた。特攻兵器の注意を逸らそうとしたのだ。

 だが、特攻兵器の攻撃が特定の物相手ではなく、人間や、建物や、あるいは木々や、地面にぶつかるものまでいて、完全に無差別であることを悟った山田は教員とISに乗って迎撃に出ているメンバーに無線を繋いだ。

 

「キリがない! 各員に告ぐ。高度を下げて、校舎の防衛に移れ! まだ避難が完了していない!」

「言われなくとも飛べはしない!」

 

 ラウラがR.E.Xのレールガンを起動、上空に発射した。その衝撃波だけで、特攻兵器が次々吹き飛んでいく。

 

「このぉぉっ!」

 

 ラファール・プラスの散弾銃を撃ちまくるのは、シャルロットだった。鬼気迫る表情で特攻兵器を一機たりとも接近させない。

 その時、遥か遠距離からなでしこ色の砲撃が学園上空を掠めた。照射は数秒間持続し、特攻兵器の大多数をなぎ払う。

 

「この閃光は………!?」

 

 一同が呆然として空を見上げる中、山田だけが何かを察知したのか、砲撃があった方角をハイパーセンサーで検知しようとしていた。

 ハイパーセンサー検知範囲外からの高エネルギー砲撃。

 再び砲撃が学園上空を掠める。特攻兵器が爆発することさえ許されず、蒸発して白い靄に変わっていく。

 

『ゆけっ、フィンファンネル!』

 

 青い塗装を帯びたフィンファンネルが飛行機雲(ヴェイパー)を曳きながら現れるや、花びらのように後部を互いにつけたままビームを乱射して空に干拓地を作る。

 音速の四倍に迫ろうかという高速で千冬のISが姿を現した。白磁と青の装甲。四本のアンテナブレードを頭部に備えており、背面には同じように塗装されたフィンファンネル・ラックがあった。νの発展系、『Hi-ν』を帯びた織斑千冬が、この瀬戸際にやってきたのだ。

 

「みんな待たせた! ここは、Hi-νで面倒を見る!」

「アム………千冬さん!」

 

 セシリアが一瞬何かを言いかけて慌てて言い直した。

 学園の上空を、両手にビームライフルを握った千冬が通過(フライパス)していく。

 学園に陣取った各員が、弾幕を形成する。あるものはライフルを、あるものはガトリングを撃ちまくり、その上空を踊るようにフィンファンネルが飛び交い、一機たりとも接近させない。

 一時間が経過した頃だろうか、上空にまるで海中を回遊する魚のように留まっていた特攻兵器達が、高度を上げ、雲の中に消えていった。

 学園に静けさが戻っていた。

 

 

----------

 

 学園中の人間が講堂に集まっていた。中には包帯を巻いているものもおり、泣いているものもいた。

 

『世界各国に襲来した謎の兵器―――通称“アンノウン”は無差別に攻撃を開始しました。現時点で所属はわかっておらず、テロリストグループからの犯行声明も出ていません』

 

 静まり返った学園の講堂正面のスクリーンに、テレビの報道画面が映し出されていた。

 アンノウンと命名されたそれが、世界各国の都市に無差別に突撃しては爆発している様子が映し出されている。その場に集まった誰一人として口を開くものはいなかった。

 

『また米国が所有する衛星兵器トールがハッキングを受け、各国に対し攻撃を開始。現在、対衛星ミサイルによって破壊されましたが、即時対応できなかった米国に対し非難の声があがっています』

 

『現時点における死傷者数は7000万人を超え、まだ増えているとのこと………』

『アンノウンの襲撃のため、各国は原子炉を緊急停止を実行しており……今後深刻な電力不足が予測されます……』

 

 全員が顔色を失っていた。ここまでの被害を受けることになるとは、誰も想像していなかったのだ。

 

「そんな………」

 

 セシリアは携帯端末を必死に操作していた。母国イギリスにいる両親と連絡を取ろうとしているらしいのだが、全く通じなかった。イギリスは特攻兵器はもちろん、トールによる質量弾砲撃を受けていた。

 

「い、いかなきゃ………」

「セシリア?」

 

 セシリアが涙を零しながらふらふらと立ち上がると、講堂の外に出て行こうとする。それは珍しい光景ではなかった。携帯端末をみて号泣するもの、講堂から出て行こうとするもの、机に突っ伏して動かないもの、大勢いたからだ。

 その腕を鈴音が掴んだ。

 

「どこにいくの?」

「イギリスだよ! お母さんとお父さんが危ないかもしれないだろ!」

 

 セシリアの口調がおかしくなっていることには触れず、鈴音が言う。

 

「イギリスまで飛んでいけるわけがないでしょ」

 

 鈴音もまた自分の両親がどうなったのかを知ることが出来ないでいた一人だった。というのに、ニュース映像を見て眉をしかめるだけで動揺を見せていなかった。

 セシリアは鈴音の拘束を振りほどこうと必死に腕を振っていた。

 

「いかないとダメなんだよ! あの二人はこんな俺でもよくしてくれて! この世界の本当の両親で! 離せ! 離せよ!」

「しっかりしなさい!!」

 

 鈴音が立ち上がると、セシリアの頬を張った。ぱしんという音が響く。

 セシリアは呆然として鈴音のことを見つめていた。頬を押さえて、涙でぐちゃぐちゃになった顔を向けている。ややあって、ポケットからハンカチを取り出すと涙を拭って首を振った。

 

「……………ごめん。動揺した」

「痛かった? けど、謝らないからね」

「ううん」

 

 セシリアは席に着くと、講堂正面ステージに出てきたISスーツ姿の千冬を視界に捉えた。

 

「ありがとう。どうかしてたよ」

 

「みんな聞いてくれ」

 

 千冬がマイクに向かって話し始めた。

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