セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
「皆待たせてしまってすまなかった。調査と、ISの改造をする必要があったんだ」
講堂は超満員であった。教員もいれば生徒もいる。事務員もいれば清掃員もいる。怪我している人もいれば、無傷のものもいる。皆不安を隠せない表情を浮かべていて、それは講堂の隅に控えている銃を構えた兵士たちも同様だった。外では、次の襲撃に備えて戦闘機が飛び交っていて、自衛隊所属から米軍所属のISが待機していた。
ISスーツ姿の千冬が一同を見回してからマイクに語り始めた。
「先の戦闘で……いや、いまだ戦闘中の地域もある。各国の軍は衛星兵器トールと特攻兵器通称“アンノウン”により、大打撃を受けてしまっている。それは日本国も同じことだ。沖に停泊していた全ての艦船は撃沈もしくは大破しており、無事だったのは海を航行中の潜水艦のみとなっている。他国も同じ状況にある。幸いアンノウンは亜音速程度しか出せないため、戦闘機やISであれば振り切ることが出来るが……状況は最悪だ」
誰かのすすり泣く声が講堂に響いていた。誰もが言葉を失い、背後のスクリーンに投影されている中継映像を見つめていた。映る映像映る映像全てが各国の都市が壊滅的な被害を受けたことを示していた。
「国連も現在機能していない。また、衛星も特攻兵器の襲撃を受けてしまっていて、衛星通信も使えない状況にある。このまま防衛戦を続ければ、人類は追い詰められて反撃する術すら失うだろう」
スクリーンが切り替わると、被害を受けた地域が表示された。全ての国、地域が真っ赤に染め上げられる。
「現時点における推定死傷者数は7000万人。負傷者、行方不明者は………わからない」
第一次世界大戦の死傷者が1600万人だったことを考えれば、たった一日でこれだけの人間が死んだことの異常性が理解できるだろうか?」
「幸い、早期の時点で各国が原子力発電所を停止しているから、放射性物質漏れは起こっていない。だが、電力が大幅に制限されてしまっている以上、さらに死者が増えていくことは明白だ。今、我々に求められているのは反撃だ。反撃しなければ、我々は武器弾薬の補給する機会さえ失って、アンノウンに駆逐されるだろう」
無尽蔵の物量を誇る相手に対して持久戦を挑みかかれば、答えは明らかだった。
千冬は一同を見回して、その中から一夏を見つけ出すと、また視線を彷徨わせた。
「誰でもいい。アンノウンがどこから発生しているのか、学園に襲撃をかけてきた連中とのつながりは……どうすれば勝てるのか、それを知っているものはいないか?」
らしくないすがるような言葉だった。
セシリアはその言葉を聞き、小さく頷いていた。ここで特攻兵器とパルヴァライザーの知識を披露すれば、決定的に怪しまれてしまうのは確実だが、もはや猶予などなかった。
「織斑先生! わたくしが―――……」
『はろろーん! 束先生だよー☆』
その時だった。スクリーンがぱっと切り替わると、いつものようにドレスを纏った篠ノ之束その人が姿を表した。場所は、どこかの島なのか背景は砂浜が広がっていた。
「束………お前、今まで何をしていた!?」
『んー、世界に対して責任を果たそうとしていただけだよ。いい、ちーちゃん。よく聞いてね。この通信をしていることで、きっと私は死ぬだろう。今度こそ、本当にね』
千冬がその言葉を聞いて押し黙った。
束は満面の笑みを即座に引っ込めると、カメラ映像の中を行ったりきたりしながら説明を始めた。
『全てはそう、私が一人でロケットを作って、月面に行ったことから始まったんだ』
それは罪滅ぼしの言葉だった。常人には理解できない天才もとい天災は、選ぶように言葉を吐き出し始めた。
『月面で見つけたそれを私は接収して、自分のものにした。それが、致命的なミスだったなんて、わからなかった。私はそれを分割して、自由に飛べる服を開発してみようと思った。これが、インフィニット・ストラトスのはじまり。ううん。
束は言うと、どこかに意識を取られたように視線を違う場所に向けた。すぐに視線を戻す。
『特攻兵器―――通称アンノウンは、南米のジャブローという地点で製造されている。ここを潰さない限り、人類に未来は無い。同時に、月面上に“インターネサイン”と呼ばれる超大型の施設がある。それと最後に、パルヴァライザーと呼ばれるインターネサインと同じ能力を持つ戦闘端末がある。この三点の破壊をしない限り』
人類は滅亡する。
束はそう締めくくると、スクリーン上で誰かを指差した。
『
あいまいな物言いだったが、ラウラは即座に理解したらしい。スクリーンに向かって頷いていた。
『最後に、ほーきちゃん。いっくん。ちーちゃん』
束がカメラににじり寄ってきた。その場にぺたんと座り込むと、口の端を持ち上げた。
『こんなお姉さんでごめんね。私は普通の人とはちょっと違うから、こんなやり方しかできなかった。必死に戦ったんだけどね、君たちにその尻拭いをさせてしまうことになる。それじゃみんな元気でね! ちーちゃん。お腹のあかちゃん、大切にしてあげてね!』
束が手を振ると、カメラに手を伸ばした。映像が切れた。同時に、空襲警報が鳴り響き始める。
「くそっ……こんなときに! 出られるメンバーはスタンバッてくれ! それから、リミッター解除を許可する!」
もはや、軍人だからだとか、生徒だからだとか、そんな括りにこだわることはできなかった。千冬はあっさりと、リミッター解除を許可する。
ISには絶対防御という守りがあるが、名前とは相反して絶対的な守りではない。通常の装甲がそうであるように、一定上の出力には耐えられない。IS学園の生徒が使う機体はいずれも絶対防御の許容閾値内に収まるように出力が制限されているが、これを取り払うという。
学園に対し、IFFに反応しないIS二機が高速で接近しつつあった―――。
『そんな! ISが停止した!? 動け!』
『落ちる! うわあああああっ!』
『助けて! この高さから……! いやああああっ!』
戦場と化した学園に悪夢のような報告が上がった。空を守っていたISが、搭乗者を包んだまま落ちていく。
地獄はまだ、始まったばかりであった。
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どこかのありふれた島にて。
全てを託した篠ノ之束は、既に機能を失い稼動停止状態になっているISを解除すると、だくだくと血液を垂れ流す腹を押さえながら走っていた。
「はっ、はっ、はっ………うぐぅっ!?」
パン。乾いた音が響き、背後から放たれた弾丸が肩に撃ち込まれる。どうと倒れこんだ束は、背後から迫ってきていた人物を見遣った。
「道化だな。あれは影武者だったのか」
「ああ、今頃気がついたの? エム。いや、マドカちゃん。“完璧な”成功物織斑千冬のコピー人間」
千冬を若くしたような容姿の少女が拳銃を構えて立っていた。銃口からは硝煙が立ち上っている。
束はけらけらと楽しそうに笑う。口の端から唾液交じりの血液が伝う。
「クロエちゃんがね、そうすれば時間を稼げると言ってくれたの。だから、やった」
「哀れな女だな」
「そうかな? こうして時間を稼げてる。君たちの情報も握ってやった。たった一人でよくやったってほめてほしいね。一秒でも長く、あの子達が無事でいれば私の勝ちだよ」
もはや血を流しすぎて立ち上がることさえできない束へと、マドカと呼ばれた少女が歩み寄っていく。頭に拳銃を突きつけると、顔を寄せた。
束が頭を上げると、その無表情に口付けをする。
マドカが驚き、顔を離した。
束がウィンクをした。
「散りぬべき 時知りてこそ世の中の 花も花なれ人も人なれ、てね」
―――銃声。