セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
「120名」
講堂に集った面々は、前回の集合の時よりも少なくなっていた。
ステージに出てきたのは、二名。一人は織斑千冬。疲れた顔をしており、ISスーツを着用していた。ただし通常の作りのスーツとは違い腹部がゆったりと作られている。
一名は、更識刀奈だった。額にバンテージを宛がっており、こちらも疲れ切った表情をしていた。
「先の戦闘と、今回の襲撃。合計で120名が死亡し、重軽傷者合わせて現在のところ50名が集中治療室から出ることができない状況にある。これだけの被害を被ったのは、そう、特攻兵器……通称“アンノウン”と、パルヴァライザー、そして亡国機業―――企業連合の私兵による襲撃があったからだ」
あるものはすすり泣き、あるものは愕然としてしまっている。あるものは怒りを浮かべていた。
「現在もなお全世界で攻撃は続いており―――国連発表によると、推定で8000万人が犠牲になっている。事実上の無政府状態になった国は増加の一途を辿っている。このまま手をこまねいていれば、我々は反撃の力を喪失し、滅亡をただ待つだけになるだろう。いい報告もある。生徒会長の更識が復帰した」
静まり返った講堂で千冬は靴音を響かせながらステージを行ったりきたりしていた。名前を出された更識刀奈は、ステージの中央でうんうんと頷いていた。
「各国軍が大打撃を受けて組織的に行動できない現在、我々こそが世界でもっとも戦力を保有する組織集団ということになってしまった。そこで、反撃に出る。もちろん言わんとしていることはわかっている。子供に戦場に出て行けなどと言う大人がどこの世界にいるかと」
千冬が頭を下げた。床に頭が付きそうな程の低頭だった。
「学園の防衛、南米ジャブローへの強襲、そして月面上のインターネサインの破壊。三つの作戦を、同時に実行する! そのために、みんなの参加を切に願っている!」
誰一人として返事をしなかった。信じられないと言う風に口を覆うものもいた。
「もー、
誰かが、ごくごく軽い調子でそんなことを言った。
「そうだよ! 他の人がどうかは……わからないけど………私はやるつもりだよ!」
「世界を救うために戦うなんてアニメでもなかなかないよ! いやあるか」
「整備部としては、せいぜい機体を壊さない程度に戦ってきてくれればそれでいい」
「剣道部としては………何も思いつかないんだけどね?」
「アニ研! 当方に出撃の用意あり!」
「ウチだってできる子なんだってやってみせるんよ!」
「千冬様のためなら死ねます! 死なないけどね! ここじゃ死ねないよ!」
どっと、会場が沸いた。皆立ち上がって、拳を突き上げて千冬に言葉を投げかけている。皆が一斉に思い思いの言葉で作戦への参加を希望していた。
大人もいれば子供もいる。学生もいれば、そうではないものもいる。
千冬が背筋を正して、ぴっと凛々しい敬礼をした。
「すまんが……みんなの命をくれ!」
場に集った誰もが、千冬のように静かに敬礼をした。
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「これとこれとこの機器が足りないから貰ってきて! 大至急!」
IS学園中がお祭り騒ぎだった。ISはもちろん、ただのクレーン車や車両までもが創意工夫で戦闘兵器に仕立てられていく。学園の校舎に空けられた穴は鉄板で覆われていき、破損した窓シャッターもみるみるうちに交換されていく。
不気味なまでの静けさだった先日から一夜明けて、生徒たちは起きるなり戦争のような速度で作業を始めたのだった。生徒はもちろん、教員も、IS学園を守る軍人たちも、近隣から避難してきた住民たちまでもが揃って作業をしている。
「IS用のを砲台にするんだよ! え? 予算? そんなもん気にしない気にしない!」
「うわーこれかっぱらってきたの? 米軍基地から? 後で怒られないかなぁ」
「大学から教授引っ張ってきたよ!」
「料理研究部の手がたりませーん! おにぎりがあと1000個足りないので握れる人募集中でーす!」
「うひゃぁーJAXAの人と一緒に仕事する日がくるなんて思ってもなかったよ!」
「輸送機を降ろすのに滑走路掃除が必要なので動けるIS乗りは来て!」
日本中から、あらゆる人材が終結していた。自衛隊もいれば大学教授もいるし、料理人もいるし、かと思えば在日米軍まで混じっている。色々な人種が手を取り合っていた。
「なるほど、じゃあロケットの手配はできたと?」
作業服姿の刀奈と虚がタブレット片手に学園を歩いていた。
「はい! 重力アンカー式のロケットをただいま種子島から運送中です。
「あの子、守りに関しては右に出るものがいないからね」
「ジャブロー強襲に関して、米軍からの協力は取り付けられたかしら」
「開発中の
「肝心の学園の守りは……期待できそうにないわね。辛い戦いになる」
「刀奈お嬢様はどうするつもりですか?」
虚が足を止めると、刀奈に問いかけた。
「学園を守るといいたいところだけど――――」
「簪お嬢様ですか」
「そう。簪ちゃんがどこにいるのかわからないから、状況に応じて動くと思う。許してくれるわよね?」
「もちろんでございます。お嬢様は心の赴くまま、戦ってください」
「ありがとう。あなたがいてくれて本当に助かるわ」
刀奈はにっこりと笑うと、虚を腕で包み込んだ。
翌日。もはや、猶予など無い状況だった。押し寄せる特攻兵器の群れ―――第三波を退けたIS学園は、静まり返っていた。
早朝、鳥さえ静まり返った不気味な静寂の中、IS学園には様変わりしていた。校舎という校舎の壁には鉄板が打ち付けられ、即席の対空兵器がにょきにょきと生えている。校庭には対空陣地と、防空壕が。重力アンカー式ロケットや、南東の方角に向けて据え付けられたVOB発信場もある。校舎には入りきれなかった人たちが、校庭の各所にテントを張って休息を取っていた。
千冬はシャワーを浴びていた。お湯が彼女の引き締まった美しい体を撫でては伝い落ちていく。ノズルを捻ってお湯を止めると、タオル片手に脱衣所まで出て行く。体から水気を取ると、特注仕様のISスーツに身を包む。待機状態のT字型の『Hi-ν』を握り締めた。
「頼む、Hi-ν。私を導いてくれ!」
そして、管制室へと向かっていくと、入る。既に各オペレーターが持ち場についていて、千冬の入室に振り返った。
千冬は壁に掛かっていた時計を見た。時刻は、5時59分になっていた。
十秒、五秒、一秒、定刻。
「よし、作戦開始! オペレーション・インフィニット・ストラトスを開始する! 各員持ち場に着き、直ちに出撃せよ!」
言うなり千冬は管制室を出た。後から同じくISスーツに身を包んだ山田が続く。
「よかったのですか。身重のあなたが出撃して」
「この子の為にも今は戦うべき時だと思う。私ほどの戦力を腐らせておくなど、束だって許してはくれない」
山田がそう問いかけると、千冬は腹部を撫でながらそう答えた。
二人は、学園の外に出てすぐに足を止めた。顔を見合わせると、ほぼ同時に握手をした。
「あなたと戦えて光栄でした」
「こちらこそ。健闘を祈る」
大人の挨拶は、たったこれだけで十分だった。山田は学園の防衛に、千冬は