セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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オリ主のスペック不足によりBT兵器が置物と化している話


5話 アニメじゃない

 初日の授業が全て終わったあとのことである。

 

 

 「―――そこだっ!」

 

 νガンダムに搭乗したテンパ……もとい千冬さんが俺が放ったファン……じゃないブルー・ティアーズをまとめて二基切り払うと、背後で射撃体勢に入っていた一基をのけぞりながらビームライフルの速射で撃ち落していた。

 あっ、これアニメで見た奴だ!! 

 などと俺が興奮していると、フィンファンネルが空中を目にも留まらぬ速度で接近してきていた。

 

 「うわっ!?」

 

 興奮してる場合じゃない。レーザー発射が可能な四基のうち三基を喪失。残りは一基と、ミサイル発射が可能な二基だけだ。

 しかし、近すぎる。ミサイルは安全装置の都合上発射後一定以上距離がないと爆発しない。距離をとるか、いっそ放棄するか……。もう一基を使うか? 使ってもいいけど、集中力が分散するんだよなぁ。とりあえず放ってみたが、俺が機体制御に意識を集中しているせいか、空中を付いてくるだけしかできなかった。

 

 「――――言うことを聞けぇっ!!」

 

 俺は思わず怒鳴なっていた。適性はある。あるのだが、BT兵器とは要するにサイコミュのついていないオールレンジ兵器のようなもので。つっても無理だろ常識的に考えて。ラジコンを想像してほしい。リモコンがあっても一個が限界だろ。二個以上を動かしつつ自分も動きつつレーザーライフルを操るとか頭がおかしいとしか思えない。

 

 『なんでオートで動かさないんですの?』

 

 と俺が本国から来たえらそうな技師にそう尋ねると、ものすごく申し訳なさそうな顔でこういった。

 

 『ここだけの話なんですがね、ブルーティアーズは次世代型のプロトタイプらしくて……意識的に動かせることが重要らしいのです』

 『え、あのオートで動かせばよろしいのではなくて? ミサイルのように撃ちっぱなし(ファイア・アンド・フォーゲット)にすることも可能なはずでは?』

 『仕様書にそのことが無いんですよね……しかし適性の高いセシリア嬢であれば簡単だろうなという見方が強いんです。開発部の話ですが』

 

 ぷちっ。

 

 『オートで動かせや!! この■■■■の■■■が! 高い税金払ってんだぞこっちは!!』

 『いた……呼吸ができな……』

 『何がBT兵器だよユーザーフレンドリィな設計しろよごらぁっ!! Hi-vみたいな格好しやがってよぉ!』

 

 などというやり取りがあったが、一向に搭載されないオート機能なのだった。適性が高いって辛い。お偉いさん方はセシリアの適性を買っているのだろうが中の人がオールドタイプなんだよなぁ。

 一方でおそらくニュータイプな適性がSな千冬さんがフィンファンネルを飛ばしながらビームライフルを撃ちまくってくる。今のところ一基しか飛ばしてきていないし、お得意の接近戦に持ち込もうともしてこない。射撃も牽制八割本命二割といったところ。手を抜いているのが明らかだったが、ガチのアムロとやりあうとか自殺行為なので程よく手を抜いて欲しいとか考えている間に、頭部目掛けて飛んできた正確無比な三連射でシールドエネルギーが三割吹っ飛んだ。

 

 「っづぅっ……!」

 

 ついでに俺も吹っ飛んだ。空中でブレーキをかけて立て直す。

 

 「女子の顔を……!」

 

 顔面狙いとか恐怖しかない。いくらシールドがあるとはいえ目に正面から飛び込んでくるなでしこ色のビームを想像するだけで震える。

 ISのシールドはまさに鉄壁とも言える能力を誇るが、衝撃を完全には殺せなかったり、一定以上の閾値を超える出力には一撃で破壊されたりと、無敵ではない。頭部に貰った衝撃で一瞬意識が遠のいたが、スラスタを吹かして立て直す。

 

 「スターライトmkIIIモード変更 フルオート!」

 『モード変更確認 スタンバイ』

 

 俺はポニーテールに結い上げた髪の毛が揺れるのもかまわず全力で後退しつつレーザーライフルを構えた。とはいってもこのレーザー、エネルギーを練り上げて射出しているだけで、光を照射しているわけではない。弾速は精々一般的な人間用のライフルと同等の秒速900m程度。とはいえ見て回避できる速度ではない。

 

 「落ちなさい!」

 「ちいっ!」

 

 俺は千冬に照準を向け、撃った。距離は高々200m。というのに“発射前にかわされた”。

 くそっこれだから!

 奥歯をかみ締める。撃つ。外れる。撃つ、外れる。撃つ、外れる。銃身を向ける前から既に発射元を読まれている!

 

 「インターセプタァァァッ!」

 「なに!?」

 

 俺はヴァイパーコーンを発生させて突進してくる千冬に対し、スターライトmkIIIを足で蹴っ飛ばすという暴挙に出た。流石のアムロ……じゃなくて千冬も予想ができなかったのか、しかしその銃身をあっさりシールドではじいた。

 射撃は苦手と言っただろ! どっちかと言えば斬り込みの方が得意なんだよ!

 俺は迎撃機の意味を持つインターセプターを握り、スラスタを小刻みに吹かしつつ接近した。

 

 『火器管制システムエネルギー使用カット 出力 機体制御装置へ再分配』

 

 「格闘戦になるか!」

 

 千冬がライフルを収納、バズーカを握った。

 ―――いやな予感がした。

 実はこのインターセプター、威力を原作よりかなり強化してもらっている。白状するとこっちのが本命です。動かない的とか、拠点に立てこもってる敵の狙撃は得意っすよ。

 スラスタ出力全開。左右に機体を揺らしつつ距離をゼロにして、中腰からの上方向へ斬撃を放つ。千冬が突き出したシールドが視界を覆う。しかしハイパーセンサーがある。誤魔化されやしない。続き第二撃を横凪ぎに振るい、シールドを膾切りにした。

 

 「あ」

 

 目の前には傷ついたシールドと、バズーカ。この戦法は……。

 俺は咄嗟に、上空へと瞬間的に退避してビームライフルを展開し構えている千冬へと向き直り、そして眼前のバズーカが遠隔操作で弾を発射したことで撃墜された。

 

 「アニメで見た奴だ!」

 

 本日二度目の感動を味わいつつ俺は絶対防御に包まれ意識を失った。

 でもこれアニメじゃないっていう突っ込みはしないでおこうと思った。

 

 

-----------

 

 

 「はぁ………」

 

 告白すると戦いは苦手なのだ。画面越しにトリガーをカチカチしたりするのは得意だが、いざ相手が目の前にいる状態で戦うとなると、先ほどのような無様な姿をさらすことになる。怖いじゃん。

 一夏と戦う前に機体の全力を確かめておきたかったので、千冬さんに無理を言って模擬戦をしたのだ。結果は俺の惨敗に終わった。BT兵器も半分無くなってしまったし、装甲がめちゃくちゃ電子機器もイカれて使い物にならないが、そこは金の力で解決して一週間後には間に合う寸法だった。

 俺はシャワーを浴びていた。本来ならばひとつの部屋をルームメイトとシェアして生活するのだが、各方面にお願いして個室にすることに成功していた。なのでシャワー上がりに全裸で徘徊しても誰も咎めないのだ。

 原作だとすらりと長いスマートな乙女なセシリアであるが、こっちのセシリアは背丈の高く腰周りに脂肪のついた下品な表現を使うとムチムチお上品に表現するとミロのビーナスのようなしなやかな体つきである。腹筋割れてるところには目を瞑るとしても。全身鏡の前で自分の体をじっくりと観察してみる。

 

 「ふふ………エロい体型だな……っとエロチシズムな体型ですわ」

 

 俺はノズルをひねってお湯を止めると、シリアスな表情で壁に額をつけてみた。

 

 「………」

 

 絵になるしね。脳内は疲労を訴える体がとっとと飯を食えと苦情を叩きつけてくる対応でいっぱいだった。

 

--------------

 

 「………」

 

 俺はくたくたで、空腹だった。食堂に赴いてみると、物陰から食堂を窺っている不審人物を見つけた。

 本人は隠れているつもりなのだろうが、世界で唯一ISを操縦できた男性という有名人を女性が放っておくはずが無く、既に数人がこそこそと視線を投げかけている。携帯端末で写真を撮ろうとする輩もいた。

 

 「一夏……さん」

 「……お前は、セシリア・オルコットか」

 

 ほかの誰でもない織斑一夏だった。一夏は振り返らず答えた。声は覚えてくれているらしい。胸が高鳴る。

 俺は物陰から食堂を窺うばかりで一向に動かない一夏の背後について質問を投げかけた。

 

 「何をしていますの?」

 「食事をとりにきた。しかし、クラスメイトに見つかると囲まれてしまう。特に“奴”に見つかってしまっては面倒だ」

 

 奴。一体、何ノ之箒なんだ……?

 俺はこれは運命だと思い、一夏の腕を取った。

 

 「堂々となさいな。あなたは男子でしょう? 男子たるもの胸を張り行動せねば」

 「お前はおかしなやつだな」

 

 俺はふふふと笑うと一夏を伴い食券を買いにいった。


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