セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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72話 重力の井戸の中へ

「簪ちゃん!!」

「言葉は不要」

 

 もはや、何の為に戦っているのかの問いかけなど、簪は聞くつもりが無かった。ロケットをパージして、宇宙用装備になっているメタルウルフ目掛け、一斉にミサイルを発射。

 

「こんなことが更識の………楯無を継ぐもののやることか!」

 

 刀奈、背面部コンテナからガトリングを選択。狙いを付けているとは到底思えぬ撫で斬りもとい撫で撃ちにて、ミサイル全てを撃墜。

 一度ロケットをパージしてしまえば、もはや月面に行くことはできない。それは千冬も同じだった。ロケットをパージして、フィンファンネルとライフルを使い重IS『ナイチンゲール』と人知を凌駕する速度で撃ちあいを演じていた。

 赤い彗星と、白い流星が激しく接近しては離れ、かと思えば螺旋を描き、なでしこ色のビームを交える戦場を背景に、刀奈は最後の説得を試みた。この世界ただ一人の妹を、手に掛けることなどできない。

 

「“たかが”日本政府、世界の裏側など、もはや今後の新しい秩序(ニューオーダー)には不要。更識上層部はそう判断した」

「あんな老人達の言うことを聞くなんて、ああ、帰ったら一から更識を立て直さなきゃ!」

「帰る場所などない」

「私には帰る場所があるの! 簪ちゃんが隣にいて、本音と虚も……!」

「黙れ! 黙れぇぇぇッ!」

 

 冷静さの衣を脱ぎ捨てて、赤い機体が迫る。ISとEOS。戦力差は圧倒的なはずだったが、あろうことかまともに戦うことが出来ていた。

 パルスキャノンの速射をバレルロールでかわし、ガトリングの弾列を叩き込む。同じようにバレルロールした簪のナインボールが瞬時加速(イグニッション・ブースト)

 

「おおおおおっ!!」

「あああああっ!!」

 

 メタルウルフ、ブースト起動。稲妻のようにジグザグに迫る赤い機体を、ガトリングで殴りつける――。

 

「ちっ!?」

 

 ナインボール、両腕ブレード起動。同時に緊急回避。不自然な動き。誘われたことに刀奈が気がついた時、ナインボールの背後が光った。

 ビームが着弾した。メタルウルフの装甲の幾分かが煌きながら地球の重力に引かれていく。

 

「!? ッぐぅっ!?」

 

 アサルトセルの一斉射撃が始まった。各々チャージが完了した順番に自由射撃をしていた。一発の威力はそう大したものではなかったが、ロケットを封じ込めるには十分すぎた。

 もたもたしていれば、月面攻略組を載せたロケットが到達してしまう。なんとしてでも、道を切り開かなければならなかった。

 

「こうなれば接近して……!」

 

 こじんまりとしたアサルトセルとは違い、艦船並みの巨体を誇るエクスカリバー砲が目に入った。あれしかない。

 メタルウルフ、加速。迎撃用のファンネルがエクスカリバーから射出されると同時にレーザーの網を張る。

 

「Fooooooooooooo!!!」

 

 両腕を交差させ、突っ込む。ISでは考えられぬ程の重装甲を誇る特殊EOS『メタルウルフ』は、その弾幕を凌ぎ切った。

 

「“着艦”!」

 

 メタルウルフ、エクスカリバーに立つ。

 そして、今、その剣を断つ、一本の剣となる。

 

「穴あきチーズにしてやるぜ!!」

 

 コンテナ起動。ガトリングが、リボルバーが、バズーカが、グレネードランチャーが、あらゆる武器が一斉に火を噴いた。損傷など考慮しているはずがないエクスカリバーの脆弱な装甲がめくれ上がり、あっという間に酸化剤と反応して爆発していく。一際大きい爆発が上がったかと思えば、剣のように鋭い砲身の真ん中からへし折れ、大爆発を起こした。

 

『道は開けたわ! 行って、一夏君! あとでお姉さんにキスしてくれたら許すから!』

『は? キス?』

 

 刀奈の軽口はしかし織斑一夏には通用しない。とぼけた返事が返ってきて、思わずくすくすと笑ってしまった。

 

『つれないのね、そういう鈍いところが好きなんだけど!』

 

 返信はなかった。

 織斑一夏以下三名、通過。

 

「通すと思うか?」

 

 刹那、ナインボールの背面部バインダーから小型兵器が射出された。オービットは白い弾を次々と撃ち、離脱を図る月面攻略組に襲い掛かった。

 

『やらせないよぉぉっ!』

『私だっていいとこ見せちゃうんだから!』

『一夏君行って! あっ、うわっ』

 

 一夏を除く三人が一斉にロケットをパージすると、時間を稼ぐ為にナインボールの方角へと向かって戦闘機動を取った。

 

「ふん」

『きゃあああああ!?』

 

 パルスキャノンが次々と光弾を吐き出し、一人を絡め取る。絶対防御の守りなど、役には立たない。コンマ数秒と持たずに肉体が蒸発する。

 

『あっ』

 

 二人目。ものの一瞬で肉薄すれば、ブレードで“蒸発”させる。

 三人目。チェインガンで装甲を吹き飛ばし、シールドを消失させる。絶対防御が作動したことを見計らい、地球へと蹴落とした。

 ものの十秒足らずで二人が殺され、一人は大気圏内に叩きこまれた。刀奈は激昂した。

 

「やったなぁぁぁ!! 簪ちゃん!」

「情に流されれば死ぬ」

「情がなくなった簪ちゃんが言うのか!!」

 

 二機が戦闘機動を取った。一方はスラスタで強引に、一方も似通った動きをしていた。

 両腕にリボルバーを握ったメタルウルフが六発を撃ち、パルスが六発放たれる。

 

『生徒会長! 高度が下がりすぎています! 加速して離脱してください!』

 

 学園のオペレーターからの警告に、刀奈はハッとした。慣性制御も重力制御も出来ないメタルウルフにとって、大気圏突入は死を意味する。大気圏再突入を防ぐには方法は一つ。加速して軌道を修正することだ。

 メタルウルフのOSが示す推進剤の容量は、限界に近い。ロケットと接続していればいくらでも取替えしようがついたが、パージしてしまった以上、もはや後戻りはできなかった。

 

「とった」

「―――――とられてない!!」

 

 次の瞬間、視界一杯に簪のウェアラブル・グラスを嵌めた冷たい瞳が迫っていた。両腕のブレードを振りかぶると、バツ字状に装甲を引きちぎる――。

 神がかり的なリボルバーの早撃ちが炸裂した。ブレードを握る両腕関節部に立て続けに命中、シールドを貫き、装甲を破壊した。一瞬動きを止めた簪は、ありえないものを見た。薄手の宇宙服を装着しただけの刀奈が、カウルを開放して身を乗り出してくるというものを。

 

Take this(コイツを食らえ)!」

 

 刀奈が、細腕に収まるとは到底考えられぬ大口径のリボルバーを直接撃ち込んだ。

 

「――――!」

 

 射撃を受け、シールドが限界に達していたナインボールが爆発を起こす。装甲が砕け、電流が迸った。

 

『生徒会長! 限界です! 早く、早く加速してっ!!』

 

『Bingo,Bingo,Bingo』

 

 帰還に必要な最低限の推進剤容量になっていることをOSが警告してくる。

 

「だめ! 簪ちゃんが!」

 

 刀奈は、減速しすぎたためか大気圏の魔の手に捕まりかかっている簪に手を伸ばした。簪は口から血と唾液の混じった液を伝わせて、ぐったりとしていた。

 二機がついに、減速しすぎて抜け出せない領域に突入した。万全な状態のISであれば離脱はできただろうが、絶対防御作動中のISに、推進剤切れを起こしているEOSでは、叶わぬ夢だ。

 

「私は……姉さん、あなたみたいなヒーローに………私はなりたくて………」

「手を! 伸ばして!」

 

 簪が、伸ばされた手を払った。背中向きに、真っ逆さまに落ちていく。加速が始まったか、大気圧縮により、赤い火が体に纏わり付きはじめる。

 

「ふふふ……あははははは…………! あははははははははは!!」

 

 笑いながら、落ちていく。ボロボロと涙を流しながら、落ちていく。

 

「簪ちゃん!! ………死ぬなんて! だめ!!」

 

 簪が消えていく。加速して、加速して、ついには燃え尽きる。

 

『生徒会長! 推進剤が……!』

「No!  Problem!」

 

 メタルウルフ、両コンテナ格納兵器を全て投棄。コンテナを前方に展開。コンテナを盾に、ブレーキをかけながら落ちていく。

 刀奈は振り返った。煌々とブースト炎を吹きつつ突き進むロケットがあった。親指と人差し指を立てて銃に見立てた手を突きつけると、ばぁんと口で銃声を鳴らしてみせる。

 

「一夏君………失敗なんてしたら、お姉さん許さないんだからね」

 

 地球上に一際大きい流れ星が一つ光り輝いた。それは徐々に輝きを失っていき、“比較的”緩やかに海面に叩きつけられた。

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