セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
「フィンファンネル!」
「ファンネル!」
フィンファンネルがコの字型に変形、蝶のように不規則で、蜂のように鋭い軌道を描き出しながら、ビームを乱射。
ファンネルが射出。後部
思考によって動く兵器によるドッグファイトをさせながら、射撃戦を行うことがいかに難しいことか。飛行機を操縦しながら機械修理をするような芸当であるはずのことを、二名は当然の如く行っていた。
「エクスカリバーがやられたか…………ええい、完全な作戦にはならんとは!」
防空の要を担っていたはずのエクスカリバーが折られた。爆発炎上し、破片を撒き散らし周囲のアサルトセルを粉々に粉砕していく。破片が更なる破壊を呼び、破片の数を鼠算式に増やしていく。防空の穴へと、一基のロケットが駆け抜けていった。
千冬はライフルを撃ちながら叫んだ。
「なんでインターネサインなどというものに頼って世界を支配しようとする! あれは、人が扱える力を超えている! 人類が滅亡するぞ!」
「賢者達はあれを操れると確信している。だからお前が作られ、私も作られた!」
似た顔の二人が、激しくビームを撃ちあう。時にビームでビームを迎撃するという芸当をやってのける。
「やはりか……!」
「気がつかなかったのか? いや気がついていようが構わない。人類最初の“完璧な人”のコピー人間、織斑千冬」
理解していた。己と弟には両親など最初から存在しないのだと。
千冬と同じ顔をした女、マドカが口角を吊り上げる。
「
「やれると思うな!」
ライフルのエネルギーがダウンしたのは、お互いにほとんど同じだった。躊躇無くライフルを捨てると、片やシールドとビームサーベル、片やシールドとビームアックスを握り、近接格闘に入った。
宇宙。コバルトに光る
白いスラスタの航跡が、赤い航跡と交錯する。火花が散り、二色の線が離れたかと思えば、火花が消えるよりも早く再び交わる。
「ちぃぃぃっ! ■■■!!!」
マドカがそう名前を叫び、
「■■■!!」
千冬が名を呼ぶ。
千冬がシールドを向け、何かを撃つような仕草を見せる。
「甘いな!」
フェイントを看破したマドカが腹部のメガ粒子砲をチャージ。
千冬、シールドを投擲と同時にダミー・バルーンを射出。『Hi-ν』を纏った千冬に似たダミーバルーンが展開するのに合わせて、ドックファイトをしていたフィンファンネルの一基に射撃をさせる。シールドがビームを反射し、バルーンの隙間を縫うように、『ナイチンゲール』の腹部に直撃させた。
「やるな! だが、この程度では落ちんよ!」
「どうかな!」
シールドを構えた『ナイチンゲール』が、ダミーバルーンを使った見事な攻撃の間隙を縫い
「そんなことでは!」
シールドだけを手放して、千冬の迎撃を誘うも失敗に終わる。千冬が回避に移ったことでシールドそのものを自爆させて損傷させる作戦は不発に終わった。
最後のファンネルがエネルギーを使いきり自爆した。これで、お互いが持つ武器は近接武器のみになった。
千冬がビームサーベルの出力を最大に上げる。
マドカがビームアックスの出力を最大に上げた。
「おおおおっ!」
「決めさせて貰う!」
激突。突きを狙った千冬のサーベルの切っ先を、装甲に折りたたまれていた隠し腕が反らす。
「何………ッ!?」
「沈め!!」
かろうじて直撃をサーベルを切り返すことでかわした千冬は、不覚にも一瞬敵を見失った。刹那、腹部に衝撃。マドカの脚部が装甲にめり込んでいた。
「ぐうぅぅぅっ!」
口から血交じりの唾液が噴出する。
「見損なったぞ! だが、しかしこれで終わりだ!」
千冬の思考に訪れた感情は――恐怖だった。失うことの恐怖。自分が死ねば、赤ん坊も死ぬ。愛してくれた夫との繋がりも。弟も悲しむであろうがありありと見えた。戦いに恐怖など感じたことが無い―――少なくとも、戦士になると心に決めてからは―――千冬は、恐怖心に支配されていた。
マドカが大きく張り出た肩部スラスタを全力で噴射。ビームアックスを振りかぶり、突撃を開始した。
動くことが出来ない。動いたら負けてしまうような、そんな気がして。
千冬は、かたかたと震える手を抑えるので精一杯だった―――。
―――マーマ……。
声が、聞こえた。
閃光。巻き起こるエネルギーの渦が、強大な推力を誇る『ナイチンゲール』を暴風に揺られる木の葉よろしく吹き飛ばす。
「うおおおおおっ! なんだというのだ!?」
マドカは驚愕に顔を歪め、声を絞り出した。ようやく姿勢を安定させると、千冬の姿を見つめた。
光が繭のように千冬の姿を覆い尽くしていた。光は粒子となり、粒子はまるで翼のように、千冬の背中から噴出する。
光が収まって来ると、“白”がいた。
千冬の体を覆うのは、純白のドレス。日本の白無垢の意匠にも似たつくりをした薄いヴェールが顔を覆っており、胸元から腹部にかけては緩やかに締め付けの無い布地が守っている。まるで鳥の翼のようなスラスタ兼フィンファンネル・ポットが生えていた。スカートのような、もとい、スカートそのものが脚部を守り、その華奢な作りに合う細いブーツ状パーツが伸びる。腕には、薔薇の花を思わせる優美な流線型のライフルが握られていた。
『―――、――完了、…………Hi-νプラス“ホワイトスワン”
直後、メガ粒子砲が千冬のいた地点を薙ぎ払った。
「
「いいや、冗談なんかじゃない!」
声はマドカの背後からだった。レイピアのような形態をしたビームサーベルを振りかぶった格好の千冬がいた。
「落ちろ!」
「なんと!?」
肩部スラスタユニットごと、叩き切る。続いて頭部装甲を撫で斬りにした。
「ちいいいっ!」
マドカが距離を取ろうと後退を掛けたが、千冬がほとんど瞬間移動のような速度で回り込みを掛ける。残像さえ残らぬ、あまりに速すぎる、白き閃光のような速度だった。
千冬が、武器を振りかぶる。
「沈め、■■■!」
「■■■!!」
対応さえ許さずに、マドカはビームサーベルに串刺しにされた―――。
「終わり、か…………」
「ああ」
エネルギーがダウンし、絶対防御の機能さえ破壊され、生命維持すらままならないまでに破壊されたナイチンゲール。同じく、胸元を串刺しにされ、ビームの高熱で血液を焼かれたマドカがいた。
力なく漂うマドカとは逆に、千冬には傷の一つさえ見当たらない。ウェディングドレスのようなIS『ホワイトスワン』は、空に輝く月さえ劣ってしまう程に優美な光を放っていた。
「悔いはない……………しかし………“また”負けてしまうとは、つくづく私は………」
「お前は純粋過ぎたんだ」
千冬はそういうと、ロケットが去っていった方角を見上げた。遥かなる空の向こう側。銀色に輝く丸い月を見つめた。
「さらばだ…………あるいは……」
マドカの声が完全に消えた。
千冬は腹部を撫でると、ただ一人月面に旅立っていった弟のことを思った。
「一夏、死ぬな………」