セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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せっしーかわいいよせっしー
さくさくっと進めていきます。自分が飽きる前に進めないと(使命感)


6話 この気持ちまさしく愛だ

 カレーライス大盛りにサラダをつけたご機嫌な食事。大盛りといっても並の大盛りではなく食券を二枚突っ込んだ特盛りである。運動をしているせいか腹が空いてしまい食事をかっ込むというライフスタイルのせいで、大食いのセシリアと化している……。もやしと脂まみれの某ラーメンだって食える自信がある。

 だが、我慢せねばならない。武士は食わねど高楊枝。

 

 「………」

 

 ……が、だめ。

 腹が減っている。和風定食では足りなかった。俺は前のめりで一夏の食事を凝視していた。

 

 「なぜ、そんなに物欲しそうな目で見てくるんだ。飢えた犬のような目つきをしているぞ」

 

 不審そうな一夏の目つき。日本刀のように鋭く、サバイバルナイフのように無骨な視線。

 いいぜ、もっと睨んでくれ。マゾじゃないけどその目つきが最高です。

 

 「いえ」

 

 俺が首を振ると、一夏はかすかに首を傾げつつ言った。

 

 「もしかして足りないのではないか?」

 「そんなことありませんわ!」

 

 図星です。

 和食を選択した俺だったが、冒頭の妄想通りの定食ならば沈黙したであろう腹の虫を抑えきれずにいた。しかし、原作のセシリアは大食いではなかったが、実はこっそり裏で食っていたのかもしれない。いや俺が運動に適した体になったせいか。仕方が無いのだ。登山にせよ水泳にせよカロリー消費が激しすぎて食わないとぶっ倒れるものだから。

 俺が首を振って否定していると、一夏は何を思ったのか和風定食のほうれん草のおひたしの入った皿に箸をつけて、箸で掬い突き出してきた。

 マ、マナー違反だぞ。ずるいぞ主人公の癖に。あーんしようという魂胆だな。

 

 「食べるか?」

 「………ばばばばばかおっしゃい!」

 「食わないなら俺が食うぞ」

 

 Sっ気があるところもだいすきです。Mじゃないけど。

 

 「食べますいただきます!」

 

 一夏が箸を引っ込めようとしたので口を突撃させる。おひたし最高! 思わず頬が緩む。咄嗟に口を手で隠す。

 周囲の女性らが動揺しているのが見える。ははは見るがいい。見せ付けてやるぜ。俺たちがつながっているところがみんなに見えちゃうぞ~。

 

 「そんなに腹が減っているならば、違う定食を選べばよかったんじゃないか」

 「ぐっ」

 「まあいい。で、何のつもりだ」

 

 俺はばかだな。女性らしさを強調しようとしているのに一夏よりも早く定食を平らげているのだから。

 おっと。一夏の目つきが鋭くなっている。怒らせるようなことをしただろうか。

 

 「俺とお前は競い合う仲だ。つまり敵だ。敵と仲良くして情報でも引き出そうとしているのか?」

 

 暢気な原作一夏とは違う。こいつはやはり戦いに身をおいてきたのだろう。推測になるが誘拐されている間の空白期間になにかがあったと考えるのが自然だった。

 落ち着け。仲良くなりたいのであって、敵対したいわけじゃない。

 

 「世界唯一の男性操縦者が珍しかったから……とか、高貴な身分の私があなたに操縦を教えてあげる……という反応を期待していましたの? 殿方がいて、興味を抱く。年頃の娘として当然の反応ではなくて?」

 

 ……ものすごく恥ずかしいことを言っている。セシリア語に翻訳して喋っているからこうなのであって、キャラぶん投げられるなら『ちょーかっこいいからお付き合いして欲しいなって!』の一言で終了する。

 世界唯一の男性操縦者一夏は瞳を鋭く尖らせていたが、ふっと肩の力を抜いた。かすかに口元に笑みが浮いていた。

 

 「そうか。友になりたいのか?」

 「へっ?」

 

 ………鈍いのは変わらないのかよ!この朴念仁め。直球で付き合ってといったところで唐突過ぎる。まずは連絡手段の交換から始めるべきだろう。

 

 「そうですわね……最初は友達からよろしくお願いいたしますわ」

 「ああ。戦いでは手を抜かないぞ」

 

 そういって端末を取り出すと、相手にも見せるように言う。すらすらと相手の端末にこちらの連絡先を入れておく。

 

 「やるねーセシリアさん。にくしょくけい?っていうのかなああいうの」

 「いいなー。抜け駆けずるいよ」

 

 などとモブ子らが言っている。はははそこで指をくわえて見ているがいいよ。イギリス淑女は恋には手を抜かない。危険を冒す者が勝利するのだよ。肉食系だよ。一夏オンリーの。賞味期限が来る前にもらってください。

 その時頭に電流走る。

 そこに、ポニーテールが襲来した。和風定食。焼き鮭をメインにしたオーソドックスなそれをお盆に載せて、つかつか歩み寄ってくる。刀?らしきものは持っていないように見せかけて腰にそれっぽい袋が差してあった。

 

 「来ましたわね、プレッシャー!」

 「これはイギリスの。壁になるのがいると思いきや君だったか。ふ、私と一夏はどうやら運命の赤い糸で結ばれているようだな!! 隣を失礼するぞ」

 

 ぐぬう。俺が抵抗する間も無く箒は一夏の隣にどんと腰掛けた。上半身を持たれかけるという大胆な格好で。

 しかしイギリスのってなんだイギリスのって。俺のほかにもイギリス国籍はいるわけだが。教室の生徒の半分が外国人なくらいだぞ。

 

 「盗聴器か……? GPSによる追尾か?」

 

 一夏が呆然とした口調で呟いた。きっとあの手この手で巻こうとしたんだろうな。けど無理だ。ブシドーのしつこさは尋常じゃない。

 

 「愛だ!」

 

 モップさんはあたりの人が振り返るような大声を上げた。白い首筋まで真っ赤に染めて愛しい男に身を摺り寄せる様は見ていて腹立たしい限りだ。

 原作モッピーがこうも素直ならきっと一巻目で一夏は陥落していたと思う。割とマジで。いや一夏程の逸材ならばキスをされても人工呼吸と勘違い……はしないよな? 大丈夫だよな?

 

 「……愛……だと……」

 「ふっ。皆まで言うなよ一夏。われわれは通じ合っているのだと。そうだ。いつか時だって支配できる!」

 「気のせいかしら? つい今しがた大声で宣言したように思えるのだけれど」

 「なんのことかさっぱりだな。見苦しいぞ」

 「ぐっ……」

 

 モップの癖に生意気な。キャラを投げ捨てて抱きついてしまおうか。いかんいかん。俺はセシリー・フェアチャイルド……じゃないセシリア・オルコット。イギリス貴族の血を受け継ぐ由緒正しきお嬢様。落ち着け。

 しかし、俺は今までの会話で気になったことがあった。ミスターブシドーもとい箒は嘘をつくような性格ではない。原作通りなら部屋がなかったせいで箒と一緒の部屋でしばらく寝泊りすることになるはずだが。一夏ラブの箒ならば、一夏が眠りにつくや否や同じ布団にもぐりこんでも不思議ではないはず。

 

 「ひとついいかしら。一夏さんのルームメイトはどなたなのかしら」

 「こいつだ。うるさいから夜は縛り付けて眠る予定でいる」

 「束縛とは愛が強すぎるぞ一夏。よかろう。素肌はいつでも開けておくぞ! 最初は弱く頼む」

 

 うーん。きっと大丈夫だろう。襲い掛かると同時に背負い投げする絵しか浮かんでこない。

 箒は早速ご飯を食べ始めた。いい食いっぷりだった。箸を淀みなく動かしては魚を解体していく。

 一夏は箒が隣に来たことで食事のスピードを加速化させた。ご飯を吸い込んでいるような食い方にてあっという間に片付けると、足早に離れていく。

 

 「また明日」

 「ええ。おやすみなさい」

 「ふむん、男子の食というのはかくも早いものか。湯浴みをして部屋に戻るとするか」

 

 箒も大差ない時間でご飯を平らげていた。トレーを持って立ち上がると、上半身のぶれの少ない武士特有の足運びで去っていく。

 

 「セシリア・オルコット。その積極性、嫉妬するぞ」

 

 お前に言われたくねぇよ。

 俺はどっとこみ上げてくる疲労感に大あくびを手で隠して箒の後を見送った。


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