古代日本において死後の人格と記憶の保持が許されたのは皇族と一部の貴人のみ、身分関係なしに霊が人格も保つようになったのは近世以降です。
なお幽霊は日本の怪異のカテゴリーでは比較的新しい部類です。
社会的に個々人が尊重される社会になってから幅をきかせていますがそれまでは妖怪の一種でした。
(絶対城先輩の妖怪学講座より要約)
私が幼いころ・・・私は自分の力に気付いてしまった──今思えばきっとあのころから運命の歯車は動き出してしまったのかもしれない。そしてこんな結末になってしまうことも・・・
その出来事は私とあなたの絆であり、私の最後の運命を決める裁定者だった。
そびえたつ大きな巨木・・・体温を全て奪うような冷たさを感じる、いや実際にこの櫻から奪われているのかもしれない。
ねぇ、貴方もそう思うでしょう?
私の目を向けた先には一人の青年がたっていた。
その表情は呆然としていたがいつも通り凛々しかった。
あゝ、愛しくたまらない人ッ!離れたくはない、ずっと一緒に居たい・・・
心の底からそう願う。
きっと私は地獄へ落ちるだろう。
それでも冥界の底で眠らされそうと貴方の元へ訪れる転生の花は摘み取る。
私が目覚めるまで、貴方は待っていてくれるわよね?
そう思いながら私は深い眠りへとついた。
しかし、そんな私との思いと裏腹に、良くも悪くも運命の歯車は回転し全てを流転させた。
冥界の底から這い上がった私が見た物は、別の女と乳繰り合う彼の姿だった。
轟く咆哮、それが自分のものだと気付けたのだろうか?
つかみかかる白い腕に血を噴出させる禍々しい妖力・・・すべて私の力だった。
辺りを染める紅い花びらたちは壊れゆく世界ですらも彩り、そして全て緋一色の無に帰す。
・・・あゝもういいじゃないか、思い出も、愛も、二人の仲ですら乖離してしまったのだから。
業火の舞い散る冥界・・・血染めの花びら舞う中に哭くヒトリの悋気に触れた女性。
消滅へいざなう救済の蜘蛛の糸もなく、三千もある世界のどれ一つとして運命は交差し、止めても廻る狂気と化す。
気づけば何もかも無くなってしまっていた。
しかし、彼女は狂気に抗うことはなく、その激情に身を任せた。
天地が乖離しようと、それをつなぎとめるはずである楔は彼女自身が塵も残さず消し去ってしまった。
冥界は草木も枯れた死の土地。
そこに浄土の影はなく、ただ死と言う漠然とした概念の転がる狂気の世界となってしまった。
すべての惨状に気が付いたとき彼女はこうぽつりと漏らした。
「あゝ、もっと幽雅に生きていればよかったのかしら?」
墨染を新たに染める猩々緋の色・・・彼女は愛しく感じた彼の体をその憎しみの込めた腕で刺し貫きながらそう零したのだ。
たった一筋透き通った水滴を目元から零しながら・・・
これは愛に狂った女性の話。
とてもとても悲しく、また滑稽で哀れな噺・・・
生と死の境目もしくはBorder of Life
It’s my LAST DESTINY in the life.
ただそれが手向けの一言にふさわしかろう・・・
LAST DESTINY
原曲:【幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life】