それは今日ものんびりと幻想郷を散歩している途中での出来事だった。
「今日もいい天気だね~っと」
一人気楽に川辺を歩いていると川になにかが引っ掛かっているのを見つけ急いで駆け寄る。
「おいお前さん!大丈夫かい!?」
見つけたものはやはり人間だった。
身体は傷だらけで呼吸もしていない。
「あーもう!」
命の危機を感じ取った萃香は心臓マッサージをしていく。
萃香の一生懸命な救命活動が功を奏したか、男は息を吹き返す。
「大丈夫かい?」
「えぇ、たぶん大丈夫だと思います」
心配する萃香をよそにその男はふらつく足で立ち上がり歩き出す。
しかし、またふらふらふらつき身体のバランスを崩し倒れる。
「ほら大丈夫じゃないじゃないか!」
慌てて駆け寄る萃香の説教に苦笑いを返す男。
「竹林の医者のとこに行くぞ。おまえがほっておけん」
男がなにか言う前に萃香は男を背中にのせ走り出す。
萃香の走る速さは流石鬼としか言いようがない程速かった。
馬なら簡単に抜き去ってしまえるような速さで萃香は永遠亭を目指す。
永遠亭に着いたとき、男は疲れきっていた。
鬼の速さは妖怪ですらキツいのだ人間は楽に乗れるわけがない、がしかし萃香は死にかけていたときの疲れだと思ってしまったようだった。
数日後男の見舞いに萃香は来ていた。
理由なんて思い付かなかった、ただなぜか会いたかった。
気がつくと何時も男のことを考えていた。
この気持ちをなんと言うか萃香は分からなかった。
だからこそこの気持ちがなんなのか知るために萃香は男のもとへ通った。
やがて男が退院し、人里に戻っても通い続けた。
男といると幸せ。
男と居ないと寂しい。
男といると酒がよりうまい。
男と居ないと酒が少し不味い。
男といると温かい。
男と居ないと寒い。
そして1ヶ月、半年、一年と過ぎていく。
それでも萃香はその気持ちをなんと言うか分からなかった。
幸せ?友情?それとも・・・?
ある日、萃香は友人の鬼へ打ち明けてみることにした。
「~なことがあったんだよ・・・それでさ今のこの気持ちどう思う?」
そう聞かれた友人はあっさりと答えを教えてくれた。
「萃香、それはな恋って言う気持ちだ」
酒を煽りながらも遠くを見据える勇儀の目は理解を表し、私も・・・となっている。
「ここから淡い恋心の匂いがするわねぇ」
人の幸せに人一倍敏感な橋姫も乱入してきたときにこうのたまったのだ。
きっとあの人を思うこの心が恋心と言うのだろう。
「ありがと勇儀、助かったよ」
友人にそう言い残して地上へ向かう。
そして萃香は男のもとへ出掛けた。
「なぁお前さん、私はお前さんのことが好きになっちまったみたいなんだ・・・責任とってくれるか?」
このあと鬼は幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし♪
人と鬼
巡りて紡ぐ
恋の糸