カルデアがダブルマスター体制だったら。   作:バナハロ

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第二特異点永続狂気帝国セプテム
喧嘩両成敗。


 翌日、目を覚ますと俺の布団の中がヤケにもっこりしていた。いや勃ってるとかじゃなくて。

 布団の中を見ると、清姫が俺の腹にしがみついて寝ていた。

 

「って、何やってんだよお前は⁉︎」

「んっ……?おはようございます、ますたぁ」

「いやおはようじゃねぇよ!何してんだお前⁉︎」

「………いえ、なにやら昨日からますたぁがご傷心と聞いたので、わたくしがその傷を癒して差し上げようかと」

「いらんわ!ていうか一緒に寝て何が癒されるってんだよ⁉︎」

「………ますたぁの童貞心ですか?」

「ど、どどど童貞ちゃうわ!バッキバキのヤリチンだわ!」

「………どなたがますたぁの童貞を奪ったのですか?」

「何で逆レイプされた前提⁉︎てか知ってどうする気だよ!」

「それはもう……」

「ごめんなさい見栄を張りました!バッキバキの童貞だから指をコキコキ鳴らすな怖いわ‼︎」

 

 な、何なんだよこいつ……!ていうか、なんで俺にそんな懐いてるんだよ………?

 清姫のストーカーっぷりにドン引きしてると、コンコンとノックの音がした。

 

「マスター?朝ですよ?」

 

 げっ、沖田さん……!よりによって最悪の相手が来やがった……‼︎

 

「あら?沖田さんですね」

「おい、バカやめろ!お前は布団の中に引っ込んでろ‼︎」

「ああん!顔を蹴るなんて、鬼畜の諸行……!でも、ますたぁにやられてると思うと、何だか悪い気分ではないのは何故でしょう⁉︎」

「知らねーよど変態が‼︎」

 

 め、面倒臭ぇええええ‼︎

 俺は無理矢理、清姫を布団の中に捩じ込むと、沖田さんに声をかけた。

 

「あ、後から行くから!ちょっと待ってて!」

「………怒鳴り声が聞こえましたけど、何かあったんですか?」

「無い無い!何もないから!」

「………怪しい」

 

 チィッ!面倒な奴に捕まった……‼︎どうする?やはり清姫を置いて先に部屋を出るのが先決か。

 

「………目の前にますたぁの童貞が」

「は?」

 

 下から変な声と言葉が聞こえた。

 

「って、おおい!パンツに手をかけるな!」

「ますたぁの!ますたぁの童貞を!」

「やめろ変態!お前マジブッ殺すぞ‼︎」

「ふふふ、わたくしはいつでも準備OKですので!」

「沖田さん!沖田さん助けてぇ!こいつダメだ!誰か殺してくれ‼︎」

 

 結局、沖田さんに助けてもらい、俺は変態の称号を手入れた。

 

 ×××

 

 最悪の目覚めだったが、まぁ仕方ないだろう。というか、何で清姫は俺にゾッコンなの?別人だよね、オルレアンの清姫と。

 で、今は朝飯。食堂で清姫と沖田さんとクー・フーリンさんと飯を食べてると、藤丸さんとマシュとジャンヌ・ダルク・オルタ(そういう名前らしい)と食べてるのが見えた。

 

「……………」

「ますたぁ?どうかなさいました?」

「……えっ?あ、いや」

 

 ………なんか、別にジャンヌ様の事をずっと気にしてるわけではないが、ジャンヌオルタがどうにも気になる。

 何となくボンヤリ見てると、急にこっちを見て来たため慌てて顔を背けた。

 

「………マスター?どうかしたのか?」

「いや……なんでもないよ」

「いや、そうじゃなくて。なんか青タン多くね?」

「ああ、これは昨日、沖田さんにボコられた傷。いやー痛かったわー」

「おいおい、また喧嘩したのか?」

「喧嘩じゃないです!マスターを慰めるために稽古つけてあげてたんですよ!マスターだってサンキューとか言ってたじゃないですか!」

「あらあら、ますたぁったら可哀想に……。あとで、わたくしが手当てして差し上げますね」

「いや、いい。やっぱ全然痛くない」

「おい、沖田。喧嘩するのも良いが、少しは手加減してやれよ」

「ですから、喧嘩じゃないんですってば!」

 

 ………俺のパーティは騒がしいぜ。藤丸さんのパーティが羨ましいわ。

 そんな事を思ってると、隣から「ちょっと」と声が聞こえた。いつの間にかジャンヌオルタが隣で立って俺を見下ろしていた。

 

「………ねぇ、あんた」

「な、何?」

「何?昨日から人のことジロジロ見て来て」

「…………」

 

 言えねー。あなたの半身のおっぱいを揉んで辱めた挙句、あなたを戦術でフルボッコにして、あなたの半身と恋に落ちてキスまでしましたとは言えねー。

 

「………悪い、何でもない」

「あのね、あなたの事を見てると何故か不愉快になるのよ。だから今度から私の視界に入らないでくれる?」

「…………」

 

 そこまで言うことなくね?ジャンヌ様の半身にそう言われなと思うとなんかキツイな………。地味にショックを受けてると、隣の清姫が怒りのオーラを隠す事なく立ち上がった。

 

「あら、ジャンヌオルタさん、でしたか?わたくしのますたぁにあまり失礼な暴言を投げ掛けるのはやめて下さいます?」

「何?あんたに話しかけてなんかないんだけど?それに、文句ならあんたの覗き見マスターに言いなさいよ」

「覗き見マスターとは誰の事でしょうか?………返答によっては、その首落ちても知りませんよ?」

「上等じゃない、返り討ちにしてやるわ」

「………あの、どうでも良いけど俺を挟んで喧嘩するのやめてくれない?」

 

 どちらかの首より先に俺の首が落ちるわ。すると、ジャンヌオルタの後ろからゴヌッとチョップが繰り出された。

 

「はいストップ」

「いったいわね⁉︎何するのよ!」

「ジャンヌオルタ、田中さんに酷いこと言うのはダメって約束したよね」

 

 藤丸さんに怒られ、ジャンヌオルタはうぐっとバツの悪そうな顔をした。何を言われたのか知らないが、ちゃんと向こうはマスターとサーヴァントの関係になっているようだ。

 しかし、今のやり取りでよく分かった。目の前の奴は少なくともこの前のジャンヌ様ではない。

 俺は両手で目と口を広げて舌を出した。

 

「バーカバーカ!やーい、怒られてやんのー!」

「っ!わ、悪くも言うでしょう⁉︎こんなバカ!あんた燃やすわよ⁉︎」

「おいおい、マスターに今怒られたばかりですぐ暴言か?学習能力皆無かよバ」

「マスターも止しなさい」

「カヒュッ⁉︎」

 

 横から沖田さんにチョップされて止められた。こっちはマスターとサーヴァントの関係になれていないようだ。

 

「ごめんね、田中さん。お食事の邪魔しちゃって」

「いや、いいよ。ジャンヌダルクが裸踊りすれば許す」

「は、はぁ⁉︎誰がそんな真似するのよ‼︎」

「マスター、子供じゃないんですしいい加減にしてください」

 

 怒られたので黙った。藤丸一家は飯を終えたようで、食器を片付けて何処かへ行ってしまった。

 

「………さて、そろそろ俺らも行くか」

「そうですね」

 

 今日も任務だ。ブリーフィングの時間だ。

 ………その前にトイレ行こう。

 

「ごめん、トイレ行ってくる。あー清姫、付いて来たら契約切るから」

「ぎくっ」

 

 ぎくって声に出す人初めて見た。とりあえず、沖田さんに

 

 ×××

 

 用を済ませてトイレから出ると、ジャンヌオルタが待っていた。え、何?出待ち?暗殺?

 少し身構えると、ジャンヌオルタはため息をつきながら髪をかきあげた。

 

「………別に何もしないわよ」

「………本当に?」

「聞いてたけど、本当にチキンなのね」

「…………うるせぇバーカ」

「………誰がバカよ」

「お前だよ」

「…………」

「…………」

 

 お互いに指をコキコキと鳴らしながら近付いた時だ。何故かジャンヌオルタの顔色が悪くなった。何か気配を感じ取ったのだろうか、辺りを見回すと、藤丸さんとマシュがすごい睨んでいた。

 

「い、良いわ。今は見逃してあげる」

 

 はっ、あの二人には逆らえないようだな。これは俺の反撃タイムなのでは?

 

「はぁ?見逃してあげるぅ?人間相手にビビってタイマンも張れないサーヴァントが何を抜かしてるのかイマイチ理解出来ませんがそんな奴がこれから俺達『世界を救い隊』メンバーとしてやっていけるんですかねぇ?」

「べ、別にビビってないわよ‼︎ただ、あんたなんかに構うのは時間の無駄だって言ってんの‼︎」

「はい、いただきました『時間の無駄』ね。それは喧嘩を避ける雑魚の予定調和に等しい言い訳なんですよねぇ。それを無意識に出しちゃった時点であなたの雑魚度がよく分かると言うものですよ、ええ?」

「うぐっ………!」

 

 悔しそうに奥歯を噛むジャンヌオルタ。ふははは!あの二人がいる限り、俺の完全勝利だなこれは!ふははははは!

 心の中で高笑いしながら藤丸さんとマシュを見ると、なんかカンペを掲げていた。

 

『やっぱやっちゃって良いよ』

 

 えっ………。直後、目の前から轟ッと魔力の放出を感じた。それも笑えない量の魔力。四つ葉の魔道書確定レベルなまである。

 

「…………き、今日はこのくらいで許してやろう」

 

 そう言って帰ろうとすると、後ろから肩を掴まれた。ミシミシッと肩から悲鳴が上がる。

 ギギギッと後ろを見ると、悪魔の笑顔を浮かべて俺を見下ろしていた。あ、これはヤバイ。

 

「許可が出たんで喧嘩してあげるわ。まさか、人を散々煽っておいて喧嘩になったら逃げるなんて言わな」

「俺が悪かったです!すみませんでしたあああああああ‼︎」

「えええええええ⁉︎」

 

 土下座すると、なんか悲鳴を上げられた。

 

「あ、あんたプライド無いにも程があるでしょ⁉︎」

「調子に乗ってましたああああああ‼︎」

「………なんかもう、殴るのもバカバカしくなって来たわね……。もう良いわよ。話だけさっさと済ませるから」

「はっ、寛大な処置にわたくし反吐が出ます」

「あんた殴られたいの?」

 

 うるせぇ。

 

「で、何の用?」

「………いや、その……」

 

 言いにくいことなのか、顔を赤らめてそっぽを向くジャンヌオルタ。もじもじしながら、ボソッと呟いた。

 

「………食堂では、悪かったわよ」

「は?」

「………そ、それだけよ!立花……マスターに怒られたの!謝らないとベッドで寝かさないとか言われたから仕方なくよ!言っとくけど全然反省なんかしてないんだから‼︎じゃあね‼︎」

 

 ………ツンケンしながら罵倒する勢いで謝ってくるジャンヌオルタ。ていうか、後半マジで罵倒だし。まぁ、その台詞も照れ隠しだと思えば可愛く見えてくる。

 

「ジャンヌオルタってさ、」

「何よ」

「可愛いな」

「は、はぁ⁉︎いきなり何を……!」

「反抗期の妹みたいで」

「………我慢しなさい、私。どんなに殴りたくても」

「じゃ、そろそろブリーフィングだ。行こうぜ」

「私に指図しないで」

 

 ブリーフィングに向かった。

 会議室みたいな場所に到着すると、既に俺とジャンヌオルタ以外揃っていた。

 

「お待たせ」

「遅いですよ、田中先輩」

「ごめん、う○こがデカくて」

「………下品なこと言わないでください、マスター」

 

 沖田さんに怒られながら席に着いた。ジャンヌオルタも藤丸さんの隣に座り、話し合い開始だ。

 

「さて、今回、レイシフトする先は1世紀ヨーロッパだ。より具体的に言うと古代ローマ。イタリア半島から始まり、地中海を制した大帝国だ」

 

 へぇ、ローマか。よく分からないけど。世界史とか詳しくないし。

 

「存在するはずの聖杯の正確な所在は不明、歴史に対してどういった変化が起こったかもだ。どちらも判明していない。済まないね」

「いや、それは俺達が探すから良いよ」

「うん、ありがとう」

 

 まぁ、向こうにいりゃ分かることだしな。

 

「作戦の要旨は前回と同じ、特異点の調査及び修正。そして、聖杯の調査、並びにその入手、破壊だ。人類史の双肩は君達に掛かってる、今回も成功させてくれ」

 

 その台詞に、全員が頷いた。

 

「で、今回もリーダーだけど……田中くん、またやってもらえるね?」

「⁉︎ ま、待ちなさい!」

 

 突然、黙っていたジャンヌオルタが立ち上がった。

 

「そこのがリーダー⁉︎冗談でしょ⁉︎」

「ジャンヌダルク、指を差さない」

 

 藤丸さんに怒られ、渋々指を引っ込めるジャンヌを見ながら、俺は思わずため息をついた。

 

「何でどいつもこいつも反対して来るのかな………」

「マスターの普段の行いの所為です」

「いや、普段も何もあいつは知り合ったの昨日だろ」

「その短い間でそれだけ奇行を行って来たということです」

「おい、テメェブッ殺すぞオイ」

「上等です。稽古の続きと行きましょうか?」

「ほら!あんな簡単に挑発に乗るようなバカをリーダーにして良いわけ⁉︎」

 

 そう喚くジャンヌオルタに、藤丸さんが冷静に顎に手を当てて聞いた。

 

「………じゃあ、誰が適任なの?」

 

 自分の胸を叩いて、立派な胸を更に張ってジャンヌオルタは答えた。

 

「もちろん、私よ!あんなのに任せておけないわ!」

 

 何それ、少しイラっとしたぞ。俺はそのジャンヌオルタに声を掛けた。

 

「じゃあ、ジャンヌオルタ。俺と将棋をしよう」

「?なにそれ」

「チェスでも良いよ」

「良いわよ、勝った方がリーダーね?」

 

 二人でチェスボードを取りに行こうとすると、後ろでマシュがガタッと椅子を鳴らして言った。

 

「ち、ちょっと!そんな時間ないですよ!」

「良いよ、マシュ。やらせた方が早い」

 

 ロマンに止められ、チェス大会開催した。

 

 〜5分後〜

 

「チェックメイト」

「……………」

 

 勝った。正座したまま動かないジャンヌオルタを無視して立ち上がり、とりあえず宣言しておいた。

 

「と、いうわけで、我輩が大統領に決まりました」

「………おかしい、おかしいわ……。私が先手だったのに……」

 

 たかだかチェスで泣くなよ………。

 そのジャンヌオルタを無視して、ロマンは言った。

 

「よし、じゃあ早速行こうか」

「あータンマタンマ!ちょっと待った!」

「何?」

「行くならさ、俺準備とかしたいから。5分待ってくれない?」

「あ、ああ。まぁ良いけど」

 

 との事で、5分後にレイシフトした。

 

 


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