カルデアがダブルマスター体制だったら。   作:バナハロ

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ツイてない日に旅行は避けよう。

 藤丸さん達が帰って来て、ガリアに向かって出発した。

 俺はネロの後ろに乗せてもらい、馬の上でのんびりしていた。いやー、良いもんだなぁ、この上。ケツが揺れることを除けば。

 森の中を進み、双眼鏡で辺りを見回した。移動中の襲撃は一番ヤバイ奴だからな。

 

「お兄ちゃん、何を覗いておるのだ?」

 

 そういえば、ネロの世代だと双眼鏡は超レアアイテムだよな。

 

「これは双眼鏡っつってな。まぁ、使ってみた方が早いかな」

 

 言いながら俺は前のネロの顔の前に双眼鏡を付けさせた。

 

「うおっ⁉︎な、なんだ⁉︎急に遠くが………!」

「と、いうアイテムだ」

「便利なものもあるものだな……。ぐぬぬ、お主の未来に尚更行ってみたくなった」

「ま、1900年後くらいまで待てよ」

「その時には余はもう死んでおるわ。……お兄ちゃんめ、意外と意地悪な事も言うのだな」

 

 ああ……もう、意地悪って言い方が可愛いよね。この妹超愛でたい。

 

「ま、俺がいる間は貸してやるから。使えよ」

「本当か⁉︎」

「おう。その代わりに、馬の上では抱っこさせて」

「うむ!好きに抱くが良い!」

「いや抱くって言い方しちゃうと意味が随分変わっちゃうんだけど……」

 

 まぁ良いか。俺は遠慮なく後ろからネロを抱き締めた。ほあー、良い匂いするんじゃー。

 

「おおー!すごい、すごいぞ!あんな遠くにいる熊がとても近くに見えるぞ!」

「………えっ、熊いるの?」

「なーに、問題なかろう。これだけの大人数じゃからな」

「だ、だよね。食べられないよね……?」

「安心せよ。お兄ちゃんは私が守る」

 

 そういや、ネロ鬼強かったな。初めて会った時の戦闘を見たが、それはもう元気に暴れ回ってた。

 ………なんか人間のネロが強いのに俺が弱いって情けねえなあ。沖田さんにマジで剣の修行つけてもらおうかな。

 そんな事を考えてると「むっ」と声が聞こえた。

 

「前方に敵部隊!」

「ドクター、サーヴァントの反応は?」

『ないよ』

 

 よし、行けるな。やはり移動中を狙って来たか、或いは偶然出会したか。なんにせよ、叩く必要があるな。

 

「クー・フーリンさん、沖田さんは先行し、清姫はその援……」

「行くぞ!余に続けええええ‼︎」

「えっ、ちょっ、ネロちゃまぁあッ⁉︎」

 

 馬がフルスロットルで加速し、敵部隊に突っ込んだ。

 

「待って待って待ってネロ様待って落ちる!」

「しっかり捕まっていろ!」

「速度落とすって考えはああああ⁉︎」

 

 全力でネロの腰にしがみ付いた。女の子特有の柔らかさと良い匂いに興奮する隙すらない。

 敵の軍に突っ込むと、ネロを筆頭に暴れ回るが、さらに左右から敵が挟撃して来る。

 

「ネロおおおおお‼︎横おおおおおおお‼︎」

「むっ?全軍、左右に分かれ応戦せよ!」

「いやちょっ、待っ………‼︎」

 

 直後、馬が急停止して俺は落馬し、地面をゴロゴロと転がり、木に顔から突っ込んだ。

 

「ちょっ、大丈夫⁉︎」

 

 慌てた様子で駆け寄ってくる藤丸さんに、俺は鼻血を垂らしながら親指を立てた。

 

「ふじ、まるさん……あとは、頼ん……だっ………」

「ちょっ、田中さん⁉︎田中さーん⁉︎」

 

 俺はその場で死んだフリをした。もうこれ以上は無理です………。

 ログアウトした俺の代わりに藤丸さんが指揮を執ってくれた。何とか敵部隊を撃退し、少し休む事になった。

 敵ではなく味方にギッタギタにされた俺が濡れたタオルで腫れ上がった頬を冷やしつつ座ってると、ネロが俺の隣に座った。

 

「ふむ、大丈夫か?お兄……」

「大丈夫か?じゃねぇよ‼︎お前アホか⁉︎」

「うぐっ……す、すまぬ。まさか、落ちるとは」

「そこじゃねぇよ!指揮官自ら出て行ってどうすんだ⁉︎」

「えっ………?」

「この部隊の頭はお前だろ⁉︎そんな奴がノコノコ出て行って狩られたら全滅待ったなしだぞ!前線に立って軍を盛り上げて指揮を上げるのも良いが、それ以上にこの部隊の生死は自分に掛かってる事を自覚しろ!」

「す、すまん………?」

 

 ったく、ついカッとなっちまった。

 いや、そんな事よりさらに重要な事があったわ。

 

「それよりもだ。目的地まであとどれくらいだ?」

「え?も、もう少しだと思うが……」

「このタイミングで敵部隊に遭遇するって事は、野営地が敵に襲われてる可能性もある。何人か先行させて様子を見に行った方が良いな」

「なんだと⁉︎それなら、すぐにでも全員で行った方が良いのではないか⁉︎」

「アホ、それで敵の手に落ちてたら、今の部隊は俺達にそう思わせて誘い込み、敵万全の状態でかち合わせる為に襲撃させられたって事になる。だとしたら、このまま突っ込むのは危険だ。何人かに様子を見に行かせ、野営地の様子を覗いた方が良い」

「な、なるほど………?」

「それと、周りの探索もした方が良いな。俺達がここに来ると分かってて襲わせたのだとしたら、今の戦闘中に何人か抜け、こちらの戦力を把握して敵の大将に伝えに行った可能性もある。こちらの戦力がバレるのは今後に響く」

「わ、分かった」

「悪いけどクー・フーリンさんも、見回り行って来てくれますか?」

「おう」

 

 それでようやく息をついた。ネロも俺に言われた通り指示に従ってくれた。

 ようやく休めるのでその場で息をついてると、ネロが意外なものを見る目で俺を見ていた。つーか、俺その目で見られ過ぎじゃね?

 

「なんだよ」

「いや……お主、割と思慮深いのだなと」

「いや普通だろ」

 

 優れた指揮官に必要なものは勇敢さでも豪快さでもない、臆病さだ。何事にも恐れ、どれだけ相手の手の内を多く読めるかが大事だ。

 ビビリな俺はそれだけ敵の打ってくる手を予測する。そして対策を練る。まぁ、当たり前といえば当たり前の事なんだが。

 

「気に入ったぞ、お兄ちゃん。いや正臣よ、客将と言わず余の配下にならんか?」

「えーどうしよっかなー」

「ちょっ、田中先輩。ダメですよ?」

 

 マシュが口を挟んで来た。

 

「田中先輩には人類を救う使命があるのですから」

「や、そうは言うけどさ、これで世界救えないくらいなら、ここに残ってネロと添い遂げた方が良くね?」

「何バカなこと言ってるんですか!清姫さんもなんとか言ってください!」

「わたくしは別にますたぁが一緒であれば何処へでも参りますし」

「そうでしたね、清姫さんに聞いた私がバカでした。マスター!」

「そ、そうだよ田中さん!私達は田中さんがいないと困るよ!」

「余だってお兄ちゃんがいないと困るのだ!」

 

 ああ〜……美少女に取り合われて嬉しいぜ……。ラノベ主人公の気持ちがよく分かる経験が出来るからこの仕事はやめられないぜ。

 そう思いながら、俺は沖田さんを見た。いつもなら一番にツッコんで来る奴が大人しい。やっぱ、今朝の事気にしてるんだろうなぁ。………でも、その、何?なんで少し不機嫌そうなの?むくれた顔で俺を睨んでいた。

 

「マスター、私も見回りして来ます」

「え?あ、う、うん?」

 

 沖田さんも何処かへ行ってしまった。

 

「………どうしたのだ?沖田は」

「ま、色々あるんだよ、彼女にも」

「良く100億%原因と思われるお主がそれを言えるな……」

 

 勘が良いのですね、皇帝陛下。

 

「悪いけどネロ、ここには残れない」

「そうか……。お兄ちゃんに残ってもらえれば何より嬉しかったのだが……」

「いつか召喚してやるから。それまで待ってろよ」

「ショーカン?」

 

 そんな話をしながらしばらく休んでると、野営地への先行組が戻って来た。問題はなかったようなので、俺達も見回り組が戻り次第、野営地に戻った。

 

 ×××

 

 ネロが兵士に演説してる間、俺達はその様子を見ながら呑気にボーッとしてると、男と女が一人ずつ声をかけて来た。

 

「君達が噂の客将で良いのかな?」

「……あんたら、サーヴァントか?」

「ええ。あたしはブーディカ。ガリア遠征軍の将軍を務めてる」

 

 ……ブーディカって……。いや、今は自己紹介を聞こうか。

 

「で、こっちのでっかいのが……」

「戦場に招かれたのがまた一人……。喜ぶがいい。ここは無数の圧政者に満ちた戦いの国だ。あまねく強者、圧政者が集う巨大な悪逆が迫っている。叛逆の時だ。さぁ、共に戦おう。比類なき圧政に抗うものよ」

 

 その言葉に俺も沖田さんもクー・フーリンさんも清姫も藤丸さんもマシュもジャンヌオルタもポカンとした。

 

「ねぇ、この人何言ってんの?」

「さ、さぁ?」

 

 隣のクー・フーリンさんに聞くけど、まともな返答はこない。ていうか、今ので察したわ。こいつ、バーサーカーだ。

 

「うわぁ、珍しいこともあるもんだ。スパルタクスが誰かを見て喜ぶなんて滅多にない。あ、ううん。訂正、人を見て襲い掛からないなんて滅多に」

 

 直後、俺の目の前に剣が振り下ろされた。ピッと鼻の頭を掠め、ポタッと血が垂れる。

 恐る恐る前を見ると、スパルタクスと呼ばれた男が剣を振り下ろしてニヤリと微笑んでいた。

 

「………あっ、あの……なんで?」

「我が剣が討ち震える……。許せ、名もなき漢よ。我ではなく剣の意志で貴様の首を討ち取ろう」

「………人を襲い掛からないなんて、滅多にないわ。滅多に」

「『滅多に』を強調して二回言うなぁああああ⁉︎」

 

 さらに剣を振り上げられ、俺は慌てて逃げ出した。なんで⁉︎なんで俺だけ攻撃して来るんだ‼︎

 そのまま始まる鬼ごっこ。振り回される剣から何とか回避しながら走り回った。

 

「えっとー……うちらのリーダーが遊び始めちゃったから私が自己紹介するね」

「え?う、うん」

「私は藤丸立花。で、こっちがマシュ・キリエライトであっちがジャンヌ・ダルク・オルタ。この二人が私のサーヴァント」

「で、私は沖田総司です。こちらがクー・フーリンさんで、その隣が清姫さんです。あそこで鬼ごっこしてるのが私達三人のマスターです」

「おいいいい!お前らそれでもサーヴァントか⁉︎助けろよ!マスターが殺されかけてるんだぞ⁉︎」

「まぁ、案外タフなので多分平気でしょう」

 

 こ、この野郎おおおおおお‼︎あいつはさっきからなんで機嫌悪くしてんだよおおおおお‼︎

 そんな事を思って逃げてると、脚を躓かせて盛大にすっ転んだ。俺今日転んでばかり。

 自分に影が掛かるのを感じ、上を見上げるとスパルタクスが俺の真上で剣を握っていた。も、もうダメだぁ………。

 

「じ、ジャンヌ様ああああああ‼︎」

 

 そう涙目で叫んだ直後、沖田さんがムッとしたのが見えた。で、仕方なさそうに刀を構えて走り出そうとした直後、スパルタクスの動きが止まった。

 いつの間にか俺の目の前に移動していた清姫がスパルタクスの腕を抑えていた。

 

「………それ以上、わたくしのますたぁに狼藉を働くようなら、この腕無くなっても知りませんよ?大男さん」

「きっ、清姫ええええええ‼︎」

 

 流石!流石ストーカー!助かったぁ………。

 ホッと胸を撫で下ろしてると、ブーディカとネロがようやく止めに入り、スパルタクスは大人しくなった。

 

「ご無事ですか?ます」

 

 安否確認してくれる清姫の両肩を掴み、抱き締めた。

 

「うおおお!清姫え!お前良い奴だったんだな!」

「っ⁉︎」

「初めてお前を召喚出来て良かったと思たわ!」

「……………」

 

 あれ、なんか静かだな。もっと喜んでくれるかと思ったんだけど……。

 そう思って清姫を見下ろすと、顔を赤くしていた。

 

「こ、困ります。ますたぁ……。こんな、人前で……」

「えっ?」

「で、でも……ますたぁが望むというのでしたら、わたくし……」

 

 ………もしかしてこいつ、受けに回ると弱いのか?可愛い弱点を知ったな。これからはこの手で逃げられ……。

 

「では、早速………」

「おおい待て!お前なんで脱ぎ始めてんだ⁉︎」

「わたくしと性交をするために抱き締めたのでしょう⁉︎」

「そんなサイン聞いたことねえわ‼︎」

 

 ダメだ!一番しちゃいけないことだった!ああもう、どうしてこうなる⁉︎

 何とか清姫を引っぺがすと、ようやく話が進み、ブーディカにリーダーとして言った。

 

「まぁ、これからよろしく」

「う、うん。うちのが迷惑かけてごめんね」

「いや、いいよ。少し帰りたくなってるだけ」

 

 本当に今日は散々だ。どの時代でも一回ずつトラウマ刻まれないと気が済まねえのかよ。

 

「にしても、あれでしょ?皇帝陛下お気に入りの客将なんでしょ?」

「え?そうなの?」

「うん。ね?皇帝陛下?」

「…………」

 

 ブーディカに言われるも、ネロから返事はない。なんだ?ボーッとして。うんこか?

 

「おい、ネロ?」

 

 声を掛けると、ハッとしたのかネロは顔を上げた。

 

「ん?な、何か言ったか?すまん、少し疲れたようだ。ブーディカ、お兄ちゃん達を頼む」

「………はっ?お兄ちゃん?」

 

 ま、マズイ!ブーディカの目の色が攻撃色に!

 訂正してくれることもなく、ネロはテントに向かった。ギギギっと怒りを隠そうともせずにブーディカは俺を笑顔で見た。

 

「…………どういう事かな?」

「いや違うんですよ。あれには事情がありましてね……」

「詳しくお願いしようかな?」

「………はい」

 

 説明した。怒られなかったけどドン引きされた。ブーディカは俺に目も合わせてくれなかった。

 すると、兵士が一人ブーディカに敬礼しながらやって来た。

 

「申し上げます!敵斥候部隊を発見!」

「追撃は?」

「敵兵の速度に追いつけません!このままでは、離脱されてしまう可能性が!」

 

 俺はクー・フーリンさんに声を掛けた。

 

「クー・フーリンさん、それから沖田さん。追撃して。情報が漏れる」

「了解」

「私達も行こう、マシュは待ってて」

「えっ?」

「がら空きには出来ないでしょ?……だよね?田中さん」

「ああ」

「了解」

「ますたぁ、わたくしはよろしいのですか?」

「清姫はここに残れ」

「? わ、分かりました」

 

 藤丸さんが率いて敵の追撃に向かった。さて、俺はブーディカに話がある。

 

「なぁ、ブーディカ」

「? 何?」

「お前はブリタニアの元女王、だったよな?」

「ちょっ、田中先輩……!」

「………ええ。その通りだよ」

 

 反応するマシュを片手で制してブーディカは頷いた。

 

「そんなお前がなんでネロの味方をしている?何のつもりだ?」

「……………」

「返答によっては」

 

 俺はホルスターから拳銃を抜き、ブーディカに向けた。

 

「こいつで、頭ブチ抜く」

「た、田中先輩!」

「黙ってろ、マシュ。裏切り者、或いは敵のスパイのサーヴァントがいたら最悪だ。今のうちに炙り出すのは当然だろ」

「で、ですが……!ていうか何で持ってるんですかそんな物⁉︎」

「いいから黙ってろ」

 

 すると、ブーディカはフッと微笑んでから言った。

 

「もちろん、そういう人が一人はいると思ってたよ。でも、あたしは裏切らないから。証拠みたいなものはないけど、裏切らないって胸を張って言える」

「………何故ですか?」

 

 マシュが問い詰める、というよりも気になるといった様子で聞いた。

 

「確かに、皇帝ネロとローマをあたしは絶対に許さない。ケルトの神々に誓いもした。そんなあたしが現界した。まさか、自分が死んだ直後の世界に。復讐の機会かなーなんて思いましたんだけどね。でも、連合に食い荒らされるローマを見てたら……体が勝手に動いちゃって。ネロのためじゃない、そこに生きる人のために。………それとも、復讐のために殺し尽くしたはずのロンディニウムの連中にすまないと思ってたのか。自分の事なのによく分からないの。でも、考えてみれば、あたしはずっとそうだったし。あたしは守る為に戦う性格なんだと思う。それが一番向いてるっぽいのよね」

 

 …………なるほど、話は分かった。まぁ、そんな事よりもだ。

 

「根拠がないなら、今ここで作る。なぁ?清姫」

「……なるほど、そういう事でしたか。ますたぁ」

「ここにいる清姫は、嘘には厳しい。今から俺がブーディカに言わせる言葉が嘘だと判断された時点で俺達、特に清姫には狙われる。集中して、お前の命を刈り取るまでだ」

「………ふぅん?」

 

 正直、この方法はイマイチな効果かもしれないが、まぁこれくらいしか思い付かないのだから仕方ない。あいつにとって特別な人間がいれば人質になったのに。

 まぁ、良いか。とりあえず言わせよう。

 

「『私、ブーディカは必ずローマ軍とその友軍を裏切らず、敵軍の大将を討ち取るまで尽力する』って」

「………長いんだけど」

「はい、復唱しろ。さんはい、『私、ブーディカは必ずローマ軍とその友軍を裏切らず、敵軍の大将を討ち取るまで尽力する』」

「私、ブーディカは必ずローマ軍とその友軍を裏切らず、敵軍の大将を討ち取るまで尽力する、これで良い?」

「聞いたか?清姫」

「はい」

 

 よし、まぁ良いか。これで何とか信頼するしかない。

 

「でも、えっと……田中だったっけ?」

「ああ」

「ひとつ、お願い出来る?」

「何?」

「ネロは今、あたしのことを『生きていた好敵手』だと思ってるの。だから悪いんだけど、その間は………」

「ああ、了解」

「うん、ありがと。あいつ、なんか前以上に危なっかしいから、余計な気遣いとかさせたら何するか分からないし」

「確かにな。さっき、ポーッとしてたし」

「! 気付いた?」

「そりゃな。ま、そういう事ならわかったよ」

「うんうん」

 

 話してると、藤丸さん達が帰ってきた。

 

「ふー、つっかれたぁ……」

「マスター!ご無事ですかっ?」

「あ、マシュ。うん、平気だよ。ジャンヌオルタも守ってくれたし」

「良かったです……」

 

 こいつらホント仲良いなー。………あ、ジャンヌオルタが少し不愉快そうにしてる。藤丸さんって割とモテるんだな。

 一方、クー・フーリンさんと沖田さんは俺に懐いてないのが丸分かりで、俺に声をかけることもしない。クー・フーリンさんはやけに疲れてるし、沖田さんは相変わらず不機嫌そうにしてる。

 

「お疲れ」

「お、おう……」

「……なんで疲れてんの?」

「………お前の一人目のサーヴァントがすんごい暴れるもんだから、宥めるのに必死で……」

 

 沖田さんか。ていうか、あの人なんで怒ってんの?

 聞こうと思ったところで、ブーディカが手を小さく叩いた。

 

「さ、それよりお風呂にしましょう?みんな疲れたでしょう?」

 

 直後、俺の中に稲妻が走った。

 …………野営地で、風呂、だと………⁉︎

 

 


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