カルデアがダブルマスター体制だったら。   作:バナハロ

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R-17.9も大概にして欲しい。

 ふと目を覚ますと、部屋の中だった。なんか頭がガンガンするな。それに目も痛いし足も痛い。ていうか、これ高熱じゃね?刺されて高熱発症とか本当にあるんだな。

 とりあえず、起き上がろうと体を起こした直後、腹にズキっと痛みが走る。

 

「痛ッ……!」

「っ、ま、正臣⁉︎起きたか!」

 

 横から声が聞こえた。ネロが俺の横からガバッと飛びついて来た。

 

「あだだだだ!ネロ、腹に柔らかいオッパイ、略して柔らパイが当たって幸せ痛い!」

「馬鹿者!こんな時まで茶化すな!」

 

 ギュウッと抱き締める力が強くなる。ネロの肩がふるふると震えていた。どうやら、泣かせてしまったようだ。

 

「悪かったよ。……で、どうなったの?ブーディカとか」

「……ブーディカの救出は荊軻と小次郎がやってくれたぞ。敵のアレキサンダーとロード・エルメロイとやらも撃破した」

「そっか。じゃあ、一応成功ってわけね……」

「馬鹿者!」

 

 うおっ、ビックリした。何で怒るの。

 

「お主がそんなザマで成功と呼べるか!」

「えっ?い、いやいや、むしろ戦力減らなくて良かったでしょ」

「そんな事はどうでも良い!」

 

 えっ、大事じゃないんですかね……。今回はサーヴァント二騎倒してるし、割と戦局はこちらに有利だと思う。だからこそ、詰めを誤らずに攻めたいんだけど……。

 ていうか、今気付いたけどネロ以外誰もいないや。相変わらず慕われてねぇなぁ、俺。

 

「すまない……。余の所為で、お兄ちゃんはそんな怪我を……」

「えっ?い、いやいや、俺の判断でああなっただけだから。ネロの所為じゃないよ」

「だが、余は主を守ると約束した……。それなのに、守れなかった……」

「だから、あれは相手が上手かっただけで……。大体、あの場は俺もさっさと逃げるべきだったんだよ」

 

 以前までの俺ならもう少し冷静な判断をしてたはずだ。あんな行動をしたのは、やはり沖田さんとエミヤさんの修行で少しでも強くなったと勘違いしたからだろう。玉狛第二の隊長と同じだ。

 

「馬鹿者、戦場に過程などない。余は……余はお主を守ると言った。それなのに守り切れなかった。それが結果だ」

「………」

 

 流石、俺なんかより長く戦場にいるだけの事はある。そういう結果だけを求める所は俺にないものだ。

 そうなると、いくら慰めてもネロの励ましにはならないだろう。なら、俺の取るべき行動は慰める事じゃない、ちゃんと罰を与えてやることだ。いや、罰を与えるってのもなんか変な気はするけど。

 

「そうだな、じゃあネロの所為だ」

「ああ……」

「だから、あれだ。一つ、俺の言うことを聞いてもらう」

「何でも言え。もう少し位置が悪かったら死んでいたらしいしな。主の命を危険に晒した事と同じだ」

「えっ、そ、そうなの……?」

 

 ……良かった、アレキサンダー がセイバーやアサシンじゃなくて。

 ま、まぁ、とにかく目の前の奴の元気が出る罰だな。そんなの決まってるさ。

 

「オッパイを揉ませろ!」

「………はっ?」

 

 一発で真顔になるネロ。ふっ、こういう時は大学生の飲み会よろしく、セクハラに走るのが一番だ。怒るなり何なりしてくれれば、とりあえず俺への罪悪感なんて消えるだろう。

 そんな事を思ってると、ネロは頬を赤く染めて上半身の服に手をかけた。

 

「………へっ?」

 

 そのままグイッと俺のシャツを脱ぎ、顔を真っ赤にしてる癖に下着しか防御部位のない胸を隠す事も無く言った。

 

「……そ、それでっ…お兄ちゃんの気が済むのなら、喜んで差し出そう……」

「い、いやいやいや!マジで揉んで良いんですか⁉︎冗談に決まってるだろ!」

「本音が先に漏れてるぞ……。まったく、えっちなお兄ちゃんなんだから……」

 

 えっ、なにそのフレーズかわいい。

 いや、そんな事でほっこりしてる場合じゃない。良いのか?揉んでも?マジで?いや、良いわけないんだけど。

 ……でも、その、何?脱がせたのに揉まないってのも失礼な気がするし……。

 

「……本当に良いの?」

「は、早くせぬか。余にも恥じらいというものはあるのだ……」

「しゃぶっても?」

「しゃぶる⁉︎赤子かお主は!」

「挟んで擦っても?」

「ばっ、馬鹿者!それはさすがに無理だ!」

「あ、今のだけで分かっちゃうんだ」

「ーっ!お、怒るぞお兄ちゃん!」

 

 ああ〜、かわいいんじゃ〜。可愛過ぎて顔を直視出来ない。彼女を愛でるには、俺は心を汚し過ぎた。

 とりあえず、心を落ち着けるために両手で熱くなった顔を覆って深呼吸した。いや、別に顔隠す必要はないんだけど、なんか、こう……今、すごい顔してる気がして顔を見せられない。

 

「は、早くしろ。このままだと風邪を引いて……んっ?何をしてる?お兄ちゃん」

「深呼吸」

「……ほう?」

 

 突然、ネロが俺の両手を掴んで顔から引き剥がした。熱くなってる俺の顔が露わになった直後、ネロはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「ほう?お兄ちゃん、顔が赤いぞ?」

「っ、う、うるせぇから。風邪引いてるだけだから」

「もしかして、自分で言っておきながら照れてるのか?」

「い、いやほんとうるせぇから」

「可愛いところがあるではないか」

 

 自分だって顔赤い癖に、俺より優位に立ったネロはベッドに上がって馬乗りになった。

 

「ほ、ほら、その姿勢でも触りやすいように正面に来てやったぞ?」

「グッ……!」

「触らないのか?それとも、自分から言い出しておいて触る度胸が無いのか?」

 

 こ、こいつ……!元々、お詫びだってこと分かってんのか……?

 それに、俺にその手の精神勝負を仕掛けるのは10年早い。こういう時はこの一言で片付けられる。

 

「なんだ?ネロ、まるで揉んで欲しいみたいじゃん」

「………へっ?」

「妹がビッチだったなんて、お兄ちゃん驚いたな」

「なっ……⁉︎だ、誰がビッチだ!余はまだ処女であるぞ!」

「いやいや、男にオッパイ揉まれようとして正面に来るなんてビッチ以外の何者でもないでしょ」

「っ……!こ、このっ……!」

 

 顔を真っ赤にしたネロは、俺の硬くなった股間を無造作に鷲掴みした。

 

「ぎゃー!な、何しやがんだテメェ⁉︎」

「こんなにカッチカチにしてる奴のセリフか!このスケベ!」

「うっ、ウルセェな!お前こそ……!」

「ひゃわわっ⁉︎」

「こんなに乳首立たせてんだろうが!」

「いっ、いいいいきなり揉むなー!」

「お前が揉んでも良いって言ったんだろうが!」

 

 ぐぬぬっ、と二人してお互いの恥部を握ったまま睨み合う。しかし、その……なんつーか、何?ネロに握られてると思うと気持ち良くなって……。

 ネロも、徐々に頬を赤らめて息遣いが荒くなって来た。あれ、なんだこれ……何この空気というか……雰囲気?

 心臓の高鳴りが止まない。どんなに頑張っても勃起が収まらない。ああ、そうか……。これが、ムラムラというものか……。

 

「……ね、ネロ……」

「お兄ちゃん……」

 

 ネロが股間を握っていない方の手を俺の顔の横に着いて、徐々に顔を近付けて来る。俺も、抵抗しようと思えば出来るかもしれないけど、しようとしなかった。

 あと1ミリでキスする、そう思った時だ。部屋の扉が開いた。

 

「ネロさん、マスターは起きましたか?」

 

 沖田さんが入って来た。俺とネロは揃って顔を横に向けた。

 

「………」←胸を揉まれ、魔羅を握ってる皇帝

「………」←胸を揉み、魔羅を握られてる男

「………」←胸を揉み、魔羅を握られてる男のサーヴァント

 

 しばらくフリーズしたが、やがて俺もネロも沖田さんも顔を真っ赤に染めた。

 で、まず再起動したのは沖田さんだった。腰の刀に手を掛け、スッと構えた。あ、待て。その構えって確か……。

 

「一歩音超え……」

「おぉい!待て待て!ここで宝具はシャレにならん!」

「二歩無間……」

「ネロ!ネロは関係ないから!俺がお願いしたからこうなっただけで……!」

「三歩絶刀!」

「ネロ!逃げ……!」

「『無明――三段突き』」

 

 城の医務室が滅んだ。

 

 ×××

 

 夜。明日からの事について話し合う事になった為、俺の部屋にメンバーは集まった。

 集まってるのは主要メンバーであるネロ、俺、沖田さん、エミヤさん、藤丸さん、マシュ、荊軻、ブーディカの7人だ。ちなみに、俺とネロは仕事の時以外、特に二人きりで話す事は禁止となった。

 

「さて、とりあえず明日からの事だが……」

「その前に田中さん。良いかな?」

 

 藤丸さんが手を挙げた。誰からも反対意見ないどころか、俺の方をジッと眺めてる辺り、多分俺が寝てる間に全員で決めたことなんだろう。

 

「田中さんは今回の特異点では、もう城で大人しくしてて」

「はっ?」

「みんなで決めた事だから。従ってもらうよ」

「待って、なんでだよ」

 

 その問いには沖田さんが答えた。

 

「まず、刺されたからです。それに高熱も出ていますよね。そんな体で来られても足手まといですし、守り切れません」

「い、いやでもだな……。サーヴァントたくさんいるし、一人に徹底して守ってもらえば……」

「それでも向こうに集中して狙われたら?なんでしたっけ……。れ、レフ?教授?とかいう方はマスターの指揮能力も全て知っていますよね」

 

 そ、そう言われりゃそうなんだが……。

 反論を考えてるうちにエミヤさんが続けて言った。

 

「無論、マスターにも仕事はある。進軍する時の作戦を考えてもらう。だが、前線に出るのは許さんということだ」

「けど、想定外の出来事が起こったらヤバいんじゃないの?序盤の作戦なんかより、そういう時の方が判断力や頭の回転は必要になるもんだぞ」

「その点なら問題ない。マスターほどではないが、ネロや藤丸立花でもそれなりの判断は下せる」

 

 いや、それなりじゃ問題ある気もするんだけど……と、言おうとしたが、その前にマシュが言った。

 

「それに、これまでの戦闘は女神ステンノの洞窟の時以外、ほとんど全て田中先輩の作戦と判断力におんぶに抱っこでした。この先、田中先輩抜きで戦闘をすることだって少なくないはずですし、経験しておいて損はないはずです」

「いや、でもだな。オルレアンでだって聖杯回収したのは藤丸さんじゃん。それに、戦闘は何が起こるかわからないんだから経験しておく、なんて曖昧な理由で最大戦力を投入しないのは……」

「無論、敵を甘く見ているわけではありません。ですが、本当に万が一の時には田中先輩の力もお借りする予定です。その為に、エミヤさんに作っていただきました」

 

 言いながら、マシュが複数のトランシーバーを机の上に置いた。確かにそれなら遠距離からの連絡は可能だが……。

 今度はブーディカと荊軻が口を開いた。

 

「あんたには助けてもらって感謝してる。でも、ここは従って欲しいな。今回、結構危ない目に遭ってるから」

「それよりも、心配されるのは我々としては少し心外だな。目の前にいる私達は『英霊』として召喚されている」

 

 最後、締めるようにネロが言った。

 

「そういうわけだ、お兄ちゃ……正臣。ここから先は我々に任せておけ」

 

 ……正直、少し不安なんだが。英霊、とか言うけど今の所、俺はその英霊との知恵比べでほとんど勝ってきてるからなぁ。

 英霊同士がぶつかり合う事で、条件を五分にする事と同じだ。何より、敵の手駒にもっと頭の良い英霊がいたらそれこそ最悪だ。アレキサンダーやロード・エルメロイとかには見事にしてやられていたし。

 それに、俺は覚悟とか決心とか、そういうのは信じていない。馬鹿は情に流されるから失敗する。確実性を求める事が必勝の鍵だ。

 確かにしばらく前線には出れないかもしれないが、治ってからは復帰させてもらおう。そう思ってそれを進言しようとした時だ。

 

『それでも渋るなら、レオナルドから交渉があるよ』

『私が田中くんの部屋のテレビを60インチのものに改造してあげよう。大画面でのモンハンとか楽しそうだよね〜』

「よし、しばらく君達に任せよう」

 

 ついうっかりオーケーしてしまった。

 

 


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